朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ恩赦令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正元年九月二十六日
內閣總理大臣 侯爵 西園寺公望
海軍大臣 男爵 齋藤實
遞信大臣 伯爵 林董
司法大臣 松田正久
內務大臣 原敬
外務大臣 子爵 內田康哉
農商務大臣 男爵 牧野伸顯
文部大臣 長谷場純孝
大藏大臣 山本達雄
陸軍大臣 男爵 上原勇作
勅令第二十三號
恩赦令
第一條 大赦、特赦、減刑及復權ハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二條 大赦ハ勅令ヲ以テ罪ノ種類ヲ定メ之ヲ行フ
第三條 大赦ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外大赦アリタル罪ニ付左ノ效力ヲ有ス
一 刑ノ言渡ヲ受ケタル者ニ付テハ其ノ言渡ハ將來ニ向テ效力ヲ失フ
二 未タ刑ノ言渡ヲ受ケサル者ニ付テハ公訴權ハ消滅ス
第四條 特赦ハ刑ノ言渡ヲ受ケタル特定ノ者ニ對シ之ヲ行フ
第五條 特赦ハ刑ノ執行ヲ免除ス但シ特別ノ事情アルトキハ將來ニ向テ刑ノ言渡ノ效力ヲ失ハシムルコトヲ得
第六條 減刑ハ刑ノ言渡ヲ受ケタル者ニ對シ勅令ヲ以テ罪若ハ刑ノ種類ヲ定メ之ヲ行ヒ又ハ刑ノ言渡ヲ受ケタル特定ノ者ニ對シ之ヲ行フ
第七條 勅令ニ依ル減刑ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外將來ニ向テ刑ヲ變更ス
特定ノ者ニ對スル減刑ハ刑ノ執行ヲ減輕ス但シ特別ノ事情アルトキハ刑ヲ變更スルコトヲ得
第八條 刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ受ケタル者ニ對シテハ刑ノ言渡ノ效力ヲ失ハシムル特赦若ハ刑ヲ變更スル減刑ヲ行ヒ又ハ其ノ減刑ト共ニ猶豫ノ期間ヲ短縮スルコトヲ得
第九條 復權ハ刑ノ言渡ヲ受ケタル爲法令ノ定ムル所ニ依リ資格ヲ喪失シ又ハ停止セラレタル特定ノ者ニ對シ之ヲ行フ
第十條 復權ハ將來ニ向テ資格ヲ囘復ス
復權ハ特定ノ資格ニ付之ヲ行フコトヲ得
第十一條 刑ノ言渡ニ基ク旣成ノ效果ハ大赦、特赦、減刑又ハ復權ニ因リ變更セラルルコトナシ
第十二條 特赦、特定ノ者ニ對スル減刑又ハ復權ハ司法大臣之ヲ上奏ス
第十三條 刑ノ言渡ヲ爲シタル裁判所ノ檢事又ハ受刑者ノ在監スル監獄ノ長ハ司法大臣ニ特赦又ハ減刑ノ申立ヲ爲スコトヲ得
監獄ノ長前項ノ申立ヲ爲ス場合ニ於テハ刑ノ言渡ヲ爲シタル裁判所ノ檢事ヲ經由スヘシ
第十四條 特赦又ハ減刑ノ申立書ニハ左ノ書類ヲ添附スヘシ
一 判決ノ謄本又ハ抄本
二 刑期計算書
三 犯罪ノ情狀、本人ノ性行、受刑中ノ行狀、將來ノ生計其ノ他參考ト爲ルヘキ事項ニ關スル調査書類
第十五條 刑ノ言渡ヲ爲シタル裁判所ノ檢事ハ職權ヲ以テ又ハ本人ノ出願ニ依リ司法大臣ニ復權ノ申立ヲ爲スコトヲ得
復權ノ出願ハ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ノ免除アリタル日ヨリ三年ヲ經過シタル後ニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第十六條 復權ノ申立書ニハ左ノ書類ヲ添附スヘシ
一 判決ノ謄本又ハ抄本
二 刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ノ免除アリタルコトヲ證スル書類
三 刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ノ免除アリタル後ニ於ケル本人ノ行狀、現在及將來ノ生計其ノ他參考ト爲ルヘキ事項ニ關スル調査書類
本人ノ出願ニ依リ申立ヲ爲ス場合ニ於テハ前項ノ書類ノ外其ノ願書ヲ添附スヘシ
第十七條 特赦、減刑又ハ復權ノ裁可アリタルトキハ司法大臣ハ刑ノ言渡ヲ爲シタル裁判所ノ檢事ニ特赦狀、減刑狀又ハ復權狀ヲ送付シ之ヲ本人ニ下付セシムヘシ
第十八條 大赦、特赦、減刑又ハ復權アリタルトキハ刑ノ言渡ヲ爲シタル裁判所ノ檢事ハ判決ノ原本ニ其ノ旨ヲ附記スヘシ
第十九條 本令中司法大臣ノ職務ハ軍法會議ニ於テ刑ノ言渡ヲ受ケタル者ニ付テハ陸軍大臣又ハ海軍大臣、朝鮮臺灣關東州又ハ帝國カ治外法權ヲ行使スル地域ニ於テ刑ノ言渡ヲ受ケタル者ニ付テハ朝鮮總督臺灣總督關東都督又ハ外務大臣之ヲ行ヒ檢事ノ職務ハ刑ノ言渡ヲ爲シタル軍法會議ヲ管轄スル長官其ノ軍法會議ノ理事若ハ主理、法院ノ檢察官、民政署長、領事官又ハ卽決官廳之ヲ行フ
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
明治四十一年勅令第二百十五號、第二百十六號及第二百三十號ハ之ヲ廢止ス
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ恩赦令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正元年九月二十六日
内閣総理大臣 侯爵 西園寺公望
海軍大臣 男爵 斎藤実
逓信大臣 伯爵 林董
司法大臣 松田正久
内務大臣 原敬
外務大臣 子爵 内田康哉
農商務大臣 男爵 牧野伸顕
文部大臣 長谷場純孝
大蔵大臣 山本達雄
陸軍大臣 男爵 上原勇作
勅令第二十三号
恩赦令
第一条 大赦、特赦、減刑及復権ハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二条 大赦ハ勅令ヲ以テ罪ノ種類ヲ定メ之ヲ行フ
第三条 大赦ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外大赦アリタル罪ニ付左ノ効力ヲ有ス
一 刑ノ言渡ヲ受ケタル者ニ付テハ其ノ言渡ハ将来ニ向テ効力ヲ失フ
二 未タ刑ノ言渡ヲ受ケサル者ニ付テハ公訴権ハ消滅ス
第四条 特赦ハ刑ノ言渡ヲ受ケタル特定ノ者ニ対シ之ヲ行フ
第五条 特赦ハ刑ノ執行ヲ免除ス但シ特別ノ事情アルトキハ将来ニ向テ刑ノ言渡ノ効力ヲ失ハシムルコトヲ得
第六条 減刑ハ刑ノ言渡ヲ受ケタル者ニ対シ勅令ヲ以テ罪若ハ刑ノ種類ヲ定メ之ヲ行ヒ又ハ刑ノ言渡ヲ受ケタル特定ノ者ニ対シ之ヲ行フ
第七条 勅令ニ依ル減刑ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外将来ニ向テ刑ヲ変更ス
特定ノ者ニ対スル減刑ハ刑ノ執行ヲ減軽ス但シ特別ノ事情アルトキハ刑ヲ変更スルコトヲ得
第八条 刑ノ執行猶予ノ言渡ヲ受ケタル者ニ対シテハ刑ノ言渡ノ効力ヲ失ハシムル特赦若ハ刑ヲ変更スル減刑ヲ行ヒ又ハ其ノ減刑ト共ニ猶予ノ期間ヲ短縮スルコトヲ得
第九条 復権ハ刑ノ言渡ヲ受ケタル為法令ノ定ムル所ニ依リ資格ヲ喪失シ又ハ停止セラレタル特定ノ者ニ対シ之ヲ行フ
第十条 復権ハ将来ニ向テ資格ヲ回復ス
復権ハ特定ノ資格ニ付之ヲ行フコトヲ得
第十一条 刑ノ言渡ニ基ク既成ノ効果ハ大赦、特赦、減刑又ハ復権ニ因リ変更セラルルコトナシ
第十二条 特赦、特定ノ者ニ対スル減刑又ハ復権ハ司法大臣之ヲ上奏ス
第十三条 刑ノ言渡ヲ為シタル裁判所ノ検事又ハ受刑者ノ在監スル監獄ノ長ハ司法大臣ニ特赦又ハ減刑ノ申立ヲ為スコトヲ得
監獄ノ長前項ノ申立ヲ為ス場合ニ於テハ刑ノ言渡ヲ為シタル裁判所ノ検事ヲ経由スヘシ
第十四条 特赦又ハ減刑ノ申立書ニハ左ノ書類ヲ添附スヘシ
一 判決ノ謄本又ハ抄本
二 刑期計算書
三 犯罪ノ情状、本人ノ性行、受刑中ノ行状、将来ノ生計其ノ他参考ト為ルヘキ事項ニ関スル調査書類
第十五条 刑ノ言渡ヲ為シタル裁判所ノ検事ハ職権ヲ以テ又ハ本人ノ出願ニ依リ司法大臣ニ復権ノ申立ヲ為スコトヲ得
復権ノ出願ハ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ノ免除アリタル日ヨリ三年ヲ経過シタル後ニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
第十六条 復権ノ申立書ニハ左ノ書類ヲ添附スヘシ
一 判決ノ謄本又ハ抄本
二 刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ノ免除アリタルコトヲ証スル書類
三 刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ノ免除アリタル後ニ於ケル本人ノ行状、現在及将来ノ生計其ノ他参考ト為ルヘキ事項ニ関スル調査書類
本人ノ出願ニ依リ申立ヲ為ス場合ニ於テハ前項ノ書類ノ外其ノ願書ヲ添附スヘシ
第十七条 特赦、減刑又ハ復権ノ裁可アリタルトキハ司法大臣ハ刑ノ言渡ヲ為シタル裁判所ノ検事ニ特赦状、減刑状又ハ復権状ヲ送付シ之ヲ本人ニ下付セシムヘシ
第十八条 大赦、特赦、減刑又ハ復権アリタルトキハ刑ノ言渡ヲ為シタル裁判所ノ検事ハ判決ノ原本ニ其ノ旨ヲ附記スヘシ
第十九条 本令中司法大臣ノ職務ハ軍法会議ニ於テ刑ノ言渡ヲ受ケタル者ニ付テハ陸軍大臣又ハ海軍大臣、朝鮮台湾関東州又ハ帝国カ治外法権ヲ行使スル地域ニ於テ刑ノ言渡ヲ受ケタル者ニ付テハ朝鮮総督台湾総督関東都督又ハ外務大臣之ヲ行ヒ検事ノ職務ハ刑ノ言渡ヲ為シタル軍法会議ヲ管轄スル長官其ノ軍法会議ノ理事若ハ主理、法院ノ検察官、民政署長、領事官又ハ即決官庁之ヲ行フ
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
明治四十一年勅令第二百十五号、第二百十六号及第二百三十号ハ之ヲ廃止ス