東洋拓殖株式会社法
法令番号: 法律第六十三號
公布年月日: 明治41年8月27日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル東洋拓殖株式會社法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十一年八月二十六日
內閣總理大臣兼大藏大臣 侯爵 桂太郞
農商務大臣 男爵 大浦兼武
司法大臣 子爵 岡部長職
法律第六十三號
東洋拓殖株式會社法
第一章 總則
第一條 東洋拓殖株式會社ハ韓國ニ於テ拓殖事業ヲ營ムコトヲ目的トスル株式會社トシ其ノ本店ヲ韓國ニ置ク
第二條 東洋拓殖株式會社ノ資本ハ一千萬圓トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
第三條 東洋拓殖株式會社ノ株式ハ總テ記名式トシ日韓兩國人ニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
第四條 東洋拓殖株式會社ノ資本增加ハ株金全額ノ拂込アルコトヲ要セス
第五條 東洋拓殖株式會社ノ存立時期ハ設立登記ノ日ヨリ百年トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ延長スルコトヲ得
第六條 東洋拓殖株式會社ハ政府ノ認可ヲ受ケ支店又ハ出張所ヲ東京其ノ他ノ地ニ置ク
第二章 役員
第七條 東洋拓殖株式會社ニ總裁一人、副總裁二人、理事四人以上、監事三人以上ヲ置ク
第八條 總裁ハ東洋拓殖株式會社ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
副總裁ハ總裁事故アルトキ其ノ職務ヲ代理シ總裁缺員ノトキ其ノ職務ヲ行フ
副總裁及理事ハ總裁ヲ補助シ東洋拓殖株式會社ノ業務ヲ分掌ス
監事ハ東洋拓殖株式會社ノ業務ヲ監査ス
第九條 總裁ハ日本人トシ政府之ヲ命ス
副總裁ハ一人ハ日本人トシ一人ハ韓國人トス
理事及監事ハ其ノ員數ノ少ナクトモ三分ノ二ハ日本人トシ其ノ他ハ韓國人トス
副總裁及理事中日本人ハ政府之ヲ命シ韓國人ハ韓國政府之ヲ命ス但シ理事ノ任命ニ付テハ株主總會ヲシテ五十株以上ヲ所有スル株主中ヨリ各二倍ノ候補者ヲ選擧セシム
監事ハ株主總會ニ於テ三十株以上ヲ所有スル株主中ヨリ之ヲ選擧ス
總裁、副總裁及理事ノ任期ハ五年トシ監事ノ任期ハ二年トス
第十條 總裁、副總裁及理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從事スルコトヲ得ス但シ政府ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第三章 營業
第十一條 東洋拓殖株式會社ハ左ノ業務ヲ營ムモノトス
一 農業
二 拓殖ノ爲必要ナル土地ノ賣買及貸借
三 拓殖ノ爲必要ナル土地ノ經營及管理
四 拓殖ノ爲必要ナル建築物ノ築造、賣買及貸借
五 拓殖ノ爲必要ナル日韓移住民ノ募集及分配
六 移住民及韓國農業者ニ對シ拓殖上必要ナル物品ノ供給竝其ノ生產又ハ獲得シタル物品ノ分配
七 拓殖上必要ナル資金ノ供給
第十二條 東洋拓殖株式會社ハ政府ノ認可ヲ受ケ附帶事業トシテ韓國ニ於テ水產業其ノ他拓殖上必要ナル事業ヲ營ムコトヲ得
第十三條 第十一條第七號ノ資金供給ハ左ノ方法ニ依リ之ヲ行フヘシ
一 日韓移住民ニ對シ二十五年以內ノ年賦償還ノ方法ニ依ル移住費ノ貸付
二 移住民及韓國農業者ニ對シ十五年以內ノ年賦償還ノ方法ニ依ル韓國ニ於ケル不動產ヲ擔保トスル貸付
三 移住民及韓國農業者ニ對シ五年以內ノ定期償還ノ方法ニ依リ韓國ニ於ケル不動產ヲ擔保トスル貸付
四 移住民及韓國農業者ニ對シ其ノ生產又ハ獲得シタル物品ヲ擔保トスル貸付
五 韓國ニ於ケル不動產ヲ擔保トスル三年以內ノ定期償還ノ方法ニ依ル貸付
前項第一號ノ貸付ニ付テハ豫メ其ノ方法及條件ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クヘシ
第一項第二號乃至第五號ノ貸付金總額ハ拂込資本額及社債未償還額ノ合計ノ五分ノ一ヲ超ユルコトヲ得ス
第十四條 不動產又ハ動產ヲ擔保トスル貸付金額ハ東洋拓殖株式會社ニ於テ鑑定シタル價格ノ三分ノ二以內トス但シ前條第一項第一號ノ貸付ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十五條 不動產ヲ擔保トスル貸付ニ付テハ第一順位ノ擔保ナルコトヲ要ス
第十六條 貸付金ノ年賦償還ニ付テハ五年以內ノ据置年限ヲ定ムヘシ
第十七條 年賦金ハ元金ト利子トヲ併セテ之ヲ計算シ各年ヲ通シテ一定平等ノ償還額ヲ定ムヘシ但シ据置年限間ノ利子ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十八條 年賦償還ノ方法ヲ以テ借入ヲ爲シタル債務者ハ償還期限前ニ借用金ノ全部又ハ一部ヲ償還スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ東洋拓殖株式會社ハ定款ニ於テ定ムル所ノ率ニ依リ相當ノ手數料ヲ要求スルコトヲ得
第十九條 左ノ場合ニ於テハ償還期限前ト雖貸付金全部ノ償還ヲ要求スルコトヲ得
一 債務者カ貸付ノ目的ニ反シテ貸付金ヲ使用シタルトキ
二 債務者カ年賦金ノ拂込ヲ遲延シ催吿ヲ受クルモ尙拂込ヲ爲ササルトキ
三 擔保タル不動產ノ全部又ハ一部カ公用ノ爲收用セラルルトキ但シ債務者ニ於テ收用補償金ヲ供託シ又ハ相當ノ不動產ヲ以テ增擔保トスルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項第三號ノ場合ニ於テ其ノ收用カ一部ニ止マルトキハ償還ノ要求モ其ノ割合ニ應スヘキモノトス
第二十條 擔保物ノ價格減少シ貸付金償還殘額ニ對シ第十四條ノ割合ニ不足ヲ生シタルトキハ增擔保ヲ要求シ又ハ其ノ不足ニ相當スル貸付金額ノ償還ヲ要求スルコトヲ得
債務者前項ノ要求ニ應セサルトキハ償還期限前ト雖貸付金全部ノ償還ヲ要求スルコトヲ得
第二十一條 營業上ノ餘裕金ハ一時國債證券ヲ買入レ又ハ政府ノ指定シタル銀行ニ預ケ金ヲ爲スノ外之ヲ使用スルコトヲ得ス
第二十二條 東洋拓殖株式會社ハ營業上必要アルトキハ政府ノ認可ヲ受ケ借入金ヲ爲スコトヲ得
第四章 東洋拓殖債券
第二十三條 東洋拓殖株式會社ハ拂込資本額ノ十倍ヲ限リ東洋拓殖債券ヲ發行スルコトヲ得
東洋拓殖債券ヲ發行スル場合ニ於テハ商法第百九十九條ノ規定ヲ適用セス
第二十四條 東洋拓殖債券ヲ發行セムトスル場合ニ於テハ每囘其ノ金額、條件幷發行及償還ノ方法ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クヘシ
第二十五條 東洋拓殖債券ヲ發行スル場合ニ於テハ數囘ニ分チ拂込ヲ爲サシムルコトヲ得
第二十六條 東洋拓殖債券ハ全額拂込ノ後ハ無記名式トス但シ應募者又ハ所有者ノ請求ニ因リ記名式ト爲スコトヲ得
第二十七條 東洋拓殖債券ノ所有者ハ東洋拓殖株式會社ノ財產ニ付他ノ債權者ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ有ス
第二十八條 東洋拓殖株式會社ハ社債借換ノ爲一時第二十三條ノ制限ニ依ラス東洋拓殖債券ヲ發行スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ發行後一月以內ニ其ノ社債總額ニ相當スル舊東洋拓殖債券ヲ償還スヘシ
第二十九條 東洋拓殖債券ノ据置年限ハ五年以內トシ其ノ償還期限ハ三十年以內トス
第三十條 東洋拓殖株式會社ハ政府ノ認可ヲ受ケ東洋拓殖債券ノ買入消却ヲ爲スコトヲ得
第五章 準備金
第三十一條 東洋拓殖株式會社ハ每營業期ニ準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補フ爲利益ノ百分ノ八以上ヲ積立テ且利益配當ノ平均ヲ得セシムル爲利益ノ百分ノ二以上ヲ積立ツヘシ
第六章 政府ノ監督及補助
第三十二條 政府ハ東洋拓殖株式會社ノ業務ヲ監督ス
第三十三條 政府ハ東洋拓殖株式會社監理官ヲ置キ韓國政府ノ任命シタル監理官ト共同シテ東洋拓殖株式會社ノ業務ヲ監視セシム
東洋拓殖株式會社監理官ハ何時ニテモ東洋拓殖株式會社ノ金庫帳簿及諸般ノ文書物件ヲ檢査スルコトヲ得
東洋拓殖株式會社監理官ハ必要ト認ムルトキハ何時ニテモ東洋拓殖株式會社ニ命シテ營業上諸般ノ計算及景況ヲ報吿セシムルコトヲ得
東洋拓殖株式會社監理官ハ株主總會其ノ他諸般ノ會議ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第三十四條 政府ハ東洋拓殖株式會社ノ業務ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ發スルコトヲ得
第三十五條 東洋拓殖株式會社ノ決議又ハ役員ノ行爲法令若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害スルモノト認ムルトキハ政府ハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解職スルコトヲ得東洋拓殖株式會社ノ役員ニ於テ監督官廳ノ命シタル事項ヲ執行セサルトキ亦同シ
第三十六條 東洋拓殖株式會社ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非サレハ利益金ノ處分ヲ爲スコトヲ得ス
第三十七條 東洋拓殖株式會社ニ於テ移住規則其ノ他ノ規定ヲ定ムルトキハ政府ノ認可ヲ受クヘシ
第三十八條 東洋拓殖株式會社ニ於テ政府ノ認可ヲ受ケタル事項ヲ變更セムトスルトキハ更ニ政府ノ認可ヲ受クヘシ
第三十九條 政府ハ東洋拓殖株式會社ニ對シ設立登記ノ日ヨリ起算シ八年間ヲ限リ每年金三十萬圓ヲ每營業期ニ割當テ補給スヘシ但シ每營業期ニ於ケル利益配當カ拂込資本額ニ對シ年八分ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ニ相當スル金額ヲ補給金ノ內ヨリ控除ス
第四十條 利益配當カ拂込資本額ニ對シ年一割ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ハ先ツ之ヲ前條補給金ノ償還ニ充ツヘシ
前項ノ償還ヲ終ヘタルトキハ該超過金額ハ其ノ半額ヲ特別積立金トスヘシ
第七章 罰則
第四十一條 東洋拓殖株式會社ニ於テ左ノ事犯アルトキハ總裁若ハ總裁ノ職務ヲ行ヒ又ハ代理スル副總裁ヲ百圓以上千圓以下ノ過料ニ處ス其ノ事犯副總裁又ハ理事ノ分擔業務ニ係ルトキハ副總裁又ハ理事ヲ過料ニ處スルコト亦同シ
一 本法ニ於テ政府ノ認可ヲ受クヘキ場合ニ其ノ認可ヲ受ケサルトキ
二 第十一條ノ規定ニ依ラス業務ヲ營ミタルトキ
三 第十三條乃至第十七條ノ規定ニ違反シ資金ヲ供給シタルトキ
四 第二十一條ノ規定ニ違反シ營業上ノ餘裕金ヲ使用シタルトキ
五 第二十三條ノ規定ニ違反シ東洋拓殖債券ヲ發行シタルトキ但シ第二十八條ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
六 第二十八條ノ規定ニ違反シ東洋拓殖債券ノ償還ヲ爲ササルトキ
七 第三十一條及第四十條ノ規定ニ違反シ利益金ヲ處分シタルトキ
第四十二條 東洋拓殖株式會社ノ總裁、副總裁又ハ理事第十條ノ規定ニ違反シタルトキハ二十圓以上二百圓以下ノ過料ニ處ス
第四十三條 前二條ニ規定セル過料ニ付テハ非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ヲ準用ス
附 則
第四十四條 政府ハ設立委員ヲ命シ韓國政府ノ命シタル設立委員ト共同シテ東洋拓殖株式會社ノ設立ニ關スル一切ノ事務ヲ處理セシム
第四十五條 設立委員ハ定款ヲ作リ政府ノ認可ヲ受ケタル後株主ヲ募集スヘシ
第四十六條 設立委員ハ株主ノ募集終リタルトキハ株式申込書ヲ政府ニ差出シ東洋拓殖株式會社設立ノ認可ヲ申請スヘシ
第四十七條 設立認可アリタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク各株ニ付第一囘ノ拂込ヲ爲サシムヘシ
前項ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク創立總會ヲ招集スヘシ
第四十八條 創立總會終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ東洋拓殖株式會社總裁ニ引渡スヘシ
第四十九條 第一期ノ理事及監事ハ株主總會ノ選擧ニ依ラス之ヲ任命ス其ノ他ノ條件ニ付テハ第九條ノ例ニ依ル
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル東洋拓殖株式会社法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十一年八月二十六日
内閣総理大臣兼大蔵大臣 侯爵 桂太郎
農商務大臣 男爵 大浦兼武
司法大臣 子爵 岡部長職
法律第六十三号
東洋拓殖株式会社法
第一章 総則
第一条 東洋拓殖株式会社ハ韓国ニ於テ拓殖事業ヲ営ムコトヲ目的トスル株式会社トシ其ノ本店ヲ韓国ニ置ク
第二条 東洋拓殖株式会社ノ資本ハ一千万円トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ増加スルコトヲ得
第三条 東洋拓殖株式会社ノ株式ハ総テ記名式トシ日韓両国人ニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
第四条 東洋拓殖株式会社ノ資本増加ハ株金全額ノ払込アルコトヲ要セス
第五条 東洋拓殖株式会社ノ存立時期ハ設立登記ノ日ヨリ百年トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ延長スルコトヲ得
第六条 東洋拓殖株式会社ハ政府ノ認可ヲ受ケ支店又ハ出張所ヲ東京其ノ他ノ地ニ置ク
第二章 役員
第七条 東洋拓殖株式会社ニ総裁一人、副総裁二人、理事四人以上、監事三人以上ヲ置ク
第八条 総裁ハ東洋拓殖株式会社ヲ代表シ其ノ業務ヲ総理ス
副総裁ハ総裁事故アルトキ其ノ職務ヲ代理シ総裁欠員ノトキ其ノ職務ヲ行フ
副総裁及理事ハ総裁ヲ補助シ東洋拓殖株式会社ノ業務ヲ分掌ス
監事ハ東洋拓殖株式会社ノ業務ヲ監査ス
第九条 総裁ハ日本人トシ政府之ヲ命ス
副総裁ハ一人ハ日本人トシ一人ハ韓国人トス
理事及監事ハ其ノ員数ノ少ナクトモ三分ノ二ハ日本人トシ其ノ他ハ韓国人トス
副総裁及理事中日本人ハ政府之ヲ命シ韓国人ハ韓国政府之ヲ命ス但シ理事ノ任命ニ付テハ株主総会ヲシテ五十株以上ヲ所有スル株主中ヨリ各二倍ノ候補者ヲ選挙セシム
監事ハ株主総会ニ於テ三十株以上ヲ所有スル株主中ヨリ之ヲ選挙ス
総裁、副総裁及理事ノ任期ハ五年トシ監事ノ任期ハ二年トス
第十条 総裁、副総裁及理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ従事スルコトヲ得ス但シ政府ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第三章 営業
第十一条 東洋拓殖株式会社ハ左ノ業務ヲ営ムモノトス
一 農業
二 拓殖ノ為必要ナル土地ノ売買及貸借
三 拓殖ノ為必要ナル土地ノ経営及管理
四 拓殖ノ為必要ナル建築物ノ築造、売買及貸借
五 拓殖ノ為必要ナル日韓移住民ノ募集及分配
六 移住民及韓国農業者ニ対シ拓殖上必要ナル物品ノ供給並其ノ生産又ハ獲得シタル物品ノ分配
七 拓殖上必要ナル資金ノ供給
第十二条 東洋拓殖株式会社ハ政府ノ認可ヲ受ケ附帯事業トシテ韓国ニ於テ水産業其ノ他拓殖上必要ナル事業ヲ営ムコトヲ得
第十三条 第十一条第七号ノ資金供給ハ左ノ方法ニ依リ之ヲ行フヘシ
一 日韓移住民ニ対シ二十五年以内ノ年賦償還ノ方法ニ依ル移住費ノ貸付
二 移住民及韓国農業者ニ対シ十五年以内ノ年賦償還ノ方法ニ依ル韓国ニ於ケル不動産ヲ担保トスル貸付
三 移住民及韓国農業者ニ対シ五年以内ノ定期償還ノ方法ニ依リ韓国ニ於ケル不動産ヲ担保トスル貸付
四 移住民及韓国農業者ニ対シ其ノ生産又ハ獲得シタル物品ヲ担保トスル貸付
五 韓国ニ於ケル不動産ヲ担保トスル三年以内ノ定期償還ノ方法ニ依ル貸付
前項第一号ノ貸付ニ付テハ予メ其ノ方法及条件ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クヘシ
第一項第二号乃至第五号ノ貸付金総額ハ払込資本額及社債未償還額ノ合計ノ五分ノ一ヲ超ユルコトヲ得ス
第十四条 不動産又ハ動産ヲ担保トスル貸付金額ハ東洋拓殖株式会社ニ於テ鑑定シタル価格ノ三分ノ二以内トス但シ前条第一項第一号ノ貸付ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十五条 不動産ヲ担保トスル貸付ニ付テハ第一順位ノ担保ナルコトヲ要ス
第十六条 貸付金ノ年賦償還ニ付テハ五年以内ノ据置年限ヲ定ムヘシ
第十七条 年賦金ハ元金ト利子トヲ併セテ之ヲ計算シ各年ヲ通シテ一定平等ノ償還額ヲ定ムヘシ但シ据置年限間ノ利子ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十八条 年賦償還ノ方法ヲ以テ借入ヲ為シタル債務者ハ償還期限前ニ借用金ノ全部又ハ一部ヲ償還スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ東洋拓殖株式会社ハ定款ニ於テ定ムル所ノ率ニ依リ相当ノ手数料ヲ要求スルコトヲ得
第十九条 左ノ場合ニ於テハ償還期限前ト雖貸付金全部ノ償還ヲ要求スルコトヲ得
一 債務者カ貸付ノ目的ニ反シテ貸付金ヲ使用シタルトキ
二 債務者カ年賦金ノ払込ヲ遅延シ催告ヲ受クルモ尚払込ヲ為ササルトキ
三 担保タル不動産ノ全部又ハ一部カ公用ノ為収用セラルルトキ但シ債務者ニ於テ収用補償金ヲ供託シ又ハ相当ノ不動産ヲ以テ増担保トスルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項第三号ノ場合ニ於テ其ノ収用カ一部ニ止マルトキハ償還ノ要求モ其ノ割合ニ応スヘキモノトス
第二十条 担保物ノ価格減少シ貸付金償還残額ニ対シ第十四条ノ割合ニ不足ヲ生シタルトキハ増担保ヲ要求シ又ハ其ノ不足ニ相当スル貸付金額ノ償還ヲ要求スルコトヲ得
債務者前項ノ要求ニ応セサルトキハ償還期限前ト雖貸付金全部ノ償還ヲ要求スルコトヲ得
第二十一条 営業上ノ余裕金ハ一時国債証券ヲ買入レ又ハ政府ノ指定シタル銀行ニ預ケ金ヲ為スノ外之ヲ使用スルコトヲ得ス
第二十二条 東洋拓殖株式会社ハ営業上必要アルトキハ政府ノ認可ヲ受ケ借入金ヲ為スコトヲ得
第四章 東洋拓殖債券
第二十三条 東洋拓殖株式会社ハ払込資本額ノ十倍ヲ限リ東洋拓殖債券ヲ発行スルコトヲ得
東洋拓殖債券ヲ発行スル場合ニ於テハ商法第百九十九条ノ規定ヲ適用セス
第二十四条 東洋拓殖債券ヲ発行セムトスル場合ニ於テハ毎回其ノ金額、条件並発行及償還ノ方法ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クヘシ
第二十五条 東洋拓殖債券ヲ発行スル場合ニ於テハ数回ニ分チ払込ヲ為サシムルコトヲ得
第二十六条 東洋拓殖債券ハ全額払込ノ後ハ無記名式トス但シ応募者又ハ所有者ノ請求ニ因リ記名式ト為スコトヲ得
第二十七条 東洋拓殖債券ノ所有者ハ東洋拓殖株式会社ノ財産ニ付他ノ債権者ニ先チテ自己ノ債権ノ弁済ヲ受クル権利ヲ有ス
第二十八条 東洋拓殖株式会社ハ社債借換ノ為一時第二十三条ノ制限ニ依ラス東洋拓殖債券ヲ発行スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ発行後一月以内ニ其ノ社債総額ニ相当スル旧東洋拓殖債券ヲ償還スヘシ
第二十九条 東洋拓殖債券ノ据置年限ハ五年以内トシ其ノ償還期限ハ三十年以内トス
第三十条 東洋拓殖株式会社ハ政府ノ認可ヲ受ケ東洋拓殖債券ノ買入消却ヲ為スコトヲ得
第五章 準備金
第三十一条 東洋拓殖株式会社ハ毎営業期ニ準備金トシテ資本ノ欠損ヲ補フ為利益ノ百分ノ八以上ヲ積立テ且利益配当ノ平均ヲ得セシムル為利益ノ百分ノ二以上ヲ積立ツヘシ
第六章 政府ノ監督及補助
第三十二条 政府ハ東洋拓殖株式会社ノ業務ヲ監督ス
第三十三条 政府ハ東洋拓殖株式会社監理官ヲ置キ韓国政府ノ任命シタル監理官ト共同シテ東洋拓殖株式会社ノ業務ヲ監視セシム
東洋拓殖株式会社監理官ハ何時ニテモ東洋拓殖株式会社ノ金庫帳簿及諸般ノ文書物件ヲ検査スルコトヲ得
東洋拓殖株式会社監理官ハ必要ト認ムルトキハ何時ニテモ東洋拓殖株式会社ニ命シテ営業上諸般ノ計算及景況ヲ報告セシムルコトヲ得
東洋拓殖株式会社監理官ハ株主総会其ノ他諸般ノ会議ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第三十四条 政府ハ東洋拓殖株式会社ノ業務ニ関シ監督上必要ナル命令ヲ発スルコトヲ得
第三十五条 東洋拓殖株式会社ノ決議又ハ役員ノ行為法令若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害スルモノト認ムルトキハ政府ハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解職スルコトヲ得東洋拓殖株式会社ノ役員ニ於テ監督官庁ノ命シタル事項ヲ執行セサルトキ亦同シ
第三十六条 東洋拓殖株式会社ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非サレハ利益金ノ処分ヲ為スコトヲ得ス
第三十七条 東洋拓殖株式会社ニ於テ移住規則其ノ他ノ規定ヲ定ムルトキハ政府ノ認可ヲ受クヘシ
第三十八条 東洋拓殖株式会社ニ於テ政府ノ認可ヲ受ケタル事項ヲ変更セムトスルトキハ更ニ政府ノ認可ヲ受クヘシ
第三十九条 政府ハ東洋拓殖株式会社ニ対シ設立登記ノ日ヨリ起算シ八年間ヲ限リ毎年金三十万円ヲ毎営業期ニ割当テ補給スヘシ但シ毎営業期ニ於ケル利益配当カ払込資本額ニ対シ年八分ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ニ相当スル金額ヲ補給金ノ内ヨリ控除ス
第四十条 利益配当カ払込資本額ニ対シ年一割ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ハ先ツ之ヲ前条補給金ノ償還ニ充ツヘシ
前項ノ償還ヲ終ヘタルトキハ該超過金額ハ其ノ半額ヲ特別積立金トスヘシ
第七章 罰則
第四十一条 東洋拓殖株式会社ニ於テ左ノ事犯アルトキハ総裁若ハ総裁ノ職務ヲ行ヒ又ハ代理スル副総裁ヲ百円以上千円以下ノ過料ニ処ス其ノ事犯副総裁又ハ理事ノ分担業務ニ係ルトキハ副総裁又ハ理事ヲ過料ニ処スルコト亦同シ
一 本法ニ於テ政府ノ認可ヲ受クヘキ場合ニ其ノ認可ヲ受ケサルトキ
二 第十一条ノ規定ニ依ラス業務ヲ営ミタルトキ
三 第十三条乃至第十七条ノ規定ニ違反シ資金ヲ供給シタルトキ
四 第二十一条ノ規定ニ違反シ営業上ノ余裕金ヲ使用シタルトキ
五 第二十三条ノ規定ニ違反シ東洋拓殖債券ヲ発行シタルトキ但シ第二十八条ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
六 第二十八条ノ規定ニ違反シ東洋拓殖債券ノ償還ヲ為ササルトキ
七 第三十一条及第四十条ノ規定ニ違反シ利益金ヲ処分シタルトキ
第四十二条 東洋拓殖株式会社ノ総裁、副総裁又ハ理事第十条ノ規定ニ違反シタルトキハ二十円以上二百円以下ノ過料ニ処ス
第四十三条 前二条ニ規定セル過料ニ付テハ非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ヲ準用ス
附 則
第四十四条 政府ハ設立委員ヲ命シ韓国政府ノ命シタル設立委員ト共同シテ東洋拓殖株式会社ノ設立ニ関スル一切ノ事務ヲ処理セシム
第四十五条 設立委員ハ定款ヲ作リ政府ノ認可ヲ受ケタル後株主ヲ募集スヘシ
第四十六条 設立委員ハ株主ノ募集終リタルトキハ株式申込書ヲ政府ニ差出シ東洋拓殖株式会社設立ノ認可ヲ申請スヘシ
第四十七条 設立認可アリタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク各株ニ付第一回ノ払込ヲ為サシムヘシ
前項ノ払込アリタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク創立総会ヲ招集スヘシ
第四十八条 創立総会終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ東洋拓殖株式会社総裁ニ引渡スヘシ
第四十九条 第一期ノ理事及監事ハ株主総会ノ選挙ニ依ラス之ヲ任命ス其ノ他ノ条件ニ付テハ第九条ノ例ニ依ル