朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル屠場法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十九年四月十日
內閣總理大臣 侯爵 西園寺公望
內務大臣 原敬
法律第三十二號
屠場法
第一條 本法ニ於テ屠場ト稱スルハ食用ニ供スル目的ヲ以テ獸畜ヲ屠殺スル場屋ヲ謂フ
本法ニ於テ獸畜ト稱スルハ牛、羊、豚及馬ヲ謂フ
第二條 屠場ヲ設立セムトスル者ハ地方長官(東京府ニ於テハ警視總監)ノ許可ヲ受クヘシ
第三條 屠場以外ニ於テハ食用ニ供スル目的ヲ以テ獸畜ヲ屠殺解體スルコトヲ得ス但シ自家用其ノ他特別ノ事情アル場合ハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第四條 屠場ニ於テハ屠畜檢査員ノ檢査ヲ經サル獸畜ヲ屠殺解體スルコトヲ得ス
屠肉、內臟其ノ他食用ニ供スル部分ハ屠畜檢査員ノ檢査ヲ經ルニ非サレハ屠場外ニ搬出シ又ハ製造ノ用ニ供シ若ハ貯藏スルコトヲ得ス
第五條 屠場ニハ屠畜檢査ノ爲必要ナル設備ヲ爲スヘシ
第六條 市町村ニ於テ屠場ヲ設立スルトキハ地方長官(東京府ニ於テハ警視總監)ハ必要ト認ムル地區內ニ於ケル私設屠場ノ廢止ヲ命スルコトヲ得
第七條 屠場ヲ設立スル市町村ハ廢場ヲ命セラレタル私設屠場主ニ對シ屠場ノ使用廢止ノ爲受クヘキ損失ヲ補償スヘシ
前項ニ依リ補償スヘキ金額ハ協議ニ依リ之ヲ定ム協議調ハサルトキハ鑑定人ノ意見ヲ徵シ地方長官之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アル者ハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第八條 內務大臣ハ必要ト認ムルトキハ屠場ノ設置ヲ市町村ニ命スルコトヲ得
第九條 市町村ハ地方長官(東京府ニ於テハ警視總監)ノ認可ヲ得ルニ非サレハ屠場ヲ廢止スルコトヲ得ス
第十條 市町村立屠場ノ用地ニ必要ナル國有ノ土地ハ之ヲ市町村ニ讓與シ又ハ無償ニテ使用セシムルコトヲ得
第十一條 衞生上危害ヲ生シ其ノ他公益ヲ害スルノ虞アリト認ムルトキハ地方長官(東京府ニ於テハ警視總監)ハ屠場ノ廢止ヲ命シ又ハ其ノ使用ヲ停止スルコトヲ得
第十二條 地方長官(東京府ニ於テハ警視總監)ハ必要ト認ムルトキハ屠場設備ノ變更ヲ命スルコトヲ得
第十三條 第三條、第四條ニ違背シタル者又ハ第十一條ノ停止ヲ犯シタル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十四條 屠畜ニ關スル營業者カ未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ依リ之ニ適用スヘキ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ其ノ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十五條 屠畜ニ關スル營業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ處罰ヲ免カルルコトヲ得ス
第十六條 法人ノ代表者又ハ其ノ雇人、其ノ他ノ從業者法人ノ業務ニ關シ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタル場合ニ於テハ各法規ニ規定シタル罰則ヲ法人ニ適用ス
法人ヲ罰スヘキ場合ニ於テハ法人ノ代表者ヲ以テ被吿人トス
附 則
第十七條 本法施行ノ際現ニ存スル屠場ハ本法施行後三箇年間ハ本法ノ許可ヲ受ケタルモノト看做ス但シ本法施行ノ日ヨリ起算シ許可期間三箇年以內ナルトキハ其ノ期間ニ依ル
前項ノ期間終了後ハ本法ニ依リ許可ヲ受クヘシ
第十八條 本法中市町村ニ關スル規定ハ北海道ノ區、一級町村、二級町村及沖繩縣ノ區其ノ他市町村ニ準スヘキ地ニ適用ス
第十九條 本法ハ明治三十九年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル屠場法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十九年四月十日
内閣総理大臣 侯爵 西園寺公望
内務大臣 原敬
法律第三十二号
屠場法
第一条 本法ニ於テ屠場ト称スルハ食用ニ供スル目的ヲ以テ獣畜ヲ屠殺スル場屋ヲ謂フ
本法ニ於テ獣畜ト称スルハ牛、羊、豚及馬ヲ謂フ
第二条 屠場ヲ設立セムトスル者ハ地方長官(東京府ニ於テハ警視総監)ノ許可ヲ受クヘシ
第三条 屠場以外ニ於テハ食用ニ供スル目的ヲ以テ獣畜ヲ屠殺解体スルコトヲ得ス但シ自家用其ノ他特別ノ事情アル場合ハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第四条 屠場ニ於テハ屠畜検査員ノ検査ヲ経サル獣畜ヲ屠殺解体スルコトヲ得ス
屠肉、内臓其ノ他食用ニ供スル部分ハ屠畜検査員ノ検査ヲ経ルニ非サレハ屠場外ニ搬出シ又ハ製造ノ用ニ供シ若ハ貯蔵スルコトヲ得ス
第五条 屠場ニハ屠畜検査ノ為必要ナル設備ヲ為スヘシ
第六条 市町村ニ於テ屠場ヲ設立スルトキハ地方長官(東京府ニ於テハ警視総監)ハ必要ト認ムル地区内ニ於ケル私設屠場ノ廃止ヲ命スルコトヲ得
第七条 屠場ヲ設立スル市町村ハ廃場ヲ命セラレタル私設屠場主ニ対シ屠場ノ使用廃止ノ為受クヘキ損失ヲ補償スヘシ
前項ニ依リ補償スヘキ金額ハ協議ニ依リ之ヲ定ム協議調ハサルトキハ鑑定人ノ意見ヲ徴シ地方長官之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アル者ハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第八条 内務大臣ハ必要ト認ムルトキハ屠場ノ設置ヲ市町村ニ命スルコトヲ得
第九条 市町村ハ地方長官(東京府ニ於テハ警視総監)ノ認可ヲ得ルニ非サレハ屠場ヲ廃止スルコトヲ得ス
第十条 市町村立屠場ノ用地ニ必要ナル国有ノ土地ハ之ヲ市町村ニ譲与シ又ハ無償ニテ使用セシムルコトヲ得
第十一条 衛生上危害ヲ生シ其ノ他公益ヲ害スルノ虞アリト認ムルトキハ地方長官(東京府ニ於テハ警視総監)ハ屠場ノ廃止ヲ命シ又ハ其ノ使用ヲ停止スルコトヲ得
第十二条 地方長官(東京府ニ於テハ警視総監)ハ必要ト認ムルトキハ屠場設備ノ変更ヲ命スルコトヲ得
第十三条 第三条、第四条ニ違背シタル者又ハ第十一条ノ停止ヲ犯シタル者ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス
第十四条 屠畜ニ関スル営業者カ未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ノ規定ニ依リ之ニ適用スヘキ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ其ノ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十五条 屠畜ニ関スル営業者ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ニシテ其ノ業務ニ関シ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ処罰ヲ免カルルコトヲ得ス
第十六条 法人ノ代表者又ハ其ノ雇人、其ノ他ノ従業者法人ノ業務ニ関シ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シタル場合ニ於テハ各法規ニ規定シタル罰則ヲ法人ニ適用ス
法人ヲ罰スヘキ場合ニ於テハ法人ノ代表者ヲ以テ被告人トス
附 則
第十七条 本法施行ノ際現ニ存スル屠場ハ本法施行後三箇年間ハ本法ノ許可ヲ受ケタルモノト看做ス但シ本法施行ノ日ヨリ起算シ許可期間三箇年以内ナルトキハ其ノ期間ニ依ル
前項ノ期間終了後ハ本法ニ依リ許可ヲ受クヘシ
第十八条 本法中市町村ニ関スル規定ハ北海道ノ区、一級町村、二級町村及沖縄県ノ区其ノ他市町村ニ準スヘキ地ニ適用ス
第十九条 本法ハ明治三十九年七月一日ヨリ之ヲ施行ス