鉄道国有法
法令番号: 法律第十七號
公布年月日: 明治39年3月31日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル鐵道國有法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十九年三月三十日
內閣總理大臣 侯爵 西園寺公望
陸軍大臣 寺內正毅
大藏大臣 法學博士 阪谷芳郞
遞信大臣 山縣伊三郞
法律第十七號
鐵道國有法
第一條 一般運送ノ用ニ供スル鐵道ハ總テ國ノ所有トス但シ一地方ノ交通ヲ目的トスル鐵道ハ此ノ限ニ在ラス
第二條 政府ハ明治三十九年ヨリ明治四十八年迄ノ間ニ於テ本法ノ規定ニ依リ左ニ揭クル私設鐵道株式會社所屬ノ鐵道ヲ買收スヘシ
一 北海道炭礦鐵道株式會社
一 北海道鐵道株式會社
一 日本鐵道株式會社
一 岩越鐵道株式會社
一 北越鐵道株式會社
一 甲武鐵道株式會社
一 總武鐵道株式會社
一 房總鐵道株式會社
一 七尾鐵道株式會社
一 關西鐵道株式會社
一 參宮鐵道株式會社
一 京都鐵道株式會社
一 西成鐵道株式會社
一 阪鶴鐵道株式會社
一 山陽鐵道株式會社
一 德島鐵道株式會社
一 九州鐵道株式會社
前項ニ揭ケタル各會社ハ他ノ私設鐵道株式會社ト合併シ又ハ他ノ私設鐵道株式會社ノ鐵道ヲ買收スルコトヲ得ス
第三條 前條ニ揭ケタル各鐵道買收ノ期日ハ政府ニ於テ之ヲ指定ス
第四條 政府ハ兼業ニ屬スルモノヲ除クノ外買收ノ日ニ於テ會社ノ現ニ有スル權利義務ヲ承繼ス但シ會社ノ株主ニ對スル權利義務、拂込株金ノ支出殘額竝收益勘定、積立金勘定及雜勘定ニ屬スルモノハ此ノ限ニ在ラス
第五條 買收價額ハ左ニ揭クルモノトス
一 會社ノ明治三十五年後半期乃至明治三十八年前半期ノ六營業年度間ニ於ケル建設費ニ對スル益金ノ平均割合ヲ買收ノ日ニ於ケル建設費ニ乘シタル額ヲ二十倍シタル金額
二 貯藏物品ノ實費ヲ時價ニ依リ公債券面金額ニ換算シタル金額但シ借入金ヲ以テ購入シタルモノヲ除ク
前項第一號ニ於テ益金ト稱スルハ營業收入ヨリ營業費、賞與金及收益勘定以外ノ諸勘定ヨリ生シタル利息ヲ控除シタルモノヲ謂ヒ益金ノ平均割合ト稱スルハ明治三十五年後半期乃至明治三十八年前半期ノ每營業年度ニ於ケル建設費合計ヲ以テ同期間ニ於ケル益金ノ合計ヲ除シタルモノノ二倍ヲ謂フ
第六條 借入金ハ建設費ニ使用シタルモノニ限リ時價ニ依リ公債券面金額ニ換算シ買收價額ヨリ之ヲ控除ス
會社カ鐵道及附屬物件ノ補修ヲ爲サス又ハ鐵道建設規程ニ依リ期限內ニ改築若ハ改造ヲ爲ササル場合ニ於テハ其ノ補修、改築又ハ改造ニ要スル金額ハ前項ノ例ニ依リ買收價額ヨリ之ヲ控除ス
第七條 資本勘定ニ屬スル支出ハ借入金ヲ以テシタルモノヲ除クノ外順次ニ建設費及貯藏物品ニ對シ之ヲ爲シタルモノト看做ス
借入金ノ支出ハ前項ノ支出ノ後ニ之ヲ爲シタルモノト看做ス
第八條 會社カ明治三十八年前半期ノ營業年度末ニ於テ運輸開始後六營業年度ヲ經過シタル線路ヲ有セサル場合又ハ第五條第一項第一號ノ金額カ建設費ニ達セサル場合ニ於テハ政府ハ其ノ建設費以內ニ於テ協定シタル金額ヲ以テ第五條第一項第一號ノ金額ニ代フ
第九條 左ニ揭クル場合ニ於テハ政府ハ審査委員ヲシテ決定ヲ爲サシムヘシ
一 權利義務ノ承繼ニ關シ又ハ計算ニ關シ會社ニ於テ異議アルトキ
二 前條ノ場合ニ於テ協定調ハサルトキ
審査委員ノ決定ニ對シ不服アルトキハ會社ハ主務大臣ニ訴願ヲ爲スコトヲ得
審査委員ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十條 買收ノ執行ハ審査委員ノ審査中ト雖之ヲ停止セス
第十一條 會社カ買收ニ因リテ解散シタルトキハ主務大臣ハ解散ノ登記ヲ登記所ニ囑託スヘシ
第十二條 買收代價ハ買收ノ日ヨリ五箇年以內ニ於テ券面金額ニ依リ五分利付公債證書ヲ以テ之ヲ交付ス但シ五十圓未滿ノ端數ハ之ヲ五十圓トス
會社殘餘財產ノ分配ハ前項公債證書ヲ以テス
買收後公債證書ノ交付ヲ終ル迄ニ要スル淸算人ノ職務ニ關スル會社ノ費用ハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府之ヲ支辨ス
第十三條 政府ハ買收ノ日ヨリ公債證書交付ノ日ニ至ル迄買收價額ニ對シ一箇年百分ノ五ノ割合ニ相當スル金額ヲ從前ノ決算期每ニ會社ニ交付スヘシ
前項ニ依リ交付シタル金額ハ淸算中ト雖主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ株主ニ配當スルコトヲ得
第十四條 政府ハ鐵道買收ノ執行ニ必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發行ス
第十五條 政府ハ前條ニ依リ發行シタル公債及第四條ニ依リ承繼シタル債務ノ整理ニ必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發行スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ利率、募集ノ方法、規約、据置年限及償還年限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條 前二條ノ公債ニ關シテハ本法ニ別段ノ規定アルモノヲ除クノ外整理公債條例ヲ適用ス
第十七條 第五條第一項第二號及第六條ニ規定シタル公債時價ハ買收期日前六箇月間ニ於ケル帝國五分利公債ノ平均相場ニ依ル
前項平均相場ハ日本銀行ノ證明ニ依リ政府之ヲ定ム
第十八條 買收ヲ受クヘキ會社カ兼業ヲ營ム場合ニ於テハ其ノ兼業ニ屬スル資產ヲ併セテ買收スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ買收價額ハ協定ニ依ル
第九條乃至第十六條ノ規定ハ本條ノ場合ニ之ヲ準用ス
附 則
第二條ニ揭クル會社ノ本法發布以後ニ於ケル貯藏物品ノ購入、建設費ノ增減及債務ノ負擔ニ付テハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
前項ノ認可ヲ受ケサルモノニ付テハ政府之ヲ承繼セス但シ政府ハ其ノ額ヲ査定シ又ハ相當ノ補償ヲ徵シテ之ヲ承繼スルコトヲ得
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル鉄道国有法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十九年三月三十日
内閣総理大臣 侯爵 西園寺公望
陸軍大臣 寺内正毅
大蔵大臣 法学博士 阪谷芳郎
逓信大臣 山県伊三郎
法律第十七号
鉄道国有法
第一条 一般運送ノ用ニ供スル鉄道ハ総テ国ノ所有トス但シ一地方ノ交通ヲ目的トスル鉄道ハ此ノ限ニ在ラス
第二条 政府ハ明治三十九年ヨリ明治四十八年迄ノ間ニ於テ本法ノ規定ニ依リ左ニ掲クル私設鉄道株式会社所属ノ鉄道ヲ買収スヘシ
一 北海道炭礦鉄道株式会社
一 北海道鉄道株式会社
一 日本鉄道株式会社
一 岩越鉄道株式会社
一 北越鉄道株式会社
一 甲武鉄道株式会社
一 総武鉄道株式会社
一 房総鉄道株式会社
一 七尾鉄道株式会社
一 関西鉄道株式会社
一 参宮鉄道株式会社
一 京都鉄道株式会社
一 西成鉄道株式会社
一 阪鶴鉄道株式会社
一 山陽鉄道株式会社
一 徳島鉄道株式会社
一 九州鉄道株式会社
前項ニ掲ケタル各会社ハ他ノ私設鉄道株式会社ト合併シ又ハ他ノ私設鉄道株式会社ノ鉄道ヲ買収スルコトヲ得ス
第三条 前条ニ掲ケタル各鉄道買収ノ期日ハ政府ニ於テ之ヲ指定ス
第四条 政府ハ兼業ニ属スルモノヲ除クノ外買収ノ日ニ於テ会社ノ現ニ有スル権利義務ヲ承継ス但シ会社ノ株主ニ対スル権利義務、払込株金ノ支出残額並収益勘定、積立金勘定及雑勘定ニ属スルモノハ此ノ限ニ在ラス
第五条 買収価額ハ左ニ掲クルモノトス
一 会社ノ明治三十五年後半期乃至明治三十八年前半期ノ六営業年度間ニ於ケル建設費ニ対スル益金ノ平均割合ヲ買収ノ日ニ於ケル建設費ニ乗シタル額ヲ二十倍シタル金額
二 貯蔵物品ノ実費ヲ時価ニ依リ公債券面金額ニ換算シタル金額但シ借入金ヲ以テ購入シタルモノヲ除ク
前項第一号ニ於テ益金ト称スルハ営業収入ヨリ営業費、賞与金及収益勘定以外ノ諸勘定ヨリ生シタル利息ヲ控除シタルモノヲ謂ヒ益金ノ平均割合ト称スルハ明治三十五年後半期乃至明治三十八年前半期ノ毎営業年度ニ於ケル建設費合計ヲ以テ同期間ニ於ケル益金ノ合計ヲ除シタルモノノ二倍ヲ謂フ
第六条 借入金ハ建設費ニ使用シタルモノニ限リ時価ニ依リ公債券面金額ニ換算シ買収価額ヨリ之ヲ控除ス
会社カ鉄道及附属物件ノ補修ヲ為サス又ハ鉄道建設規程ニ依リ期限内ニ改築若ハ改造ヲ為ササル場合ニ於テハ其ノ補修、改築又ハ改造ニ要スル金額ハ前項ノ例ニ依リ買収価額ヨリ之ヲ控除ス
第七条 資本勘定ニ属スル支出ハ借入金ヲ以テシタルモノヲ除クノ外順次ニ建設費及貯蔵物品ニ対シ之ヲ為シタルモノト看做ス
借入金ノ支出ハ前項ノ支出ノ後ニ之ヲ為シタルモノト看做ス
第八条 会社カ明治三十八年前半期ノ営業年度末ニ於テ運輸開始後六営業年度ヲ経過シタル線路ヲ有セサル場合又ハ第五条第一項第一号ノ金額カ建設費ニ達セサル場合ニ於テハ政府ハ其ノ建設費以内ニ於テ協定シタル金額ヲ以テ第五条第一項第一号ノ金額ニ代フ
第九条 左ニ掲クル場合ニ於テハ政府ハ審査委員ヲシテ決定ヲ為サシムヘシ
一 権利義務ノ承継ニ関シ又ハ計算ニ関シ会社ニ於テ異議アルトキ
二 前条ノ場合ニ於テ協定調ハサルトキ
審査委員ノ決定ニ対シ不服アルトキハ会社ハ主務大臣ニ訴願ヲ為スコトヲ得
審査委員ニ関スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十条 買収ノ執行ハ審査委員ノ審査中ト雖之ヲ停止セス
第十一条 会社カ買収ニ因リテ解散シタルトキハ主務大臣ハ解散ノ登記ヲ登記所ニ嘱託スヘシ
第十二条 買収代価ハ買収ノ日ヨリ五箇年以内ニ於テ券面金額ニ依リ五分利付公債証書ヲ以テ之ヲ交付ス但シ五十円未満ノ端数ハ之ヲ五十円トス
会社残余財産ノ分配ハ前項公債証書ヲ以テス
買収後公債証書ノ交付ヲ終ル迄ニ要スル清算人ノ職務ニ関スル会社ノ費用ハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府之ヲ支弁ス
第十三条 政府ハ買収ノ日ヨリ公債証書交付ノ日ニ至ル迄買収価額ニ対シ一箇年百分ノ五ノ割合ニ相当スル金額ヲ従前ノ決算期毎ニ会社ニ交付スヘシ
前項ニ依リ交付シタル金額ハ清算中ト雖主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ株主ニ配当スルコトヲ得
第十四条 政府ハ鉄道買収ノ執行ニ必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ発行ス
第十五条 政府ハ前条ニ依リ発行シタル公債及第四条ニ依リ承継シタル債務ノ整理ニ必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ発行スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ利率、募集ノ方法、規約、据置年限及償還年限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六条 前二条ノ公債ニ関シテハ本法ニ別段ノ規定アルモノヲ除クノ外整理公債条例ヲ適用ス
第十七条 第五条第一項第二号及第六条ニ規定シタル公債時価ハ買収期日前六箇月間ニ於ケル帝国五分利公債ノ平均相場ニ依ル
前項平均相場ハ日本銀行ノ証明ニ依リ政府之ヲ定ム
第十八条 買収ヲ受クヘキ会社カ兼業ヲ営ム場合ニ於テハ其ノ兼業ニ属スル資産ヲ併セテ買収スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ買収価額ハ協定ニ依ル
第九条乃至第十六条ノ規定ハ本条ノ場合ニ之ヲ準用ス
附 則
第二条ニ掲クル会社ノ本法発布以後ニ於ケル貯蔵物品ノ購入、建設費ノ増減及債務ノ負担ニ付テハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
前項ノ認可ヲ受ケサルモノニ付テハ政府之ヲ承継セス但シ政府ハ其ノ額ヲ査定シ又ハ相当ノ補償ヲ徴シテ之ヲ承継スルコトヲ得