鉱業登録令
法令番号: 勅令第百八十三號
公布年月日: 明治38年6月20日
法令の形式: 勅令
朕鑛業登錄令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十八年六月十九日
農商務大臣 男爵 淸浦奎吾
司法大臣 波多野敬直
勅令第百八十三號
鑛業登錄令
第一章 總則
第一條 鑛業ニ關スル登錄ハ鑛山監督署ニ於テ之ヲ爲ス
第二條 同一ノ鑛業權ニ關シテ登錄シタル權利ノ順位ニ付法令ニ別段ノ定ナキトキハ其ノ順位ハ登錄ノ前後ニ依ル
第三條 附記登錄ノ順位ハ主登錄ノ順位ニ依ル但シ附記登錄間ノ順位ハ其ノ前後ニ依ル
第四條 假登錄ヲ爲シタルモノニ付本登錄ヲ爲シタル場合ニ於テハ其ノ順位ハ假登錄ノ順位ニ依ル
第二章 鑛業原簿
第五條 鑛業原簿ハ試掘原簿、採掘原簿ノ二種トス
共同鑛業權者ニ付テハ共同人名簿、鑛區圖ニ付テハ鑛區圖綴込帳ヲ設ケ鑛業原簿ノ一部トス
第六條 何人ト雖手數料ヲ納付シテ鑛業原簿ノ謄本、抄本ノ交付ヲ請求シ又ハ鑛業原簿若ハ其ノ附屬書類ノ閱覽ヲ請求スルコトヲ得
手數料ノ外郵便切手ヲ納付シテ鑛業原簿ノ謄本、抄本ノ送付ヲ請求スルコトヲ得
第七條 鑛業原簿ノ全部又ハ一部カ滅失シタル場合ニ於テ其ノ調製ニ關スル手續ハ農商務大臣之ヲ定ム
前項ニ依リテ調製シタル原簿ハ滅失前ノ鑛業原簿ト看做ス
第八條 前條鑛業原簿ノ調製ヲ終リタルトキハ其ノ登錄ノ謄本又ハ抄本ヲ登錄名義人ニ交付スルコトヲ要ス
第三章 登錄手續
第一節 通則
第九條 登錄ハ法令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外申請、囑託又ハ命令アルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
囑託又ハ命令ニ因ル登錄ノ手續ニ付テハ法令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外申請ニ因ル登錄ニ關スル規定ヲ準用ス
第十條 登錄ハ登錄權利者及登錄義務者又ハ其ノ代理人出頭シ又ハ書留郵便ヲ以テ申請スルコトヲ要ス
第十一條 判決又ハ相續ニ因ル登錄ハ登錄權利者ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
第十二條 登錄名義人ノ表示ノ變更又ハ更正ノ登錄ハ登錄名義人ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
第十三條 左ノ登錄ニ付テハ官廳又ハ公署ハ囑託書ニ登錄原因ヲ證スル書面ヲ添附シテ囑託スルコトヲ要ス
一 處分ノ制限ノ登錄
二 公賣處分ニ因ル鑛業權移轉ノ登錄
第十四條 鑛業權ヲ取消シタルトキ又ハ取消處分ノ取消ヲ爲シタルトキハ農商務大臣ハ其ノ登錄ヲ命スルコトヲ要ス
第十五條 登錄ヲ申請スルニハ左ノ書類ヲ提出スルコトヲ要ス
一 申請書
二 登錄原因ヲ證スル書面
三 登錄原因ニ付第三者ノ許可、同意又ハ承諾ヲ要スルトキハ之ヲ證スル書面
四 代理人ニ依リテ登錄ヲ申請スルトキハ其ノ權限ヲ證スル書面
申請カ鑛業權ノ設定、變更其ノ他鑛業權ノ表示ノ變更又ハ更正ニ關スルトキハ前項第二號ノ書面ヲ提出スルコトヲ要セス
登錄原因ヲ證スル書面カ執行力アル判決ナルトキハ第一項第三號ニ揭ケタル書面ヲ提出スルコトヲ要セス
國、法人ノ代表者又ハ共同鑛業ノ代表者ニ依リテ申請スル場合ニ於テハ第一項第四號ノ書面ヲ提出スルコトヲ要セス
第十六條 申請書ニハ左ノ事項ヲ記載シ申請人之ニ署名捺印スルコトヲ要ス
一 鑛區所在地
二 鑛業權ノ登錄番號
三 申請人ノ氏名及住所
四 代理人又ハ代表者ニ依リテ申請スルトキハ本人ノ氏名又ハ名稱及住所
五 登錄原因及其ノ日附
六 登錄ノ目的
七 年月日
申請カ鑛業權ノ設定又ハ第三十條第二項ノ規定ニ依ル抵當權ノ設定ニ關スルトキハ前項第二號ノ記載ヲ要セス
申請カ鑛業權ノ設定、變更其ノ他鑛業權ノ表示ノ變更又ハ更正ニ關スルトキハ第一項第五號ノ記載ヲ要セス
第十七條 左ノ場合ニ於テハ申請人ハ申請書ニ其ノ事實ヲ證スル戶籍ノ謄本又ハ之ヲ證スルニ足ルヘキ書面ヲ添附スルコトヲ要ス
一 申請人カ相續人ナルトキ
二 登錄名義人カ其ノ表示ノ變更ノ登錄ヲ申請スルトキ
三 死亡ニ因ル共同鑛業權者脫退ノ登錄ヲ申請スルトキ
第十八條 申請書ニ第三者ノ許可、同意又ハ承諾ヲ證スル書面ヲ添附スルコトヲ要スル場合ニ於テハ其ノ第三者ヲシテ申請書ニ署名捺印セシメテ其ノ書面ニ代フルコトヲ得
第十九條 同一鑛山監督署ノ管轄ニ屬スル數箇ノ鑛區ニ關シ抵當權ノ設定ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ登錄原因及登錄ノ目的カ同一ナルトキニ限リ同一ノ申請書ヲ以テ登錄ヲ申請スルコトヲ得
前項ノ規定ハ鑛業權又ハ抵當權ノ處分ノ制限ノ登錄ヲ囑託スル場合ニ之ヲ準用ス
第二十條 登錄ハ受附ノ順序ニ從ヒテ之ヲ爲スコトヲ要ス
第二十一條 左ノ場合ニ於テハ登錄ノ申請ハ之ヲ受理セス
一 事件カ管轄ニ屬セサルトキ
二 事件カ登錄スヘキモノニ非サルトキ
三 當事者カ出頭セス又ハ申請書ヲ書留郵便ヲ以テ差出ササルトキ
四 申請書カ方式ニ適合セサルトキ
五 申請書ニ揭ケタル鑛業權又ハ抵當權ノ表示カ鑛業原簿ト抵觸スルトキ
六 第十七條第一號ノ場合ヲ除クノ外申請書ニ揭ケタル登錄義務者及共同鑛業代表者ノ表示カ鑛業原簿ト符合セサルトキ
七 申請書ニ揭ケタル事項カ登錄原因ヲ證スル書面ト符合セサルトキ
八 申請ニ必要ナル書面又ハ圖面ヲ提出セサルトキ
九 登錄稅ヲ納付セサルトキ
第二十二條 登錄名義人ノ表示ノ變更若ハ更正ノ登錄又ハ共同鑛業權者脫退ノ登錄ハ附記ニ依リテ之ヲ爲ス
第二十三條 行政區畫又ハ其ノ名稱ノ變更アリタルトキハ鑛業原簿ニ記載シタル行政區畫又ハ其ノ名稱ハ當然之ヲ變更シタルモノト看做ス
第二十四條 登錄ヲ完了シタル後其ノ登錄ニ付錯誤又ハ遺漏アルコトヲ發見シタルトキハ其ノ旨ヲ登錄權利者及登錄義務者ニ通知スルコトヲ要ス
錯誤又ハ遺漏カ鑛業權ノ表示ニ關スル登錄ニ係ルトキハ更正ノ登錄ヲ爲シタル後前項ノ通知ヲナスコトヲ要ス
錯誤又ハ遺漏カ前項以外ノ登錄ニ係ルトキハ登錄更正ノ申請アリタル場合ニ於テ登錄上利害ノ關係ヲ有スル第三者ナキトキ又ハ申請書ニ登錄上利害ノ關係ヲ有スル第三者ノ承諾書若ハ之ニ對抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附シタルトキニ限リ附記ニ依リ更正ノ登錄ヲ爲ス
第二十五條 抹消シタル登錄ノ囘復ヲ申請スル場合ニ於テ登錄上利害ノ關係ヲ有スル第三者アルトキハ申請書ニ其ノ承諾書又ハ之ニ對抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附スルコトヲ要ス
第二十六條 申請書其ノ他登錄ニ關スル書面ヲ作ルニハ字畫明暸ナルコトヲ要ス
金錢其ノ他ノ物ノ數量、年月日及番號ヲ記載スルニハ壹、貳、參、拾ノ文字ヲ用ウルコトヲ要ス
文字ハ之ヲ改竄スルコトヲ得ス若シ訂正、挿入又ハ削除ヲ爲シタルトキハ其ノ字數ヲ欄外ニ記載シ又ハ文字ノ前後ニ括弧ヲ附シ之ニ捺印シ其ノ削除ニ係ル文字ハ尙讀得ヘキ爲字體ヲ存スルコトヲ要ス
第二節 鑛業權ニ關スル登錄手續
第二十七條 命令ニ因ル鑛業權ノ表示ノ變更又ハ鑛業ニ關スル出願ノ許可ニ因ル申請ハ登錄權利者ニ於テ之ヲ爲シ申請書ニ鑛物ノ名稱及鑛區ノ面積ヲ記載シ且鑛山監督署長ノ命令書又ハ許可ニ關スル通知書ヲ添附スルコトヲ要ス
第二十八條 死亡、破產又ハ禁治產ニ因ル共同鑛業權者脫退ノ登錄ハ登錄權利者又ハ登錄義務者ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
第二十九條 鑛區ノ合併又ハ分割ニ因ル採掘權設定及減區又ハ增減區ニ因ル鑛業權變更ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テ合併、分割又ハ減少前ノ鑛業權ニ付登錄上利害ノ關係ヲ有スル第三者アルトキハ第二十五條ノ規定ヲ準用ス但シ鑛區ノ分合又ハ增減ノ願書ト共ニ承諾書ヲ差出シタルモノニ付テハ申請書ニ其ノ事由ヲ記載スルヲ以テ足ル
第三十條 鑛業法第三十五條第二項ノ場合ニ於テ採掘權設定ノ登錄ノ申請アリタルトキハ其ノ旨ヲ抵當權者ニ通知スルコトヲ要ス
前項ノ抵當權者ハ其ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ抵當權設定ノ登錄ヲ申請スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ抵當權ノ順位ハ協定ノ順位ニ依ル
前二項ノ申請ニ付テハ最後ニ通知ヲ受ケタル者ニ對スル前項ノ期間滿了ノ日ニ於テ其ノ登錄ヲ爲スコトヲ要ス
第三節 抵當權ニ關スル登錄手續
第三十一條 鑛業法第三十五條第二項ニ基キ爲シタル承諾及協定ニ因ル抵當權設定ノ登錄ハ登錄權利者ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
第三十二條 抵當權設定ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ債權額ヲ記載シ若シ登錄原因ニ辨濟期ノ定アルトキ、利息ニ關スル定アルトキ、其ノ發生期若ハ支拂時期ノ定アルトキ又ハ債權ニ條件ヲ附シタルトキハ之ヲ記載スルコトヲ要ス
第三十三條 抵當權設定ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テ設定者カ債務者ニ非サルトキハ申請書ニ債務者ノ表示ヲ爲スコトヲ要ス
抵當權移轉ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ抵當權カ債權ト共ニ移轉スルヤ否ヲ記載スルコトヲ要ス
第三十四條 一定ノ金額ヲ目的トセサル債權ノ擔保タル抵當權設定ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ債權ノ價格ヲ記載スルコトヲ要ス
第三十五條 債權ノ一部ノ讓渡又ハ代位辨濟ニ因ル抵當權移轉ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ讓渡又ハ代位辨濟ノ目的タル債權額ヲ記載スルコトヲ要ス
第三十六條 抵當權ノ變更ノ登錄ヲ爲スニ付登錄上利害ノ關係ヲ有スル第三者アル場合ニ於テハ第二十四條第三項ノ規定ヲ準用ス
第三十七條 抵當權ノ移轉、順位ノ變更ニ因ル抵當權ノ變更及其ノ處分ノ制限ノ登錄ハ附記ニ依リテ之ヲ爲ス
第四節 抹消ニ關スル登錄手續
第三十八條 期限ノ滿了ニ因リ鑛業權カ消滅シタルトキハ其ノ原因ヲ記載シ抹消ノ登錄ヲ爲スコトヲ要ス
第三十九條 廢業ニ因ル鑛業權消滅ノ登錄ハ登錄權利者ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
第四十條 鑛區ノ合併又ハ分割ニ因ル採掘權設定ノ登錄ヲ爲シタルニ因リ其ノ合併又ハ分割前ノ採掘權消滅シタルトキハ其ノ原因ヲ記載シテ抹消ノ登錄ヲ爲スコトヲ要ス
第四十一條 抵當權ノ登錄アル採掘權ニ關シ廢業ニ因ル抹消ノ申請アリタルトキハ抹消ノ登錄ヲ爲スト同時ニ競賣ノ目的ノ範圍內ニ於テ仍存續スル旨ヲ記載スルコトヲ要ス
抵當權者競賣ノ請求ヲ爲ササルトキ又ハ競賣申立ノ登錄アリタル場合ニ於テ其ノ登錄抹消ノ囑託アリタルトキハ其ノ旨ヲ登錄シタル後存續ニ關スル記載ヲ抹消スルコトヲ要ス
第四十二條 前條ノ規定ハ鑛業法第三十八條第一項及第三十九條ノ規定ニ依ル場合ヲ除クノ外抵當權ノ登錄アル採掘權取消ニ因ル抹消ノ命令アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第四十三條 抵當權カ人ノ死亡ニ因リテ消滅シタル場合ニ於テ申請書ニ其ノ死亡ヲ證スル戶籍ノ謄本其ノ他之ニ相當スル書面ヲ添附スルトキハ登錄權利者ノミニテ登錄ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第四十四條 登錄權利者カ登錄義務者ノ行方ノ知レサルニ因リ之ト共ニ登錄ノ抹消ヲ申請スルコト能ハサルトキハ民事訴訟法ノ規定ニ從ヒテ公示催吿ノ申立ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ除權判決アリタルトキハ申請書ニ其ノ謄本ヲ添附シ登錄權利者ノミニテ登錄ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第一項ノ場合ニ於テ申請書ニ債權證書竝債權及最後ノ二年分ノ定期金ノ受取證書ヲ添附シタルトキハ登錄權利者ノミニテ抵當權ニ關スル登錄ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第四十五條 廢業ニ因ル場合ヲ除クノ外登錄ノ抹消ヲ申請スル場合ニ於テ其ノ抹消ニ付登錄上利害ノ關係ヲ有スル第三者アルトキハ第二十五條ノ規定ヲ準用ス
第四十六條 第十三條ノ規定ニ依リ公賣處分ニ因ル鑛業權移轉ノ登錄ノ囑託アリタル場合ニ於テハ處分ノ制限ノ登錄ヲ抹消シ若シ抵當權ノ登錄アルトキハ其ノ登錄ヲ抹消スルコトヲ要ス
第四章 假登錄及豫吿登錄
第四十七條 假登錄ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ爲スモノトス
一 鑛業權ノ移轉又ハ抵當權ノ設定、移轉、變更若ハ消滅ノ登錄ノ申請ニ必要ナル手續上ノ條件カ具備セサルトキ
二 前號ノ事項ニ關シ請求權ヲ保全セムトスルトキ
第四十八條 假登錄ハ次條ノ場合ヲ除クノ外假登錄權利者ノ申請ニ因リ其ノ目的タル鑛區ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所ヨリ囑託書ニ假處分命令ノ正本ヲ添附シテ囑託スルコトヲ要ス
前項ノ假處分命令ハ假登錄權利者カ假登錄原因ヲ疏明シタルトキハ區裁判所之ヲ發スルコトヲ要ス
申請ヲ却下シタル決定ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
前項ノ卽時抗吿ニ付テハ非訟事件手續法ノ規定ヲ準用ス
第四十九條 假登錄ハ假登錄義務者ノ承諾アルトキハ申請書ニ其ノ承諾書ヲ添附シテ假登錄權利者ヨリ之ヲ申請スルコトヲ得
第五十條 假登錄ノ抹消ハ假登錄名義人ヨリ之ヲ申請スルコトヲ得
申請書ニ假登錄名義人ノ承諾書又ハ之ニ對抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附シタルトキハ登錄上ノ利害關係人ヨリ假登錄ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十一條 豫吿登錄ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ爲スモノトス
一 登錄原因ノ無效又ハ取消ニ因ル登錄ノ抹消又ハ囘復ノ訴訟ノ提起アリタルトキ但シ登錄原因ノ無效又ハ取消ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ル場合ニ限ル
二 鑛業法第八十九條ノ規定ニ依リ鑛業權ニ關スル出願ノ許可ニ對シ訴願又ハ行政訴訟ノ提起アリタルトキ
第五十二條 豫吿登錄ハ前條ニ揭ケタル訴訟又ハ訴願ヲ受理シタル官廳ヨリ囑託書又ハ命令書ニ訴狀若ハ訴願書ノ謄本又ハ抄本ヲ添附シテ囑託又ハ命令スルコトヲ要ス
第五十三條 第五十一條第一號ニ揭ケタル訴ヲ却下シタル裁判若ハ之ヲ提起シタル者ニ對シテ敗訴ヲ言渡シタル裁判カ確定シタルトキ、訴ノ取下アリタルトキ、請求ノ抛棄アリタルトキ又ハ請求ノ目的ニ付和解アリタルトキハ第一審裁判所ハ囑託書ニ裁判ノ謄本若ハ抄本又ハ訴ノ取下、請求ノ抛棄若ハ和解ヲ證スル裁判所書記ノ書面ヲ添附シテ豫吿登錄ノ抹消ヲ囑託スルコトヲ要ス
第五十四條 第五十一條第二號ニ揭ケタル訴願又ハ行政訴訟ヲ却下シ、請求ヲ否認シ若ハ其ノ取下アリタルトキハ農商務大臣ハ豫吿登錄ノ抹消ヲ命シ行政裁判所ハ之ヲ囑託スルコトヲ要ス
第五章 異議
第五十五條 登錄ニ關スル處分ヲ不當トスル者ハ處分ノ了リタル日ヨリ三十日以內ニ農商務大臣ニ異議ヲ爲スコトヲ得
第五十六條 異議ハ鑛山監督署長ニ異議狀ヲ差出シテ之ヲ爲ス
第五十七條 異議ハ新ナル事實及證據方法ヲ以テ其ノ憑據ト爲スコトヲ得ス
第五十八條 鑛山監督署長異議ヲ理由ナシトスルトキハ意見ヲ附シテ事件ヲ農商務大臣ニ送付スルコトヲ要ス
鑛山監督署長異議ヲ理由アリトスルトキハ相當ノ處分ヲ爲スコトヲ要ス若シ登錄完了ノ後ナルトキハ假登錄ヲ爲シ之ヲ登錄上ノ利害關係人ニ通知シ且前項ノ手續ヲ爲スコトヲ要ス
第五十九條 異議ハ執行ヲ停止スル效力ヲ有セス
第六十條 農商務大臣ハ登錄上ノ利害關係人ニ決定ノ謄本ヲ送付スルコトヲ要ス
農商務大臣異議ヲ理由アリトスルトキハ鑛山監督署長ニ相當ノ處分ヲ命スルコトヲ要ス
附 則
第六十一條 本令施行前ニ鑛山監督署ニ備付タル鑛業ニ關スル原簿及書入登錄簿ヲ以テ舊鑛業原簿トス
第六十二條 本令施行前ニ於ケル官廳所屬ノ採掘區域ニ關シテハ本令施行ノ日ニ於テ採掘權設定ノ登錄ヲ爲スコトヲ要ス
第六十三條 本令施行前ニ認可若ハ特許ノ鑛業權又ハ登錄ノ抵當權ニ付鑛業權ノ抹消ヲ除クノ外登錄ノ申請アリタル場合ニ於テ登錄ヲ爲ストキハ鑛業原簿ニ舊鑛業原簿中抹消ニ係ラサル登錄ヲ移シ舊鑛業原簿中鑛業原簿ニ移シタル登錄ヲ抹消スルコトヲ要ス
第六十四條 舊鑛業原簿ニ記載シアル鑛業權ニ付其ノ抹消登錄ノ申請アリタルトキハ其ノ原簿ニ其ノ登錄ヲ爲スコトヲ要ス期限滿了ニ因ル抹消ノ登錄ヲ爲ス場合亦同シ
第六十五條 鑛業條例ニ依リ差出シタル廢業屆ニ付テハ舊鑛業原簿ニ郵便差出ノ日時ニ於テ廢業ヲ爲シタルコトノ記載ヲ爲スコトヲ要ス
第六十六條 鑛業條例ニ依リ差出シタル鑛業特許證書換願、採掘權書入登錄願又ハ登錄シタル抵當權ノ變更、移轉若ハ取消願ニ付テハ舊鑛業原簿ニ其ノ登錄ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テハ願書ヲ差出シタル日ヲ以テ申請ノ日ト看做ス
第六十七條 本令施行前ニ相續ニ因リテ鑛業人ト爲リタル者又ハ氏名、名稱若ハ住所ヲ變更シタル鑛業人ハ本令中相續又ハ變更ノ申請ニ關スル規定ニ準シテ調製シタル屆書ヲ差出スコトヲ要ス
前項ノ屆出アリタルトキハ舊鑛業原簿ニ相續又ハ變更ノ記入ヲ爲スコトヲ要ス
第六十八條 本令ハ明治三十八年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
朕鉱業登録令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十八年六月十九日
農商務大臣 男爵 清浦奎吾
司法大臣 波多野敬直
勅令第百八十三号
鉱業登録令
第一章 総則
第一条 鉱業ニ関スル登録ハ鉱山監督署ニ於テ之ヲ為ス
第二条 同一ノ鉱業権ニ関シテ登録シタル権利ノ順位ニ付法令ニ別段ノ定ナキトキハ其ノ順位ハ登録ノ前後ニ依ル
第三条 附記登録ノ順位ハ主登録ノ順位ニ依ル但シ附記登録間ノ順位ハ其ノ前後ニ依ル
第四条 仮登録ヲ為シタルモノニ付本登録ヲ為シタル場合ニ於テハ其ノ順位ハ仮登録ノ順位ニ依ル
第二章 鉱業原簿
第五条 鉱業原簿ハ試掘原簿、採掘原簿ノ二種トス
共同鉱業権者ニ付テハ共同人名簿、鉱区図ニ付テハ鉱区図綴込帳ヲ設ケ鉱業原簿ノ一部トス
第六条 何人ト雖手数料ヲ納付シテ鉱業原簿ノ謄本、抄本ノ交付ヲ請求シ又ハ鉱業原簿若ハ其ノ附属書類ノ閲覧ヲ請求スルコトヲ得
手数料ノ外郵便切手ヲ納付シテ鉱業原簿ノ謄本、抄本ノ送付ヲ請求スルコトヲ得
第七条 鉱業原簿ノ全部又ハ一部カ滅失シタル場合ニ於テ其ノ調製ニ関スル手続ハ農商務大臣之ヲ定ム
前項ニ依リテ調製シタル原簿ハ滅失前ノ鉱業原簿ト看做ス
第八条 前条鉱業原簿ノ調製ヲ終リタルトキハ其ノ登録ノ謄本又ハ抄本ヲ登録名義人ニ交付スルコトヲ要ス
第三章 登録手続
第一節 通則
第九条 登録ハ法令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外申請、嘱託又ハ命令アルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
嘱託又ハ命令ニ因ル登録ノ手続ニ付テハ法令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外申請ニ因ル登録ニ関スル規定ヲ準用ス
第十条 登録ハ登録権利者及登録義務者又ハ其ノ代理人出頭シ又ハ書留郵便ヲ以テ申請スルコトヲ要ス
第十一条 判決又ハ相続ニ因ル登録ハ登録権利者ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
第十二条 登録名義人ノ表示ノ変更又ハ更正ノ登録ハ登録名義人ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
第十三条 左ノ登録ニ付テハ官庁又ハ公署ハ嘱託書ニ登録原因ヲ証スル書面ヲ添附シテ嘱託スルコトヲ要ス
一 処分ノ制限ノ登録
二 公売処分ニ因ル鉱業権移転ノ登録
第十四条 鉱業権ヲ取消シタルトキ又ハ取消処分ノ取消ヲ為シタルトキハ農商務大臣ハ其ノ登録ヲ命スルコトヲ要ス
第十五条 登録ヲ申請スルニハ左ノ書類ヲ提出スルコトヲ要ス
一 申請書
二 登録原因ヲ証スル書面
三 登録原因ニ付第三者ノ許可、同意又ハ承諾ヲ要スルトキハ之ヲ証スル書面
四 代理人ニ依リテ登録ヲ申請スルトキハ其ノ権限ヲ証スル書面
申請カ鉱業権ノ設定、変更其ノ他鉱業権ノ表示ノ変更又ハ更正ニ関スルトキハ前項第二号ノ書面ヲ提出スルコトヲ要セス
登録原因ヲ証スル書面カ執行力アル判決ナルトキハ第一項第三号ニ掲ケタル書面ヲ提出スルコトヲ要セス
国、法人ノ代表者又ハ共同鉱業ノ代表者ニ依リテ申請スル場合ニ於テハ第一項第四号ノ書面ヲ提出スルコトヲ要セス
第十六条 申請書ニハ左ノ事項ヲ記載シ申請人之ニ署名捺印スルコトヲ要ス
一 鉱区所在地
二 鉱業権ノ登録番号
三 申請人ノ氏名及住所
四 代理人又ハ代表者ニ依リテ申請スルトキハ本人ノ氏名又ハ名称及住所
五 登録原因及其ノ日附
六 登録ノ目的
七 年月日
申請カ鉱業権ノ設定又ハ第三十条第二項ノ規定ニ依ル抵当権ノ設定ニ関スルトキハ前項第二号ノ記載ヲ要セス
申請カ鉱業権ノ設定、変更其ノ他鉱業権ノ表示ノ変更又ハ更正ニ関スルトキハ第一項第五号ノ記載ヲ要セス
第十七条 左ノ場合ニ於テハ申請人ハ申請書ニ其ノ事実ヲ証スル戸籍ノ謄本又ハ之ヲ証スルニ足ルヘキ書面ヲ添附スルコトヲ要ス
一 申請人カ相続人ナルトキ
二 登録名義人カ其ノ表示ノ変更ノ登録ヲ申請スルトキ
三 死亡ニ因ル共同鉱業権者脱退ノ登録ヲ申請スルトキ
第十八条 申請書ニ第三者ノ許可、同意又ハ承諾ヲ証スル書面ヲ添附スルコトヲ要スル場合ニ於テハ其ノ第三者ヲシテ申請書ニ署名捺印セシメテ其ノ書面ニ代フルコトヲ得
第十九条 同一鉱山監督署ノ管轄ニ属スル数箇ノ鉱区ニ関シ抵当権ノ設定ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ登録原因及登録ノ目的カ同一ナルトキニ限リ同一ノ申請書ヲ以テ登録ヲ申請スルコトヲ得
前項ノ規定ハ鉱業権又ハ抵当権ノ処分ノ制限ノ登録ヲ嘱託スル場合ニ之ヲ準用ス
第二十条 登録ハ受附ノ順序ニ従ヒテ之ヲ為スコトヲ要ス
第二十一条 左ノ場合ニ於テハ登録ノ申請ハ之ヲ受理セス
一 事件カ管轄ニ属セサルトキ
二 事件カ登録スヘキモノニ非サルトキ
三 当事者カ出頭セス又ハ申請書ヲ書留郵便ヲ以テ差出ササルトキ
四 申請書カ方式ニ適合セサルトキ
五 申請書ニ掲ケタル鉱業権又ハ抵当権ノ表示カ鉱業原簿ト抵触スルトキ
六 第十七条第一号ノ場合ヲ除クノ外申請書ニ掲ケタル登録義務者及共同鉱業代表者ノ表示カ鉱業原簿ト符合セサルトキ
七 申請書ニ掲ケタル事項カ登録原因ヲ証スル書面ト符合セサルトキ
八 申請ニ必要ナル書面又ハ図面ヲ提出セサルトキ
九 登録税ヲ納付セサルトキ
第二十二条 登録名義人ノ表示ノ変更若ハ更正ノ登録又ハ共同鉱業権者脱退ノ登録ハ附記ニ依リテ之ヲ為ス
第二十三条 行政区画又ハ其ノ名称ノ変更アリタルトキハ鉱業原簿ニ記載シタル行政区画又ハ其ノ名称ハ当然之ヲ変更シタルモノト看做ス
第二十四条 登録ヲ完了シタル後其ノ登録ニ付錯誤又ハ遺漏アルコトヲ発見シタルトキハ其ノ旨ヲ登録権利者及登録義務者ニ通知スルコトヲ要ス
錯誤又ハ遺漏カ鉱業権ノ表示ニ関スル登録ニ係ルトキハ更正ノ登録ヲ為シタル後前項ノ通知ヲナスコトヲ要ス
錯誤又ハ遺漏カ前項以外ノ登録ニ係ルトキハ登録更正ノ申請アリタル場合ニ於テ登録上利害ノ関係ヲ有スル第三者ナキトキ又ハ申請書ニ登録上利害ノ関係ヲ有スル第三者ノ承諾書若ハ之ニ対抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附シタルトキニ限リ附記ニ依リ更正ノ登録ヲ為ス
第二十五条 抹消シタル登録ノ回復ヲ申請スル場合ニ於テ登録上利害ノ関係ヲ有スル第三者アルトキハ申請書ニ其ノ承諾書又ハ之ニ対抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附スルコトヲ要ス
第二十六条 申請書其ノ他登録ニ関スル書面ヲ作ルニハ字画明瞭ナルコトヲ要ス
金銭其ノ他ノ物ノ数量、年月日及番号ヲ記載スルニハ壱、弐、参、拾ノ文字ヲ用ウルコトヲ要ス
文字ハ之ヲ改竄スルコトヲ得ス若シ訂正、挿入又ハ削除ヲ為シタルトキハ其ノ字数ヲ欄外ニ記載シ又ハ文字ノ前後ニ括弧ヲ附シ之ニ捺印シ其ノ削除ニ係ル文字ハ尚読得ヘキ為字体ヲ存スルコトヲ要ス
第二節 鉱業権ニ関スル登録手続
第二十七条 命令ニ因ル鉱業権ノ表示ノ変更又ハ鉱業ニ関スル出願ノ許可ニ因ル申請ハ登録権利者ニ於テ之ヲ為シ申請書ニ鉱物ノ名称及鉱区ノ面積ヲ記載シ且鉱山監督署長ノ命令書又ハ許可ニ関スル通知書ヲ添附スルコトヲ要ス
第二十八条 死亡、破産又ハ禁治産ニ因ル共同鉱業権者脱退ノ登録ハ登録権利者又ハ登録義務者ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
第二十九条 鉱区ノ合併又ハ分割ニ因ル採掘権設定及減区又ハ増減区ニ因ル鉱業権変更ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テ合併、分割又ハ減少前ノ鉱業権ニ付登録上利害ノ関係ヲ有スル第三者アルトキハ第二十五条ノ規定ヲ準用ス但シ鉱区ノ分合又ハ増減ノ願書ト共ニ承諾書ヲ差出シタルモノニ付テハ申請書ニ其ノ事由ヲ記載スルヲ以テ足ル
第三十条 鉱業法第三十五条第二項ノ場合ニ於テ採掘権設定ノ登録ノ申請アリタルトキハ其ノ旨ヲ抵当権者ニ通知スルコトヲ要ス
前項ノ抵当権者ハ其ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ抵当権設定ノ登録ヲ申請スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ抵当権ノ順位ハ協定ノ順位ニ依ル
前二項ノ申請ニ付テハ最後ニ通知ヲ受ケタル者ニ対スル前項ノ期間満了ノ日ニ於テ其ノ登録ヲ為スコトヲ要ス
第三節 抵当権ニ関スル登録手続
第三十一条 鉱業法第三十五条第二項ニ基キ為シタル承諾及協定ニ因ル抵当権設定ノ登録ハ登録権利者ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
第三十二条 抵当権設定ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ債権額ヲ記載シ若シ登録原因ニ弁済期ノ定アルトキ、利息ニ関スル定アルトキ、其ノ発生期若ハ支払時期ノ定アルトキ又ハ債権ニ条件ヲ附シタルトキハ之ヲ記載スルコトヲ要ス
第三十三条 抵当権設定ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テ設定者カ債務者ニ非サルトキハ申請書ニ債務者ノ表示ヲ為スコトヲ要ス
抵当権移転ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ抵当権カ債権ト共ニ移転スルヤ否ヲ記載スルコトヲ要ス
第三十四条 一定ノ金額ヲ目的トセサル債権ノ担保タル抵当権設定ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ債権ノ価格ヲ記載スルコトヲ要ス
第三十五条 債権ノ一部ノ譲渡又ハ代位弁済ニ因ル抵当権移転ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ譲渡又ハ代位弁済ノ目的タル債権額ヲ記載スルコトヲ要ス
第三十六条 抵当権ノ変更ノ登録ヲ為スニ付登録上利害ノ関係ヲ有スル第三者アル場合ニ於テハ第二十四条第三項ノ規定ヲ準用ス
第三十七条 抵当権ノ移転、順位ノ変更ニ因ル抵当権ノ変更及其ノ処分ノ制限ノ登録ハ附記ニ依リテ之ヲ為ス
第四節 抹消ニ関スル登録手続
第三十八条 期限ノ満了ニ因リ鉱業権カ消滅シタルトキハ其ノ原因ヲ記載シ抹消ノ登録ヲ為スコトヲ要ス
第三十九条 廃業ニ因ル鉱業権消滅ノ登録ハ登録権利者ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
第四十条 鉱区ノ合併又ハ分割ニ因ル採掘権設定ノ登録ヲ為シタルニ因リ其ノ合併又ハ分割前ノ採掘権消滅シタルトキハ其ノ原因ヲ記載シテ抹消ノ登録ヲ為スコトヲ要ス
第四十一条 抵当権ノ登録アル採掘権ニ関シ廃業ニ因ル抹消ノ申請アリタルトキハ抹消ノ登録ヲ為スト同時ニ競売ノ目的ノ範囲内ニ於テ仍存続スル旨ヲ記載スルコトヲ要ス
抵当権者競売ノ請求ヲ為ササルトキ又ハ競売申立ノ登録アリタル場合ニ於テ其ノ登録抹消ノ嘱託アリタルトキハ其ノ旨ヲ登録シタル後存続ニ関スル記載ヲ抹消スルコトヲ要ス
第四十二条 前条ノ規定ハ鉱業法第三十八条第一項及第三十九条ノ規定ニ依ル場合ヲ除クノ外抵当権ノ登録アル採掘権取消ニ因ル抹消ノ命令アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第四十三条 抵当権カ人ノ死亡ニ因リテ消滅シタル場合ニ於テ申請書ニ其ノ死亡ヲ証スル戸籍ノ謄本其ノ他之ニ相当スル書面ヲ添附スルトキハ登録権利者ノミニテ登録ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第四十四条 登録権利者カ登録義務者ノ行方ノ知レサルニ因リ之ト共ニ登録ノ抹消ヲ申請スルコト能ハサルトキハ民事訴訟法ノ規定ニ従ヒテ公示催告ノ申立ヲ為スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ除権判決アリタルトキハ申請書ニ其ノ謄本ヲ添附シ登録権利者ノミニテ登録ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第一項ノ場合ニ於テ申請書ニ債権証書並債権及最後ノ二年分ノ定期金ノ受取証書ヲ添附シタルトキハ登録権利者ノミニテ抵当権ニ関スル登録ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第四十五条 廃業ニ因ル場合ヲ除クノ外登録ノ抹消ヲ申請スル場合ニ於テ其ノ抹消ニ付登録上利害ノ関係ヲ有スル第三者アルトキハ第二十五条ノ規定ヲ準用ス
第四十六条 第十三条ノ規定ニ依リ公売処分ニ因ル鉱業権移転ノ登録ノ嘱託アリタル場合ニ於テハ処分ノ制限ノ登録ヲ抹消シ若シ抵当権ノ登録アルトキハ其ノ登録ヲ抹消スルコトヲ要ス
第四章 仮登録及予告登録
第四十七条 仮登録ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ為スモノトス
一 鉱業権ノ移転又ハ抵当権ノ設定、移転、変更若ハ消滅ノ登録ノ申請ニ必要ナル手続上ノ条件カ具備セサルトキ
二 前号ノ事項ニ関シ請求権ヲ保全セムトスルトキ
第四十八条 仮登録ハ次条ノ場合ヲ除クノ外仮登録権利者ノ申請ニ因リ其ノ目的タル鉱区ノ所在地ヲ管轄スル区裁判所ヨリ嘱託書ニ仮処分命令ノ正本ヲ添附シテ嘱託スルコトヲ要ス
前項ノ仮処分命令ハ仮登録権利者カ仮登録原因ヲ疏明シタルトキハ区裁判所之ヲ発スルコトヲ要ス
申請ヲ却下シタル決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
前項ノ即時抗告ニ付テハ非訟事件手続法ノ規定ヲ準用ス
第四十九条 仮登録ハ仮登録義務者ノ承諾アルトキハ申請書ニ其ノ承諾書ヲ添附シテ仮登録権利者ヨリ之ヲ申請スルコトヲ得
第五十条 仮登録ノ抹消ハ仮登録名義人ヨリ之ヲ申請スルコトヲ得
申請書ニ仮登録名義人ノ承諾書又ハ之ニ対抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附シタルトキハ登録上ノ利害関係人ヨリ仮登録ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十一条 予告登録ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ為スモノトス
一 登録原因ノ無効又ハ取消ニ因ル登録ノ抹消又ハ回復ノ訴訟ノ提起アリタルトキ但シ登録原因ノ無効又ハ取消ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ル場合ニ限ル
二 鉱業法第八十九条ノ規定ニ依リ鉱業権ニ関スル出願ノ許可ニ対シ訴願又ハ行政訴訟ノ提起アリタルトキ
第五十二条 予告登録ハ前条ニ掲ケタル訴訟又ハ訴願ヲ受理シタル官庁ヨリ嘱託書又ハ命令書ニ訴状若ハ訴願書ノ謄本又ハ抄本ヲ添附シテ嘱託又ハ命令スルコトヲ要ス
第五十三条 第五十一条第一号ニ掲ケタル訴ヲ却下シタル裁判若ハ之ヲ提起シタル者ニ対シテ敗訴ヲ言渡シタル裁判カ確定シタルトキ、訴ノ取下アリタルトキ、請求ノ抛棄アリタルトキ又ハ請求ノ目的ニ付和解アリタルトキハ第一審裁判所ハ嘱託書ニ裁判ノ謄本若ハ抄本又ハ訴ノ取下、請求ノ抛棄若ハ和解ヲ証スル裁判所書記ノ書面ヲ添附シテ予告登録ノ抹消ヲ嘱託スルコトヲ要ス
第五十四条 第五十一条第二号ニ掲ケタル訴願又ハ行政訴訟ヲ却下シ、請求ヲ否認シ若ハ其ノ取下アリタルトキハ農商務大臣ハ予告登録ノ抹消ヲ命シ行政裁判所ハ之ヲ嘱託スルコトヲ要ス
第五章 異議
第五十五条 登録ニ関スル処分ヲ不当トスル者ハ処分ノ了リタル日ヨリ三十日以内ニ農商務大臣ニ異議ヲ為スコトヲ得
第五十六条 異議ハ鉱山監督署長ニ異議状ヲ差出シテ之ヲ為ス
第五十七条 異議ハ新ナル事実及証拠方法ヲ以テ其ノ憑拠ト為スコトヲ得ス
第五十八条 鉱山監督署長異議ヲ理由ナシトスルトキハ意見ヲ附シテ事件ヲ農商務大臣ニ送付スルコトヲ要ス
鉱山監督署長異議ヲ理由アリトスルトキハ相当ノ処分ヲ為スコトヲ要ス若シ登録完了ノ後ナルトキハ仮登録ヲ為シ之ヲ登録上ノ利害関係人ニ通知シ且前項ノ手続ヲ為スコトヲ要ス
第五十九条 異議ハ執行ヲ停止スル効力ヲ有セス
第六十条 農商務大臣ハ登録上ノ利害関係人ニ決定ノ謄本ヲ送付スルコトヲ要ス
農商務大臣異議ヲ理由アリトスルトキハ鉱山監督署長ニ相当ノ処分ヲ命スルコトヲ要ス
附 則
第六十一条 本令施行前ニ鉱山監督署ニ備付タル鉱業ニ関スル原簿及書入登録簿ヲ以テ旧鉱業原簿トス
第六十二条 本令施行前ニ於ケル官庁所属ノ採掘区域ニ関シテハ本令施行ノ日ニ於テ採掘権設定ノ登録ヲ為スコトヲ要ス
第六十三条 本令施行前ニ認可若ハ特許ノ鉱業権又ハ登録ノ抵当権ニ付鉱業権ノ抹消ヲ除クノ外登録ノ申請アリタル場合ニ於テ登録ヲ為ストキハ鉱業原簿ニ旧鉱業原簿中抹消ニ係ラサル登録ヲ移シ旧鉱業原簿中鉱業原簿ニ移シタル登録ヲ抹消スルコトヲ要ス
第六十四条 旧鉱業原簿ニ記載シアル鉱業権ニ付其ノ抹消登録ノ申請アリタルトキハ其ノ原簿ニ其ノ登録ヲ為スコトヲ要ス期限満了ニ因ル抹消ノ登録ヲ為ス場合亦同シ
第六十五条 鉱業条例ニ依リ差出シタル廃業届ニ付テハ旧鉱業原簿ニ郵便差出ノ日時ニ於テ廃業ヲ為シタルコトノ記載ヲ為スコトヲ要ス
第六十六条 鉱業条例ニ依リ差出シタル鉱業特許証書換願、採掘権書入登録願又ハ登録シタル抵当権ノ変更、移転若ハ取消願ニ付テハ旧鉱業原簿ニ其ノ登録ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テハ願書ヲ差出シタル日ヲ以テ申請ノ日ト看做ス
第六十七条 本令施行前ニ相続ニ因リテ鉱業人ト為リタル者又ハ氏名、名称若ハ住所ヲ変更シタル鉱業人ハ本令中相続又ハ変更ノ申請ニ関スル規定ニ準シテ調製シタル届書ヲ差出スコトヲ要ス
前項ノ届出アリタルトキハ旧鉱業原簿ニ相続又ハ変更ノ記入ヲ為スコトヲ要ス
第六十八条 本令ハ明治三十八年七月一日ヨリ之ヲ施行ス