朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル鑛業抵當法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十八年三月十一日
內閣總理大臣 伯爵 桂太郞
農商務大臣 男爵 淸浦奎吾
司法大臣 波多野敬直
法律第五十五號
鑛業抵當法
第一條 採掘權者ハ抵當權ノ目的ト爲ス爲鑛業財團ヲ設クルコトヲ得
第二條 鑛業財團ハ左ニ揭クルモノニシテ鑛業ニ關シ同一採掘權者ニ屬スルモノノ全部又ハ一部ヲ以テ之ヲ組成スルコトヲ得
一 鑛業權
二 土地及エ作物
三 地上權及土地ノ使用權
四 賃貸人ノ承諾アルトキハ物ノ賃借權
五 機械、器具、車輛、船舶、牛馬其ノ他ノ附屬物
第三條 鑛業財團ニ付テハ工場抵當法中工場財團ニ關スル規定ヲ準用ス
第四條 採掘權取消ノ登錄アリタルトキハ鑛山監督署長ハ直ニ之ヲ抵當權者ニ通知スヘシ
前項ノ場合ニ於テハ抵當權者ハ直ニ其ノ權利ヲ實行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ抵當權ヲ實行セムトスルトキハ抵當權者ハ第一項ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ六箇月內ニ其ノ手續ヲ爲スヘシ
採掘權ハ前項ノ期間內又ハ抵當權實行ノ終了ニ至ル迄抵當權實行ノ目的ノ範圍內ニ於テ仍存續スルモノト看做ス
競落人又ハ競落人ニ依リテ設立セラレタル法人ハ採掘權取消ノ登錄アリタルトキニ於テ採掘權ヲ讓受ケタルモノト看做ス
前二項ノ規定ハ錯誤ニ因リ鑛業ノ出願カ許可セラレタル場合又ハ鑛業カ公益ヲ害スルモノト認メラレタル場合ニ於ケル採掘權ノ取消ニ關シテハ之ヲ適用セス
第五條 前條ノ規定ハ採掘權者カ廢業シタル場合ニ之ヲ準用ス
第六條 競賣ニ付セラレタル鑛業ヲ目的トシ帝國法律ニ從ヒ法人ヲ設立セムトスル者カ競賣ニ加入スルトキハ競買ノ申込ト同時ニ其ノ旨ヲ執行裁判所ニ申出ツヘシ
前項ノ規定ニ依リ競賣ニ加入スル者ハ競買ノ申込ニ關シテハ連帶シテ其ノ責ニ任ス
第七條 鑛業財團ノ競落人カ前條第一項ノ規定ニ依リ競賣ニ加入シタル者ナルトキハ競落ヲ許ス決定カ確定シタル日ヨリ三箇月內ニ法人ヲ設立シ之ヲ執行裁判所ニ屆出ツヘシ
第八條 前條ノ競落人ハ法人設立ノ日ヨリ一週間以內ニ競落代金ヲ執行裁判所ニ支拂フヘシ但シ債權者カ競落人タル場合ニ於テハ自己カ競落代金中ヨリ受取ルヘキ金額ヲ控除シ其ノ殘額ノミヲ支拂フヲ以テ足ル
第九條 前條ノ規定ニ依リ競落代金ノ支拂アリタルトキハ競賣ニ付セラレタル鑛業財團ノ所有權ハ競落人ニ依リテ設立セラレタル法人ニ移轉ス
第十條 第七條ノ期間內ニ法人設立ノ屆出ナキトキ又ハ第八條ノ期間內ニ競落代金ノ支拂ナキトキハ執行裁判所ハ職權ヲ以テ鑛業財團ノ再競賣ヲ命スヘシ
前項ノ再競賣ニ關シテハ民事訴訟法第六百八十八條ノ規定ヲ準用ス
第十一條 工場抵當法中工場財團ニ關スル罰則ハ鑛業財團ニ關シ之ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル鉱業抵当法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十八年三月十一日
内閣総理大臣 伯爵 桂太郎
農商務大臣 男爵 清浦奎吾
司法大臣 波多野敬直
法律第五十五号
鉱業抵当法
第一条 採掘権者ハ抵当権ノ目的ト為ス為鉱業財団ヲ設クルコトヲ得
第二条 鉱業財団ハ左ニ掲クルモノニシテ鉱業ニ関シ同一採掘権者ニ属スルモノノ全部又ハ一部ヲ以テ之ヲ組成スルコトヲ得
一 鉱業権
二 土地及エ作物
三 地上権及土地ノ使用権
四 賃貸人ノ承諾アルトキハ物ノ賃借権
五 機械、器具、車輛、船舶、牛馬其ノ他ノ附属物
第三条 鉱業財団ニ付テハ工場抵当法中工場財団ニ関スル規定ヲ準用ス
第四条 採掘権取消ノ登録アリタルトキハ鉱山監督署長ハ直ニ之ヲ抵当権者ニ通知スヘシ
前項ノ場合ニ於テハ抵当権者ハ直ニ其ノ権利ヲ実行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ抵当権ヲ実行セムトスルトキハ抵当権者ハ第一項ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ六箇月内ニ其ノ手続ヲ為スヘシ
採掘権ハ前項ノ期間内又ハ抵当権実行ノ終了ニ至ル迄抵当権実行ノ目的ノ範囲内ニ於テ仍存続スルモノト看做ス
競落人又ハ競落人ニ依リテ設立セラレタル法人ハ採掘権取消ノ登録アリタルトキニ於テ採掘権ヲ譲受ケタルモノト看做ス
前二項ノ規定ハ錯誤ニ因リ鉱業ノ出願カ許可セラレタル場合又ハ鉱業カ公益ヲ害スルモノト認メラレタル場合ニ於ケル採掘権ノ取消ニ関シテハ之ヲ適用セス
第五条 前条ノ規定ハ採掘権者カ廃業シタル場合ニ之ヲ準用ス
第六条 競売ニ付セラレタル鉱業ヲ目的トシ帝国法律ニ従ヒ法人ヲ設立セムトスル者カ競売ニ加入スルトキハ競買ノ申込ト同時ニ其ノ旨ヲ執行裁判所ニ申出ツヘシ
前項ノ規定ニ依リ競売ニ加入スル者ハ競買ノ申込ニ関シテハ連帯シテ其ノ責ニ任ス
第七条 鉱業財団ノ競落人カ前条第一項ノ規定ニ依リ競売ニ加入シタル者ナルトキハ競落ヲ許ス決定カ確定シタル日ヨリ三箇月内ニ法人ヲ設立シ之ヲ執行裁判所ニ届出ツヘシ
第八条 前条ノ競落人ハ法人設立ノ日ヨリ一週間以内ニ競落代金ヲ執行裁判所ニ支払フヘシ但シ債権者カ競落人タル場合ニ於テハ自己カ競落代金中ヨリ受取ルヘキ金額ヲ控除シ其ノ残額ノミヲ支払フヲ以テ足ル
第九条 前条ノ規定ニ依リ競落代金ノ支払アリタルトキハ競売ニ付セラレタル鉱業財団ノ所有権ハ競落人ニ依リテ設立セラレタル法人ニ移転ス
第十条 第七条ノ期間内ニ法人設立ノ届出ナキトキ又ハ第八条ノ期間内ニ競落代金ノ支払ナキトキハ執行裁判所ハ職権ヲ以テ鉱業財団ノ再競売ヲ命スヘシ
前項ノ再競売ニ関シテハ民事訴訟法第六百八十八条ノ規定ヲ準用ス
第十一条 工場抵当法中工場財団ニ関スル罰則ハ鉱業財団ニ関シ之ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム