朕北海道二級町村制ノ改正ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十五年二月二十一日
內閣總理大臣 子爵 桂太郞
內務大臣 男爵 內海忠勝
勅令第三十七號
北海道二級町村制
第一章 總則
第一條 町村ハ法人トシ官ノ監督ヲ受ケ法律命令ノ範圍內ニ於テ其ノ公共事務及法律命令又ハ慣例ニ依リ町村ニ屬スル事務ヲ處理スルモノトス
第二條 北海道一級町村制第三條ハ之ヲ二級町村ニ準用ス
第三條 町村內ニ住居ヲ占ムル者ハ總テ町村住民トス
町村住民ハ町村有財產及町村ノ營造物ヲ共用スル權利ヲ有シ町村ノ負擔ヲ分任スル義務ヲ負フ但シ特ニ民法上ノ權利義務ヲ有スル者アルトキハ此ノ限ニ在ラス
第四條 町村ハ町村住民ノ權利義務、町村ノ事務、町村有財產及町村營造物ニ關シ町村規則ヲ設クルコトヲ得
第二章 町村吏員
第一款 組織及選任
第五條 町村ニ町村長書記收入役其ノ他必要ノ附屬員ヲ置キ有給吏員トス
町村長收入役ハ町村又ハ町村組合ニ各一名トシ書記ノ定員ハ北海道廳長官之ヲ定ム
町村長ハ北海道廳長官之ヲ任免シ書記ハ北海道廳支廳長之ヲ任免シ其ノ他ノ附屬員ハ町村長之ヲ任免ス
收入役ハ町村會ノ推薦ニ依リ北海道廳支廳長之ヲ任命シ其ノ任期ハ四箇年トス
收入役闕ケタルトキハ北海道廳支廳長ハ書記ノ一人ヲシテ臨時其ノ職務ヲ兼掌セシムルコトヲ得
特別ノ事情アル町村ニ於テハ北海道廳支廳長ハ北海道廳長官ノ許可ヲ得テ町村長又ハ書記ヲシテ收入役ノ事務ヲ兼掌セシムルコトヲ得
前二項ノ場合ヲ除クノ外町村長書記及收入役ハ相兼ヌルコトヲ得ス
收入役ノ保證金ニ付テハ町村規則ヲ以テ之ヲ定ム
第六條 町村ハ處務便宜ノ爲町村規則ヲ以テ町村ノ區域ヲ數部ニ分チ每部部長一名ヲ置クコトヲ得
町村ハ町村會ノ議決ニ依リ北海道廳支廳長ノ許可ヲ得テ臨時委員ヲ置クコトヲ得
部長及委員ハ名譽職トシ北海道廳支廳長之ヲ任免ス
第二款 職務權限
第七條 町村長ハ町村ヲ統轄シ町村ヲ代表シ其ノ行政事務ヲ擔任ス
町村長ノ擔任スル事務ノ槪目左ノ如シ
一 町村會ノ議事ヲ準備シ竝其ノ議決ヲ承認シ及執行スル事
二 町村有財產及町村ノ營造物ヲ管理スル事但シ特ニ之カ管理者アルトキハ其ノ事務ヲ監督スル事
三 町村ノ歲入ヲ管理シ歲入出豫算其ノ他町村會ノ議決ニ依リ定マリタル收入支出ヲ命令シ會計及出納ヲ監視スル事
四 町村ノ諸證書及公文書類ヲ保管スル事
五 法律命令又ハ町村會ノ議決ニ依リ使用料加入金手數料町村稅及夫役現品ヲ賦課徵收スル事
六 町村營造物ノ管理方法ヲ定ムル事
七 其ノ他法律命令ニ依リ町村長ノ職權ニ屬スル事項
第八條 町村長ハ法律命令ノ定ムル所ニ依リ町村ニ關スル國及北海道地方費ノ行政事務ヲ掌ル
本條ニ記載スル事務ヲ執行スル爲要スル費用ハ町村ノ負擔トス
第九條 町村長ハ町村吏員ヲ監督シ其ノ任免ニ係ル町村吏員ニ對シ懲戒處分ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒處分ハ譴責及五圓以下ノ過怠金トス
第十條 町村會ノ議決其ノ權限ヲ越エ、法律命令ニ背キ又ハ公益ヲ害シ其ノ他不當ノ議決ト認ムルトキハ町村長ハ自己ノ意見ニ依リ又ハ監督官廳ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ北海道廳支廳長ノ指揮ヲ請フヘシ但シ場合ニ依リ再議ニ付セスシテ直ニ北海道廳支廳長ノ指揮ヲ請フコトヲ得
第十一條 町村會成立セス又ハ招集ニ應セサルトキハ町村長ハ北海道廳支廳長ノ指揮ヲ請ヒ其ノ議決スヘキ事件ヲ處分スルコトヲ得
町村會其ノ議決スヘキ事件ヲ議決セス若ハ議了セサルトキ又ハ第三十三條第二項但書ノ場合ニ於テ全ク會議ヲ開クコト能ハサルトキハ前項ノ例ニ依ル
本條ノ處分ハ次囘ノ會議ニ於テ之ヲ町村會ニ報吿スヘシ
第十二條 書記及附屬員ハ町村長ノ命ヲ承ケ庶務ニ從事ス
町村長事故アルトキハ上席ノ書記之ヲ代理ス
町村長ハ書記ヲシテ事務ノ一部ヲ臨時代理セシムルコトヲ得
第十三條 收入役ハ町村ノ出納其ノ他會計事務又ハ第八條ニ依ル國及北海道地方費ノ出納其ノ他會計事務ヲ掌ル
第十四條 部長ハ町村長ノ命ヲ承ケ部內ニ關スル町村長ノ事務ヲ補助ス
委員ハ町村長ノ指揮監督ヲ承ケ一時ノ委託ニ依リ事務ヲ處辨ス
第十五條 町村役場及町村吏員ノ處務規程ハ北海道廳長官ノ許可ヲ得テ北海道廳支廳長之ヲ定ム
町村吏員ノ服務紀律ハ北海道廳長官之ヲ定ム
第三款 給料及給與
第十六條 名譽職吏員ハ職務取扱ノ爲要スル實費ノ辨償ヲ受クルコトヲ得
實費辨償額及其ノ支給方法ハ町村會ノ議決ヲ經テ北海道廳支廳長ノ許可ヲ受クヘシ
第十七條 町村長及書記ノ給料額旅費額及其ノ支給方法ハ北海道廳長官之ヲ定メ其ノ他有給吏員ノ給料額旅費額及其ノ支給方法ハ町村會ノ議決ヲ經北海道廳支廳長ノ許可ヲ受ケ之ヲ定ムヘシ若シ之ヲ許可スヘカラスト認ムルトキハ北海道廳支廳長之ヲ定ム
町村規則ヲ以テ有給吏員ノ退隱料退職給與金及遺族扶助料ニ關スル規定ヲ設クルコトヲ得
第十八條 給料旅費退隱料退職給與金遺族扶助料辨償等ハ町村ノ負擔トス但シ町村長書記ノ給料及旅費ハ北海道地方費ヨリ之ヲ支給ス
第三章 町村會
第一款 組織及選擧
第十九條 町村會議員ハ其ノ町村ノ選擧人其ノ被選擧權アル者ヨリ之ヲ選擧ス其ノ定員ハ一町村四名以上十二名以下トシ北海道廳長官之ヲ定ム
第二十條 町村會議員ノ選擧權ヲ有スル者ハ帝國臣民ニシテ公權ヲ有スル獨立ノ男子一年以來(一)町村內ニ住居ヲ占メ(二)町村ノ負擔ヲ分任シ及(三)町村內ニ於テ地租年額十錢以上ヲ納メ又ハ直接國稅北海道水產稅若ハ直接國稅ト北海道水產稅トヲ合シテ年額五十錢以上ヲ納メ又ハ耕地一町步若ハ宅地百坪以上ヲ所有シ又ハ總納稅人ノ町村稅平均額以上ノ町村稅ヲ納ムル者ニ限ル
公費ヲ以テ貧民救助ヲ受ケタル後一年ヲ經サル者ハ選擧權ヲ有セス
前二項ノ期間ハ町村會ノ議決ニ依リ北海道廳長官ノ許可ヲ得テ之ヲ特免スルコトヲ得
町村ノ負擔ヲ分任セシムルコトナキ町村ニ於テハ第一項(二)ノ要件ヲ闕クト雖其ノ他ノ要件ヲ具備スル者ハ選擧權ヲ有ス
第一項ニ於テ獨立ト稱スルハ滿二十五歲以上ニシテ一戶ヲ構ヘ且治產ノ禁ヲ受ケサルモノヲ謂ヒ又耕宅地所有ノ期間ハ所有權ノ登記ヲ爲シタル日ヨリ之ヲ起算ス
第二十一條 選擧權ヲ有スル者公權停止中又ハ租稅滯納處分中ハ選擧權ヲ停止ス家資分散若ハ破產ノ宣吿ヲ受ケタルトキハ復權ノ決定アル迄又公權剝奪若ハ停止ヲ附加スヘキ重罪輕罪ノ爲公判ニ付セラレタルトキハ其ノ裁判ノ確定ニ至ル迄亦同シ
陸海軍ノ現役ニ服スル者ハ選擧ニ參與スルヲ得ス現役以外ノ兵役ニ在ル者ニシテ戰時又ハ事變ニ際シ召集セラレタルトキ亦同シ
第二十二條 選擧權ヲ有スル者ハ總テ被選擧權ヲ有ス
左ニ揭クル者ハ被選擧權ヲ有セス
一 北海道廳ノ官吏
二 其ノ町村ノ有給吏員
三 檢事警察官吏及收稅官吏
四 神官神職僧侶其ノ他諸宗敎師
五 小學校敎員
六 選擧權停止中ノ者及第二十一條第二項ニ依リ選擧ニ參與スルコトヲ得サル者
官吏ニシテ當選シ之ニ應セムトスルトキハ所屬長官ノ許可ヲ受クヘシ
第二十三條 町村會議員ハ名譽職トシ其ノ任期ハ二箇年トス
町村會議員中闕員アルトキハ補闕選擧ヲ行ヒ其ノ補闕ニ係ル議員ハ前任者ノ殘任期間在職スルモノトス
町村會議員ニ關シテハ第十六條及第十八條ヲ準用ス
第二十四條 町村長ハ選擧前三十日ヲ期トシ其ノ日ノ現在ニ依リ選擧人名簿ヲ調製スヘシ
選擧人名簿ハ調製ノ日ヨリ十四日間町村役場ニ於テ關係者ノ縱覽ニ供スヘシ關係者ニ於テ異議アルトキハ縱覽期限內ニ之ヲ町村長ニ申立ツルコトヲ得町村長ハ其ノ申立ヲ受ケタル日ヨリ七日以內ニ之ヲ決定スヘシ
前項町村長ノ決定ニ不服アル者ハ北海道廳支廳長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ北海道廳長官ニ訴願スルコトヲ得
町村長ハ第二項異議ノ決定又ハ第三項訴願ノ裁決ノ確定ニ依リ名簿ノ修正ヲ要スルトキハ選擧ノ日ヨリ五日前ニ修正ヲ加ヘテ確定名簿ト爲シ其ノ修正ノ要領ハ直ニ之ヲ公吿スヘシ
確定名簿ハ確定ノ日ヨリ一年以內ニ於テ行フ選擧ニ之ヲ用フ
確定名簿ニ登錄セラレサル者及登錄セラレタルモ選擧權ヲ有セサル者ハ選擧ニ參與スルコトヲ得ス但シ選擧人名簿ニ登錄セラルヘキ確定決定書又ハ確定裁決書ヲ所持スル者ハ此ノ限ニ在ラス
第二十五條 選擧ヲ行フトキハ町村長ハ選擧ノ日ヨリ少クトモ七日前ニ選擧ノ場所日時及議員ノ員數ヲ公吿スヘシ
選擧場ノ開閉及選擧ノ取締ハ町村長之ニ任ス
選擧開場中ハ選擧人及選擧事務ニ從事スル者ヲ除クノ外選擧場ニ入ルコトヲ得ス
選擧ハ投票ヲ以テ之ヲ行フ投票ニハ被選擧人ノ氏名ヲ記シ封緘ノ上選擧人自ラ之ヲ町村長ニ差出スヘシ
選擧ハ代人ヲ以テ之ヲ行フコトヲ得代人ハ委任狀ヲ町村長ニ差出スヘシ
選擧人投票ヲ差出ストキハ自己ノ氏名及住所ヲ町村長ニ申立テ町村長ハ選擧人名簿ニ照シテ之ヲ受ケ封緘ノ儘投票函ニ投入スヘシ
投票ノ時間終リタルトキハ町村長ハ選擧場ニ於テ投票ヲ檢シ有效投票ノ多數ヲ得タル者ヲ當選トシ同數ナルトキハ年長者ヲ取リ同年ナルトキハ町村長自ラ抽籤シテ之ヲ定ム
町村長ハ當選者ニ當選ヲ通知シ其ノ人名ヲ公吿シ同時ニ之ヲ北海道廳支廳長ニ報吿スヘシ
第二十六條 選擧人選擧又ハ當選ノ效力ニ關シ異議アルトキハ選擧ノ日ヨリ七日以內ニ北海道廳支廳長ニ申立テ其ノ決定ニ不服アル者ハ北海道廳長官ニ訴願スルコトヲ得
北海道廳支廳長ニ於テ選擧又ハ當選ノ效力ニ關シ異議アルトキハ之ヲ取消スコトヲ得但シ北海道廳長官ノ認許ヲ受クルコトヲ要ス
第二十七條 左ノ投票ハ無效トス
一 一投票中二人以上ノ氏名ヲ記載セルモノ
二 被選擧人ノ何人タルヲ確認シ難キモノ
三 被選擧權ナキ者ノ氏名ヲ記載シタルモノ
四 被選擧人ノ氏名ノ外他事ヲ記入シタルモノ但シ官位、職業、身分、住所又ハ敬稱ノ類ヲ記入スルハ此ノ限ニ在ラス
五 投票用紙ヲ一定シタル場合ニ於テ其ノ用紙ヲ用井サルモノ
投票ノ受理及效力ニ關スル事項ハ町村長之ヲ決ス
第二十八條 町村會議員中被選擧權ヲ有セサル者アルトキハ其ノ職ヲ失フ
前項ニ該當スル者ハ北海道廳支廳長之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アル者ハ北海道廳長官ニ訴願スルコトヲ得
町村會議員ハ本條ノ決定確定シ又ハ裁決アル迄職務ヲ行フコトヲ妨ケス
第二十九條 町村會議員相當ノ理由ナクシテ其ノ當選ヲ辭シ又ハ任期中退職スルトキハ町村長ハ町村會ノ議決ニ依リ北海道廳長官ノ許可ヲ經二年以內選擧權被選擧權ヲ停止シ場合ニ依リ同年期間町村稅率四分ノ一以下ヲ增加スルコトヲ得
第二款 職務權限及處務規程
第三十條 町村會ノ議決ヲ經ヘキ事件左ノ如シ
一 町村規則ヲ設定スル事
二 歲入出豫算ヲ定ムル事
三 法律命令ニ定ムルモノヲ除クノ外使用料加入金手數料町村稅又ハ夫役現品ノ賦課徵收ノ法ヲ定ムル事
四 町村有不動產ニ關シ權利ノ得喪ヲ目的トスル行爲ヲ爲ス事
五 基本財產ノ處分ヲ爲ス事
六 歲入出豫算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ニ義務ノ負擔ヲ爲シ又ハ權利ノ棄却ヲ爲ス事
七 町村有財產ノ管理方法ヲ定ムル事
八 町村吏員ノ身元保證ヲ徵シ及其ノ額ヲ定ムル事
九 町村ニ係ル訴訟又ハ和解ニ關スル事
十 其ノ他法律命令ニ依リ町村會ノ職權ニ屬セラレタル事項
町村會ハ町村長ノ報吿書ヲ請求シテ町村有財產ノ管理又ハ收入支出ノ正否ヲ檢査スルコトヲ得
町村會ハ前項ノ目的ノ爲ニ五名以下ノ委員ヲ議員中ヨリ選擧シ町村長又ハ其ノ指命シタル吏員立會ノ上關係書類又ハ金庫ヲ檢閱セシムルコトヲ得
町村會ハ町村ノ公益ニ關スル事件ニ付意見書ヲ町村長又ハ監督官廳ニ差出スコトヲ得
町村會ハ町村長又ハ官廳ノ諮問アルトキハ意見ヲ答申スヘシ
第三十一條 町村會ハ町村長ヲ以テ議長トス町村長故障アルトキハ議員中ヨリ假議長ヲ選擧スヘシ
議長ハ會議ノ事ヲ總理シ會議ノ順序ヲ定メ其ノ日ノ會議ヲ開閉シ議場ノ秩序ヲ保持ス
第三十二條 町村長及其ノ委任ヲ受ケタル吏員ハ會議ニ出席シ及發言スルコトヲ得
第三十三條 町村會ハ會議ノ必要アル每ニ町村長之ヲ招集ス但シ輕易ノ事件ハ會議ヲ開カス書面ヲ以テ議員ノ意見ヲ聞キ其ノ三分ノ二以上ノ同意アルトキハ可決ト爲シ施行スルコトヲ得
町村會ハ議員定員ノ半數以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開クヲ得ス但シ同一ノ事件ニ付集會再囘ニ至ルモ仍半數ニ滿タサルトキハ此ノ限ニ在ラス
町村會ノ議事ハ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ可否スル所ニ依ル
北海道廳長官ハ會議及傍聽ノ規律及取締ニ關スル規定ヲ設クルコトヲ得
町村會ハ北海道廳支廳長ノ許可ヲ得テ會議規則及傍聽規則ヲ設クルコトヲ得前二項ノ會議ニ關スル規則ニハ之ニ違背シタル議員ニ對シ町村會ノ議決ニ依リ五日以內出席ヲ停止シ又ハ二圓以下ノ過怠金ヲ科スル規程ヲ設クルコトヲ得
町村會ハ町村長之ヲ開閉ス
第三十四條 町村會ニ書記ヲ置キ議長ニ隸屬シテ庶務ヲ處理セシム
書記ハ町村吏員中ニ就キ町村長之ヲ命ス
議長ハ書記ヲシテ會議錄ヲ製シ會議ノ顚末及出席議員ノ氏名ヲ記載セシムヘシ會議錄ニハ議長及議員一名以上之ニ署名捺印スヘシ
第四章 町村ノ財務
第一款 町村有財產及收入
第三十五條 町村ハ不動產積立金穀等ヲ以テ一般又ハ特別ノ基本財產ト爲シ之ヲ維持スル義務アリ
北海道廳長官ハ必要ト認ムルトキハ額ヲ定メテ基本財產ノ蓄積ヲ命スルコトヲ得
第三十六條 町村ハ北海道廳支廳長ノ許可ヲ得テ國、公共團體又ハ個人ノ事業ニ對シ寄附又ハ補助ヲ爲スコトヲ得
第三十七條 町村ハ必要ナル支出及法律命令ニ依ル支出ヲ負擔スヘシ但シ町村ノ事情ニ依リ北海道地方費ヨリ其ノ全部又ハ一部ヲ補助ス
第三十八條 町村ハ使用料、加入金、手數料、町村稅及夫役現品ヲ徵收スルコトヲ得
第三十九條 使用料ハ町村有財產又ハ町村營造物ノ使用ニ付、手數料ハ特ニ一個人ノ爲ニスル事務ニ付、加入金ハ町村有財產ヲ町村住民ノ全部又ハ一部ノ直接ノ共用ニ供スル場合ニ之ヲ徵收ス
第四十條 町村稅トシテ賦課スルコトヲ得ヘキ目左ノ如シ
一 國稅北海道地方稅ノ附加稅
二 直接若ハ間接ノ特別稅
第四十一條 三箇月以上町村內ニ住居ヲ構ヘ又ハ滯在スル者ハ其ノ住居ヲ構ヘタル初又ハ滯在ノ初ニ遡リ町村稅ヲ納ムル義務ヲ負フ
町村內ニ於テ土地家屋ヲ所有シ若ハ使用シ又ハ町村內ニ於テ營業所ヲ定メテ營業ヲ爲シ又ハ町村內ニ於テ或ル行爲ヲ爲ス者ハ土地家屋營業若ハ其ノ所得ニ對シ又ハ行爲ニ對シテ賦課スル町村稅ヲ納ムル義務ヲ負フ其ノ法人タルトキ亦同シ但シ國ノ事業ハ此ノ限ニ在ラス
第四十二條 所得稅ノ附加稅ヲ賦課シ及町村ニ於テ特別ニ所得稅ヲ賦課スルトキハ納稅義務者ノ町村外ニ於テ所有シ若ハ使用スル土地家屋又ハ町村外ニ於テ營業所ヲ定メタル營業ヨリ收入スル所得ハ之ヲ控除スヘシ
數市區町村ニ住居ヲ構ヘ又ハ滯在スル者ニ前項ノ町村稅ヲ賦課スルトキハ其ノ所得ヲ各市區町村ニ平分シ其ノ一部ニノミ課稅スヘシ但シ土地家屋又ハ營業所ヲ定メタル營業ヨリ收入スル所得ハ此ノ限ニ在ラス
數市區町村ニ涉リ營業所ヲ定メテ營業ヲ爲シ且其ノ本稅ヲ分別シテ納メサル者ニ對シ營業稅ノ附加稅ヲ賦課スルトキハ北海道廳長官ノ定ムル所ニ從ヒ本稅額ヲ各市區町村ニ分割シテ其ノ一部ニノミ賦課スヘシ
第四十三條 所得稅法第五條ニ揭クル所得ニ對シテハ町村稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
國又ハ公共團體ノ直接ノ公用ニ供スル土地家屋營造物ニ對シテハ國又ハ公共團體ニ町村稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
社寺、官立公立ノ學校病院又ハ國若ハ公共ノ施設ニ係リ學藝美術慈善ノ用ニ供スル土地家屋營造物ニ對シテハ社寺、國又ハ公共團體ニ町村稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
國有ノ山林又ハ荒蕪地ニ對シテハ國ニ町村稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
屯田兵土地給與規則及屯田兵移住給與規則ニ依リ給與シタル公有財產ニ對シテハ第七十一條ニ揭クル期間中ハ町村稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
本條ノ外町村稅ヲ賦課スルコトヲ得サルモノハ別段ノ法律勅令ニ定ムル所ニ從フ
皇族ニ係ル町村稅ノ賦課ハ追テ法律勅令ヲ以テ定ムル迄現今ノ例ニ依ル
第四十四條 町村住民ノ一部ノミヲ利スル營造物ノ建設維持ノ費用ハ其ノ關係者ニ負擔セシメ町村ノ一部ノミヲ利スル營造物ノ建設維持ノ費用ハ其ノ部內ニ於テ町村稅ヲ納ムル義務アル者ニ負擔セシムルコトヲ得但シ營造物ノ收入アルトキハ先ツ其ノ費用ニ充ツヘシ
第四十五條 夫役現品ハ急迫ノ場合ヲ除クノ外直接町村稅ヲ準率ト爲シ直接町村稅ヲ賦課セサル町村ニ於テハ直接國稅又ハ直接北海道地方稅ヲ準率ト爲シ且之ヲ金額ニ算出シテ納稅義務者ニ賦課ス
學藝美術手工ニ關スル勞役ハ夫役トシテ之ヲ賦課スルコトヲ得ス
夫役ヲ賦課セラレタル者ハ本人自ラ之ニ當リ又ハ適當ノ代人ヲ出スコトヲ得又夫役現品ハ急迫ノ場合ヲ除クノ外金圓ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第四十六條 町村ノ公法上ノ收入ヲ定期內ニ納メサル者アルトキハ町村長ハ國稅ノ滯納處分ニ關スル規定ニ依リ之ヲ處分スヘシ其ノ督促手數料ニ關シテハ町村規則ヲ以テ別段ノ規程ヲ設クルコトヲ得
納稅義務者中無資力ナル者アルトキハ町村長ノ意見ヲ以テ會計年度內ニ限リ納稅延期ヲ許スコトヲ得其ノ年度ヲ超ユル場合ニ於テハ町村會ノ議決ニ依ル
本條ニ記載スル徵收金ハ國、北海道地方費及府縣ノ徵收金ニ次テ先取特權ヲ有シ其ノ追徵還付及時效ニ付テハ國稅ノ例ニ依ル
第四十七條 町村稅ノ賦課ヲ受ケタル者其ノ賦課ニ付違法又ハ錯誤アリト認ムルトキハ納稅ノ吿知ヲ受ケタル日ヨリ三箇月以內ニ町村長ニ異議ヲ申立ツルコトヲ得
前項ノ異議ハ町村長之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アル者ハ北海道廳支廳長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ北海道廳長官ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第四十八條 町村ハ其ノ負債ヲ償還スル爲又ハ天災地變等已ムヲ得サル支出若ハ町村ノ永久ノ利益ト爲ルヘキ支出ヲ要スルニ當リ通常ノ歲入ヲ增加スルトキハ町村住民ノ負擔ニ堪ヘサル場合ニ限リ町村會ノ議決ヲ經テ町村債ヲ起スコトヲ得
町村債ヲ起スニ付町村會ノ議決ヲ經ルトキハ併セテ借入ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ニ付議決ヲ經ヘシ
町村債償還ノ初期ハ起債ノ時ヨリ三年以內ト爲シ年年ノ償還步合ヲ定メ起債ノ時ヨリ三十年以內ニ還了スヘシ
町村債ノ總額ハ每年ノ利子額其ノ町村經常支出最近三年平均額ノ三分ノ一ヲ超過スヘカラス
町村ハ豫算內ノ支出ヲ爲スニ付必要アルトキハ町村會議決ヲ經テ一時ノ借入金ヲ爲スコトヲ得此ノ借入金ハ其ノ年度ノ收入ヲ以テ償還スヘシ
第二款 豫算及決算
第四十九條 町村長ハ每會計年度歲入出豫算ヲ調製シ少クトモ年度一箇月前ニ町村會ノ議決ヲ經ヘシ
町村ノ會計年度ハ政府ノ會計年度ニ同シ
町村長ハ町村會ノ議決ヲ經テ旣定豫算ノ追加又ハ更正ヲ爲スコトヲ得
豫算外ノ支出又ハ豫算超過ノ支出ニ充ツル爲豫備費ヲ設クヘシ但シ豫備費ハ町村會ノ否決シタル費途ニ充ツルコトヲ得ス
町村ノ費用ヲ以テ支辨スヘキ事業ニシテ數年ヲ期シ施行スヘキモノ又ハ數年ヲ期シテ其ノ費用ヲ支出スヘキモノハ町村會ノ議決ヲ經テ其ノ年期間各年度ノ支出額ヲ定メ繼續費ト爲スコトヲ得
町村ハ町村規則ヲ以テ特別會計ヲ設クルコトヲ得
豫算調製ノ式竝費目流用其ノ他財務ニ關シ必要ナル規程ハ北海道廳長官之ヲ定ム
豫算ハ町村會ノ議決ヲ經タル後三日以內ニ之ヲ北海道廳支廳長ニ報吿シ其ノ要領ヲ公吿スヘシ
第五十條 豫算ノ議決ヲ經タルトキハ町村長ヨリ其ノ謄本ヲ收入役ニ交付スヘシ其ノ豫算中監督官廳ノ許可ヲ受クヘキ事項アルトキハ先ツ其ノ許可ヲ受クヘシ
收入役ハ町村長ノ命令アルニ非サレハ支拂ヲ爲スコトヲ得ス町村長ノ命令ヲ受クルモ其ノ支出豫算中豫定ナキカ又ハ其ノ命令前條第四項ノ規定ニ依ラサルトキハ支拂ヲ爲スコトヲ得ス
前項ノ規定ニ背キタル支拂ハ總テ收入役ノ責任ニ歸ス
第五十一條 町村ノ出納ハ每月例日ヲ定メテ檢査ヲ行ヒ又每年少クトモ一囘臨時檢査ヲ行フヘシ
檢査ハ町村長又ハ其ノ代理者之ヲ行ヒ臨時檢査ニハ町村會ノ選擧シタル議員一名以上ノ立會ヲ要ス
第五十二條 町村ノ出納閉鎖ハ翌年度六月三十日ヲ以テ期限トス
決算ハ出納閉鎖期限後一箇月以內ニ證書類ヲ添ヘ收入役ヨリ之ヲ町村長ニ提出スヘシ町村長ハ之ヲ審査シ意見ヲ附シ次ノ通常豫算會議ニ於テ之ヲ町村會ニ報吿スヘシ
町村長ハ決算報吿書及之ニ關スル町村會ノ議決ヲ北海道廳支廳長ニ報吿シ決算ノ要領ヲ公吿スヘシ
第五章 町村組合
第五十三條 町村役場事務ヲ共同處理セシムル爲北海道廳長官ハ町村組合ヲ設クルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ組合町村ハ其ノ他ノ事務ノ全部又ハ一部ヲ共同處理スルコトヲ得
前項ノ場合ヲ除クノ外町村事務ノ一部ヲ共同處理セシムルコトヲ要スルトキハ所轄支廳長、支廳所轄ヲ異ニスルトキハ北海道廳長官ハ町村組合ヲ設クルコトヲ得
第五十四條 町村組合會議員ハ各町村會議員ヲ以テ之ニ充ツ但シ各町村ニ於テ其ノ議員中ヨリ更ニ互選セシメ之ニ充ツルコトヲ得此ノ場合ニ於テ其ノ選出スヘキ人員ハ北海道廳長官ノ設置ニ係ル組合ニ付テハ北海道廳長官、北海道廳支廳長ノ設置ニ係ル組合ニ付テハ當該支廳長之ヲ定ム
町村組合ニハ町村ニ關スル規定ヲ準用ス其ノ準用シ難キ事項及特ニ必要ナル事項ハ北海道廳長官之ヲ定ム
第六章 町村行政ノ監督
第五十五條 監督官廳ハ町村行政ヲ監督スル爲必要ナル命令ヲ發シ處分ヲ爲ス權ヲ有ス
上級監督官廳ハ下級監督官廳ノ町村行政ニ關シテ爲シタル命令若ハ處分ヲ停止シ若ハ取消スコトヲ得
第五十六條 本令ニ依ル訴願又ハ訴訟ハ決定書又ハ裁決書ヲ交付シ又ハ之ヲ吿知シタル日ヨリ二十一日以內ニ提起スヘシ
特別ノ規定アル場合ヲ除クノ外異議訴願又ハ訴訟ノ爲處分ノ執行ヲ停止セス
第五十七條 町村會ノ解散ハ北海道廳長官之ヲ命ス此ノ場合ニ於テハ三箇月以內ニ更ニ議員ヲ選擧スヘシ
北海道廳支廳長ハ十日以內ノ期間ヲ定メ町村會ノ停會ヲ命スルコトヲ得
第五十八條 左ニ揭クル事件ハ內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ受クヘシ
一 町村債ヲ起シ竝借入ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ヲ定メ又ハ變更スル事但シ第四十八條末項ノ借入金ハ此ノ限ニ在ラス
二 特別稅ヲ新設シ又ハ變更スル事
三 直接國稅二分ノ一ヲ超過スル附加稅ヲ賦課スル事
四 間接國稅ノ附加稅ヲ賦課スル事
第五十九條 左ニ揭クル事件ハ北海道廳長官ノ許可ヲ受クヘシ
一 町村規則ヲ設定スル事
二 使用料加入金手數料ヲ新設シ又ハ變更スル事
三 繼續費ヲ定メ又ハ變更スル事
四 均一ノ率ニ依ラスシテ國稅又ハ北海道地方稅ノ附加稅ヲ賦課スル事
五 直接北海道地方稅二分ノ一ヲ超過スル附加稅ヲ賦課シ又ハ間接北海道地方稅ニ附加稅ヲ賦課スル事
六 第四十四條ニ依リ町村住民ノ一部若ハ町村內ノ一部ニ費用ヲ負擔セシムル事
第六十條 左ニ揭クル事件ハ北海道廳支廳長ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
一 町村有不動產ニ關シ權利ノ得喪ヲ目的トスル行爲ヲ爲ス事
二 基本財產ノ處分ヲ爲ス事
三 第四十五條ノ準率ニ依ラスシテ夫役現品ヲ賦課スル事
第六十一條 前三條ニ規定スルモノノ外內務大臣ハ許可ヲ要スヘキ事項ヲ定ムルコトヲ得
主務大臣ハ其ノ許可ヲ要スヘキ事項中輕易ナルモノニ付テハ其ノ職權ヲ北海道廳長官ニ委任スルコトヲ得
第六十二條 北海道廳長官北海道廳支廳長ハ町村吏員ニ對シ懲戒處分ヲ行フコトヲ得北海道廳長官ノ懲戒處分ハ譴責、二十五圓以下ノ過怠金又ハ解職トシ北海道廳支廳長ノ懲戒處分ハ譴責又ハ十圓以下ノ過怠金トス
第六十三條 町村吏員其ノ職務ヲ盡サス又ハ權限ヲ越エタル爲町村ニ對シテ賠償スヘキコトアルトキハ北海道廳支廳長之ヲ裁決ス其ノ裁決ニ不服アル者ハ裁決書ヲ交付シ又ハ之ヲ吿知シタル日ヨリ七日以內ニ北海道廳長官ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
北海道廳支廳長ハ賠償ノ裁決ヲ爲シタルトキハ假ニ財產ヲ差押フルコトヲ得
第七章 附則
第六十四條 本令施行ノ時期ハ內務大臣之ヲ定ム
第六十五條 二級町村ト爲ス地ハ內務大臣之ヲ指定ス
第六十六條 町村會成立スル迄ノ間町村會ノ職務ハ町村長之ヲ行フヘシ
第六十七條 二級町村中島嶼其ノ他特別ノ事情アル地ニ付テハ內務大臣ハ特別ノ規程ヲ設クルコトヲ得
第六十八條 現役ノ屯田兵村ニハ本令ヲ施行セス
第六十九條 屯田兵土地給與規則及屯田兵移住給與規則ニ依リ給與シタル公有ノ財產ニ關シテハ屯田兵服役期限中及其ノ滿期ノ年ヨリ十箇年間ハ本令ヲ適用セス
第七十條 本令ニ於テ直接稅又ハ間接稅トスヘキ類別ハ內務大臣及大藏大臣之ヲ吿示ス
第七十一條 本令施行ニ付必要ナル事項ハ北海道廳長官之ヲ定ム
朕北海道二級町村制ノ改正ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十五年二月二十一日
内閣総理大臣 子爵 桂太郎
内務大臣 男爵 内海忠勝
勅令第三十七号
北海道二級町村制
第一章 総則
第一条 町村ハ法人トシ官ノ監督ヲ受ケ法律命令ノ範囲内ニ於テ其ノ公共事務及法律命令又ハ慣例ニ依リ町村ニ属スル事務ヲ処理スルモノトス
第二条 北海道一級町村制第三条ハ之ヲ二級町村ニ準用ス
第三条 町村内ニ住居ヲ占ムル者ハ総テ町村住民トス
町村住民ハ町村有財産及町村ノ営造物ヲ共用スル権利ヲ有シ町村ノ負担ヲ分任スル義務ヲ負フ但シ特ニ民法上ノ権利義務ヲ有スル者アルトキハ此ノ限ニ在ラス
第四条 町村ハ町村住民ノ権利義務、町村ノ事務、町村有財産及町村営造物ニ関シ町村規則ヲ設クルコトヲ得
第二章 町村吏員
第一款 組織及選任
第五条 町村ニ町村長書記収入役其ノ他必要ノ附属員ヲ置キ有給吏員トス
町村長収入役ハ町村又ハ町村組合ニ各一名トシ書記ノ定員ハ北海道庁長官之ヲ定ム
町村長ハ北海道庁長官之ヲ任免シ書記ハ北海道庁支庁長之ヲ任免シ其ノ他ノ附属員ハ町村長之ヲ任免ス
収入役ハ町村会ノ推薦ニ依リ北海道庁支庁長之ヲ任命シ其ノ任期ハ四箇年トス
収入役闕ケタルトキハ北海道庁支庁長ハ書記ノ一人ヲシテ臨時其ノ職務ヲ兼掌セシムルコトヲ得
特別ノ事情アル町村ニ於テハ北海道庁支庁長ハ北海道庁長官ノ許可ヲ得テ町村長又ハ書記ヲシテ収入役ノ事務ヲ兼掌セシムルコトヲ得
前二項ノ場合ヲ除クノ外町村長書記及収入役ハ相兼ヌルコトヲ得ス
収入役ノ保証金ニ付テハ町村規則ヲ以テ之ヲ定ム
第六条 町村ハ処務便宜ノ為町村規則ヲ以テ町村ノ区域ヲ数部ニ分チ毎部部長一名ヲ置クコトヲ得
町村ハ町村会ノ議決ニ依リ北海道庁支庁長ノ許可ヲ得テ臨時委員ヲ置クコトヲ得
部長及委員ハ名誉職トシ北海道庁支庁長之ヲ任免ス
第二款 職務権限
第七条 町村長ハ町村ヲ統轄シ町村ヲ代表シ其ノ行政事務ヲ担任ス
町村長ノ担任スル事務ノ概目左ノ如シ
一 町村会ノ議事ヲ準備シ並其ノ議決ヲ承認シ及執行スル事
二 町村有財産及町村ノ営造物ヲ管理スル事但シ特ニ之カ管理者アルトキハ其ノ事務ヲ監督スル事
三 町村ノ歳入ヲ管理シ歳入出予算其ノ他町村会ノ議決ニ依リ定マリタル収入支出ヲ命令シ会計及出納ヲ監視スル事
四 町村ノ諸証書及公文書類ヲ保管スル事
五 法律命令又ハ町村会ノ議決ニ依リ使用料加入金手数料町村税及夫役現品ヲ賦課徴収スル事
六 町村営造物ノ管理方法ヲ定ムル事
七 其ノ他法律命令ニ依リ町村長ノ職権ニ属スル事項
第八条 町村長ハ法律命令ノ定ムル所ニ依リ町村ニ関スル国及北海道地方費ノ行政事務ヲ掌ル
本条ニ記載スル事務ヲ執行スル為要スル費用ハ町村ノ負担トス
第九条 町村長ハ町村吏員ヲ監督シ其ノ任免ニ係ル町村吏員ニ対シ懲戒処分ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒処分ハ譴責及五円以下ノ過怠金トス
第十条 町村会ノ議決其ノ権限ヲ越エ、法律命令ニ背キ又ハ公益ヲ害シ其ノ他不当ノ議決ト認ムルトキハ町村長ハ自己ノ意見ニ依リ又ハ監督官庁ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ北海道庁支庁長ノ指揮ヲ請フヘシ但シ場合ニ依リ再議ニ付セスシテ直ニ北海道庁支庁長ノ指揮ヲ請フコトヲ得
第十一条 町村会成立セス又ハ招集ニ応セサルトキハ町村長ハ北海道庁支庁長ノ指揮ヲ請ヒ其ノ議決スヘキ事件ヲ処分スルコトヲ得
町村会其ノ議決スヘキ事件ヲ議決セス若ハ議了セサルトキ又ハ第三十三条第二項但書ノ場合ニ於テ全ク会議ヲ開クコト能ハサルトキハ前項ノ例ニ依ル
本条ノ処分ハ次回ノ会議ニ於テ之ヲ町村会ニ報告スヘシ
第十二条 書記及附属員ハ町村長ノ命ヲ承ケ庶務ニ従事ス
町村長事故アルトキハ上席ノ書記之ヲ代理ス
町村長ハ書記ヲシテ事務ノ一部ヲ臨時代理セシムルコトヲ得
第十三条 収入役ハ町村ノ出納其ノ他会計事務又ハ第八条ニ依ル国及北海道地方費ノ出納其ノ他会計事務ヲ掌ル
第十四条 部長ハ町村長ノ命ヲ承ケ部内ニ関スル町村長ノ事務ヲ補助ス
委員ハ町村長ノ指揮監督ヲ承ケ一時ノ委託ニ依リ事務ヲ処弁ス
第十五条 町村役場及町村吏員ノ処務規程ハ北海道庁長官ノ許可ヲ得テ北海道庁支庁長之ヲ定ム
町村吏員ノ服務紀律ハ北海道庁長官之ヲ定ム
第三款 給料及給与
第十六条 名誉職吏員ハ職務取扱ノ為要スル実費ノ弁償ヲ受クルコトヲ得
実費弁償額及其ノ支給方法ハ町村会ノ議決ヲ経テ北海道庁支庁長ノ許可ヲ受クヘシ
第十七条 町村長及書記ノ給料額旅費額及其ノ支給方法ハ北海道庁長官之ヲ定メ其ノ他有給吏員ノ給料額旅費額及其ノ支給方法ハ町村会ノ議決ヲ経北海道庁支庁長ノ許可ヲ受ケ之ヲ定ムヘシ若シ之ヲ許可スヘカラスト認ムルトキハ北海道庁支庁長之ヲ定ム
町村規則ヲ以テ有給吏員ノ退隠料退職給与金及遺族扶助料ニ関スル規定ヲ設クルコトヲ得
第十八条 給料旅費退隠料退職給与金遺族扶助料弁償等ハ町村ノ負担トス但シ町村長書記ノ給料及旅費ハ北海道地方費ヨリ之ヲ支給ス
第三章 町村会
第一款 組織及選挙
第十九条 町村会議員ハ其ノ町村ノ選挙人其ノ被選挙権アル者ヨリ之ヲ選挙ス其ノ定員ハ一町村四名以上十二名以下トシ北海道庁長官之ヲ定ム
第二十条 町村会議員ノ選挙権ヲ有スル者ハ帝国臣民ニシテ公権ヲ有スル独立ノ男子一年以来(一)町村内ニ住居ヲ占メ(二)町村ノ負担ヲ分任シ及(三)町村内ニ於テ地租年額十銭以上ヲ納メ又ハ直接国税北海道水産税若ハ直接国税ト北海道水産税トヲ合シテ年額五十銭以上ヲ納メ又ハ耕地一町歩若ハ宅地百坪以上ヲ所有シ又ハ総納税人ノ町村税平均額以上ノ町村税ヲ納ムル者ニ限ル
公費ヲ以テ貧民救助ヲ受ケタル後一年ヲ経サル者ハ選挙権ヲ有セス
前二項ノ期間ハ町村会ノ議決ニ依リ北海道庁長官ノ許可ヲ得テ之ヲ特免スルコトヲ得
町村ノ負担ヲ分任セシムルコトナキ町村ニ於テハ第一項(二)ノ要件ヲ闕クト雖其ノ他ノ要件ヲ具備スル者ハ選挙権ヲ有ス
第一項ニ於テ独立ト称スルハ満二十五歳以上ニシテ一戸ヲ構ヘ且治産ノ禁ヲ受ケサルモノヲ謂ヒ又耕宅地所有ノ期間ハ所有権ノ登記ヲ為シタル日ヨリ之ヲ起算ス
第二十一条 選挙権ヲ有スル者公権停止中又ハ租税滞納処分中ハ選挙権ヲ停止ス家資分散若ハ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ復権ノ決定アル迄又公権剥奪若ハ停止ヲ附加スヘキ重罪軽罪ノ為公判ニ付セラレタルトキハ其ノ裁判ノ確定ニ至ル迄亦同シ
陸海軍ノ現役ニ服スル者ハ選挙ニ参与スルヲ得ス現役以外ノ兵役ニ在ル者ニシテ戦時又ハ事変ニ際シ召集セラレタルトキ亦同シ
第二十二条 選挙権ヲ有スル者ハ総テ被選挙権ヲ有ス
左ニ掲クル者ハ被選挙権ヲ有セス
一 北海道庁ノ官吏
二 其ノ町村ノ有給吏員
三 検事警察官吏及収税官吏
四 神官神職僧侶其ノ他諸宗教師
五 小学校教員
六 選挙権停止中ノ者及第二十一条第二項ニ依リ選挙ニ参与スルコトヲ得サル者
官吏ニシテ当選シ之ニ応セムトスルトキハ所属長官ノ許可ヲ受クヘシ
第二十三条 町村会議員ハ名誉職トシ其ノ任期ハ二箇年トス
町村会議員中闕員アルトキハ補闕選挙ヲ行ヒ其ノ補闕ニ係ル議員ハ前任者ノ残任期間在職スルモノトス
町村会議員ニ関シテハ第十六条及第十八条ヲ準用ス
第二十四条 町村長ハ選挙前三十日ヲ期トシ其ノ日ノ現在ニ依リ選挙人名簿ヲ調製スヘシ
選挙人名簿ハ調製ノ日ヨリ十四日間町村役場ニ於テ関係者ノ縦覧ニ供スヘシ関係者ニ於テ異議アルトキハ縦覧期限内ニ之ヲ町村長ニ申立ツルコトヲ得町村長ハ其ノ申立ヲ受ケタル日ヨリ七日以内ニ之ヲ決定スヘシ
前項町村長ノ決定ニ不服アル者ハ北海道庁支庁長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ北海道庁長官ニ訴願スルコトヲ得
町村長ハ第二項異議ノ決定又ハ第三項訴願ノ裁決ノ確定ニ依リ名簿ノ修正ヲ要スルトキハ選挙ノ日ヨリ五日前ニ修正ヲ加ヘテ確定名簿ト為シ其ノ修正ノ要領ハ直ニ之ヲ公告スヘシ
確定名簿ハ確定ノ日ヨリ一年以内ニ於テ行フ選挙ニ之ヲ用フ
確定名簿ニ登録セラレサル者及登録セラレタルモ選挙権ヲ有セサル者ハ選挙ニ参与スルコトヲ得ス但シ選挙人名簿ニ登録セラルヘキ確定決定書又ハ確定裁決書ヲ所持スル者ハ此ノ限ニ在ラス
第二十五条 選挙ヲ行フトキハ町村長ハ選挙ノ日ヨリ少クトモ七日前ニ選挙ノ場所日時及議員ノ員数ヲ公告スヘシ
選挙場ノ開閉及選挙ノ取締ハ町村長之ニ任ス
選挙開場中ハ選挙人及選挙事務ニ従事スル者ヲ除クノ外選挙場ニ入ルコトヲ得ス
選挙ハ投票ヲ以テ之ヲ行フ投票ニハ被選挙人ノ氏名ヲ記シ封緘ノ上選挙人自ラ之ヲ町村長ニ差出スヘシ
選挙ハ代人ヲ以テ之ヲ行フコトヲ得代人ハ委任状ヲ町村長ニ差出スヘシ
選挙人投票ヲ差出ストキハ自己ノ氏名及住所ヲ町村長ニ申立テ町村長ハ選挙人名簿ニ照シテ之ヲ受ケ封緘ノ儘投票函ニ投入スヘシ
投票ノ時間終リタルトキハ町村長ハ選挙場ニ於テ投票ヲ検シ有効投票ノ多数ヲ得タル者ヲ当選トシ同数ナルトキハ年長者ヲ取リ同年ナルトキハ町村長自ラ抽籤シテ之ヲ定ム
町村長ハ当選者ニ当選ヲ通知シ其ノ人名ヲ公告シ同時ニ之ヲ北海道庁支庁長ニ報告スヘシ
第二十六条 選挙人選挙又ハ当選ノ効力ニ関シ異議アルトキハ選挙ノ日ヨリ七日以内ニ北海道庁支庁長ニ申立テ其ノ決定ニ不服アル者ハ北海道庁長官ニ訴願スルコトヲ得
北海道庁支庁長ニ於テ選挙又ハ当選ノ効力ニ関シ異議アルトキハ之ヲ取消スコトヲ得但シ北海道庁長官ノ認許ヲ受クルコトヲ要ス
第二十七条 左ノ投票ハ無効トス
一 一投票中二人以上ノ氏名ヲ記載セルモノ
二 被選挙人ノ何人タルヲ確認シ難キモノ
三 被選挙権ナキ者ノ氏名ヲ記載シタルモノ
四 被選挙人ノ氏名ノ外他事ヲ記入シタルモノ但シ官位、職業、身分、住所又ハ敬称ノ類ヲ記入スルハ此ノ限ニ在ラス
五 投票用紙ヲ一定シタル場合ニ於テ其ノ用紙ヲ用井サルモノ
投票ノ受理及効力ニ関スル事項ハ町村長之ヲ決ス
第二十八条 町村会議員中被選挙権ヲ有セサル者アルトキハ其ノ職ヲ失フ
前項ニ該当スル者ハ北海道庁支庁長之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アル者ハ北海道庁長官ニ訴願スルコトヲ得
町村会議員ハ本条ノ決定確定シ又ハ裁決アル迄職務ヲ行フコトヲ妨ケス
第二十九条 町村会議員相当ノ理由ナクシテ其ノ当選ヲ辞シ又ハ任期中退職スルトキハ町村長ハ町村会ノ議決ニ依リ北海道庁長官ノ許可ヲ経二年以内選挙権被選挙権ヲ停止シ場合ニ依リ同年期間町村税率四分ノ一以下ヲ増加スルコトヲ得
第二款 職務権限及処務規程
第三十条 町村会ノ議決ヲ経ヘキ事件左ノ如シ
一 町村規則ヲ設定スル事
二 歳入出予算ヲ定ムル事
三 法律命令ニ定ムルモノヲ除クノ外使用料加入金手数料町村税又ハ夫役現品ノ賦課徴収ノ法ヲ定ムル事
四 町村有不動産ニ関シ権利ノ得喪ヲ目的トスル行為ヲ為ス事
五 基本財産ノ処分ヲ為ス事
六 歳入出予算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ニ義務ノ負担ヲ為シ又ハ権利ノ棄却ヲ為ス事
七 町村有財産ノ管理方法ヲ定ムル事
八 町村吏員ノ身元保証ヲ徴シ及其ノ額ヲ定ムル事
九 町村ニ係ル訴訟又ハ和解ニ関スル事
十 其ノ他法律命令ニ依リ町村会ノ職権ニ属セラレタル事項
町村会ハ町村長ノ報告書ヲ請求シテ町村有財産ノ管理又ハ収入支出ノ正否ヲ検査スルコトヲ得
町村会ハ前項ノ目的ノ為ニ五名以下ノ委員ヲ議員中ヨリ選挙シ町村長又ハ其ノ指命シタル吏員立会ノ上関係書類又ハ金庫ヲ検閲セシムルコトヲ得
町村会ハ町村ノ公益ニ関スル事件ニ付意見書ヲ町村長又ハ監督官庁ニ差出スコトヲ得
町村会ハ町村長又ハ官庁ノ諮問アルトキハ意見ヲ答申スヘシ
第三十一条 町村会ハ町村長ヲ以テ議長トス町村長故障アルトキハ議員中ヨリ仮議長ヲ選挙スヘシ
議長ハ会議ノ事ヲ総理シ会議ノ順序ヲ定メ其ノ日ノ会議ヲ開閉シ議場ノ秩序ヲ保持ス
第三十二条 町村長及其ノ委任ヲ受ケタル吏員ハ会議ニ出席シ及発言スルコトヲ得
第三十三条 町村会ハ会議ノ必要アル毎ニ町村長之ヲ招集ス但シ軽易ノ事件ハ会議ヲ開カス書面ヲ以テ議員ノ意見ヲ聞キ其ノ三分ノ二以上ノ同意アルトキハ可決ト為シ施行スルコトヲ得
町村会ハ議員定員ノ半数以上出席スルニ非サレハ会議ヲ開クヲ得ス但シ同一ノ事件ニ付集会再回ニ至ルモ仍半数ニ満タサルトキハ此ノ限ニ在ラス
町村会ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス可否同数ナルトキハ議長ノ可否スル所ニ依ル
北海道庁長官ハ会議及傍聴ノ規律及取締ニ関スル規定ヲ設クルコトヲ得
町村会ハ北海道庁支庁長ノ許可ヲ得テ会議規則及傍聴規則ヲ設クルコトヲ得前二項ノ会議ニ関スル規則ニハ之ニ違背シタル議員ニ対シ町村会ノ議決ニ依リ五日以内出席ヲ停止シ又ハ二円以下ノ過怠金ヲ科スル規程ヲ設クルコトヲ得
町村会ハ町村長之ヲ開閉ス
第三十四条 町村会ニ書記ヲ置キ議長ニ隷属シテ庶務ヲ処理セシム
書記ハ町村吏員中ニ就キ町村長之ヲ命ス
議長ハ書記ヲシテ会議録ヲ製シ会議ノ顛末及出席議員ノ氏名ヲ記載セシムヘシ会議録ニハ議長及議員一名以上之ニ署名捺印スヘシ
第四章 町村ノ財務
第一款 町村有財産及収入
第三十五条 町村ハ不動産積立金穀等ヲ以テ一般又ハ特別ノ基本財産ト為シ之ヲ維持スル義務アリ
北海道庁長官ハ必要ト認ムルトキハ額ヲ定メテ基本財産ノ蓄積ヲ命スルコトヲ得
第三十六条 町村ハ北海道庁支庁長ノ許可ヲ得テ国、公共団体又ハ個人ノ事業ニ対シ寄附又ハ補助ヲ為スコトヲ得
第三十七条 町村ハ必要ナル支出及法律命令ニ依ル支出ヲ負担スヘシ但シ町村ノ事情ニ依リ北海道地方費ヨリ其ノ全部又ハ一部ヲ補助ス
第三十八条 町村ハ使用料、加入金、手数料、町村税及夫役現品ヲ徴収スルコトヲ得
第三十九条 使用料ハ町村有財産又ハ町村営造物ノ使用ニ付、手数料ハ特ニ一個人ノ為ニスル事務ニ付、加入金ハ町村有財産ヲ町村住民ノ全部又ハ一部ノ直接ノ共用ニ供スル場合ニ之ヲ徴収ス
第四十条 町村税トシテ賦課スルコトヲ得ヘキ目左ノ如シ
一 国税北海道地方税ノ附加税
二 直接若ハ間接ノ特別税
第四十一条 三箇月以上町村内ニ住居ヲ構ヘ又ハ滞在スル者ハ其ノ住居ヲ構ヘタル初又ハ滞在ノ初ニ遡リ町村税ヲ納ムル義務ヲ負フ
町村内ニ於テ土地家屋ヲ所有シ若ハ使用シ又ハ町村内ニ於テ営業所ヲ定メテ営業ヲ為シ又ハ町村内ニ於テ或ル行為ヲ為ス者ハ土地家屋営業若ハ其ノ所得ニ対シ又ハ行為ニ対シテ賦課スル町村税ヲ納ムル義務ヲ負フ其ノ法人タルトキ亦同シ但シ国ノ事業ハ此ノ限ニ在ラス
第四十二条 所得税ノ附加税ヲ賦課シ及町村ニ於テ特別ニ所得税ヲ賦課スルトキハ納税義務者ノ町村外ニ於テ所有シ若ハ使用スル土地家屋又ハ町村外ニ於テ営業所ヲ定メタル営業ヨリ収入スル所得ハ之ヲ控除スヘシ
数市区町村ニ住居ヲ構ヘ又ハ滞在スル者ニ前項ノ町村税ヲ賦課スルトキハ其ノ所得ヲ各市区町村ニ平分シ其ノ一部ニノミ課税スヘシ但シ土地家屋又ハ営業所ヲ定メタル営業ヨリ収入スル所得ハ此ノ限ニ在ラス
数市区町村ニ渉リ営業所ヲ定メテ営業ヲ為シ且其ノ本税ヲ分別シテ納メサル者ニ対シ営業税ノ附加税ヲ賦課スルトキハ北海道庁長官ノ定ムル所ニ従ヒ本税額ヲ各市区町村ニ分割シテ其ノ一部ニノミ賦課スヘシ
第四十三条 所得税法第五条ニ掲クル所得ニ対シテハ町村税ヲ賦課スルコトヲ得ス
国又ハ公共団体ノ直接ノ公用ニ供スル土地家屋営造物ニ対シテハ国又ハ公共団体ニ町村税ヲ賦課スルコトヲ得ス
社寺、官立公立ノ学校病院又ハ国若ハ公共ノ施設ニ係リ学芸美術慈善ノ用ニ供スル土地家屋営造物ニ対シテハ社寺、国又ハ公共団体ニ町村税ヲ賦課スルコトヲ得ス
国有ノ山林又ハ荒蕪地ニ対シテハ国ニ町村税ヲ賦課スルコトヲ得ス
屯田兵土地給与規則及屯田兵移住給与規則ニ依リ給与シタル公有財産ニ対シテハ第七十一条ニ掲クル期間中ハ町村税ヲ賦課スルコトヲ得ス
本条ノ外町村税ヲ賦課スルコトヲ得サルモノハ別段ノ法律勅令ニ定ムル所ニ従フ
皇族ニ係ル町村税ノ賦課ハ追テ法律勅令ヲ以テ定ムル迄現今ノ例ニ依ル
第四十四条 町村住民ノ一部ノミヲ利スル営造物ノ建設維持ノ費用ハ其ノ関係者ニ負担セシメ町村ノ一部ノミヲ利スル営造物ノ建設維持ノ費用ハ其ノ部内ニ於テ町村税ヲ納ムル義務アル者ニ負担セシムルコトヲ得但シ営造物ノ収入アルトキハ先ツ其ノ費用ニ充ツヘシ
第四十五条 夫役現品ハ急迫ノ場合ヲ除クノ外直接町村税ヲ準率ト為シ直接町村税ヲ賦課セサル町村ニ於テハ直接国税又ハ直接北海道地方税ヲ準率ト為シ且之ヲ金額ニ算出シテ納税義務者ニ賦課ス
学芸美術手工ニ関スル労役ハ夫役トシテ之ヲ賦課スルコトヲ得ス
夫役ヲ賦課セラレタル者ハ本人自ラ之ニ当リ又ハ適当ノ代人ヲ出スコトヲ得又夫役現品ハ急迫ノ場合ヲ除クノ外金円ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第四十六条 町村ノ公法上ノ収入ヲ定期内ニ納メサル者アルトキハ町村長ハ国税ノ滞納処分ニ関スル規定ニ依リ之ヲ処分スヘシ其ノ督促手数料ニ関シテハ町村規則ヲ以テ別段ノ規程ヲ設クルコトヲ得
納税義務者中無資力ナル者アルトキハ町村長ノ意見ヲ以テ会計年度内ニ限リ納税延期ヲ許スコトヲ得其ノ年度ヲ超ユル場合ニ於テハ町村会ノ議決ニ依ル
本条ニ記載スル徴収金ハ国、北海道地方費及府県ノ徴収金ニ次テ先取特権ヲ有シ其ノ追徴還付及時効ニ付テハ国税ノ例ニ依ル
第四十七条 町村税ノ賦課ヲ受ケタル者其ノ賦課ニ付違法又ハ錯誤アリト認ムルトキハ納税ノ告知ヲ受ケタル日ヨリ三箇月以内ニ町村長ニ異議ヲ申立ツルコトヲ得
前項ノ異議ハ町村長之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アル者ハ北海道庁支庁長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ北海道庁長官ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第四十八条 町村ハ其ノ負債ヲ償還スル為又ハ天災地変等已ムヲ得サル支出若ハ町村ノ永久ノ利益ト為ルヘキ支出ヲ要スルニ当リ通常ノ歳入ヲ増加スルトキハ町村住民ノ負担ニ堪ヘサル場合ニ限リ町村会ノ議決ヲ経テ町村債ヲ起スコトヲ得
町村債ヲ起スニ付町村会ノ議決ヲ経ルトキハ併セテ借入ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ニ付議決ヲ経ヘシ
町村債償還ノ初期ハ起債ノ時ヨリ三年以内ト為シ年年ノ償還歩合ヲ定メ起債ノ時ヨリ三十年以内ニ還了スヘシ
町村債ノ総額ハ毎年ノ利子額其ノ町村経常支出最近三年平均額ノ三分ノ一ヲ超過スヘカラス
町村ハ予算内ノ支出ヲ為スニ付必要アルトキハ町村会議決ヲ経テ一時ノ借入金ヲ為スコトヲ得此ノ借入金ハ其ノ年度ノ収入ヲ以テ償還スヘシ
第二款 予算及決算
第四十九条 町村長ハ毎会計年度歳入出予算ヲ調製シ少クトモ年度一箇月前ニ町村会ノ議決ヲ経ヘシ
町村ノ会計年度ハ政府ノ会計年度ニ同シ
町村長ハ町村会ノ議決ヲ経テ既定予算ノ追加又ハ更正ヲ為スコトヲ得
予算外ノ支出又ハ予算超過ノ支出ニ充ツル為予備費ヲ設クヘシ但シ予備費ハ町村会ノ否決シタル費途ニ充ツルコトヲ得ス
町村ノ費用ヲ以テ支弁スヘキ事業ニシテ数年ヲ期シ施行スヘキモノ又ハ数年ヲ期シテ其ノ費用ヲ支出スヘキモノハ町村会ノ議決ヲ経テ其ノ年期間各年度ノ支出額ヲ定メ継続費ト為スコトヲ得
町村ハ町村規則ヲ以テ特別会計ヲ設クルコトヲ得
予算調製ノ式並費目流用其ノ他財務ニ関シ必要ナル規程ハ北海道庁長官之ヲ定ム
予算ハ町村会ノ議決ヲ経タル後三日以内ニ之ヲ北海道庁支庁長ニ報告シ其ノ要領ヲ公告スヘシ
第五十条 予算ノ議決ヲ経タルトキハ町村長ヨリ其ノ謄本ヲ収入役ニ交付スヘシ其ノ予算中監督官庁ノ許可ヲ受クヘキ事項アルトキハ先ツ其ノ許可ヲ受クヘシ
収入役ハ町村長ノ命令アルニ非サレハ支払ヲ為スコトヲ得ス町村長ノ命令ヲ受クルモ其ノ支出予算中予定ナキカ又ハ其ノ命令前条第四項ノ規定ニ依ラサルトキハ支払ヲ為スコトヲ得ス
前項ノ規定ニ背キタル支払ハ総テ収入役ノ責任ニ帰ス
第五十一条 町村ノ出納ハ毎月例日ヲ定メテ検査ヲ行ヒ又毎年少クトモ一回臨時検査ヲ行フヘシ
検査ハ町村長又ハ其ノ代理者之ヲ行ヒ臨時検査ニハ町村会ノ選挙シタル議員一名以上ノ立会ヲ要ス
第五十二条 町村ノ出納閉鎖ハ翌年度六月三十日ヲ以テ期限トス
決算ハ出納閉鎖期限後一箇月以内ニ証書類ヲ添ヘ収入役ヨリ之ヲ町村長ニ提出スヘシ町村長ハ之ヲ審査シ意見ヲ附シ次ノ通常予算会議ニ於テ之ヲ町村会ニ報告スヘシ
町村長ハ決算報告書及之ニ関スル町村会ノ議決ヲ北海道庁支庁長ニ報告シ決算ノ要領ヲ公告スヘシ
第五章 町村組合
第五十三条 町村役場事務ヲ共同処理セシムル為北海道庁長官ハ町村組合ヲ設クルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ組合町村ハ其ノ他ノ事務ノ全部又ハ一部ヲ共同処理スルコトヲ得
前項ノ場合ヲ除クノ外町村事務ノ一部ヲ共同処理セシムルコトヲ要スルトキハ所轄支庁長、支庁所轄ヲ異ニスルトキハ北海道庁長官ハ町村組合ヲ設クルコトヲ得
第五十四条 町村組合会議員ハ各町村会議員ヲ以テ之ニ充ツ但シ各町村ニ於テ其ノ議員中ヨリ更ニ互選セシメ之ニ充ツルコトヲ得此ノ場合ニ於テ其ノ選出スヘキ人員ハ北海道庁長官ノ設置ニ係ル組合ニ付テハ北海道庁長官、北海道庁支庁長ノ設置ニ係ル組合ニ付テハ当該支庁長之ヲ定ム
町村組合ニハ町村ニ関スル規定ヲ準用ス其ノ準用シ難キ事項及特ニ必要ナル事項ハ北海道庁長官之ヲ定ム
第六章 町村行政ノ監督
第五十五条 監督官庁ハ町村行政ヲ監督スル為必要ナル命令ヲ発シ処分ヲ為ス権ヲ有ス
上級監督官庁ハ下級監督官庁ノ町村行政ニ関シテ為シタル命令若ハ処分ヲ停止シ若ハ取消スコトヲ得
第五十六条 本令ニ依ル訴願又ハ訴訟ハ決定書又ハ裁決書ヲ交付シ又ハ之ヲ告知シタル日ヨリ二十一日以内ニ提起スヘシ
特別ノ規定アル場合ヲ除クノ外異議訴願又ハ訴訟ノ為処分ノ執行ヲ停止セス
第五十七条 町村会ノ解散ハ北海道庁長官之ヲ命ス此ノ場合ニ於テハ三箇月以内ニ更ニ議員ヲ選挙スヘシ
北海道庁支庁長ハ十日以内ノ期間ヲ定メ町村会ノ停会ヲ命スルコトヲ得
第五十八条 左ニ掲クル事件ハ内務大臣及大蔵大臣ノ許可ヲ受クヘシ
一 町村債ヲ起シ並借入ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ヲ定メ又ハ変更スル事但シ第四十八条末項ノ借入金ハ此ノ限ニ在ラス
二 特別税ヲ新設シ又ハ変更スル事
三 直接国税二分ノ一ヲ超過スル附加税ヲ賦課スル事
四 間接国税ノ附加税ヲ賦課スル事
第五十九条 左ニ掲クル事件ハ北海道庁長官ノ許可ヲ受クヘシ
一 町村規則ヲ設定スル事
二 使用料加入金手数料ヲ新設シ又ハ変更スル事
三 継続費ヲ定メ又ハ変更スル事
四 均一ノ率ニ依ラスシテ国税又ハ北海道地方税ノ附加税ヲ賦課スル事
五 直接北海道地方税二分ノ一ヲ超過スル附加税ヲ賦課シ又ハ間接北海道地方税ニ附加税ヲ賦課スル事
六 第四十四条ニ依リ町村住民ノ一部若ハ町村内ノ一部ニ費用ヲ負担セシムル事
第六十条 左ニ掲クル事件ハ北海道庁支庁長ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
一 町村有不動産ニ関シ権利ノ得喪ヲ目的トスル行為ヲ為ス事
二 基本財産ノ処分ヲ為ス事
三 第四十五条ノ準率ニ依ラスシテ夫役現品ヲ賦課スル事
第六十一条 前三条ニ規定スルモノノ外内務大臣ハ許可ヲ要スヘキ事項ヲ定ムルコトヲ得
主務大臣ハ其ノ許可ヲ要スヘキ事項中軽易ナルモノニ付テハ其ノ職権ヲ北海道庁長官ニ委任スルコトヲ得
第六十二条 北海道庁長官北海道庁支庁長ハ町村吏員ニ対シ懲戒処分ヲ行フコトヲ得北海道庁長官ノ懲戒処分ハ譴責、二十五円以下ノ過怠金又ハ解職トシ北海道庁支庁長ノ懲戒処分ハ譴責又ハ十円以下ノ過怠金トス
第六十三条 町村吏員其ノ職務ヲ尽サス又ハ権限ヲ越エタル為町村ニ対シテ賠償スヘキコトアルトキハ北海道庁支庁長之ヲ裁決ス其ノ裁決ニ不服アル者ハ裁決書ヲ交付シ又ハ之ヲ告知シタル日ヨリ七日以内ニ北海道庁長官ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
北海道庁支庁長ハ賠償ノ裁決ヲ為シタルトキハ仮ニ財産ヲ差押フルコトヲ得
第七章 附則
第六十四条 本令施行ノ時期ハ内務大臣之ヲ定ム
第六十五条 二級町村ト為ス地ハ内務大臣之ヲ指定ス
第六十六条 町村会成立スル迄ノ間町村会ノ職務ハ町村長之ヲ行フヘシ
第六十七条 二級町村中島嶼其ノ他特別ノ事情アル地ニ付テハ内務大臣ハ特別ノ規程ヲ設クルコトヲ得
第六十八条 現役ノ屯田兵村ニハ本令ヲ施行セス
第六十九条 屯田兵土地給与規則及屯田兵移住給与規則ニ依リ給与シタル公有ノ財産ニ関シテハ屯田兵服役期限中及其ノ満期ノ年ヨリ十箇年間ハ本令ヲ適用セス
第七十条 本令ニ於テ直接税又ハ間接税トスヘキ類別ハ内務大臣及大蔵大臣之ヲ告示ス
第七十一条 本令施行ニ付必要ナル事項ハ北海道庁長官之ヲ定ム