保険業法
法令番号: 法律第六十九號
公布年月日: 明治33年3月22日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル保險業法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十三年三月二十日
內閣總理大臣 侯爵 山縣有朋
司法大臣 淸浦奎吾
農商務大臣 曾禰荒助
法律第六十九號
保險業法
第一章 總則
第一條 保險事業ハ主務官廳ノ免許ヲ受クルニ非サレハ之ヲ營ムコトヲ得ス
第二條 保險事業ハ株式會社又ハ相互會社ニ非サレハ之ヲ營ムコトヲ得ス
第三條 保險會社ハ他ノ事業ヲ兼ヌルコトヲ得ス
第四條 同一ノ會社ニシテ生命保險ト損害保險トヲ併セテ其目的ト爲スコトヲ得ス
第五條 損害保險ヲ目的トスル會社カ免許ヲ申請スルニハ申請書ニ左ノ書類ヲ添附スルコトヲ要ス
一 定款
二 事業方法書
三 普通保險約款
四 保險料及ヒ責任準備金算出ノ基礎ニ關スル書類
第六條 生命保險ヲ目的トスル會社カ免許ヲ申請スルニハ申請書ニ前條ニ揭ケタル書類及ヒ責任準備金利用ノ方法ヲ記載シタル書類ヲ添附スルコトヲ要ス
第七條 普通保險約款ニハ左ニ揭ケタル事項ヲ定ムルコトヲ要ス
一 保險會社カ保險金額ノ支拂ヲ爲スヘキ事由
二 保險契約無效ノ原因
三 保險會社カ其義務ヲ免ルヘキ事由
四 保險會社ノ義務ノ範圍ヲ定ムル方法及ヒ其義務履行ノ時期
五 保險契約者又ハ被保險者カ其義務不履行ノ爲メニ受クヘキ損失
六 保險契約ノ全部又ハ一部ノ解除ノ原因及ヒ其解除ノ場合ニ於テ當事者ノ有スル權利義務
七 保險契約者、被保險者又ハ保險金額ヲ受取ルヘキ者ノ利益又ハ剩餘金ノ分配ニ與カル權利ノ有無及ヒ範圍
第八條 第五條及ヒ第六條ニ揭ケタル書類ヲ變更スルニハ主務官廳ノ認可ヲ得ルコトヲ要ス
第九條 保險會社ノ業務ハ主務官廳ノ監督ニ屬ス
主務官廳ハ本法及ヒ第五條竝ニ第六條ニ揭ケタル書類ノ規定ニ從ハシムル爲メ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十條 主務官廳ハ何時ニテモ保險會社ヲシテ其事業ノ報吿ヲ爲サシメ又ハ會社ノ業務及ヒ會社財產ノ狀況ヲ檢査スルコトヲ得
第十一條 主務官廳カ保險會社ノ業務又ハ會社財產ノ狀況ニ依リ其事業ノ繼續ヲ困難ナリト認ムルトキハ其事業ノ停止ヲ命シ又ハ期間ヲ定メテ業務執行ノ方法若クハ計算ノ基礎ノ變更ヲ命シ其他保險契約者、被保險者又ハ保險金額ヲ受取ルヘキ者ノ權利ヲ保護スルニ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十二條 保險會社カ主務官廳ノ命令ニ違反シタルトキハ主務官廳ハ事業ノ停止若クハ取締役ノ改選ヲ命シ又ハ免許ヲ取消スコトヲ得
第十三條 保險會社ノ淸算ハ主務官廳ノ監督ニ屬ス
主務官廳ハ何時ニテモ前項ノ監督ニ必要ナル檢査ヲ爲スコトヲ得
第二章 株式會社
第十四條 保險ヲ營業トスル株式會社ノ定款ニハ商法第百二十條第二號乃至第八號ニ揭ケタル事項ノ外左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 保險ノ種類及ヒ營業ノ範圍
二 設立費用償却ノ方法
第十五條 會社ハ其商號ニ保險ノ種類ヲ示スコトヲ要ス
第十六條 會社ノ資本ハ十萬圓ヲ下ルコトヲ得ス
第十七條 株式申込證ニハ第十四條及ヒ商法第百二十六條第二項ニ揭ケタル事項ヲ記載スルコトヲ要ス
第十八條 會社ハ第十四條及ヒ商法第百四十一條第一項ニ揭ケタル事項ヲ登記スルコトヲ要ス
第十九條 第五十八條ノ規定ハ株式會社ノ計算ニ之ヲ準用ス但設立費用及ヒ營業費ノ全額ヲ償却シタル後ニ非サレハ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ得ス
第二十條 商法第二百十條ノ規定ハ保險ヲ營業トスル株式會社ニハ之ヲ適用セス
第二十一條 會社カ營業ノ免許ヲ取消サレタルトキハ之ニ因リテ解散ス
第二十二條 會社カ合併ノ決議ヲ爲シタルトキハ合併契約書及ヒ各會社ノ財產目錄竝ニ貸借對照表ヲ損害保險ニ在リテハ各被保險者ニ生命保險ニ在リテハ各保險契約者ニ送付シ異議アラハ一定ノ期間內ニ之ヲ述フヘキ旨ノ催吿ヲ發スルコトヲ要ス但其期間ハ二个月ヲ下ルコトヲ得ス
被保險者又ハ保險契約者カ前項ノ期間內ニ會社ノ合併ニ對シテ異議ヲ述ヘサリシトキハ之ヲ承認シタルモノト看做ス
異議ヲ述ヘタル者ノ保險金額カ會社ノ保險金額ノ十分ノ一以上ナルトキハ會社ハ合併ヲ爲スコトヲ得ス
會社カ前三項ノ規定ニ依リテ合併ヲ爲シタルトキハ其合併ハ之ヲ以テ異議ヲ述ヘタル者ニモ對抗スルコトヲ得
會社カ被保險者又ハ保險契約者ニ催吿ヲ爲サスシテ合併ヲ爲シタルトキハ其合併ハ之ヲ以テ會社カ催吿ヲ爲ササリシ者ニ對抗スルコトヲ得ス
第二十三條 第七十三條第二項、第七十四條及ヒ第七十七條ノ規定ハ保險ヲ營業トスル株式會社ニ之ヲ準用ス
第二十四條 第七十八條ノ規定ハ保險ヲ營業トスル株式會社カ第二十一條又ハ商法第七十四條第七號、第二百二十一條第二號、第三號ニ揭ケタル事由ニ因リテ解散シタル場合ニ之ヲ準用ス
第二十五條 合併ニ因ル解散ノ登記ノ申請書ニハ第二十二條第一項ノ規定ニ依ル催吿ヲ爲シタルコト、若シ異議ヲ述ヘタル者アルトキハ其者ノ保險金額カ會社ノ保險金額ノ十分ノ一未滿ナルコトヲ證スル書面ヲ添附スルコトヲ要ス
第三章 相互會社
第一節 設立
第二十六條 相互會社ノ發起人ハ定款ヲ作リ之ニ左ノ事項ヲ記載シテ署名又ハ記名捺印スルコトヲ要ス
一 保險ノ種類及ヒ事業ノ範圍
二 名稱
三 事務所ノ所在地
四 基金ノ總額
五 基金ノ醵出者カ有スヘキ權利
六 社員ノ責任ノ種類
七 基金及ヒ設立費用ノ償却ノ方法
八 剩餘金分配ノ方法
九 會社カ公吿ヲ爲ス方法
十 存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メタルトキハ其時期又ハ事由
第二十七條 相互會社ハ其名稱ニ保險ノ種類ヲ示シ且之ニ相互會社ナル文字ヲ附スルコトヲ要ス
第二十八條 相互會社ノ基金ハ十萬圓ヲ下ルコトヲ得ス
基金ノ支拂ハ金錢以外ノ財產ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得ス
第二十九條 相互會社ノ社員ノ數ハ百人ヲ下ルコトヲ得ス
第三十條 發起人ニ非サル者カ社員タラントスルトキハ入社申込證二通ニ保險ノ目的及ヒ保險金額ヲ記載シ之ニ署名又ハ記名捺印スルコトヲ要ス但會社カ主タル事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ爲シタル後社員タラントスル者ハ此限ニ在ラス
入社申込證ハ發起人之ヲ作リ之ニ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 定款作成ノ年月日
二 第二十六條ニ揭ケタル事項
三 基金ノ醵出者ノ氏名、住所及ヒ其各自カ醵出スル金額
四 發起人ノ氏名、住所
五 發起人カ報酬ヲ受クヘキトキハ其報酬ノ額
六 設立ノ際募集セントスル社員ノ數
第三十一條 社員カ豫定ノ數ニ滿チタルトキハ發起人ハ遲滯ナク創立總會ヲ招集スルコトヲ要ス
創立總會ニ於テハ社員ノ半數以上出席シ其四分ノ三以上ノ同意ヲ以テ一切ノ決議ヲ爲ス
第四十三條及ヒ商法第百五十六條第一項、第二項、第百六十一條第三項、第四項、第百六十三條ノ規定ハ相互會社ノ創立總會ニ之ヲ準用ス
第三十二條 社員カ豫定ノ數ニ滿チタル後六个月內ニ發起人カ創立總會ヲ招集セサルトキハ申込人ハ其申込ヲ取消スコトヲ得
第三十三條 相互會社ハ創立總會ノ終結ニ因リテ成立ス
第三十四條 取締役ハ創立總會終結ノ日ヨリ二週間內ニ各事務所ノ所在地ニ於テ左ノ事項ヲ登記スルコトヲ要ス
一 第二十六條第一號、第二號及ヒ第四號乃至第十號ニ揭ケタル事項
二 事務所
三 取締役及ヒ監査役ノ氏名、住所
前項ニ揭ケタル事項中ニ變更ヲ生シタルトキハ二週間內ニ各事務所ノ所在地ニ於テ其登記ヲ爲スコトヲ要ス
第三十五條 商法第九條、第十一條乃至第十五條、第十九條乃至第三十八條、第四十條、第四十一條、第四十四條、第四十五條、第百十九條、第百三十三條及ヒ第百三十八條ノ規定ハ相互會社ニ之ヲ準用ス
第二節 社員ノ權利義務
第三十六條 社員ハ會社ノ債權者ニ對シ直接ニ義務ヲ負フコトナシ
第三十七條 會社ノ債務ニ關スル社員ノ責任ハ左ノ三種トス
一 社員ノ全員カ無限ノ責任ヲ負フモノ
二 社員ノ全員カ保險料ヲ限度トシテ責任ヲ負フモノ
三 社員ノ全員カ保險料ノ外一定ノ金額ヲ限度トシテ責任ヲ負フモノ
第三十八條 社員ハ會社ニ拂込ムヘキ金額ニ付キ相殺ヲ以テ會社ニ對抗スルコトヲ得ス
第三十九條 社員カ保險料ノ外會社ノ債務ニ關シ醵出スヘキモノアルトキハ其金額及ヒ其醵出ノ方法ハ定款ヲ以テ之ヲ定ム
第四十條 損害保險ヲ目的トスル相互會社ノ社員カ保險ノ目的ヲ讓渡シタルトキハ讓受人ハ會社ノ承諾ヲ得テ讓渡人ノ權利義務ヲ承繼スルコトヲ得
第四十一條 生命保險ヲ目的トスル相互會社ノ社員ハ會社ノ承諾ヲ得テ他人ヲシテ其權利義務ヲ承繼セシムルコトヲ得
第三節 會社ノ機關
第四十二條 相互會社ハ定款ヲ以テ社員總會ニ代ハルヘキ機關ヲ設クルコトヲ得此機關ニハ社員總會ニ關スル規定ヲ準用ス
第四十三條 社員ハ總會ニ於テ各一個ノ議決權ヲ有ス但定款ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス
第四十四條 十分ノ一以上ノ社員ハ總會ノ目的及ヒ其招集ノ理由ヲ記載シタル書面ヲ取締役ニ提出シテ總會ノ招集ヲ請求スルコトヲ得但此權利ノ行使ニ付キ定款ヲ以テ他ノ標準ヲ定ムルコトヲ得
商法第百六十條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第四十五條 商法第百五十六條第一項、第二項、第百五十七條第一項、第百五十八條第一項、第百五十九條、第百六十一條第一項、第三項、第四項及ヒ第百六十三條ノ規定ハ相互會社ノ社員總會ニ之ヲ準用ス
第四十六條 取締役及ヒ監査役ハ社員總會ニ於テ之ヲ選任ス
第四十七條 取締役及ヒ監査役ハ社員タルコトヲ要セス
第四十八條 取締役ハ社員總會ノ認許アルニ非サレハ同種ノ保險ヲ目的トスル他ノ會社ノ無限責任社員、業務擔當社員、取締役又ハ監査役ト爲ルコトヲ得ス
第四十九條 取締役ハ社員名簿ヲ備ヘ之ニ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 社員ノ氏名、住所
二 各社員ノ保險契約ノ種類、保險金額及ヒ保險料
三 第三十七條第三號ノ場合ニ於テ各社員ノ責任ノ限度
第五十條 取締役ハ定款及ヒ總會ノ決議錄ヲ各事務所ニ備ヘ置キ且社員名簿ヲ主タル事務所ニ備ヘ置クコトヲ要ス
社員及ヒ會社ノ債權者ハ事業時間內何時ニテモ前項ニ揭ケタル書類ノ閱覽ヲ求ムルコトヲ得
第五十一條 社員總會ニ於テ取締役ニ對シテ訴ヲ提起スルコトヲ決議シタルトキ又ハ之ヲ否決シタル場合ニ於テ十分ノ一以上ノ社員カ之ヲ監査役ニ請求シタルトキハ會社ハ決議又ハ請求ノ日ヨリ一个月內ニ訴ヲ提起スルコトヲ要ス但起訴ノ請求ヲ爲ス者ニ付キ定款ヲ以テ他ノ標準ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ請求ヲ爲シタル社員ハ監査役ノ請求ニ因リ相當ノ擔保ヲ供スルコトヲ要ス
會社カ敗訴シタルトキハ右ノ社員ハ會社ニ對シテノミ損害賠償ノ責ニ任ス
第五十二條 前條ノ請求ヲ爲シタル社員ハ特ニ會社ノ代表者ヲ指定スルコトヲ得
第五十三條 商法第百六十五條乃至第百六十七條、第百六十九條、第百七十條、第百七十四條第二項、第百七十六條、第百七十七條及ヒ第百七十九條ノ規定ハ相互會社ノ取締役ニ之ヲ準用ス
第五十四條 社員總會ニ於テ監査役ニ對シテ訴ヲ提起スルコトヲ決議シタルトキ又ハ之ヲ否決シタル場合ニ於テ十分ノ一以上ノ社員カ之ヲ取締役ニ請求シタルトキハ會社ハ決議又ハ請求ノ日ヨリ一个月內ニ訴ヲ提起スルコトヲ要ス此場合ニ於テハ第五十一條第一項但書、第五十二條及ヒ商法第百八十五條第一項但書ノ規定ヲ準用ス
前項ノ請求ヲ爲シタル社員ハ取締役ノ請求ニ因リ相當ノ擔保ヲ供スルコトヲ要ス
會社カ敗訴シタルトキハ右ノ社員ハ會社ニ對シテノミ損害賠償ノ責ニ任ス
第五十五條 商法第百六十七條、第百七十九條乃至第百八十四條、第百八十五條第一項、第百八十六條及ヒ第百八十八條ノ規定ハ相互會社ノ監査役ニ之ヲ準用ス
第四節 會社ノ計算
第五十六條 基金ハ每事業年度ノ剩餘金ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ償却スルコトヲ得ス基金ノ醵出者ニ支拂フヘキ利息亦同シ
第五十七條 相互會社ハ損失ノ塡補ニ備フル爲メ每事業年度ノ剩餘金中ヨリ準備金ヲ積立ツルコトヲ要ス
每年積立ツヘキ金額及ヒ準備金ノ最低額ハ定款ヲ以テ之ヲ定ム
第五十八條 設立費用及ヒ初ノ五年度ノ營業費ハ十年ヲ超エサル期間內ニ於テ定款ノ定ムル所ニ從ヒ每年其一部ヲ償却スルコトヲ得
第五十九條 設立費用及ヒ初ノ五年度ノ營業費ノ全額ヲ償却シ且第五十七條ノ準備金ヲ控除シタル後ニ非サレハ基金ヲ償却シ又ハ剩餘金ノ分配ヲ爲スコトヲ得ス
前項ノ規定ハ前條ノ期間內ニ於テ基金ノ醵出者ニ利息ヲ支拂フコトヲ妨ケス
第六十條 基金ヲ償却スルトキハ其償却スル金額ト同一ノ金額ヲ積立ツルコトヲ要ス
第六十一條 剩餘金ハ定款ニ別段ノ定ナキトキハ各事業年度ノ終ニ於ケル社員ニ之ヲ分配ス
第六十二條 商法第百九十條乃至第百九十三條ノ規定ハ相互會社ノ計算ニ之ヲ準用ス
第五節 定款ノ變更
第六十三條 定款ノ變更ハ社員總會ノ決議ニ依リテノミ之ヲ爲スコトヲ得但其決議ノ認可ヲ得ルニ付キ必要ナル變更ハ社員總會ノ決議ヲ以テ之ヲ取締役ニ委任スルコトヲ得
第三十一條第二項ノ規定ハ前項ノ決議ニ之ヲ準用ス
第六十四條 會社ノ債務ニ關スル社員ノ責任ヲ減少セントスルトキハ商法第七十八條乃至第八十條ノ規定ニ從フコトヲ要ス
第六節 社員ノ退社
第六十五條 定款ヲ以テ會社ノ存立時期ヲ定メタルト否トヲ問ハス社員ハ事業年度ノ終ニ於テ退社ヲ爲スコトヲ得但六个月前ニ其豫吿ヲ爲スコトヲ要ス
第六十六條 社員ハ左ノ事由ニ因リテ退社ス
一 定款ニ定メタル事由ノ發生
二 死亡
三 破產
四 保險關係ノ消滅
第六十七條 退社員ハ定款又ハ保險約款ノ定ムル所ニ從ヒ其權利ニ屬スル金額ノ拂戾ヲ請求スルコトヲ得
第六十八條 退社員ノ權利ニ屬スル金額ノ拂戾ハ事業年度ノ終ヨリ六个月內ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
退社員ノ拂戾請求權ハ前項ノ期間經過ノ後二年間之ヲ行ハサルトキハ時效ニ因リテ消滅ス
第六十九條 退社員ノ權利ニ屬スル金額ノ計算ヲ爲スニ當タリ會社ニ現存スル財產ヲ以テ會社ノ債務ヲ辨濟スルニ足ラサルトキハ退社員ハ其負擔ニ歸スヘキ損失額ヲ拂込ムコトヲ要ス
第七十條 退社員カ會社ニ對シテ負擔シタル債務アルトキハ會社ハ其退社員ニ拂戾スヘキ金額ノ中ヨリ其債務ノ金額ヲ控除スルコトヲ得
第七十一條 無限責任ヲ負フ社員及ヒ保險料ノ外一定ノ金額ヲ限度トシテ責任ヲ負フ社員ハ登記所ニ備フル社員名簿ニ退社ノ記載ヲ爲ス前ニ生シタル會社ノ債務ニ付キ其記載後二年間責任ヲ負フ
前項ノ規定ハ第四十條及ヒ第四十一條ノ場合ニ之ヲ準用ス
第七節 解散
第七十二條 相互會社ハ左ノ事由ニ因リテ解散ス
一 存立時期ノ滿了其他定款ニ定メタル事由ノ發生
二 社員カ百人未滿ニ減シタルコト
三 社員總會ノ決議
四 合併
五 破產
六 免許ノ取消
第七十三條 任意ノ解散及ヒ合併ノ決議ハ總社員ノ半數以上出席シ其四分ノ三ノ同意ヲ以テ之ヲ爲ス
前項ノ決議ハ主務官廳ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其效力ヲ生セス
第七十四條 合併ノ認可ヲ申請スルニハ申請書ニ合併契約書、財產目錄及ヒ貸借對照表ヲ添附スルコトヲ要ス
第七十五條 商法第七十六條及ヒ第七十八條乃至第八十二條ノ規定ハ相互會社ニ之ヲ準用ス
第八節 淸算
第七十六條 相互會社カ解散シタルトキハ合併及ヒ破產ノ場合ヲ除ク外本節ノ規定ニ從ヒテ淸算ヲ爲スコトヲ要ス
第七十七條 會社カ免許ノ取消ニ因リテ解散シタルトキハ裁判所ハ利害關係人又ハ檢事ノ請求ニ因リ淸算人ヲ選任ス
第七十八條 會社カ第七十二條第二號、第三號又ハ第六號ニ揭ケタル事由ニ因リテ解散シタルトキハ保險金額ヲ支拂フヘキ事由カ解散ノ時ヨリ一个月內ニ生シタルトキニ限リ保險金額ヲ支拂フコトヲ要ス
前項ノ期間經過ノ後ハ損害保險ヲ目的トスル會社ニ在リテハ未タ經過セサル期間ニ對スル保險料、生命保險ヲ目的トスル會社ニ在リテハ被保險者ノ爲メニ積立テタル金額ヲ拂戾スコトヲ要ス
第七十九條 淸算人ハ左ノ順序ニ從ヒテ會社財產ヲ處分スルコトヲ要ス
一 一般ノ債務ノ辨濟
二 社員ノ保險金額及ヒ前條第二項ノ規定ニ依リテ社員ニ拂戾スヘキ金額ノ支拂
三 基金ノ償却
社員ハ保險料ノ外基金ノ償却ニ付キ責任ヲ負フコトナシ
第八十條 殘餘財產ハ定款ニ別段ノ定ナキトキハ剩餘金ノ分配ト同一ノ割合ヲ以テ之ヲ社員ニ分配ス
第八十一條 重要ナル事由アルトキハ裁判所ハ監査役又ハ十分ノ一以上ノ社員ノ請求ニ因リ淸算人ヲ解任スルコトヲ得但此請求ヲ爲ス社員ニ付キ定款ヲ以テ他ノ標準ヲ定ムルコトヲ得
第八十二條 第四十四條、第五十一條、第五十四條、商法第八十四條、第九十條乃至第九十三條、第九十七條、第九十九條、第百五十九條、第百六十三條、第百七十六條、第百七十七條、第百八十一條、第百八十三條、第百八十四條、第百八十五條第一項、第百九十三條、第二百二十六條、第二百二十七條、第二百二十八條第一項、第二百三十條第一項、第二百三十一條乃至第二百三十三條及ヒ民法第七十九條、第八十條、第八十三條ノ規定ハ相互會社ノ淸算ノ場合ニ之ヲ準用ス
第九節 補則
第八十三條 各登記所ニ相互保險會社登記簿ヲ備フ
第八十四條 相互會社ノ設立ノ登記ハ總取締役及ヒ總監査役ノ申請ニ因リテ之ヲ爲ス
申請書ニハ左ノ書類ヲ添附スルコトヲ要ス
一 定款
二 社員名簿
三 社員ヲ募集シタル場合ニ於テハ各社員ノ入社申込證
四 主務官廳ノ免許書又ハ其認證アル謄本
五 創立總會ノ決議錄
第八十五條 相互會社ノ社員名簿ハ登記簿ノ一部ト看做シ社員名簿ニ爲シタル記載ハ之ヲ登記ト看做ス但之ヲ公吿スルコトヲ要セス
第八十六條 相互會社ノ支配人ノ選任ノ登記ハ取締役ノ申請ニ因リテ之ヲ爲ス
前項ノ規定ハ支配人ノ代理權ノ消滅又ハ解任ノ登記ヲ申請スル場合ニ之ヲ準用ス
第八十七條 相互會社カ免許ノ取消ニ因リテ解散シタルトキハ登記所ハ主務官廳ノ囑託ニ因リテ其登記ヲ爲スコトヲ要ス
第八十八條 第八十四條第一項ノ規定ハ相互會社ノ解散又ハ其合併ニ因ル變更若クハ設立ノ登記ノ申請ヲ爲ス場合ニ之ヲ準用ス
第八十九條 非訟事件手續法第百二十六條第一項、第三項、第百三十六條乃至第百三十九條、第百四十一條乃至第百六十五條、第百七十三條、第百七十四條第二項、第百七十五條乃至第百七十八條、第百八十八條、第百九十三條第一項、第二項及ヒ第百九十四條ノ規定ハ相互會社ニ之ヲ準用ス
第九十條 相互會社カ登記ヲ爲ス場合ニ於テハ營利ヲ目的トセサル社團法人ト同一ノ登錄稅ヲ納ムルコトヲ要ス
社員名簿ノ記載ニ付テハ登錄稅ヲ課セス
第九十一條 相互會社ニハ營業稅ヲ課セス
第四章 計算
第九十二條 保險會社ハ每年一囘一定ノ時期ニ於テ其帳簿ヲ閉鎖シ總會終結ノ後遲滯ナク財產目錄、貸借對照表、事業報吿書、損益計算書及ヒ基金ノ償却、其利息ノ支拂、準備金竝ニ利益又ハ剩餘金ノ配當ニ關スル決議書ヲ主務官廳ニ提出スルコトヲ要ス
第九十三條 保險契約者、被保險者又ハ保險金額ヲ受取ルヘキ者ハ會社ノ定時總會終結ノ後前條ニ揭ケタル書類ノ閱覽ヲ求メ又ハ其謄本若クハ抄本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得但定款又ハ保險約款ノ定ムル所ニ依リ其謄本又ハ抄本ノ交付ニ付キ手數料ヲ拂フコトヲ要ス
第九十四條 第九十二條ニ揭ケタル書類ノ書式ハ農商務大臣之ヲ定ム
第九十五條 保險會社ハ保險契約ノ種類ニ從ヒ各事業年度ノ終ニ於テ存スル契約ニ付キ責任準備金ヲ計算シ且之ヲ特ニ設ケタル帳簿ニ記載スルコトヲ要ス
第九十六條 生命保險ニ在リテハ保險契約者又ハ保險金額ヲ受取ルヘキ者ハ被保險者ノ爲メニ積立テタル金額ニ付キ會社財產ノ上ニ優先權ヲ有ス
第五章 罰則
第九十七條 主務官廳ノ免許ヲ得スシテ保險事業ヲ營ム者ハ十圓以上千圓以下ノ過料ニ處セラル
第九十八條 保險會社ノ取締役、監査役又ハ淸算人ハ左ノ場合ニ於テハ十圓以上千圓以下ノ過料ニ處セラル
一 保險事業ニ非サル事業ヲ爲シタルトキ
二 生命保險ト損害保險トヲ併セテ營ミタルトキ
三 主務官廳ノ命令ニ違反シタルトキ
四 主務官廳ノ檢査ヲ妨ケタルトキ
五 正當ノ理由ナクシテ本法ノ規定ニ依リ閱覽ヲ許スヘキ書類ヲ閱覽セシメス又ハ其謄本若クハ抄本ヲ交付セサリシトキ
六 第十九條ノ規定ニ違反シテ利益ノ配當ヲ爲シタルトキ
七 第二十二條ノ規定ニ違反シテ合併ヲ爲シタルトキ
八 第九十五條ノ規定ニ違反シタルトキ
第九十九條 相互會社ノ發起人、取締役、監査役又ハ淸算人ハ左ノ場合ニ於テハ五圓以上五百圓以下ノ過料ニ處セラル
一 本法ニ定メタル登記ヲ爲スコトヲ怠リタルトキ
二 本法ニ定メタル公吿若クハ通知ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ不正ノ公吿若クハ通知ヲ爲シタルトキ
三 第三十條第二項ノ規定ニ反シ入社申込證ヲ作ラス、之ニ記載スヘキ事項ヲ記載セス又ハ之ニ不正ノ記載ヲ爲シタルトキ
四 定款、社員名簿、總會ノ決議錄、財產目錄、貸借對照表、事業報吿書、損益計算書若クハ基金ノ償却、其利息ノ支拂、準備金、剩餘金分配ニ關スル議案ヲ事務所ニ備ヘ置カス、之ニ記載スヘキ事項ヲ記載セス又ハ之ニ不正ノ記載ヲ爲シタルトキ
五 商法第百八十一條ノ規定ニ依ル監査役ノ調査ヲ妨ケタルトキ
第百條 相互會社ノ發起人、取締役、監査役又ハ淸算人ハ左ノ場合ニ於テハ十圓以上千圓以下ノ過料ニ處セラル
一 官廳又ハ總會ニ對シ不實ノ申立ヲ爲シ又ハ事實ヲ隱蔽シタルトキ
二 第五十六條乃至第六十條ノ規定ニ違反シテ基金ヲ償却シ、其利息ヲ支拂ヒ又ハ剩餘金分配ヲ爲シタルトキ
三 第七十九條第一項ノ規定ニ違反シテ會社財產ヲ處分シタルトキ
四 商法第七十八條乃至第八十條ノ規定ニ違反シテ社員ノ責任ヲ減少シ又ハ合併ヲ爲シタルトキ
五 商法第百七十四條第二項又ハ民法第八十一條ノ規定ニ反シ破產宣吿ノ請求ヲ爲スコトヲ怠リタルトキ
第百一條 非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ本章ニ定メタル過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第百二條 本法ハ明治三十三年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
第百三條 
商法施行法第九十五條乃至第百十六條ハ之ヲ削除ス
第百四條 本法施行前ニ設立シタル保險會社ニシテ其商號ニ保險ノ種類ヲ示ササルモノハ本法施行ノ日ヨリ三个月內ニ其商號ヲ改メ且本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ其登記ヲ爲スコトヲ要ス
第百五條 本法施行前ニ設立シタル保險會社ニシテ營業ノ免許ヲ受ケサリシモノカ主務官廳ノ命令ニ違反シタルトキハ裁判所ハ檢事ノ請求ニ因リ又ハ職權ヲ以テ會社ノ解散ヲ命スルコトヲ得
非訟事件手續法第百二十六條第一項、第百三十四條第一項、第百三十五條及ヒ第百三十五條ノ二ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第百六條 本法施行前ニ設立シタル合名會社ニシテ保險ヲ營業トスルモノハ財產目錄及ヒ貸借對照表ヲ作ル每ニ遲滯ナク營業報吿書、損益計算書及ヒ利益ノ配當ニ關スル案ト共ニ之ヲ主務官廳ニ提出スルコトヲ要ス
第百七條 本法施行前ニ設立シタル合名會社ニシテ保險ヲ營業トスルモノカ財產目錄及ヒ貸借對照表ヲ作ル每ニ保險契約者、被保險者又ハ保險金額ヲ受取ルヘキ者ハ其閱覽ヲ求メ又ハ其謄本若クハ抄本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得但定款又ハ保險約款ノ定ムル所ニ依リ其謄本又ハ抄本ノ交付ニ付キ手數料ヲ拂フコトヲ要ス
第百八條 第三條、第四條、第八條乃至第十三條、第七十三條第二項及ヒ第七十四條ノ規定ハ本法施行前ニ設立シタル保險會社ニ之ヲ準用ス
第百九條 本法施行前ニ設立シタル保險會社ニシテ相當ノ責任準備金ヲ積立テサルモノハ本法施行ノ日ヨリ三个月內ニ其不足額塡補ノ方法ヲ定メ主務官廳ノ認可ヲ申請スルコトヲ要ス但塡補ノ期間ハ本法施行ノ日ヨリ十年ヲ超ユルコトヲ得ス
前項ノ塡補ヲ爲シタル後ニ非サレハ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ得ス
第百十條 第七十八條ノ規定ハ本法施行前ニ設立シタル保險會社カ第二十一條又ハ商法第七十四條第三號、第五號、第七號、第百十八條、第二百二十一條第二號、第三號ニ揭ケタル事由ニ因リテ解散シタル場合ニ之ヲ準用ス
第百十一條 第九十二條及ヒ第九十三條ノ規定ハ本法施行前ニ設立シタル合資會社又ハ株式會社ニシテ保險ヲ營業トスルモノニ之ヲ準用ス
第百十二條 第二十條乃至第二十二條及ヒ第七十七條ノ規定ハ本法施行前ニ設立シタル株式會社ニシテ保險ヲ營業トスルモノニ之ヲ準用ス
第百十三條 第九十八條ノ規定ハ本法施行前ニ設立シタル保險會社ノ業務ヲ執行スル社員、取締役、監査役及ヒ淸算人ニ之ヲ準用ス
第百十四條 保險會社ノ業務ヲ執行スル社員又ハ取締役カ第百四條又ハ第百九條ノ規定ニ違反シタルトキハ五圓以上五百圓以下ノ過料ニ處セラル
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ニ定メタル過料ニ之ヲ準用ス
第百十五條 外國人又ハ外國會社カ日本ニ支店又ハ代理店ヲ設ケテ保險事業ヲ營ム場合ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル保険業法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十三年三月二十日
内閣総理大臣 侯爵 山県有朋
司法大臣 清浦奎吾
農商務大臣 曽祢荒助
法律第六十九号
保険業法
第一章 総則
第一条 保険事業ハ主務官庁ノ免許ヲ受クルニ非サレハ之ヲ営ムコトヲ得ス
第二条 保険事業ハ株式会社又ハ相互会社ニ非サレハ之ヲ営ムコトヲ得ス
第三条 保険会社ハ他ノ事業ヲ兼ヌルコトヲ得ス
第四条 同一ノ会社ニシテ生命保険ト損害保険トヲ併セテ其目的ト為スコトヲ得ス
第五条 損害保険ヲ目的トスル会社カ免許ヲ申請スルニハ申請書ニ左ノ書類ヲ添附スルコトヲ要ス
一 定款
二 事業方法書
三 普通保険約款
四 保険料及ヒ責任準備金算出ノ基礎ニ関スル書類
第六条 生命保険ヲ目的トスル会社カ免許ヲ申請スルニハ申請書ニ前条ニ掲ケタル書類及ヒ責任準備金利用ノ方法ヲ記載シタル書類ヲ添附スルコトヲ要ス
第七条 普通保険約款ニハ左ニ掲ケタル事項ヲ定ムルコトヲ要ス
一 保険会社カ保険金額ノ支払ヲ為スヘキ事由
二 保険契約無効ノ原因
三 保険会社カ其義務ヲ免ルヘキ事由
四 保険会社ノ義務ノ範囲ヲ定ムル方法及ヒ其義務履行ノ時期
五 保険契約者又ハ被保険者カ其義務不履行ノ為メニ受クヘキ損失
六 保険契約ノ全部又ハ一部ノ解除ノ原因及ヒ其解除ノ場合ニ於テ当事者ノ有スル権利義務
七 保険契約者、被保険者又ハ保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ利益又ハ剰余金ノ分配ニ与カル権利ノ有無及ヒ範囲
第八条 第五条及ヒ第六条ニ掲ケタル書類ヲ変更スルニハ主務官庁ノ認可ヲ得ルコトヲ要ス
第九条 保険会社ノ業務ハ主務官庁ノ監督ニ属ス
主務官庁ハ本法及ヒ第五条並ニ第六条ニ掲ケタル書類ノ規定ニ従ハシムル為メ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第十条 主務官庁ハ何時ニテモ保険会社ヲシテ其事業ノ報告ヲ為サシメ又ハ会社ノ業務及ヒ会社財産ノ状況ヲ検査スルコトヲ得
第十一条 主務官庁カ保険会社ノ業務又ハ会社財産ノ状況ニ依リ其事業ノ継続ヲ困難ナリト認ムルトキハ其事業ノ停止ヲ命シ又ハ期間ヲ定メテ業務執行ノ方法若クハ計算ノ基礎ノ変更ヲ命シ其他保険契約者、被保険者又ハ保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ権利ヲ保護スルニ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第十二条 保険会社カ主務官庁ノ命令ニ違反シタルトキハ主務官庁ハ事業ノ停止若クハ取締役ノ改選ヲ命シ又ハ免許ヲ取消スコトヲ得
第十三条 保険会社ノ清算ハ主務官庁ノ監督ニ属ス
主務官庁ハ何時ニテモ前項ノ監督ニ必要ナル検査ヲ為スコトヲ得
第二章 株式会社
第十四条 保険ヲ営業トスル株式会社ノ定款ニハ商法第百二十条第二号乃至第八号ニ掲ケタル事項ノ外左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 保険ノ種類及ヒ営業ノ範囲
二 設立費用償却ノ方法
第十五条 会社ハ其商号ニ保険ノ種類ヲ示スコトヲ要ス
第十六条 会社ノ資本ハ十万円ヲ下ルコトヲ得ス
第十七条 株式申込証ニハ第十四条及ヒ商法第百二十六条第二項ニ掲ケタル事項ヲ記載スルコトヲ要ス
第十八条 会社ハ第十四条及ヒ商法第百四十一条第一項ニ掲ケタル事項ヲ登記スルコトヲ要ス
第十九条 第五十八条ノ規定ハ株式会社ノ計算ニ之ヲ準用ス但設立費用及ヒ営業費ノ全額ヲ償却シタル後ニ非サレハ利益ノ配当ヲ為スコトヲ得ス
第二十条 商法第二百十条ノ規定ハ保険ヲ営業トスル株式会社ニハ之ヲ適用セス
第二十一条 会社カ営業ノ免許ヲ取消サレタルトキハ之ニ因リテ解散ス
第二十二条 会社カ合併ノ決議ヲ為シタルトキハ合併契約書及ヒ各会社ノ財産目録並ニ貸借対照表ヲ損害保険ニ在リテハ各被保険者ニ生命保険ニ在リテハ各保険契約者ニ送付シ異議アラハ一定ノ期間内ニ之ヲ述フヘキ旨ノ催告ヲ発スルコトヲ要ス但其期間ハ二个月ヲ下ルコトヲ得ス
被保険者又ハ保険契約者カ前項ノ期間内ニ会社ノ合併ニ対シテ異議ヲ述ヘサリシトキハ之ヲ承認シタルモノト看做ス
異議ヲ述ヘタル者ノ保険金額カ会社ノ保険金額ノ十分ノ一以上ナルトキハ会社ハ合併ヲ為スコトヲ得ス
会社カ前三項ノ規定ニ依リテ合併ヲ為シタルトキハ其合併ハ之ヲ以テ異議ヲ述ヘタル者ニモ対抗スルコトヲ得
会社カ被保険者又ハ保険契約者ニ催告ヲ為サスシテ合併ヲ為シタルトキハ其合併ハ之ヲ以テ会社カ催告ヲ為ササリシ者ニ対抗スルコトヲ得ス
第二十三条 第七十三条第二項、第七十四条及ヒ第七十七条ノ規定ハ保険ヲ営業トスル株式会社ニ之ヲ準用ス
第二十四条 第七十八条ノ規定ハ保険ヲ営業トスル株式会社カ第二十一条又ハ商法第七十四条第七号、第二百二十一条第二号、第三号ニ掲ケタル事由ニ因リテ解散シタル場合ニ之ヲ準用ス
第二十五条 合併ニ因ル解散ノ登記ノ申請書ニハ第二十二条第一項ノ規定ニ依ル催告ヲ為シタルコト、若シ異議ヲ述ヘタル者アルトキハ其者ノ保険金額カ会社ノ保険金額ノ十分ノ一未満ナルコトヲ証スル書面ヲ添附スルコトヲ要ス
第三章 相互会社
第一節 設立
第二十六条 相互会社ノ発起人ハ定款ヲ作リ之ニ左ノ事項ヲ記載シテ署名又ハ記名捺印スルコトヲ要ス
一 保険ノ種類及ヒ事業ノ範囲
二 名称
三 事務所ノ所在地
四 基金ノ総額
五 基金ノ醵出者カ有スヘキ権利
六 社員ノ責任ノ種類
七 基金及ヒ設立費用ノ償却ノ方法
八 剰余金分配ノ方法
九 会社カ公告ヲ為ス方法
十 存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メタルトキハ其時期又ハ事由
第二十七条 相互会社ハ其名称ニ保険ノ種類ヲ示シ且之ニ相互会社ナル文字ヲ附スルコトヲ要ス
第二十八条 相互会社ノ基金ハ十万円ヲ下ルコトヲ得ス
基金ノ支払ハ金銭以外ノ財産ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得ス
第二十九条 相互会社ノ社員ノ数ハ百人ヲ下ルコトヲ得ス
第三十条 発起人ニ非サル者カ社員タラントスルトキハ入社申込証二通ニ保険ノ目的及ヒ保険金額ヲ記載シ之ニ署名又ハ記名捺印スルコトヲ要ス但会社カ主タル事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ為シタル後社員タラントスル者ハ此限ニ在ラス
入社申込証ハ発起人之ヲ作リ之ニ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 定款作成ノ年月日
二 第二十六条ニ掲ケタル事項
三 基金ノ醵出者ノ氏名、住所及ヒ其各自カ醵出スル金額
四 発起人ノ氏名、住所
五 発起人カ報酬ヲ受クヘキトキハ其報酬ノ額
六 設立ノ際募集セントスル社員ノ数
第三十一条 社員カ予定ノ数ニ満チタルトキハ発起人ハ遅滞ナク創立総会ヲ招集スルコトヲ要ス
創立総会ニ於テハ社員ノ半数以上出席シ其四分ノ三以上ノ同意ヲ以テ一切ノ決議ヲ為ス
第四十三条及ヒ商法第百五十六条第一項、第二項、第百六十一条第三項、第四項、第百六十三条ノ規定ハ相互会社ノ創立総会ニ之ヲ準用ス
第三十二条 社員カ予定ノ数ニ満チタル後六个月内ニ発起人カ創立総会ヲ招集セサルトキハ申込人ハ其申込ヲ取消スコトヲ得
第三十三条 相互会社ハ創立総会ノ終結ニ因リテ成立ス
第三十四条 取締役ハ創立総会終結ノ日ヨリ二週間内ニ各事務所ノ所在地ニ於テ左ノ事項ヲ登記スルコトヲ要ス
一 第二十六条第一号、第二号及ヒ第四号乃至第十号ニ掲ケタル事項
二 事務所
三 取締役及ヒ監査役ノ氏名、住所
前項ニ掲ケタル事項中ニ変更ヲ生シタルトキハ二週間内ニ各事務所ノ所在地ニ於テ其登記ヲ為スコトヲ要ス
第三十五条 商法第九条、第十一条乃至第十五条、第十九条乃至第三十八条、第四十条、第四十一条、第四十四条、第四十五条、第百十九条、第百三十三条及ヒ第百三十八条ノ規定ハ相互会社ニ之ヲ準用ス
第二節 社員ノ権利義務
第三十六条 社員ハ会社ノ債権者ニ対シ直接ニ義務ヲ負フコトナシ
第三十七条 会社ノ債務ニ関スル社員ノ責任ハ左ノ三種トス
一 社員ノ全員カ無限ノ責任ヲ負フモノ
二 社員ノ全員カ保険料ヲ限度トシテ責任ヲ負フモノ
三 社員ノ全員カ保険料ノ外一定ノ金額ヲ限度トシテ責任ヲ負フモノ
第三十八条 社員ハ会社ニ払込ムヘキ金額ニ付キ相殺ヲ以テ会社ニ対抗スルコトヲ得ス
第三十九条 社員カ保険料ノ外会社ノ債務ニ関シ醵出スヘキモノアルトキハ其金額及ヒ其醵出ノ方法ハ定款ヲ以テ之ヲ定ム
第四十条 損害保険ヲ目的トスル相互会社ノ社員カ保険ノ目的ヲ譲渡シタルトキハ譲受人ハ会社ノ承諾ヲ得テ譲渡人ノ権利義務ヲ承継スルコトヲ得
第四十一条 生命保険ヲ目的トスル相互会社ノ社員ハ会社ノ承諾ヲ得テ他人ヲシテ其権利義務ヲ承継セシムルコトヲ得
第三節 会社ノ機関
第四十二条 相互会社ハ定款ヲ以テ社員総会ニ代ハルヘキ機関ヲ設クルコトヲ得此機関ニハ社員総会ニ関スル規定ヲ準用ス
第四十三条 社員ハ総会ニ於テ各一個ノ議決権ヲ有ス但定款ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス
第四十四条 十分ノ一以上ノ社員ハ総会ノ目的及ヒ其招集ノ理由ヲ記載シタル書面ヲ取締役ニ提出シテ総会ノ招集ヲ請求スルコトヲ得但此権利ノ行使ニ付キ定款ヲ以テ他ノ標準ヲ定ムルコトヲ得
商法第百六十条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第四十五条 商法第百五十六条第一項、第二項、第百五十七条第一項、第百五十八条第一項、第百五十九条、第百六十一条第一項、第三項、第四項及ヒ第百六十三条ノ規定ハ相互会社ノ社員総会ニ之ヲ準用ス
第四十六条 取締役及ヒ監査役ハ社員総会ニ於テ之ヲ選任ス
第四十七条 取締役及ヒ監査役ハ社員タルコトヲ要セス
第四十八条 取締役ハ社員総会ノ認許アルニ非サレハ同種ノ保険ヲ目的トスル他ノ会社ノ無限責任社員、業務担当社員、取締役又ハ監査役ト為ルコトヲ得ス
第四十九条 取締役ハ社員名簿ヲ備ヘ之ニ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 社員ノ氏名、住所
二 各社員ノ保険契約ノ種類、保険金額及ヒ保険料
三 第三十七条第三号ノ場合ニ於テ各社員ノ責任ノ限度
第五十条 取締役ハ定款及ヒ総会ノ決議録ヲ各事務所ニ備ヘ置キ且社員名簿ヲ主タル事務所ニ備ヘ置クコトヲ要ス
社員及ヒ会社ノ債権者ハ事業時間内何時ニテモ前項ニ掲ケタル書類ノ閲覧ヲ求ムルコトヲ得
第五十一条 社員総会ニ於テ取締役ニ対シテ訴ヲ提起スルコトヲ決議シタルトキ又ハ之ヲ否決シタル場合ニ於テ十分ノ一以上ノ社員カ之ヲ監査役ニ請求シタルトキハ会社ハ決議又ハ請求ノ日ヨリ一个月内ニ訴ヲ提起スルコトヲ要ス但起訴ノ請求ヲ為ス者ニ付キ定款ヲ以テ他ノ標準ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ請求ヲ為シタル社員ハ監査役ノ請求ニ因リ相当ノ担保ヲ供スルコトヲ要ス
会社カ敗訴シタルトキハ右ノ社員ハ会社ニ対シテノミ損害賠償ノ責ニ任ス
第五十二条 前条ノ請求ヲ為シタル社員ハ特ニ会社ノ代表者ヲ指定スルコトヲ得
第五十三条 商法第百六十五条乃至第百六十七条、第百六十九条、第百七十条、第百七十四条第二項、第百七十六条、第百七十七条及ヒ第百七十九条ノ規定ハ相互会社ノ取締役ニ之ヲ準用ス
第五十四条 社員総会ニ於テ監査役ニ対シテ訴ヲ提起スルコトヲ決議シタルトキ又ハ之ヲ否決シタル場合ニ於テ十分ノ一以上ノ社員カ之ヲ取締役ニ請求シタルトキハ会社ハ決議又ハ請求ノ日ヨリ一个月内ニ訴ヲ提起スルコトヲ要ス此場合ニ於テハ第五十一条第一項但書、第五十二条及ヒ商法第百八十五条第一項但書ノ規定ヲ準用ス
前項ノ請求ヲ為シタル社員ハ取締役ノ請求ニ因リ相当ノ担保ヲ供スルコトヲ要ス
会社カ敗訴シタルトキハ右ノ社員ハ会社ニ対シテノミ損害賠償ノ責ニ任ス
第五十五条 商法第百六十七条、第百七十九条乃至第百八十四条、第百八十五条第一項、第百八十六条及ヒ第百八十八条ノ規定ハ相互会社ノ監査役ニ之ヲ準用ス
第四節 会社ノ計算
第五十六条 基金ハ毎事業年度ノ剰余金ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ償却スルコトヲ得ス基金ノ醵出者ニ支払フヘキ利息亦同シ
第五十七条 相互会社ハ損失ノ填補ニ備フル為メ毎事業年度ノ剰余金中ヨリ準備金ヲ積立ツルコトヲ要ス
毎年積立ツヘキ金額及ヒ準備金ノ最低額ハ定款ヲ以テ之ヲ定ム
第五十八条 設立費用及ヒ初ノ五年度ノ営業費ハ十年ヲ超エサル期間内ニ於テ定款ノ定ムル所ニ従ヒ毎年其一部ヲ償却スルコトヲ得
第五十九条 設立費用及ヒ初ノ五年度ノ営業費ノ全額ヲ償却シ且第五十七条ノ準備金ヲ控除シタル後ニ非サレハ基金ヲ償却シ又ハ剰余金ノ分配ヲ為スコトヲ得ス
前項ノ規定ハ前条ノ期間内ニ於テ基金ノ醵出者ニ利息ヲ支払フコトヲ妨ケス
第六十条 基金ヲ償却スルトキハ其償却スル金額ト同一ノ金額ヲ積立ツルコトヲ要ス
第六十一条 剰余金ハ定款ニ別段ノ定ナキトキハ各事業年度ノ終ニ於ケル社員ニ之ヲ分配ス
第六十二条 商法第百九十条乃至第百九十三条ノ規定ハ相互会社ノ計算ニ之ヲ準用ス
第五節 定款ノ変更
第六十三条 定款ノ変更ハ社員総会ノ決議ニ依リテノミ之ヲ為スコトヲ得但其決議ノ認可ヲ得ルニ付キ必要ナル変更ハ社員総会ノ決議ヲ以テ之ヲ取締役ニ委任スルコトヲ得
第三十一条第二項ノ規定ハ前項ノ決議ニ之ヲ準用ス
第六十四条 会社ノ債務ニ関スル社員ノ責任ヲ減少セントスルトキハ商法第七十八条乃至第八十条ノ規定ニ従フコトヲ要ス
第六節 社員ノ退社
第六十五条 定款ヲ以テ会社ノ存立時期ヲ定メタルト否トヲ問ハス社員ハ事業年度ノ終ニ於テ退社ヲ為スコトヲ得但六个月前ニ其予告ヲ為スコトヲ要ス
第六十六条 社員ハ左ノ事由ニ因リテ退社ス
一 定款ニ定メタル事由ノ発生
二 死亡
三 破産
四 保険関係ノ消滅
第六十七条 退社員ハ定款又ハ保険約款ノ定ムル所ニ従ヒ其権利ニ属スル金額ノ払戻ヲ請求スルコトヲ得
第六十八条 退社員ノ権利ニ属スル金額ノ払戻ハ事業年度ノ終ヨリ六个月内ニ之ヲ為スコトヲ要ス
退社員ノ払戻請求権ハ前項ノ期間経過ノ後二年間之ヲ行ハサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス
第六十九条 退社員ノ権利ニ属スル金額ノ計算ヲ為スニ当タリ会社ニ現存スル財産ヲ以テ会社ノ債務ヲ弁済スルニ足ラサルトキハ退社員ハ其負担ニ帰スヘキ損失額ヲ払込ムコトヲ要ス
第七十条 退社員カ会社ニ対シテ負担シタル債務アルトキハ会社ハ其退社員ニ払戻スヘキ金額ノ中ヨリ其債務ノ金額ヲ控除スルコトヲ得
第七十一条 無限責任ヲ負フ社員及ヒ保険料ノ外一定ノ金額ヲ限度トシテ責任ヲ負フ社員ハ登記所ニ備フル社員名簿ニ退社ノ記載ヲ為ス前ニ生シタル会社ノ債務ニ付キ其記載後二年間責任ヲ負フ
前項ノ規定ハ第四十条及ヒ第四十一条ノ場合ニ之ヲ準用ス
第七節 解散
第七十二条 相互会社ハ左ノ事由ニ因リテ解散ス
一 存立時期ノ満了其他定款ニ定メタル事由ノ発生
二 社員カ百人未満ニ減シタルコト
三 社員総会ノ決議
四 合併
五 破産
六 免許ノ取消
第七十三条 任意ノ解散及ヒ合併ノ決議ハ総社員ノ半数以上出席シ其四分ノ三ノ同意ヲ以テ之ヲ為ス
前項ノ決議ハ主務官庁ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其効力ヲ生セス
第七十四条 合併ノ認可ヲ申請スルニハ申請書ニ合併契約書、財産目録及ヒ貸借対照表ヲ添附スルコトヲ要ス
第七十五条 商法第七十六条及ヒ第七十八条乃至第八十二条ノ規定ハ相互会社ニ之ヲ準用ス
第八節 清算
第七十六条 相互会社カ解散シタルトキハ合併及ヒ破産ノ場合ヲ除ク外本節ノ規定ニ従ヒテ清算ヲ為スコトヲ要ス
第七十七条 会社カ免許ノ取消ニ因リテ解散シタルトキハ裁判所ハ利害関係人又ハ検事ノ請求ニ因リ清算人ヲ選任ス
第七十八条 会社カ第七十二条第二号、第三号又ハ第六号ニ掲ケタル事由ニ因リテ解散シタルトキハ保険金額ヲ支払フヘキ事由カ解散ノ時ヨリ一个月内ニ生シタルトキニ限リ保険金額ヲ支払フコトヲ要ス
前項ノ期間経過ノ後ハ損害保険ヲ目的トスル会社ニ在リテハ未タ経過セサル期間ニ対スル保険料、生命保険ヲ目的トスル会社ニ在リテハ被保険者ノ為メニ積立テタル金額ヲ払戻スコトヲ要ス
第七十九条 清算人ハ左ノ順序ニ従ヒテ会社財産ヲ処分スルコトヲ要ス
一 一般ノ債務ノ弁済
二 社員ノ保険金額及ヒ前条第二項ノ規定ニ依リテ社員ニ払戻スヘキ金額ノ支払
三 基金ノ償却
社員ハ保険料ノ外基金ノ償却ニ付キ責任ヲ負フコトナシ
第八十条 残余財産ハ定款ニ別段ノ定ナキトキハ剰余金ノ分配ト同一ノ割合ヲ以テ之ヲ社員ニ分配ス
第八十一条 重要ナル事由アルトキハ裁判所ハ監査役又ハ十分ノ一以上ノ社員ノ請求ニ因リ清算人ヲ解任スルコトヲ得但此請求ヲ為ス社員ニ付キ定款ヲ以テ他ノ標準ヲ定ムルコトヲ得
第八十二条 第四十四条、第五十一条、第五十四条、商法第八十四条、第九十条乃至第九十三条、第九十七条、第九十九条、第百五十九条、第百六十三条、第百七十六条、第百七十七条、第百八十一条、第百八十三条、第百八十四条、第百八十五条第一項、第百九十三条、第二百二十六条、第二百二十七条、第二百二十八条第一項、第二百三十条第一項、第二百三十一条乃至第二百三十三条及ヒ民法第七十九条、第八十条、第八十三条ノ規定ハ相互会社ノ清算ノ場合ニ之ヲ準用ス
第九節 補則
第八十三条 各登記所ニ相互保険会社登記簿ヲ備フ
第八十四条 相互会社ノ設立ノ登記ハ総取締役及ヒ総監査役ノ申請ニ因リテ之ヲ為ス
申請書ニハ左ノ書類ヲ添附スルコトヲ要ス
一 定款
二 社員名簿
三 社員ヲ募集シタル場合ニ於テハ各社員ノ入社申込証
四 主務官庁ノ免許書又ハ其認証アル謄本
五 創立総会ノ決議録
第八十五条 相互会社ノ社員名簿ハ登記簿ノ一部ト看做シ社員名簿ニ為シタル記載ハ之ヲ登記ト看做ス但之ヲ公告スルコトヲ要セス
第八十六条 相互会社ノ支配人ノ選任ノ登記ハ取締役ノ申請ニ因リテ之ヲ為ス
前項ノ規定ハ支配人ノ代理権ノ消滅又ハ解任ノ登記ヲ申請スル場合ニ之ヲ準用ス
第八十七条 相互会社カ免許ノ取消ニ因リテ解散シタルトキハ登記所ハ主務官庁ノ嘱託ニ因リテ其登記ヲ為スコトヲ要ス
第八十八条 第八十四条第一項ノ規定ハ相互会社ノ解散又ハ其合併ニ因ル変更若クハ設立ノ登記ノ申請ヲ為ス場合ニ之ヲ準用ス
第八十九条 非訟事件手続法第百二十六条第一項、第三項、第百三十六条乃至第百三十九条、第百四十一条乃至第百六十五条、第百七十三条、第百七十四条第二項、第百七十五条乃至第百七十八条、第百八十八条、第百九十三条第一項、第二項及ヒ第百九十四条ノ規定ハ相互会社ニ之ヲ準用ス
第九十条 相互会社カ登記ヲ為ス場合ニ於テハ営利ヲ目的トセサル社団法人ト同一ノ登録税ヲ納ムルコトヲ要ス
社員名簿ノ記載ニ付テハ登録税ヲ課セス
第九十一条 相互会社ニハ営業税ヲ課セス
第四章 計算
第九十二条 保険会社ハ毎年一回一定ノ時期ニ於テ其帳簿ヲ閉鎖シ総会終結ノ後遅滞ナク財産目録、貸借対照表、事業報告書、損益計算書及ヒ基金ノ償却、其利息ノ支払、準備金並ニ利益又ハ剰余金ノ配当ニ関スル決議書ヲ主務官庁ニ提出スルコトヲ要ス
第九十三条 保険契約者、被保険者又ハ保険金額ヲ受取ルヘキ者ハ会社ノ定時総会終結ノ後前条ニ掲ケタル書類ノ閲覧ヲ求メ又ハ其謄本若クハ抄本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得但定款又ハ保険約款ノ定ムル所ニ依リ其謄本又ハ抄本ノ交付ニ付キ手数料ヲ払フコトヲ要ス
第九十四条 第九十二条ニ掲ケタル書類ノ書式ハ農商務大臣之ヲ定ム
第九十五条 保険会社ハ保険契約ノ種類ニ従ヒ各事業年度ノ終ニ於テ存スル契約ニ付キ責任準備金ヲ計算シ且之ヲ特ニ設ケタル帳簿ニ記載スルコトヲ要ス
第九十六条 生命保険ニ在リテハ保険契約者又ハ保険金額ヲ受取ルヘキ者ハ被保険者ノ為メニ積立テタル金額ニ付キ会社財産ノ上ニ優先権ヲ有ス
第五章 罰則
第九十七条 主務官庁ノ免許ヲ得スシテ保険事業ヲ営ム者ハ十円以上千円以下ノ過料ニ処セラル
第九十八条 保険会社ノ取締役、監査役又ハ清算人ハ左ノ場合ニ於テハ十円以上千円以下ノ過料ニ処セラル
一 保険事業ニ非サル事業ヲ為シタルトキ
二 生命保険ト損害保険トヲ併セテ営ミタルトキ
三 主務官庁ノ命令ニ違反シタルトキ
四 主務官庁ノ検査ヲ妨ケタルトキ
五 正当ノ理由ナクシテ本法ノ規定ニ依リ閲覧ヲ許スヘキ書類ヲ閲覧セシメス又ハ其謄本若クハ抄本ヲ交付セサリシトキ
六 第十九条ノ規定ニ違反シテ利益ノ配当ヲ為シタルトキ
七 第二十二条ノ規定ニ違反シテ合併ヲ為シタルトキ
八 第九十五条ノ規定ニ違反シタルトキ
第九十九条 相互会社ノ発起人、取締役、監査役又ハ清算人ハ左ノ場合ニ於テハ五円以上五百円以下ノ過料ニ処セラル
一 本法ニ定メタル登記ヲ為スコトヲ怠リタルトキ
二 本法ニ定メタル公告若クハ通知ヲ為スコトヲ怠リ又ハ不正ノ公告若クハ通知ヲ為シタルトキ
三 第三十条第二項ノ規定ニ反シ入社申込証ヲ作ラス、之ニ記載スヘキ事項ヲ記載セス又ハ之ニ不正ノ記載ヲ為シタルトキ
四 定款、社員名簿、総会ノ決議録、財産目録、貸借対照表、事業報告書、損益計算書若クハ基金ノ償却、其利息ノ支払、準備金、剰余金分配ニ関スル議案ヲ事務所ニ備ヘ置カス、之ニ記載スヘキ事項ヲ記載セス又ハ之ニ不正ノ記載ヲ為シタルトキ
五 商法第百八十一条ノ規定ニ依ル監査役ノ調査ヲ妨ケタルトキ
第百条 相互会社ノ発起人、取締役、監査役又ハ清算人ハ左ノ場合ニ於テハ十円以上千円以下ノ過料ニ処セラル
一 官庁又ハ総会ニ対シ不実ノ申立ヲ為シ又ハ事実ヲ隠蔽シタルトキ
二 第五十六条乃至第六十条ノ規定ニ違反シテ基金ヲ償却シ、其利息ヲ支払ヒ又ハ剰余金分配ヲ為シタルトキ
三 第七十九条第一項ノ規定ニ違反シテ会社財産ヲ処分シタルトキ
四 商法第七十八条乃至第八十条ノ規定ニ違反シテ社員ノ責任ヲ減少シ又ハ合併ヲ為シタルトキ
五 商法第百七十四条第二項又ハ民法第八十一条ノ規定ニ反シ破産宣告ノ請求ヲ為スコトヲ怠リタルトキ
第百一条 非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ハ本章ニ定メタル過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第百二条 本法ハ明治三十三年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
第百三条 
商法施行法第九十五条乃至第百十六条ハ之ヲ削除ス
第百四条 本法施行前ニ設立シタル保険会社ニシテ其商号ニ保険ノ種類ヲ示ササルモノハ本法施行ノ日ヨリ三个月内ニ其商号ヲ改メ且本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ其登記ヲ為スコトヲ要ス
第百五条 本法施行前ニ設立シタル保険会社ニシテ営業ノ免許ヲ受ケサリシモノカ主務官庁ノ命令ニ違反シタルトキハ裁判所ハ検事ノ請求ニ因リ又ハ職権ヲ以テ会社ノ解散ヲ命スルコトヲ得
非訟事件手続法第百二十六条第一項、第百三十四条第一項、第百三十五条及ヒ第百三十五条ノ二ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第百六条 本法施行前ニ設立シタル合名会社ニシテ保険ヲ営業トスルモノハ財産目録及ヒ貸借対照表ヲ作ル毎ニ遅滞ナク営業報告書、損益計算書及ヒ利益ノ配当ニ関スル案ト共ニ之ヲ主務官庁ニ提出スルコトヲ要ス
第百七条 本法施行前ニ設立シタル合名会社ニシテ保険ヲ営業トスルモノカ財産目録及ヒ貸借対照表ヲ作ル毎ニ保険契約者、被保険者又ハ保険金額ヲ受取ルヘキ者ハ其閲覧ヲ求メ又ハ其謄本若クハ抄本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得但定款又ハ保険約款ノ定ムル所ニ依リ其謄本又ハ抄本ノ交付ニ付キ手数料ヲ払フコトヲ要ス
第百八条 第三条、第四条、第八条乃至第十三条、第七十三条第二項及ヒ第七十四条ノ規定ハ本法施行前ニ設立シタル保険会社ニ之ヲ準用ス
第百九条 本法施行前ニ設立シタル保険会社ニシテ相当ノ責任準備金ヲ積立テサルモノハ本法施行ノ日ヨリ三个月内ニ其不足額填補ノ方法ヲ定メ主務官庁ノ認可ヲ申請スルコトヲ要ス但填補ノ期間ハ本法施行ノ日ヨリ十年ヲ超ユルコトヲ得ス
前項ノ填補ヲ為シタル後ニ非サレハ利益ノ配当ヲ為スコトヲ得ス
第百十条 第七十八条ノ規定ハ本法施行前ニ設立シタル保険会社カ第二十一条又ハ商法第七十四条第三号、第五号、第七号、第百十八条、第二百二十一条第二号、第三号ニ掲ケタル事由ニ因リテ解散シタル場合ニ之ヲ準用ス
第百十一条 第九十二条及ヒ第九十三条ノ規定ハ本法施行前ニ設立シタル合資会社又ハ株式会社ニシテ保険ヲ営業トスルモノニ之ヲ準用ス
第百十二条 第二十条乃至第二十二条及ヒ第七十七条ノ規定ハ本法施行前ニ設立シタル株式会社ニシテ保険ヲ営業トスルモノニ之ヲ準用ス
第百十三条 第九十八条ノ規定ハ本法施行前ニ設立シタル保険会社ノ業務ヲ執行スル社員、取締役、監査役及ヒ清算人ニ之ヲ準用ス
第百十四条 保険会社ノ業務ヲ執行スル社員又ハ取締役カ第百四条又ハ第百九条ノ規定ニ違反シタルトキハ五円以上五百円以下ノ過料ニ処セラル
非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ハ前項ニ定メタル過料ニ之ヲ準用ス
第百十五条 外国人又ハ外国会社カ日本ニ支店又ハ代理店ヲ設ケテ保険事業ヲ営ム場合ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム