朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ私立學校令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年八月二日
文部大臣 伯爵 樺山資紀
勅令第三百五十九號
私立學校令
第一條 私立學校ハ別段ノ規定アル場合ヲ除ク外地方長官ノ監督ニ屬ス
第二條 私立學校ヲ設立セントスル者ハ監督官廳ノ認可ヲ受クヘシ
私立學校ノ廢止及設立者ノ變更ハ監督官廳ニ開申スヘシ
第三條 私立學校ニ於テハ校長若ハ學校ヲ代表シ校務ヲ掌理スル者ヲ定メ監督官廳ノ認可ヲ受クヘシ
本令中校長ニ關スル規定ハ之ヲ學校ヲ代表シ校務ヲ掌理スル者ニ適用ス
第四條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ私立學校ノ校長又ハ敎員ト爲ルコトヲ得ス
一 重罪ヲ犯シタル者但シ國事犯ニシテ復權シタル者ハ此ノ限ニ在ラス
二 定役ニ服スヘキ輕罪ヲ犯シタル者
三 破產若ハ家資分散ノ宣吿ヲ受ケ復權セサル者又ハ身代限ノ處分ヲ受ケ債務ノ辨償ヲ終ヘサル者
四 懲戒ニ依リ免職ニ處セラレ二箇年ヲ經過セス又ハ懲戒ヲ免除セラレサル者
五 敎員免許狀褫奪ノ處分ヲ受ケ二箇年ヲ經過セサル者
六 性行不良ト認ムヘキ者
第五條 私立學校ノ敎員ハ相當學校ノ敎員免許狀ヲ有スル者ヲ除ク外其ノ學力及國語ニ通達スルコトヲ證明シ小學校、盲啞學校及小學校ニ類スル各種學校ノ敎員ニ在リテハ地方長官其ノ他ニ在リテハ文部大臣ノ認可ヲ受クヘシ但シ專ラ外國語、專門學科又ハ特種ノ技術ヲ敎授スル敎員及專ラ外國人ヲ入學セシムル爲ニ設立シタル學校ノ敎員ハ國語ニ通達スルコトヲ證明スルコトヲ要セス
前項ノ認可ハ當該學校在職間有效ノモノトス
第六條 前條ノ證明ヲ不充分ト認メタルトキハ監督官廳ハ本人ノ志望ニ依リ試驗ヲ施スコトアルヘシ
第七條 私立學校ノ校長又ハ敎員ニシテ不適當ナリト認メタルトキハ監督官廳ハ其ノ與ヘタル認可ヲ取消スコトヲ得
第八條 私立學校ニ於テハ公立學校ニ代用スル私立小學校ヲ除ク外學齡兒童ニシテ未タ就學ノ義務ヲ了ラサル者ヲ入學セシムルコトヲ得ス但シ小學校令第二十一條及第二十二條ニ依リ市町村長ノ許可ヲ受ケタル兒童ヲ入學セシムルハ此ノ限ニ在ラス
第九條 私立學校ノ設備授業及其ノ他ノ事項ニシテ敎育上有害ナリト認メタルトキハ監督官廳ハ之カ變更ヲ命スルコトヲ得
第十條 左ノ場合ニ於テハ監督官廳ハ私立學校ノ閉鎖ヲ命スルコトヲ得
一 法令ノ規定ニ違反シタルトキ
二 安寧秩序ヲ紊亂シ又ハ風俗ヲ壞亂スルノ虞アルトキ
三 六箇月以上規定ノ授業ヲ爲ササルトキ
四 第九條ニ依リ監督官廳ノ爲セル命令ニ違反シタルトキ
第十一條 監督官廳ニ於テ學校ノ事業ヲ爲スモノト認メタルトキハ其ノ旨ヲ關係者ニ通吿シ本令ノ規定ニ依ラシムヘシ
第十二條 第十條ニ依ル處分ニ對シテハ訴願法ニ依リ訴願スルコトヲ得
第十三條 第十一條ノ通吿ヲ受ケ第二條第一項ノ手續ヲ爲ササル者及第二條第二項ノ規定ニ違反シタル者竝第十條ニ依リ閉鎖ヲ命セラレタル後尙私立學校ヲ繼續スル者ハ五圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十四條 第三條又ハ第五條ノ認可ヲ得スシテ私立學校ノ校長又ハ敎員タル者及第七條ニ依リ認可ヲ取消サレタル後尙私立學校ノ校長又ハ敎員タル者ハ三十圓以下ノ罰金ニ處ス
情ヲ知リテ之ヲ使用シタル者亦同シ
第十五條 第八條ニ違反シタル者ハ二十圓以下ノ罰金ニ處ス
第十六條 本令ノ規定ハ私立幼稚園ニ準用ス
第十七條 文部大臣ハ本令施行ノ爲必要ナル命令ヲ發スルコトヲ得
附 則
第十八條 本令ハ明治三十二年八月四日ヨリ施行ス
第十九條 既設ノ私立學校ニシテ未タ設立ノ認可ヲ受ケサルモノハ本令施行ノ日ヨリ三箇月以內ニ本令ノ規定ニ依リ認可ヲ受クヘシ
第二十條 本令施行ノ際現ニ私立學校ノ校長又ハ敎員タル者ニシテ引續キ當該學校ノ校長又ハ敎員タラント欲スル者ハ相當學校ノ敎員免許狀ヲ有スル敎員ヲ除ク外本令施行ノ日ヨリ三箇月以內ニ其ノ旨ヲ監督官廳ニ開申スヘシ此ノ場合ニ於テハ第三條又ハ第五條ノ認可ヲ受クルヲ要セス
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ私立学校令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年八月二日
文部大臣 伯爵 樺山資紀
勅令第三百五十九号
私立学校令
第一条 私立学校ハ別段ノ規定アル場合ヲ除ク外地方長官ノ監督ニ属ス
第二条 私立学校ヲ設立セントスル者ハ監督官庁ノ認可ヲ受クヘシ
私立学校ノ廃止及設立者ノ変更ハ監督官庁ニ開申スヘシ
第三条 私立学校ニ於テハ校長若ハ学校ヲ代表シ校務ヲ掌理スル者ヲ定メ監督官庁ノ認可ヲ受クヘシ
本令中校長ニ関スル規定ハ之ヲ学校ヲ代表シ校務ヲ掌理スル者ニ適用ス
第四条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ私立学校ノ校長又ハ教員ト為ルコトヲ得ス
一 重罪ヲ犯シタル者但シ国事犯ニシテ復権シタル者ハ此ノ限ニ在ラス
二 定役ニ服スヘキ軽罪ヲ犯シタル者
三 破産若ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケ復権セサル者又ハ身代限ノ処分ヲ受ケ債務ノ弁償ヲ終ヘサル者
四 懲戒ニ依リ免職ニ処セラレ二箇年ヲ経過セス又ハ懲戒ヲ免除セラレサル者
五 教員免許状褫奪ノ処分ヲ受ケ二箇年ヲ経過セサル者
六 性行不良ト認ムヘキ者
第五条 私立学校ノ教員ハ相当学校ノ教員免許状ヲ有スル者ヲ除ク外其ノ学力及国語ニ通達スルコトヲ証明シ小学校、盲唖学校及小学校ニ類スル各種学校ノ教員ニ在リテハ地方長官其ノ他ニ在リテハ文部大臣ノ認可ヲ受クヘシ但シ専ラ外国語、専門学科又ハ特種ノ技術ヲ教授スル教員及専ラ外国人ヲ入学セシムル為ニ設立シタル学校ノ教員ハ国語ニ通達スルコトヲ証明スルコトヲ要セス
前項ノ認可ハ当該学校在職間有効ノモノトス
第六条 前条ノ証明ヲ不充分ト認メタルトキハ監督官庁ハ本人ノ志望ニ依リ試験ヲ施スコトアルヘシ
第七条 私立学校ノ校長又ハ教員ニシテ不適当ナリト認メタルトキハ監督官庁ハ其ノ与ヘタル認可ヲ取消スコトヲ得
第八条 私立学校ニ於テハ公立学校ニ代用スル私立小学校ヲ除ク外学齢児童ニシテ未タ就学ノ義務ヲ了ラサル者ヲ入学セシムルコトヲ得ス但シ小学校令第二十一条及第二十二条ニ依リ市町村長ノ許可ヲ受ケタル児童ヲ入学セシムルハ此ノ限ニ在ラス
第九条 私立学校ノ設備授業及其ノ他ノ事項ニシテ教育上有害ナリト認メタルトキハ監督官庁ハ之カ変更ヲ命スルコトヲ得
第十条 左ノ場合ニ於テハ監督官庁ハ私立学校ノ閉鎖ヲ命スルコトヲ得
一 法令ノ規定ニ違反シタルトキ
二 安寧秩序ヲ紊乱シ又ハ風俗ヲ壊乱スルノ虞アルトキ
三 六箇月以上規定ノ授業ヲ為ササルトキ
四 第九条ニ依リ監督官庁ノ為セル命令ニ違反シタルトキ
第十一条 監督官庁ニ於テ学校ノ事業ヲ為スモノト認メタルトキハ其ノ旨ヲ関係者ニ通告シ本令ノ規定ニ依ラシムヘシ
第十二条 第十条ニ依ル処分ニ対シテハ訴願法ニ依リ訴願スルコトヲ得
第十三条 第十一条ノ通告ヲ受ケ第二条第一項ノ手続ヲ為ササル者及第二条第二項ノ規定ニ違反シタル者並第十条ニ依リ閉鎖ヲ命セラレタル後尚私立学校ヲ継続スル者ハ五円以上百円以下ノ罰金ニ処ス
第十四条 第三条又ハ第五条ノ認可ヲ得スシテ私立学校ノ校長又ハ教員タル者及第七条ニ依リ認可ヲ取消サレタル後尚私立学校ノ校長又ハ教員タル者ハ三十円以下ノ罰金ニ処ス
情ヲ知リテ之ヲ使用シタル者亦同シ
第十五条 第八条ニ違反シタル者ハ二十円以下ノ罰金ニ処ス
第十六条 本令ノ規定ハ私立幼稚園ニ準用ス
第十七条 文部大臣ハ本令施行ノ為必要ナル命令ヲ発スルコトヲ得
附 則
第十八条 本令ハ明治三十二年八月四日ヨリ施行ス
第十九条 既設ノ私立学校ニシテ未タ設立ノ認可ヲ受ケサルモノハ本令施行ノ日ヨリ三箇月以内ニ本令ノ規定ニ依リ認可ヲ受クヘシ
第二十条 本令施行ノ際現ニ私立学校ノ校長又ハ教員タル者ニシテ引続キ当該学校ノ校長又ハ教員タラント欲スル者ハ相当学校ノ教員免許状ヲ有スル教員ヲ除ク外本令施行ノ日ヨリ三箇月以内ニ其ノ旨ヲ監督官庁ニ開申スヘシ此ノ場合ニ於テハ第三条又ハ第五条ノ認可ヲ受クルヲ要セス