商標法
法令番号: 法律第三十八號
公布年月日: 明治32年3月2日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル商標法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月一日
內閣總理大臣 侯爵 山縣有朋
司法大臣 淸浦奎吾
農商務大臣 曾禰荒助
法律第三十八號
商標法
第一條 自己ノ商品ヲ表彰スル爲商標ヲ專用セントスル者ハ此ノ法律ニ依リ其ノ登錄ヲ受クヘシ
第二條 文字、圖形又ハ記號ニシテ左ノ場合ニ該當スルモノハ商標ノ登錄ヲ受クルコトヲ得ス
一 菊花御紋章ト同一若ハ類似ノ圖形ヲ有スルモノ
二 國旗、軍旗、勳章又ハ外國ノ國旗ト同一若ハ類似ノモノ
三 秩序又ハ風俗ヲ紊リ若ハ世人ヲ欺瞞スルノ虞アルモノ
四 他人ノ登錄商標又ハ其ノ登錄失效後一年ヲ經過セサルモノト同一若ハ類似ニシテ同商品ニ使用セントスルモノ
五 此ノ法律施行前ヨリ他ニ使用者アル商標ト同一若ハ類似ノモノ
六 商品ノ普通名稱、產地ヲ表彰スルモノ又ハ其ノ品位、品質、形狀ヲ商業上慣用ノ文字、圖形若ハ記號ニ依リ表彰スルモノ及普通ニ使用セラルル氏名、商號、會社名若ハ組合名ヲ普通ノ書體ニ依リ記載スルモノ
七 欄、地紋其ノ他特別著明ノ外觀ナキモノ
第三條 商標專用ノ年限ハ二十年トシ原簿登錄ノ日ヨリ起算ス
外國ノ登錄商標ニシテ帝國ニ於テ登錄ヲ受ケタルモノノ專用年限ハ原登錄ノ有效年限ニ從フ但シ二十年ヲ超ユルコトヲ得ス
第四條 商標專用年限滿了ノ後其ノ商標ヲ續用セントスル者ハ更ニ其ノ登錄ヲ受クルコトヲ得
第五條 商標ノ專用ハ農商務大臣ノ定ムル類別ニ從ヒ出願人ノ指定シタル商品ニ限ル
第六條 登錄商標主其ノ營業ヲ讓渡シ又ハ他人ト其ノ營業ヲ共ニスル場合ニ限リ其ノ商標ヲ讓渡シ若ハ共有ト爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ特許局ニ請求シ其ノ登錄ヲ受クルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
登錄商標主同商品ニ付類似ノ商標ヲ有スルトキハ共ニ讓渡シ若ハ共有ト爲シ又ハ類似商標ノ使用ヲ廢止スルニ非サレハ前項ノ登錄ヲ受クルコトヲ得ス
第七條 商標ノ登錄ヲ受ケントスル者ハ一商標每ニ其ノ商標ヲ付スヘキ商品ヲ明記シ見本ヲ添ヘ特許局長ニ出願スヘシ
第八條 二人以上同一又ハ相類似スル商標ヲ同商品ニ使用セントシテ登錄ヲ出願スル者アルトキハ出願ノ先ナルモノヲ登錄シ同時ニ出願シタルモノハ共ニ之ヲ登錄セス但シ出願者一人トナリタルトキハ此ノ限ニアラス
第九條 工業所有權保護同盟條約國ニ於テ商標登錄ヲ出願シタル者四箇月以內ニ同一商標ニ付登錄ヲ出願スルトキハ其ノ出願ハ最初出願ノ日ニ於テ之ヲ爲シタルト同一ノ效力ヲ有ス
第十條 登錄ヲ受ケタル商標ニシテ第二條又ハ第八條ニ違反シタルモノナルトキハ其ノ登錄ヲ無效トス但シ第二條第四號若ハ第五號ニ該當シ又ハ第八條ニ違ヒ登錄ヲ受ケタルモノニシテ登錄後三年ヲ經タルトキハ此ノ限ニアラス
第十一條 登錄ヲ受ケタル商標ニシテ左ノ場合ニ該當スルモノアルトキハ特許局長ニ於テ其ノ登錄ヲ取消スコトヲ得
一 登錄商標主登錄後其ノ商標ヲ使用スル商品ノ產地、品質等ニ關シ不實ノ事項ヲ附記シタルトキ
二 登錄商標主正當ノ事故ナクシテ六箇月以上第二十條ニ依ル特許法第六條ノ代理人ヲ置カサルトキ
第十二條 商標專用權ハ登錄商標主其ノ商標ヲ使用スル營業ノ廢止ニ因リ消滅ス
第十三條 商標ノ登錄ヲ受クル者ハ一商標ニ付商品一類每ニ商標料金三十圓ヲ納ムヘシ續用ノ登錄ニ付テモ亦同シ
第十四條 特許局ハ商標公報ヲ發行シ商標登錄ニ關スル必要事項ヲ公示スヘシ
第十五條 證人又ハ鑑定人ニシテ特許局又ハ囑託ヲ受ケタル裁判所ニ對シ僞證又ハ詐僞ノ鑑定ヲ爲シタルトキハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
賄賂其ノ他ノ方法ヲ以テ人ニ囑託シ僞證又ハ詐僞ノ鑑定ヲ爲サシメタル者ハ罰前項ニ同シ
前二項ノ罪ヲ犯シタル者其ノ事件ノ査定若ハ審決ニ至ラサル前特許局又ハ囑託ヲ受ケタル裁判所ニ自首シタルトキハ本刑ヲ免ス
第十六條 他人ノ登錄商標ナルコトヲ知リ其ノ承諾ヲ經スシテ之ト同一又ハ類似ノ商標ヲ製造シ之ヲ交付若ハ販賣シタル者又ハ他人ノ登錄商標ト同一若ハ類似ノ商標ヲ同商品ニ使用シタル者又ハ情ヲ知リテ其ノ商品ヲ販賣シ若ハ販賣ノ爲所藏シタル者ハ一月以上二年以下ノ重禁錮又ハ二十圓以上五百圓以下ノ罰金ニ處ス
他人ノ登錄商標ヲ有スル容器、包裝等ナルコトヲ知リ之ヲ同商品ニ使用シタル者又ハ情ヲ知リテ其ノ商品ヲ販賣シ若ハ販賣ノ爲所藏シタル者又ハ他人ノ登錄商標ト同一若ハ類似ノ商標ヲ其ノ商品販賣ノ廣吿、看板、引札等ニ使用シタル者ハ罰前項ニ同シ
第十七條 詐僞ノ所爲ヲ以テ商標ノ登錄ヲ受ケタル者又ハ登錄ヲ受ケサル商標ニ登錄標記ヲ付シ若ハ之ニ紛ハシキ表示ヲ爲シタル者又ハ情ヲ知リテ其ノ商品ヲ販賣シ若ハ販賣ノ爲所藏シタル者ハ十五日以上一年以下ノ重禁錮又ハ十圓以上三百圓以下ノ罰金ニ處ス
登錄ヲ受ケスシテ登錄標記又ハ之ニ紛ハシキ表示ヲ付シタル商標ヲ其ノ商品販賣ノ廣吿、看板、引札等ニ使用シタル者ハ罰前項ニ同シ
第十八條 第十六條及第十七條ノ場合ニ於テハ商標及商標ヲ表示スヘキ原具ヲ沒收ス其ノ商標ト分離スヘカラサル商品、容器、包裝等ハ之ヲ毀壞セシム
第十九條 第十六條ノ犯罪ハ被害者ノ吿訴ヲ待テ其ノ罪ヲ論ス
第二十條 特許法第六條乃至第十條第十二條第十三條第十五條第二十一條第二十三條第二十八條乃至第三十七條第四十三條及第五十一條ノ規定ハ商標ニ關シテ之ヲ準用ス
第二十一條 主務官廳ニ於テ認可シタル同業者ノ組合ニシテ標章ヲ商標トシテ專用セントスルトキハ此ノ法律ニ依リ登錄ヲ受クルコトヲ得
前項ニ依リ登錄ヲ受ケタル標章ハ登錄商標ニ準ス
附 則
第二十二條 此ノ法律ハ明治三十二年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
第二十三條 明治二十一年勅令第八十六號商標條例ハ此ノ法律施行ノ日ヨリ之ヲ廢止ス
商標條例ニ依テ受ケタル商標ハ此ノ法律ニ依テ受ケタル商標ト同一ノ效アルモノトス
商標ニ關スル出願又ハ請求ニシテ此ノ法律施行ノ日マテニ處分ヲ終ラサルモノハ此ノ法律ニ依リタル出願又ハ請求ト看做シ處分スヘシ
第二十四條 明治二十一年勅令第八十六號商標條例第二條第三號ニ該當シ又ハ同第八條ニ違ヒ登錄ヲ受ケタル商標ニシテ同第十條ニ依リ無效タルヘキモノニ對シテハ此ノ法律施行後二年ヲ經過スルトキハ其ノ登錄無效ノ審判ヲ請求スルコトヲ得ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル商標法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月一日
内閣総理大臣 侯爵 山県有朋
司法大臣 清浦奎吾
農商務大臣 曽祢荒助
法律第三十八号
商標法
第一条 自己ノ商品ヲ表彰スル為商標ヲ専用セントスル者ハ此ノ法律ニ依リ其ノ登録ヲ受クヘシ
第二条 文字、図形又ハ記号ニシテ左ノ場合ニ該当スルモノハ商標ノ登録ヲ受クルコトヲ得ス
一 菊花御紋章ト同一若ハ類似ノ図形ヲ有スルモノ
二 国旗、軍旗、勲章又ハ外国ノ国旗ト同一若ハ類似ノモノ
三 秩序又ハ風俗ヲ紊リ若ハ世人ヲ欺瞞スルノ虞アルモノ
四 他人ノ登録商標又ハ其ノ登録失効後一年ヲ経過セサルモノト同一若ハ類似ニシテ同商品ニ使用セントスルモノ
五 此ノ法律施行前ヨリ他ニ使用者アル商標ト同一若ハ類似ノモノ
六 商品ノ普通名称、産地ヲ表彰スルモノ又ハ其ノ品位、品質、形状ヲ商業上慣用ノ文字、図形若ハ記号ニ依リ表彰スルモノ及普通ニ使用セラルル氏名、商号、会社名若ハ組合名ヲ普通ノ書体ニ依リ記載スルモノ
七 欄、地紋其ノ他特別著明ノ外観ナキモノ
第三条 商標専用ノ年限ハ二十年トシ原簿登録ノ日ヨリ起算ス
外国ノ登録商標ニシテ帝国ニ於テ登録ヲ受ケタルモノノ専用年限ハ原登録ノ有効年限ニ従フ但シ二十年ヲ超ユルコトヲ得ス
第四条 商標専用年限満了ノ後其ノ商標ヲ続用セントスル者ハ更ニ其ノ登録ヲ受クルコトヲ得
第五条 商標ノ専用ハ農商務大臣ノ定ムル類別ニ従ヒ出願人ノ指定シタル商品ニ限ル
第六条 登録商標主其ノ営業ヲ譲渡シ又ハ他人ト其ノ営業ヲ共ニスル場合ニ限リ其ノ商標ヲ譲渡シ若ハ共有ト為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ特許局ニ請求シ其ノ登録ヲ受クルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
登録商標主同商品ニ付類似ノ商標ヲ有スルトキハ共ニ譲渡シ若ハ共有ト為シ又ハ類似商標ノ使用ヲ廃止スルニ非サレハ前項ノ登録ヲ受クルコトヲ得ス
第七条 商標ノ登録ヲ受ケントスル者ハ一商標毎ニ其ノ商標ヲ付スヘキ商品ヲ明記シ見本ヲ添ヘ特許局長ニ出願スヘシ
第八条 二人以上同一又ハ相類似スル商標ヲ同商品ニ使用セントシテ登録ヲ出願スル者アルトキハ出願ノ先ナルモノヲ登録シ同時ニ出願シタルモノハ共ニ之ヲ登録セス但シ出願者一人トナリタルトキハ此ノ限ニアラス
第九条 工業所有権保護同盟条約国ニ於テ商標登録ヲ出願シタル者四箇月以内ニ同一商標ニ付登録ヲ出願スルトキハ其ノ出願ハ最初出願ノ日ニ於テ之ヲ為シタルト同一ノ効力ヲ有ス
第十条 登録ヲ受ケタル商標ニシテ第二条又ハ第八条ニ違反シタルモノナルトキハ其ノ登録ヲ無効トス但シ第二条第四号若ハ第五号ニ該当シ又ハ第八条ニ違ヒ登録ヲ受ケタルモノニシテ登録後三年ヲ経タルトキハ此ノ限ニアラス
第十一条 登録ヲ受ケタル商標ニシテ左ノ場合ニ該当スルモノアルトキハ特許局長ニ於テ其ノ登録ヲ取消スコトヲ得
一 登録商標主登録後其ノ商標ヲ使用スル商品ノ産地、品質等ニ関シ不実ノ事項ヲ附記シタルトキ
二 登録商標主正当ノ事故ナクシテ六箇月以上第二十条ニ依ル特許法第六条ノ代理人ヲ置カサルトキ
第十二条 商標専用権ハ登録商標主其ノ商標ヲ使用スル営業ノ廃止ニ因リ消滅ス
第十三条 商標ノ登録ヲ受クル者ハ一商標ニ付商品一類毎ニ商標料金三十円ヲ納ムヘシ続用ノ登録ニ付テモ亦同シ
第十四条 特許局ハ商標公報ヲ発行シ商標登録ニ関スル必要事項ヲ公示スヘシ
第十五条 証人又ハ鑑定人ニシテ特許局又ハ嘱託ヲ受ケタル裁判所ニ対シ偽証又ハ詐偽ノ鑑定ヲ為シタルトキハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス
賄賂其ノ他ノ方法ヲ以テ人ニ嘱託シ偽証又ハ詐偽ノ鑑定ヲ為サシメタル者ハ罰前項ニ同シ
前二項ノ罪ヲ犯シタル者其ノ事件ノ査定若ハ審決ニ至ラサル前特許局又ハ嘱託ヲ受ケタル裁判所ニ自首シタルトキハ本刑ヲ免ス
第十六条 他人ノ登録商標ナルコトヲ知リ其ノ承諾ヲ経スシテ之ト同一又ハ類似ノ商標ヲ製造シ之ヲ交付若ハ販売シタル者又ハ他人ノ登録商標ト同一若ハ類似ノ商標ヲ同商品ニ使用シタル者又ハ情ヲ知リテ其ノ商品ヲ販売シ若ハ販売ノ為所蔵シタル者ハ一月以上二年以下ノ重禁錮又ハ二十円以上五百円以下ノ罰金ニ処ス
他人ノ登録商標ヲ有スル容器、包装等ナルコトヲ知リ之ヲ同商品ニ使用シタル者又ハ情ヲ知リテ其ノ商品ヲ販売シ若ハ販売ノ為所蔵シタル者又ハ他人ノ登録商標ト同一若ハ類似ノ商標ヲ其ノ商品販売ノ広告、看板、引札等ニ使用シタル者ハ罰前項ニ同シ
第十七条 詐偽ノ所為ヲ以テ商標ノ登録ヲ受ケタル者又ハ登録ヲ受ケサル商標ニ登録標記ヲ付シ若ハ之ニ紛ハシキ表示ヲ為シタル者又ハ情ヲ知リテ其ノ商品ヲ販売シ若ハ販売ノ為所蔵シタル者ハ十五日以上一年以下ノ重禁錮又ハ十円以上三百円以下ノ罰金ニ処ス
登録ヲ受ケスシテ登録標記又ハ之ニ紛ハシキ表示ヲ付シタル商標ヲ其ノ商品販売ノ広告、看板、引札等ニ使用シタル者ハ罰前項ニ同シ
第十八条 第十六条及第十七条ノ場合ニ於テハ商標及商標ヲ表示スヘキ原具ヲ没収ス其ノ商標ト分離スヘカラサル商品、容器、包装等ハ之ヲ毀壊セシム
第十九条 第十六条ノ犯罪ハ被害者ノ告訴ヲ待テ其ノ罪ヲ論ス
第二十条 特許法第六条乃至第十条第十二条第十三条第十五条第二十一条第二十三条第二十八条乃至第三十七条第四十三条及第五十一条ノ規定ハ商標ニ関シテ之ヲ準用ス
第二十一条 主務官庁ニ於テ認可シタル同業者ノ組合ニシテ標章ヲ商標トシテ専用セントスルトキハ此ノ法律ニ依リ登録ヲ受クルコトヲ得
前項ニ依リ登録ヲ受ケタル標章ハ登録商標ニ準ス
附 則
第二十二条 此ノ法律ハ明治三十二年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
第二十三条 明治二十一年勅令第八十六号商標条例ハ此ノ法律施行ノ日ヨリ之ヲ廃止ス
商標条例ニ依テ受ケタル商標ハ此ノ法律ニ依テ受ケタル商標ト同一ノ効アルモノトス
商標ニ関スル出願又ハ請求ニシテ此ノ法律施行ノ日マテニ処分ヲ終ラサルモノハ此ノ法律ニ依リタル出願又ハ請求ト看做シ処分スヘシ
第二十四条 明治二十一年勅令第八十六号商標条例第二条第三号ニ該当シ又ハ同第八条ニ違ヒ登録ヲ受ケタル商標ニシテ同第十条ニ依リ無効タルヘキモノニ対シテハ此ノ法律施行後二年ヲ経過スルトキハ其ノ登録無効ノ審判ヲ請求スルコトヲ得ス