第一條 自己ノ商品ヲ表彰スル爲メ商標ヲ使用セント欲スル者ハ此條例ニ依リ其商標ノ登錄ヲ受ケ之ヲ專用スルコトヲ得
商標ハ特別著明ナル圖形字體又ハ其結合ヲ以テ要部ト爲スヘシ
第二條 左ニ揭クル商標ハ登錄ヲ受クルコトヲ得サルモノトス
二 商品普通ノ名稱若クハ內外國ノ國旗章ノミヲ以テ要部ト爲スモノ
三 他人ノ登錄商標又ハ登錄出願以前ヨリ他人ノ使用スル商標ト同一若クハ類似ニシテ同一商品ニ使用セントスルモノ
第三條 商標ノ登錄ヲ受ケント欲スル者ハ一商標每ニ明細書及見本ヲ添ヘ農商務大臣ニ出願スヘシ但其願書明細書及見本ハ特許局ニ差出スヘシ
第四條 商標ノ登錄ヲ出願スル者アルトキハ特許局長ハ特許局審査官ヲシテ其商標ヲ審査セシメ登錄ヲ許スヘシト査定シタルモノハ農商務大臣ノ認可ヲ經テ商標原簿ニ登錄シ其登錄證下付ノ手續ヲ爲スヘシ
第五條 登錄證ハ農商務大臣之ニ署名シ特許局長之ニ副署シ明細書及見本ヲ添ヘ之ヲ下付スルモノトス
第六條 商標專用ノ年限ハ二十年ト爲シ原簿登錄ノ日ヨリ起算ス
第七條 商標ノ專用ハ農商務大臣ノ定ムル商品類別ニ於テ出願人ノ指定シタル商品ニ限ルモノトス
第八條 二人以上同一又ハ類似ノ商標ヲ同一商品ニ使用セントシテ登錄ヲ出願スル者アルトキハ願書日附ノ先ナルモノヲ登錄ス其日附同キモノハ共ニ之ヲ登錄セサルモノトス但其出願ヲ取消ス者アリテ出願者一人トナリタルトキハ此限ニ在ラス
第九條 商標ノ登錄ヲ受ケタル者又ハ之ヲ受ケントスル者死亡シタルトキハ其權利ハ相續者ニ屬スルモノトス
第十條 登錄ヲ受ケタル商標ト雖モ第二條ニ該ルコトヲ發見セラレタルモノ又ハ第八條ニ違ヒ登錄ヲ受ケタルコトヲ發見セラレタルモノハ其登錄ヲ無効トス
第十一條 商標ノ審査査定審判ニ關スル事項ハ總テ特許條例ヲ適用ス
第十二條 登錄商標主其營業ヲ賣與讓與シ又ハ他人ト其營業ヲ共ニスル場合ニ限リ其商標專用權ヲ賣與讓與シ若クハ共有トナスコトヲ得此場合ニ於テハ特許局ニ請求シ契約ノ登錄ヲ受クヘシ登錄ヲ受ケサル契約ハ第三者ニ對シ法律上其効ナキモノトス
第十三條 登錄ヲ受ケタル商標ト雖モ左ノ場合ニ於テハ登錄ノ効ヲ失フモノトス
一 登錄商標主相當ノ事故ナクシテ商標登錄ノ日附ヨリ六箇月ヲ經テ其商標ヲ使用セサルトキ
二 登錄商標主相當ノ事故ナクシテ其商標ノ使用ヲ一箇年間中止シタルトキ
三 登錄商標主其商標ヲ使用スル營業ヲ廢止シタルトキ
四 登錄商標主其商標ヲ使用スル商品ノ數量產地品質等ニ關シ不實ノ事項ヲ附記シタルトキ
五 登錄商標主磨滅若クハ缺損シタル商標ヲ使用シタルトキ
第十四條 登錄商標主其專用年限滿期ノ後其商標ヲ續用セント欲スル者ハ更ニ其登錄ヲ出願スルコトヲ得
第十五條 登錄商標主其登錄證ヲ毀損若クハ亡失シタルトキハ事由ヲ具シ再下付ヲ出願スルコトヲ得
第十六條 登錄商標主其明細書若クハ見本ノ不完全ナルコトヲ發見シタルトキハ登錄ノ効力ヲ全クスル爲メ改訂明細書若クハ見本ヲ添ヘ登錄證ノ改訂ヲ出願スルコトヲ得但其商標ノ要部ニ變更ヲ生スルモノハ此限ニ在ラス
第十七條 商標ニ關シ出願又ハ請求スル者ハ左ノ手數料ヲ納ムヘシ
二 登錄商標ノ賣與讓與又ハ共有契約ノ登錄ヲ請求スルトキ
第十八條 商標登錄證又ハ其改訂登錄證又ハ其續用登錄證ヲ受クル者ハ其商標ヲ使用スル物品一類每ニ登錄料金拾圓ヲ納ムヘシ
第十九條 特許局ハ時々商標公報ヲ印刷シ衆庶ノ縱覽ニ供スヘシ其請求者アルトキハ相當代價ヲ以テ之ヲ拂下クルコトヲ得
第二十條 登錄商標ニ關スル書類ノ謄本ヲ要スル者ハ特許局ニ之ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ相當ノ手數料ヲ納ムヘシ
第二十一條 登錄商標ノ專用權ヲ侵シタル者ハ其商標主ニ對シ損害賠償ノ責ニ任スヘシ
第二十二條 前條損害賠償ノ責ハ三年ヲ以テ期滿免除ノ期トス
第二十三條 他人ノ登錄商標ナルコトヲ知リ之ト同一又ハ類似ノ商標ヲ同一商品ニ使用シテ之ヲ販賣シタル者又ハ情ヲ知リ其商品ヲ受託販賣シタル者ハ十五日以上六月以下ノ重禁錮又ハ十圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス
詐欺ノ所爲ヲ以テ登錄證ヲ受ケタル者又ハ登錄ヲ受ケサル商標ニ登錄ノ文字ヲ記シタル者又ハ情ヲ知リ其商品ヲ受託販買シタル者ハ罰前項ニ同シ
第二十四條 前條ノ場合ニ於テハ違犯ノ商標ヲ沒收ス其商品ト分離スヘカラサルモノハ商品ヲ破毀セシム
第二十五條 第二十三條第一項ノ犯罪ハ被害者ノ吿訴ヲ待テ其罪ヲ論ス
前項ノ場合ニ於テ吿訴人ノ請求ニ依リ裁判官ハ假ニ其吿訴ニ係ル物品ノ販賣ヲ差止ムルコトヲ得
第二十六條 此條例ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ數罪倶發ノ例ヲ用ヒス
第二十八條 此條例ハ明治二十二年二月一日ヨリ施行ス