朕衞戍條例ノ改正ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十八年十月三日
陸軍大臣 侯爵 大山巖
勅令第百三十八號
衞戍條例
第一條 陸軍軍隊ノ永久一地ニ配備駐屯スルヲ衞戍ト稱シ東京ニ在テハ東京防禦總督各要塞ニ在テハ要塞司令官其他ニ在テハ其地屯在ノ高級團隊長之カ司令官タルモノトス
衞戍司令官タル東京防禦總督要塞司令官及團隊長ハ衞戍勤務上ニ於テモ亦其所屬上官ノ區處ヲ受クルモノトス
第二條 東京防禦總督部要塞司令部及團隊ノ副官ハ其總督司令官及團隊長衞戍司令官タルトキハ衞戍副官ヲ兼ヌ
第三條 各衞戍地ニハ所要ニ應シ病院、武庫、監獄ヲ置キ衞戍司令官ノ管轄トス又其衞戍地ノ陸軍諸官廨及陸軍ノ建築物ニ關スル火災水害等ノ救防ハ衞戍勤務ニ屬ス
第四條 衞戍司令官ハ衞戍地警備ノ責ニ任シ衞戍勤務ニ關シテハ其地駐屯ノ軍隊ヲ指揮シ衞兵ノ部署及其人員ヲ定ム
第五條 衞戍司令官ハ警備上必要ト認ムル時ハ衞戍上其管轄ニ屬セサル軍隊ト雖モ其衞戍地ニ駐在スル者ニ對シ援助ヲ請求シ又憲兵ヲシテ地方ノ情勢ヲ報吿セシメ且火急ノ場合ニ際シテハ直ニ之ニ命令スルコトヲ得
第六條 前條ノ請求ヲ受ケタル團隊長ハ正當ノ理由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第七條 衞戍地ニ駐在スル軍隊ハ衞戍司令官ノ管轄ニ屬セサルモノト雖モ衞戍司令官ノ定メタル衞戍上ノ諸規則ニ對シテハ總テ遵守ノ義務アルモノトス
第八條 衞戍司令官ハ有事ノ日ニ方リ住民公共ノ保安ニ關スル處置ニ就テハ當該地方官ト協議スルモノトス
衞戍司令官ハ衞戍線內ニ騷擾ノコトアルニ方リ地方官ヨリ請求アルトキハ兵力ヲ以テ便宜事ニ從フコトヲ得
第九條 近衞師團及憲兵隊ニ在テハ第五條第六條及第七條ヲ除クノ外衞戍勤務ニ干與セス
附 則
第十條 東京ノ衞戍ハ東京防禦總督部ノ設置ニ至ル迄第一師團長ヲ以テ之カ司令官ト爲ス又要塞ニシテ其司令部ヲ置カサルノ間ハ其地所在ノ高級隊長ヲ以テ司令官ト爲ス
朕衛戍条例ノ改正ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十八年十月三日
陸軍大臣 侯爵 大山巌
勅令第百三十八号
衛戍条例
第一条 陸軍軍隊ノ永久一地ニ配備駐屯スルヲ衛戍ト称シ東京ニ在テハ東京防禦総督各要塞ニ在テハ要塞司令官其他ニ在テハ其地屯在ノ高級団隊長之カ司令官タルモノトス
衛戍司令官タル東京防禦総督要塞司令官及団隊長ハ衛戍勤務上ニ於テモ亦其所属上官ノ区処ヲ受クルモノトス
第二条 東京防禦総督部要塞司令部及団隊ノ副官ハ其総督司令官及団隊長衛戍司令官タルトキハ衛戍副官ヲ兼ヌ
第三条 各衛戍地ニハ所要ニ応シ病院、武庫、監獄ヲ置キ衛戍司令官ノ管轄トス又其衛戍地ノ陸軍諸官廨及陸軍ノ建築物ニ関スル火災水害等ノ救防ハ衛戍勤務ニ属ス
第四条 衛戍司令官ハ衛戍地警備ノ責ニ任シ衛戍勤務ニ関シテハ其地駐屯ノ軍隊ヲ指揮シ衛兵ノ部署及其人員ヲ定ム
第五条 衛戍司令官ハ警備上必要ト認ムル時ハ衛戍上其管轄ニ属セサル軍隊ト雖モ其衛戍地ニ駐在スル者ニ対シ援助ヲ請求シ又憲兵ヲシテ地方ノ情勢ヲ報告セシメ且火急ノ場合ニ際シテハ直ニ之ニ命令スルコトヲ得
第六条 前条ノ請求ヲ受ケタル団隊長ハ正当ノ理由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第七条 衛戍地ニ駐在スル軍隊ハ衛戍司令官ノ管轄ニ属セサルモノト雖モ衛戍司令官ノ定メタル衛戍上ノ諸規則ニ対シテハ総テ遵守ノ義務アルモノトス
第八条 衛戍司令官ハ有事ノ日ニ方リ住民公共ノ保安ニ関スル処置ニ就テハ当該地方官ト協議スルモノトス
衛戍司令官ハ衛戍線内ニ騒擾ノコトアルニ方リ地方官ヨリ請求アルトキハ兵力ヲ以テ便宜事ニ従フコトヲ得
第九条 近衛師団及憲兵隊ニ在テハ第五条第六条及第七条ヲ除クノ外衛戍勤務ニ干与セス
附 則
第十条 東京ノ衛戍ハ東京防禦総督部ノ設置ニ至ル迄第一師団長ヲ以テ之カ司令官ト為ス又要塞ニシテ其司令部ヲ置カサルノ間ハ其地所在ノ高級隊長ヲ以テ司令官ト為ス