海軍高等武官進級条例
法令番号: 勅令第百七十八號
公布年月日: 明治24年8月19日
法令の形式: 勅令
朕海軍高等武官進級條例改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十四年八月十八日
內閣總理大臣 伯爵 松方正義
海軍大臣 子爵 樺山資紀
勅令第百七十八號
海軍高等武官進級條例
第一條 海軍高等武官トハ海軍少尉以上及其相當官ヲ云フ
第二條 高等武官ノ進級ハ超級ノ陞進ヲ許サス而シテ左ニ揭クル實役停年海上勤務ヲ經タル者ニアラサレハ陞進セシメス又缺員ナキトキハ除任ヲ行ハス
【表】
海上勤務トハ航行シ得ル艦船ニ乘組ミ服務スルヲ云フ但機關大監軍醫大監軍醫少監主計大監主計少監大技監少技監大技士少技士及大藥劑官少藥劑官ハ海上勤務ヲ要セス
實役停年最下期限ヲ終フルモ海上勤務日數ハ其最下期限ニ足ラサルコトアルニ當リ前官ニ於テ其海上勤務最下期限外ニ上官ノ職ヲ奉シタル海上勤務日數アルトキハ之ヲ其不足日數ニ併算スルコトヲ得
第三條 中將ノ大將ニ進ムハ歷戰者或ハ遠征ニ從事シタル者ニ就キ特旨ヲ以テ親任セラルヽヲ例トス
第四條 海上勤務ノ者ニシテ公務ニ原因セサル傷痍疾病其他公務ニ非サル事故ニ依リ陸上ニ在ルノ日數ハ海上勤務ニ算入セス
第五條 休職停職收禁及處刑中ノ日數ハ實役停年ニ算入セス
第六條 敵ノ捕虜ト爲ルモ正當ノ理由アル者ハ其年月ヲ實役停年ニ算入スルコトヲ得
第七條 戰時ニ在テハ各官ノ實役停年海上勤務最下期限ヲ其半ニ減スルコトヲ得
第八條 進級ハ總テ拔擢ヲ以テス但停職中ノ者ハ進級セシメス
第九條 將官ノ進級竝ニ大佐及相當官ノ少將及相當官ニ進ムハ上裁ヲ以テ除任セラルヽヲ例トス
第十條 海軍大臣ハ上長官士官進級順序ヲ定ムル爲メ各所管長官ヲシテ候補名簿ヲ出サシメ須要ニ應シ之ヲ進級會議ノ調査ニ附シ決定候補名簿ヲ作ルモノトス
決定候補名簿ヲ作ルノ法ハ候補名簿中ヨリ進級セシムヘキ者ヲ選拔シ其順序ニ依リ列序ヲ定ム
進級會議ハ各司令長官將官會議議員及軍醫總監主計總監ヲ以テ編制ス
決定候補名簿ハ其調製ノ日ヨリ次年決定候補名簿調製ノ日マテ之ヲ用ユヘシ
第十一條 海軍高等武官決定候補名簿ハ海軍大臣ヨリ奏上シ置キ補敍ヲ要スル每ニ其順序ニ從ヒ除任ノ事ヲ奏上スヘシ
第十二條 准士官ハ士官ニ進級スルヲ得サルヲ例トスト雖モ志操確實士官タルニ堪ヘ且學術技藝拔群ノ者ハ臨時檢査ノ上士官ニ進級セシムルコトヲ得
第十三條 戰役ニ於テ功勞アル者若クハ多年軍務ニ從事シ進級資格ヲ備ヘタル者ニシテ海軍將校分限令第六條第一項第二項第四項第五項及第七條第八條ニ依リ現役ヲ退クトキハ其際特ニ進級セシムルコトヲ得但恩給ヲ受クル資格ニ在テハ前官ニ依ル
第十四條 左ノ場合ニ在テハ定規ニ依ラス進級セシムルコトヲ得
一 敵前ニ在テ殊勳ヲ奏シ首將之ヲ全軍ニ布吿セシ者
二 戰地ニ在テ人員缺乏シ補除定規ヲ履ム能ハサルトキ
第十五條 興軍ノ日ニ方リ戰地ニ臨ムノ首將ニハ進級補除ノ權ヲ假スコトアルヘシ
朕海軍高等武官進級条例改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十四年八月十八日
内閣総理大臣 伯爵 松方正義
海軍大臣 子爵 樺山資紀
勅令第百七十八号
海軍高等武官進級条例
第一条 海軍高等武官トハ海軍少尉以上及其相当官ヲ云フ
第二条 高等武官ノ進級ハ超級ノ陞進ヲ許サス而シテ左ニ掲クル実役停年海上勤務ヲ経タル者ニアラサレハ陞進セシメス又欠員ナキトキハ除任ヲ行ハス
【表】
海上勤務トハ航行シ得ル艦船ニ乗組ミ服務スルヲ云フ但機関大監軍医大監軍医少監主計大監主計少監大技監少技監大技士少技士及大薬剤官少薬剤官ハ海上勤務ヲ要セス
実役停年最下期限ヲ終フルモ海上勤務日数ハ其最下期限ニ足ラサルコトアルニ当リ前官ニ於テ其海上勤務最下期限外ニ上官ノ職ヲ奉シタル海上勤務日数アルトキハ之ヲ其不足日数ニ併算スルコトヲ得
第三条 中将ノ大将ニ進ムハ歴戦者或ハ遠征ニ従事シタル者ニ就キ特旨ヲ以テ親任セラルヽヲ例トス
第四条 海上勤務ノ者ニシテ公務ニ原因セサル傷痍疾病其他公務ニ非サル事故ニ依リ陸上ニ在ルノ日数ハ海上勤務ニ算入セス
第五条 休職停職収禁及処刑中ノ日数ハ実役停年ニ算入セス
第六条 敵ノ捕虜ト為ルモ正当ノ理由アル者ハ其年月ヲ実役停年ニ算入スルコトヲ得
第七条 戦時ニ在テハ各官ノ実役停年海上勤務最下期限ヲ其半ニ減スルコトヲ得
第八条 進級ハ総テ抜擢ヲ以テス但停職中ノ者ハ進級セシメス
第九条 将官ノ進級並ニ大佐及相当官ノ少将及相当官ニ進ムハ上裁ヲ以テ除任セラルヽヲ例トス
第十条 海軍大臣ハ上長官士官進級順序ヲ定ムル為メ各所管長官ヲシテ候補名簿ヲ出サシメ須要ニ応シ之ヲ進級会議ノ調査ニ附シ決定候補名簿ヲ作ルモノトス
決定候補名簿ヲ作ルノ法ハ候補名簿中ヨリ進級セシムヘキ者ヲ選抜シ其順序ニ依リ列序ヲ定ム
進級会議ハ各司令長官将官会議議員及軍医総監主計総監ヲ以テ編制ス
決定候補名簿ハ其調製ノ日ヨリ次年決定候補名簿調製ノ日マテ之ヲ用ユヘシ
第十一条 海軍高等武官決定候補名簿ハ海軍大臣ヨリ奏上シ置キ補叙ヲ要スル毎ニ其順序ニ従ヒ除任ノ事ヲ奏上スヘシ
第十二条 准士官ハ士官ニ進級スルヲ得サルヲ例トスト雖モ志操確実士官タルニ堪ヘ且学術技芸抜群ノ者ハ臨時検査ノ上士官ニ進級セシムルコトヲ得
第十三条 戦役ニ於テ功労アル者若クハ多年軍務ニ従事シ進級資格ヲ備ヘタル者ニシテ海軍将校分限令第六条第一項第二項第四項第五項及第七条第八条ニ依リ現役ヲ退クトキハ其際特ニ進級セシムルコトヲ得但恩給ヲ受クル資格ニ在テハ前官ニ依ル
第十四条 左ノ場合ニ在テハ定規ニ依ラス進級セシムルコトヲ得
一 敵前ニ在テ殊勲ヲ奏シ首将之ヲ全軍ニ布告セシ者
二 戦地ニ在テ人員欠乏シ補除定規ヲ履ム能ハサルトキ
第十五条 興軍ノ日ニ方リ戦地ニ臨ムノ首将ニハ進級補除ノ権ヲ仮スコトアルヘシ