民法(人事編)
法令番号: 法律第九十八號
公布年月日: 明治23年10月7日
法令の形式: 法律
朕民法中財產取得編人事編ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム此法律ハ明治二十六年一月一日ヨリ施行スヘキコトヲ命ス
御名御璽
明治二十三年十月六日
內閣總理大臣　伯爵　山縣有朋
內務大臣　伯爵　西鄕從道
司法大臣　伯爵　山田顯義
大藏大臣　伯爵　松方正義
陸軍大臣　伯爵　大山巖
遞信大臣　伯爵　後藤象二郞
外務大臣　子爵　靑木周藏
海軍大臣　子爵　樺山資紀
文部大臣　芳川顯正
農商務大臣　陸奧宗光
法律第九十八號
民法人事編目錄
第一章
私權ノ享有及ヒ行使
第二章
國民分限
第一節
國民分限ノ取得
第二節
國民分限ノ喪失及ヒ囘復
第三節
國民分限變更ノ方式及ヒ效力
第三章
親屬及ヒ姻屬
第四章
婚姻
第一節
婚姻ヲ爲スニ必要ナル條件
第二節
婚姻ノ儀式
第三節
日本人外國ニ於テ爲シ及ヒ外國人日本ニ於テ爲ス婚姻
第四節
婚姻成立ノ證據
第五節
婚姻ノ不成立及ヒ無效
第六節
婚姻ノ效力
第七節
罰則
第五章
離婚
第一節
協議ノ離婚
第二節
特定原因ノ離婚
第一款
離婚及ヒ不受理ノ原因
第二款
假處分
第三款
離婚ノ訴
第三節
離婚ノ效力
第六章
親子
第一節
親子ノ分限ノ證據
第二節
否認訴權
第三節
庶子及ヒ私生子ノ適出子ト爲ル權
第七章
養子緣組
第一節
養子緣組ニ必要ナル條件
第二節
養子緣組ノ儀式
第三節
養子緣組ノ證據
第四節
養子緣組ノ不成立及ヒ無效
第五節
養子緣組ノ效力
第六節
罰則
第八章
養子ノ離緣
第一節
協議ノ離緣
第二節
特定原因ノ離緣
第三節
離緣ノ效力
第九章
親權
第一節
子ノ身上ニ對スル權
第二節
子ノ財產ノ管理
第三節
嫡母、繼父及ヒ繼母ニ特別ナル規則
第十章
後見
總則
第一節
後見人
第二節
後見監督人
第三節
親族會
第四節
後見ノ免除
第五節
後見人及ヒ親族會員ノ缺格、除斥及ヒ罷黜
第六節
後見人ノ管理
第七節
後見監督人ノ任務
第八節
後見ノ終了
第九節
後見ノ計算
第十一章
自治產
第十二章
禁治產
第一節
民事上禁治產
第二節
准禁治產
第三節
刑事上禁治產
第四節
瘋癲者ノ財產ノ假管理
第十三章
戶主及ヒ家族
第十四章
住所
第十五章
失踪
第一節
失踪ノ推定
第二節
失踪ノ宣言
第三節
失踪宣言ノ效力
第四節
失踪ノ推定及ヒ宣言ニ關スル通則
第五節
不在者ニ關スル規則
第十六章
身分ニ關スル證書
民法
人事編
第一章　私權ノ享有及ヒ行使
第一條　凡ソ人ハ私權ヲ享有シ法律ニ定メタル無能力者ニ非サル限リハ自ラ其私權ヲ行使スルコトヲ得
第二條　胎內ノ子ト雖モ其利益ヲ保護スルニ付テハ既ニ生マレタル者ト看做ス
第三條　私權ノ行使ニ關スル成年ハ滿二十年トス但法律ニ特別ノ規定アルトキハ此限ニ在ラス
第四條　外國人ハ法律又ハ條約ニ禁止アルモノヲ除ク外私權ヲ享有ス
第五條　法人ハ公私ヲ問ハス法律ノ認許スルニ非サレハ成立スルコトヲ得ス又法律ノ規定ニ從フニ非サレハ私權ヲ享有スルコトヲ得ス
第六條　法律ハ外國法人ノ成立ヲ認許セス但條約又ハ特許アルトキハ此限ニ在ラス
成立ノ認許ヲ得タル外國法人ハ日本ニ成立スル同種ノ者ト同一ノ私權ヲ享有ス但條約中又ハ特許中ニ其權利ヲ制限シタルトキハ此限ニ在ラス
第二章　國民分限
第一節　國民分限ノ取得
第七條　日本人ノ子ハ外國ニ於テ生マレタルトキト雖モ日本人トス
父母分限ヲ異ニスルトキハ父ノ分限ヲ以テ子ノ分限ヲ定ム
父ノ知レサルトキハ子ハ母ノ分限ニ從フ
父母共ニ知レサルトキハ日本ニ於テ生マレタル子ハ日本人トス若シ其出生地ノ知レサルトキハ現ニ日本國內ニ在ル者ハ日本人トス
第八條　左ノ場合中ノ一ニ在ル子ハ日本人ノ分限ヲ選擇スルコトヲ得
第一　父カ外國人タルモ母ノ日本人タルトキ
第二　外國人ノ子タルモ日本ニ生マレタルトキ
第三　日本人ノ分限ヲ失ヒタル者ノ子ニシテ其分限喪失ノ後ニ生マレタル者ナルトキ
第四　歸化人ノ子ニシテ成年者ナルトキ
第九條　日本人ノ分限ヲ選擇セント欲スル子ハ本國法律ニ從ヒテ成年ニ至リシ時ヨリ一个年內ニ其意思ヲ申述シ且其申述ヨリ一个年內ニ住所ヲ日本ニ定ム可シ
成年ノ後ニ至リテ外國人ノ認知シタル私出子ハ認知ヨリ又歸化人ノ子ハ歸化ヨリ一个年內ニ右ノ申述ヲ爲スコトヲ得
第十條　日本人ト婚姻スル外國ノ女ハ日本人ノ分限ヲ取得シ婚姻解消ノ後ト雖モ其分限ヲ保有ス
第十一條　外國人ハ歸化ニ因リテ日本人ノ分限ヲ取得スルコトヲ得其條件及ヒ方式ハ特別法ヲ以テ之ヲ規定ス
歸化人ノ婦及ヒ未成年ノ子ハ日本ニ住居ヲ定メタルトキハ日本人ノ分限ヲ取得ス
第二節　國民分限ノ喪失及ヒ囘復
第十二條　日本人ハ左ノ場合ニ於テ其分限ヲ失フ
第一　任意ニ外國人ノ分限ヲ取得シタルトキ
第二　日本政府ノ允許ナクシテ外國政府ノ官職ヲ受ケ又ハ外國ノ軍隊ニ入リタルトキ
第十三條　前條ノ場合ニ於テ日本人ノ分限ヲ失ヒタル者其分限ヲ囘復セント欲スルトキハ日本政府ノ允許ヲ得タル上歸國シテ其意思ヲ申述シ且一个年內ニ住所ヲ日本ニ定ムルトキハ其分限ヲ囘復ス
第十四條　日本人ノ分限ヲ失ヒタル者ノ婦及ヒ未成年ノ子ハ引續キ日本ニ住居スルニ非サレハ日本人ノ分限ヲ失フ但婦ハ第十五條第二項ノ規定ニ從ヒ又未成年ノ子ハ第九條第一項ノ規定ニ從ヒ其分限ヲ囘復スルコトヲ得
第十五條　外國人ト婚姻スル日本ノ女ハ日本人ノ分限ヲ失フ
然レトモ婚姻解消ノ後日本ニ住居シ又ハ復歸シ且日本ニ住所ヲ定ムルコトヲ申述スルトキハ其分限ヲ囘復ス
第三節　國民分限變更ノ方式及ヒ效力
第十六條　國民分限ノ變更ニ關スル申述ハ日本ニ在リテハ住居地ノ身分取扱吏ニ外國ニ在リテハ日本公使館又ハ日本領事館ニ之ヲ爲ス可シ
此申述ハ部理代理人ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
第十七條　國民分限ノ變更ハ將來ニ非サレハ其效力ヲ生セス
第十八條　國民分限ハ出生ノ時ヲ以テ之ヲ定ム然レトモ懷胎ヨリ出生マテノ間父又ハ母ノ分限ニ變更アリタルトキハ子ハ日本ニ住居スル場合ニ限リ日本人ノ分限ヲ保有ス
第三章　親屬及ヒ姻屬
第十九條　親屬トハ血統ノ相聯結スル者ノ關係ヲ謂フ
六親等ノ外ハ親屬ノ關係アルモ民法上ノ效力ヲ生セス
第二十條　親屬ノ遠近ハ世數ヲ以テ之ヲ定メ一世ヲ以テ一親等トス
親等ノ連續スルヲ親系ト爲ス彼ヨリ此ニ直下スル者ノ親系ヲ直系ト謂ヒ其直下セスシテ同始祖ニ出ツル者ノ親系ヲ傍系ト謂フ
直系ニ於テ自己ノ出ツル所ノ親族ヲ尊屬親ト謂ヒ自己ヨリ出ツル所ノ親族ヲ卑屬親ト謂フ
第二十一條　直系ニ於テハ親族ノ世數ヲ算シテ親等ヲ定ム
傍系ニ於テハ親族ノ一人ヨリ同始祖ニ遡リ又其始祖ヨリ他ノ一人ニ下タル其間ノ世數ヲ算シテ親等ヲ定ム
第二十二條　養子緣組ハ養子ト養父母及ヒ其親族トノ間ニ親屬ニ同シキ關係ヲ生ス但養子トハ男女ヲ總稱ス
第二十三條　嫡母、繼父又ハ繼母ト其配偶者ノ子トノ關係ハ親子ニ準ス
第二十四條　姻屬トハ婚姻ニ因リテ夫婦ノ一方ト其配偶者ノ親族トノ間ニ生スル關係ヲ謂フ
然レトモ婦ノ夫家ニ於ケル又入夫ノ婦家ニ於ケル尊屬親トノ關係ハ親屬ニ準ス
第二十五條　夫婦ノ一方ノ親族ハ其親系及ヒ親等ニ於テ配偶者ノ姻族トス
姻屬ノ關係ハ婚姻無效ノ判決又ハ離婚ニ因リテ止ム又生存配偶者其家ヲ去ルニ因リテ止ム
第二十六條　直系ノ親族ハ相互ニ養料ヲ給スル義務ヲ負擔ス
嫡母、繼父又ハ繼母ト其配偶者ノ子トノ間及ヒ婦又ハ入夫ト夫家又ハ婦家ノ尊屬親トノ間モ亦同シ
第二十七條　兄弟姊妹ノ間ニハ疾病其他本人ノ責ニ歸セサル事故ニ因リテ自ラ生活スル能ハサル場合ニ限リ相互ニ養料ヲ給スル義務アリ
第二十八條　養料ノ義務ヲ負擔ス可キ者ノ順位ハ左ノ如シ
第一　第二十六條ニ揭ケタル者
第二　兄弟姊妹
直系ノ親族ノ間ハ其親等ノ最モ近キ者養料ノ義務ヲ負擔ス
第二十九條　養料ハ之ヲ受ク可キ者ノ必需ト之ヲ給ス可キ者ノ資產トニ應シテ其額ヲ定ム
第四章　婚姻
第一節　婚姻ヲ爲スニ必要ナル條件
第三十條　男ハ滿十七年女ハ滿十五年ニ至ラサレハ婚姻ヲ爲スコトヲ得ス
第三十一條　配偶者アル者ハ重子テ婚姻ヲ爲スコトヲ得ス
第三十二條　夫ノ失踪ニ原因スル離婚ノ場合ヲ除ク外女ハ前婚解消ノ後六个月內ニ再婚ヲ爲スコトヲ得ス
此制禁ハ其分娩シタル日ヨリ止ム
第三十三條　姦通ノ原因ニ由リテ離婚ノ裁判ヲ言渡サレタル曲者ハ相姦者ト婚姻ヲ爲スコトヲ得ス
第三十四條　直系ニ於テハ尊屬親ト卑屬親トノ間婚姻ヲ禁ス
第三十五條　傍系ニ於テハ兄弟姊妹及ヒ伯叔父姑甥姪ノ間婚姻ヲ禁ス
第三十六條　直系ノ姻族ノ間ハ其關係ノ止ミタル後ト雖モ婚姻ヲ禁ス
第三十七條　養子ト養父母又ハ其尊屬親トノ間及ヒ養父母又ハ其尊屬親ト養子ノ配偶者又ハ其卑屬親トノ間ハ離緣ノ後ト雖モ婚姻ヲ禁ス
第三十八條　子ハ父母ノ許諾ヲ受クルニ非サレハ婚姻ヲ爲スコトヲ得ス
父母ノ一方カ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ他ノ一方ノ許諾ヲ以テ足ル
繼父又ハ繼母アル場合ニ於テ其配偶者タル母又ハ父ノ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ繼父又ハ繼母ノ許諾ヲ受ク可シ其許諾ニ付テハ第九章第三節ノ規定ヲ適用ス
第三十九條　父母共ニ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ其家ノ祖父母ノ許諾ヲ受ク可シ
祖父母ノ一方カ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ他ノ一方ノ許諾ヲ以テ足ル
第四十條　父母、祖父母悉ク死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ滿二十年ニ至ラサル者ニ限リ後見人ノ許諾ヲ受ク可シ
第四十一條　父母ノ知レサル子ハ二十年未滿ニ限リ後見人ノ許諾ヲ受ク可シ
第四十二條　育兒院ニ在リテ父母ノ知レサル子ノ婚姻ハ二十年未滿ニ限リ院長ノ許諾ヲ受ク可シ
第二節　婚姻ノ儀式
第四十三條　婚姻ノ儀式ハ當事者ノ一方ノ住所又ハ居所ノ地ニ於テ之ヲ行フ可シ
雙方ハ婚姻ノ儀式ヲ行フ前ニ其地ノ身分取扱吏ニ婚姻ヲ爲サントスル申出ヲ爲スコトヲ要ス但此申出ハ代理人ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
第四十四條　雙方ハ前條ノ申出ヲ爲ス時ニ於テ左ノ書類ヲ差出タス可シ
第一　出生證書
第二　前婚ノ解消ヲ證スル證書
第三　婚姻ニ必要ナル許諾書又ハ其許諾ヲ得ル能ハサル事由ヲ證スル書類
第四十五條　雙方又ハ一方カ出生證書ヲ呈示スル能ハサルトキハ出生地、住所又ハ居所ノ區裁判所ノ授付シタル保證書ヲ以テ出生證書ニ代用スルコトヲ得
保證書ハ男女ヲ問ハス又親族ト否トヲ問ハス證人二人カ左ノ諸件ニ付キ區裁判所ニ爲シタル申述ヲ記載ス
第一　本人ノ氏名、職業、住所及ヒ居所竝ニ其父母分明ナルトキハ其氏名、職業、住所及ヒ居所
第二　本人ノ出生ノ地及ヒ年月日
第三　本人ノ出生證書ヲ呈示スル能ハサル原因及ヒ證人ノ其事實ヲ聞知シタル緣由
第四十六條　身分取扱吏ハ婚姻ノ儀式ヲ行フ障碍ト爲ル可キ法律上ノ原因アルコトヲ知リタルトキハ其儀式ヲ行フコトヲ差止ム可シ
此場合ニ於テハ身分取扱吏ハ理由ヲ記シタル差止書ヲ授付ス可シ
當事者此差止ヲ不當ナリト思料スルトキハ區裁判所ニ抗吿シテ其取消ヲ求ムルコトヲ得
裁判所ハ休暇事件ト同シク之ヲ取扱フ可シ
第四十七條　婚姻ハ證人二人ノ立會ヲ得テ慣習ニ從ヒ其儀式ヲ行フニ因リテ成ル
當事者ノ承諾ハ此儀式ヲ行フニ因リテ成立ス
第四十八條　婚姻ノ儀式ハ其申出ノ日ヨリ三日後三十日內ニ之ヲ行フコトヲ要ス
第四十九條　婚姻ノ儀式ヲ行ヒタルトキハ雙方ヨリ十日內ニ身分取扱吏ニ其屆出ヲ爲ス可シ但此屆出ハ代理人ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
第三節　日本人外國ニ於テ爲シ及ヒ外國人日本ニ於テ爲ス婚姻
第五十條　外國ニ於テ日本人ノ間又ハ日本人ト外國人トノ間ニ婚姻ヲ爲ストキハ其國ノ規則ニ從ヒテ儀式ヲ行フコトヲ得但本章第一節ニ定メタル條件ニ違背セサルコトヲ要ス
第五十一條　外國ニ於テ日本人ノ間ニ日本ノ規則ニ從ヒテ婚姻ヲ爲ストキハ其國ニ在ル日本公使館又ハ日本領事館ニ婚姻ノ申出ヲ爲スコトヲ要ス
婚姻ノ儀式ヲ行ヒタルトキハ第四十九條ノ規定ニ從ヒテ其屆出ヲ爲ス可シ
第五十二條　日本ニ於テ外國人カ婚姻ヲ爲サントスルトキハ其能力ハ本國ノ法律ニ從フ但第三十一條乃至第三十七條ノ條件ニ違背セサルコトヲ要ス
外國人ハ婚姻ノ申出ヲ爲ス時ニ於テ婚姻ヲ爲スニ障碍ナキコトヲ證スル本國相當官署ノ認定書ヲ差出タス可シ
第四節　婚姻成立ノ證據
第五十三條　婚姻成立ノ證據ハ婚姻證書ヲ以テ之ヲ擧ク可シ但第二百九十一條ニ規定スルモノハ此限ニ在ラス
第五十四條　婚姻證書ヲ增減シ毀棄シ隱匿シ又ハ片紙ニ記載シタル場合ニ於テ刑事又ハ民事ノ訴訟ニ因リテ婚姻ノ成立ヲ認メタル判決ハ之ヲ婚姻證書ニ代用スルコトヲ得
第五節　婚姻ノ不成立及ヒ無效
第五十五條　人違、喪心又ハ强暴ニ因リテ雙方又ハ一方ノ承諾ノ全ク欠缺シタル婚姻ハ不成立トス
第三十四條乃至第三十七條ノ規定ニ違ヒテ爲シタル婚姻モ亦不成立トス
婚姻ノ不成立ハ何人ニ限ラス何時ニテモ之ヲ申立ツルコトヲ得
第五十六條　第三十條、第三十一條及ヒ第三十三條ノ規定ニ違ヒテ婚姻ヲ爲シタルトキハ雙方、尊屬親又ハ現實ノ利益ヲ有スル者ヨリ何時ニテモ其無效ヲ請求スルコトヲ得
右同一ノ場合ニ於テ檢事ハ夫婦ノ生存中ニ限リ職權ヲ以テ婚姻ノ無效ヲ請求スルコトヲ得
第五十七條　不適齡ニ付キ無效ヲ請求スル權利ハ左ノ場合ニ於テ消滅ス
第一　適齡ナラサリシ者カ適齡ニ至レル後明示ニテ婚姻ヲ認諾シ又ハ三个月ヲ過キタルトキ
第二　無效ノ請求後ト雖モ婦カ適齡ナラスシテ懷胎シタルトキ
第三　夫カ適齡ナラスシテ婦ノ懷胎シタルトキ但婦ノ姦通ヲ證スルトキハ格別ナリトス
第五十八條　重婚ニ原因スル婚姻無效ノ請求アリタル場合ニ於テ後婚ノ雙方カ前婚ノ不成立、無效又ハ離婚ヲ主張スルトキハ先ツ其裁判ヲ爲ス可シ
前婚ノ配偶者カ失踪シタルトキハ其失踪中ハ重婚ノ無效訴權ヲ行フコトヲ得ス
第五十九條　左ノ場合ニ於テハ婚姻ハ無效トス
第一　身分取扱吏ニ婚姻ノ申出ヲ爲サス又ハ其差止ヲ受ケタルニ拘ハラス儀式ヲ行ヒタルトキ
第二　身分取扱吏ノ管轄違ナルトキ
第三　第四十八條ノ規定ニ違ヒテ儀式ヲ行ヒタルトキ
第四　證人二人ノ立會ナクシテ儀式ヲ行ヒタルトキ
此無效ハ第五十六條ニ揭ケタル者ヨリ之ヲ請求スルコトヲ得但婚姻儀式後一个年ヲ過キタルトキハ無效訴權ヲ行フコトヲ得ス
第六十條　第三十八條乃至第四十二條ニ定メタル許諾ナクシテ婚姻ヲ爲シタルトキハ其許諾ヲ與フ可キ者又ハ之ヲ受ク可キ者ヨリ其無效ヲ請求スルコトヲ得
許諾アリタル場合ト雖モ其許諾カ强暴ニ原因シタルトキモ亦同シ
第六十一條　前條ノ場合ニ於テ婚姻ノ許諾ヲ與フ可キ者カ婚姻ヲ認諾セスシテ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ法律ニ定メタル順位ニ從ヒテ其許諾ヲ與フ可キ者ハ無效訴權ヲ行フコトヲ得
第六十二條　第六十條ニ揭ケタル無效訴權ハ左ノ場合ニ於テ消滅ス
第一　婚姻ノ許諾ヲ與フ可キ者カ認諾ヲ爲シ又ハ婚姻アリタルコトヲ知リシ後三个月ヲ過キタルトキ
第二　三个月內ト雖モ許諾ヲ受ク可キ者カ婚姻上ノ成年ニ至リ又ハ死亡シタルトキ
第六十三條　强暴ニ因リテ承諾ニ瑕疵アル婚姻ノ無效ハ强暴ヲ受ケタル者ニ限リ之ヲ請求スルコトヲ得
第六十四條　前條ノ場合ニ於テ配偶者强暴ヲ免カレタル後明示ニテ認諾シ又ハ三个月間引續キ同居シタルトキハ婚姻ノ無效ヲ請求スルコトヲ得ス其同居セサル場合ニ於テモ無效訴權ハ一个年ヲ以テ消滅ス
第六十五條　裁判所ハ婚姻ノ不成立又ハ無效ノ訴訟中夫婦ノ一方ノ請求ニ因リ又ハ職權ヲ以テ婦又ハ夫ニ住家ヲ去ル可キヲ命スルコトヲ得
第六十六條　無效ノ言渡アリタル婚姻ハ子ニ付テハ其出生ノ婚姻前後ナルヲ問ハス法律上ノ效力ヲ生ス
第六節　婚姻ノ效力
第六十七條　婚姻ハ其儀式ヲ行ヒタル日ヨリ效力ヲ生ス但夫婦財產契約ニ付テハ婚姻ノ屆出後ニ非サレハ第三者ニ對シテ婚姻ノ效力ヲ援用スルコトヲ得ス
第六十八條　婦ハ夫ノ許可ヲ得ルニ非サレハ贈與ヲ爲シ之ヲ受諾シ不動產ヲ讓渡シ之ヲ擔保ニ供シ借財ヲ爲シ債權ヲ讓渡シ之ヲ質入シ元本ヲ領收シ保證ヲ約シ及ヒ身體ニ覊絆ヲ受クル約束ヲ爲スコトヲ得ス又和解ヲ爲シ仲裁ヲ受ケ及ヒ訴訟ヲ起スコトヲ得ス
第六十九條　夫ノ許可ハ特定又ハ總括ナルコトヲ得但總括ノ許可ハ證書ヲ以テ之ヲ與フルコトヲ要ス
夫ハ夫婦財產契約ニ依リテ與ヘタル總括ノ許可ト雖モ之ヲ廢罷スルコトヲ得
第七十條　左ノ場合ニ於テハ婦ハ夫ノ許可ヲ得ルコトヲ要セス
第一　夫カ失踪ノ推定ヲ受ケタルトキ
第二　夫カ禁治產又ハ准禁治產ヲ受ケタルトキ
第三　夫カ瘋癲ノ爲メ病院又ハ監置ニ在ルトキ
第七十一條　夫ハ婦ニ與ヘタル許可ニ因リテ義務ヲ負擔セス
第七十二條　夫ノ許可ヲ得スシテ婦ノ爲シタル行爲ハ之ヲ銷除スルコトヲ得
此銷除ハ夫婦ノ各自及ヒ婦ノ承繼人ニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
第七十三條　夫ニ屬スル銷除訴權ハ其銷除シ得ヘキ行爲ヲ知リタル日ヨリ五个年ノ時效ニ因リ又ハ婚姻ノ解消ニ因リテ消滅ス
婦及ヒ其承繼人ニ屬スル銷除訴權ハ婚姻解消ノ日ヨリ五个年ノ時效ニ因リテ消滅ス
財產編第五百四十四條以下ノ規定ハ本條ノ銷除訴權ニ之ヲ適用ス
第七節　罰則
第七十四條　婚姻申出ノ時ニ必要ノ書類ヲ差出タサシメサル身分取扱吏ハ貳圓以上貳拾圓以下ノ過料ニ處ス
第七十五條　婚姻ノ不成立又ハ無效タル可キ法律上ノ原因アルヲ知リテ其儀式ヲ行フコトヲ差止メサル身分取扱吏ハ三圓以上三拾圓以下ノ罰金ニ處ス
第七十六條　第三十二條ノ制禁ニ違背シテ再婚ヲ爲シタル婦ハ貳圓以上貳拾圓以下ノ罰金ニ處ス其情ヲ知リテ婚姻ヲ爲シタル夫及ヒ婚姻ノ儀式ヲ行フコトヲ差止メサル身分取扱吏モ亦同シ
第七十七條　夫婦ノ一方ニシテ婚姻ノ無效ヲ致シタル原因ヲ知リ之ヲ他ノ一方ニ隱祕シタル者ハ三圓以上三拾圓以下ノ罰金ニ處ス
第五章　離婚
第一節　協議ノ離婚
第七十八條　夫婦ハ下ニ定メタル條件及ヒ方式ニ從ヒ協議ヲ以テ離婚ヲ爲スコトヲ得
第七十九條　離婚セントスル夫婦ハ婚姻許諾ノ爲メ第四章第一節ニ定メタル規則ニ從ヒ各其父母、祖父母又ハ後見人ノ許諾ヲ受クルコトヲ要ス
第八十條　夫婦ハ離婚協議書ニ左ノ書類ヲ添ヘテ身分取扱吏ニ屆出ツ可シ
第一　婚姻證書
第二　離婚ノ許諾ヲ與フ可キ者ノ許諾書若シ其者死亡シ又ハ意思ヲ表スル能ハサルトキハ死亡證書又ハ其事由ヲ證スル書類
第二節　特定原因ノ離婚
第一款　離婚及ヒ不受理ノ原因
第八十一條　離婚ハ左ノ原因アルニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
第一　姦通但夫ノ姦通ハ刑ニ處セラレタル場合ニ限ル
第二　同居ニ堪ヘサル暴虐、脅迫及ヒ重大ノ侮辱
第三　重罪ニ因レル處刑
第四　竊盜、詐欺取財又ハ猥褻ノ罪ニ因レル重禁錮一年以上ノ處刑
第五　惡意ノ遺棄
第六　失踪ノ宣言
第七　婦又ハ入夫ヨリ其家ノ尊屬親ニ對シ又ハ尊屬親ヨリ婦又ハ入夫ニ對スル暴虐、脅迫及ヒ重大ノ侮辱
第八十二條　離婚ノ請求ヲ爲ス一方ニ對シテ離婚ノ原因存スルトキハ他ノ一方モ反訴ヲ以テ離婚ヲ請求スルコトヲ得
然レトモ前條第三號及ヒ第四號ニ記載スル重罪又ハ輕罪ノ刑ニ處セラレタル一方ハ他ノ一方ノ處刑ヲ原因トシテ離婚ヲ請求スルコトヲ得ス
第二款　假處分
第八十三條　離婚ノ訴訟中子ノ監護ハ原吿又ハ被吿タルヲ問ハス夫ニ屬ス但入夫及ヒ婿養子ニ付テハ婦ニ屬ス
然レトモ裁判所ハ夫、婦、親族又ハ檢事ノ請求ニ因リ子ノ利益ヲ慮リテ其監護ヲ他ノ一方又ハ第三者ニ命スルコトヲ得
第八十四條　離婚ノ訴訟中婦ハ原吿又ハ被吿タルヲ問ハス裁判所ノ許可ヲ得テ住家ヲ去ルコトヲ得此場合ニ於テハ自己ノ衣服其他ノ日用物品ヲ持去リ且必要アルトキハ養料ヲ請求スルコトヲ得
裁判所ハ夫ノ意見ヲ聽キテ婦ノ移居ス可キ家屋ヲ指示スルコトヲ要ス若シ婦カ正當ノ理由ナクシテ其家屋ヲ去ルトキハ夫ハ養料ヲ拒ムコトヲ得
第八十五條　入夫及ヒ婿養子ニ付テハ裁判所ハ離婚ノ訴訟中夫ヲシテ住家ヲ去ラシムルコトヲ得此場合ニ於テハ前條第一項ノ規定ヲ適用ス
第八十六條　裁判所ハ住家ヲ去ル婦又ハ夫ノ請求ニ因リ其財產ヲ保存スル爲メニ必要ナル處分ヲ命スルコトヲ得
第三款　離婚ノ訴
第八十七條　離婚ヲ請求スル訴權ハ夫婦ノミニ屬ス
第八十八條　離婚ノ原因ハ通常ノ證據方法ヲ以テ之ヲ證ス可シ但シ自白ノミヲ以テ之ヲ證スルコトヲ得ス又卑屬親ヲ除ク外親族、姻族又ハ雇人ニ關スル忌避ノ規定ヲ適用セス
第三節　離婚ノ效力
第八十九條　離婚ハ其屆出又ハ裁判確定ノ後ニ非サレハ效力ヲ生セス
第九十條　離婚ノ後子ノ監護ハ夫ニ屬ス但入夫及ヒ婿養子ニ付テハ婦ニ屬ス
然レトモ裁判所ハ夫、婦、親族又ハ檢事ノ請求ニ因リ子ノ利益ヲ慮リテ之ヲ他ノ一方又ハ第三者ノ監護ニ付スルコトヲ得
第六章　親子
第一節　親子ノ分限ノ證據
第九十一條　婚姻中ニ懷胎シタル子ハ夫ノ子トス
婚姻ノ儀式ヨリ百八十日後又ハ夫ノ死亡若クハ離婚ヨリ三百日內ニ生マレタル子ハ婚姻中ニ懷胎シタルモノト推定ス
第九十二條　嫡出子ハ出生證書ヲ以テ之ヲ證ス
第九十三條　出生證書ヲ呈示スル能ハサルトキハ親子ノ分限ハ嫡出子タル身分ノ占有ヲ以テ之ヲ證スルコトヲ得但第二百九十一條ノ規定ノ適用ヲ妨ケス
第九十四條　身分ノ占有トハ夫婦ト其婚姻ニ因リテ生マレタリト主張スル者トノ間其者ノ出生ノ時ヨリ親子ノ分限ヲ證スルニ足ル可キ事實ノ湊合スルヲ謂フ其事實ノ著明ナルモノ左ノ如シ
第一　子ナリト主張スル者カ常ニ其父ナリトスル者ノ氏ヲ稱シタルコト
第二　子ナリト主張スル者カ常ニ其父母ナリトスル者ヨリ嫡出子ノ如ク取扱ハレ其養育、敎育ヲ受ケタルコト
第三　子ナリト主張スル者カ常ニ親族及ヒ世上ニ於テ嫡出子ト認メラレタルコト
第九十五條　庶子ハ父ノ屆出ニ基ク出生證書ヲ以テ之ヲ證ス但身分ノ占有ニ關スル規定ヲ適用ス
第九十六條　父ノ知レサル子ハ私生子トス
第九十七條　私生子ハ出生證書ヲ以テ之ヲ證ス但身分ノ占有ニ關スル規定ヲ適用ス
第九十八條　私生子ハ父之ヲ認知スルニ因リテ庶子ト爲ル
第九十九條　庶子ノ出生屆及ヒ認知ハ父自ラ身分取扱吏ニ之ヲ爲スコトヲ要ス未成年者ト雖モ自ラ之ヲ爲スコトヲ得
第二節　否認訴權
第百條　否認訴權ハ夫ノミニ屬ス但子ノ出生後ニ非サレハ之ヲ行フコトヲ得ス
第百一條　夫カ民事上ノ禁治產ヲ受ケタルトキハ後見人又ハ後見監督人ハ親族會ノ許可ヲ得テ否認訴權ヲ行フコトヲ得
第百二條　夫カ子ノ出生ノ場所ニ在ルトキハ出生ヨリ三个月ノ期間內ニ限リ否認訴權ヲ行フコトヲ得但夫カ婦ト住家ヲ異ニシ又ハ婦カ子ノ出生ヲ夫ニ隱祕シタルトキハ此期間ハ子ノ出生ヲ知リタル日ヨリ起算ス
若シ夫カ遠隔ノ地ニ在ルトキハ訴權ノ期間ヲ四个月トシ子ノ出生ヲ知リタル日ヨリ起算ス
第三節　庶子及ヒ私生子ノ嫡出子ト爲ル權
第百三條　庶子ハ父母ノ婚姻ニ因リテ嫡出子ト爲ル
私生子ハ父母ノ婚姻ノ後父ノ認知シタルニ因リテ嫡出子ト爲ル
第百四條　死亡シタル子ト雖モ前條ノ規定ニ依リ嫡出子ト爲ル此場合ニ於テハ其效力ハ子ノ生ミタル子ヲ利ス
第百五條　父母ノ婚姻ノ時マテニ父子ノ分限確定シタル者ハ婚姻ノ日ヨリ又婚姻ノ後ニ確定シタル者ハ確定ノ日ヨリ嫡出子ノ權利ヲ有ス
第七章　養子緣組
第一節　養子緣組ニ必要ナル條件
第百六條　何人ト雖モ養子ト爲ル可キ者ヨリ年長ニシテ成年ナルニ非サレハ養子ヲ爲スコトヲ得ス
遺言ヲ爲ス能力アル者ハ遺言養子ヲ爲スコトヲ得
第百七條　家督相續ヲ爲ス可キ男子アル者ハ養子ヲ爲スコトヲ得ス
第百八條　後見人ハ管理ノ計算ヲ爲ササル前ニ被後見人ヲ養子ト爲スコトヲ得ス但遺言養子ト爲スハ此限ニ在ラス
第百九條　戶主ニ非サル者ハ養子ヲ爲スコトヲ得ス但推定家督相續人ニシテ戶主ノ許諾ヲ得タル者ハ此限ニ在ラス
第百十條　配偶者アル者ハ其配偶者ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ養子ヲ爲スコトヲ得ス但配偶者カ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ此限ニ在ラス
配偶者アル者ハ其配偶者ト一致スルニ非サレハ養子ト爲ルコトヲ得ス
第百十一條　家督相續ニ因リテ戶主ト爲リタル者ハ他人ノ養子ト爲ルコトヲ得ス
又推定家督相續人ハ他人ノ養子ト爲ルコトヲ得ス
然レトモ分家ヨリ本家ヲ承繼スル必要アルトキハ本條ノ規定ヲ適用セス
第百十二條　外國人ハ日本人ノ養子ト爲ルコトヲ得ス
第二節　養子緣組ノ儀式
第百十三條　養子緣組ハ當事者ノ承諾ニ因リテ成ル
此承諾ハ證人二人ノ立會ヲ得テ慣習ニ從ヒ緣組ノ儀式ヲ行フニ因リテ成立ス
緣組ノ儀式ヲ行フニ付テハ第四十三條、第四十六條及ヒ第四十八條ノ規定ヲ適用ス
第百十四條　當事者ハ身分取扱吏ニ緣組ノ申出ヲ爲ス時ニ於テ左ノ書類ヲ差出タス可シ
第一　養子ヲ爲ス者及ヒ養子ト爲ル者ノ出生證書又ハ之ニ代用スル保證書
第二　家督相續ヲ爲ス可キ男子ナキコトヲ證スル身分取扱吏ノ認定書又ハ推定家督相續人廢除ノ證書
第三　配偶者ノ承諾書又ハ承諾ヲ得ル能ハサル事由ヲ證スル書類
第四　後見管理ノ計算ヲ爲シタル證明書
第五　緣組ニ必要ナル許諾書又ハ許諾ヲ得ル能ハサル事由ヲ證スル書類
第百十五條　滿十五年ニ至ラサル子ノ緣組ハ父母之ヲ承諾スルコトヲ得
父母ノ一方カ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ他ノ一方ニ於テ緣組ヲ承諾スルコトヲ得
父母共ニ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ其家ノ祖父母若シ其一方カ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ他ノ一方ニ於テ緣組ヲ承諾スルコトヲ得
第百十六條　滿十五年ニ至リタル者ハ父母ノ許諾ヲ受ケテ緣組ヲ承諾スルコトヲ得
父母ノ一方カ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ他ノ一方ノ許諾ヲ以テ足ル
父母共ニ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ其家ノ祖父母ノ許諾ヲ受ク可シ若シ祖父母ノ一方カ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ他ノ一方ノ許諾ヲ以テ足ル
第百十七條　父母、祖父母悉ク死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ二十年未滿ノ者ニ限リ前二條ニ定メタル年齡ノ區別ニ從ヒテ後見人之ヲ承諾シ又ハ其許諾ヲ與フ
第百十八條　私生子ノ養子緣組ニ付テハ母之ヲ承諾シ又ハ其許諾ヲ與フ
父母ノ知レサル子ニ付テハ前條ノ規定ヲ適用ス
第百十九條　前數條ノ場合ニ於テ繼父又ハ繼母アルトキハ第三十八條第三項ノ規定ヲ適用ス
第百二十條　育兒院ニ在リテ父母ノ知レサル子ノ緣組ハ二十年未滿ニ限リ第百十五條及ヒ第百十六條ニ定メタル年齡ノ區別ニ從ヒテ院長之ヲ承諾シ又ハ其許諾ヲ與フルコトヲ得
第百二十一條　婿養子緣組ニ付テハ婚姻ノ申出ヲ爲ス時ニ於テ當事者ハ婿養子緣組ヲ爲スノ意思ヲ身分取扱吏ニ申出ツ可シ
此緣組ニ必要ナル條件ノ欠缺スルトキハ身分取扱吏ハ婚姻ノ儀式ヲ差止ムルコトヲ得
此緣組ハ婚姻ノ儀式ヲ行フニ因リテ成ル
第百二十二條　遺言養子緣組ハ遺言書ヲ以テ之ヲ爲ス
此遺言ハ養子ヲ爲ス者ノ死亡ノ日ニ家督相續ヲ爲ス可キ卑屬親アルトキハ其效ヲ失フ
第百二十三條　遺言養子ヲ爲ス者ノ死亡シタルトキハ第百十五條以下ノ規定ニ從ヒテ緣組ノ受諾ヲ爲ス可シ
第百二十四條　緣組ノ儀式ヲ行ヒ又ハ緣組ノ受諾ヲ爲シタルトキハ當事者ヨリ十日內ニ身分取扱吏ニ屆出ツ可シ但此屆出ハ代理人ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
第百二十五條　第五十條乃至第五十二條ノ規定ハ之ヲ緣組ニ適用ス但本章第一節ニ定メタル條件ニ違背セサルコトヲ要ス
第三節　養子緣組ノ證據
第百二十六條　緣組ハ緣組證書ヲ以テ之ヲ證ス但第二百九十一條ノ規定ノ適用ヲ妨ケス
第五十四條ノ規定ハ緣組ニ之ヲ適用ス
第四節　養子緣組ノ不成立及ヒ無效
第百二十七條　緣組ハ人違、喪心又ハ强暴ニ因リテ承諾ノ全ク欠缺シタルトキハ不成立トス
第百二十八條　緣組ハ本章第一節ニ定メタル條件ノ一ニ違背シタルトキハ無效トス
此無效ハ第百三十條ノ場合ヲ除ク外當事者其他現實ノ利益ヲ有スル者及ヒ檢事ヨリ何時ニテモ之ヲ請求スルコトヲ得
第百二十九條　緣組ハ左ノ場合ニ於テ無效トス
第一　緣組ノ申出ヲ爲サス又ハ身分取扱吏ノ差止ヲ受ケタルニ拘ハラス儀式ヲ行ヒタルトキ
第二　證人二人ノ立會ナクシテ儀式ヲ行ヒタルトキ
第三　第四十八條ノ規定ニ違ヒテ儀式ヲ行ヒタルトキ
第四　緣組ノ申出ヲ受ケタル身分取扱吏ノ管轄違ナルトキ
此無效ハ儀式後一个年內ニ限リ前條ニ揭ケタル者ヨリ之ヲ請求スルコトヲ得
第百三十條　第百八條又ハ第百九條但書ノ規定ニ違ヒタル緣組ノ無效ハ被後見人又ハ養家ノ戶主ニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
被後見人カ成年ニ至リ又ハ戶主カ緣組ヲ知リタル後緣組ヲ認諾シ又ハ三个月ヲ過キタルトキハ其訴權ヲ失フ
第百三十一條　强暴ノ爲メ承諾ニ瑕疵アル緣組ノ無效ハ强暴ヲ受ケタル者ニ限リ之ヲ請求スルコトヲ得但强暴ヲ免カレタル後緣組ヲ認諾シ又ハ三个月ヲ過キタルトキハ其訴權ヲ失フ
第百三十二條　第百十六條乃至第百二十條ニ定メタル許諾ナクシテ爲シタル緣組ノ無效ハ許諾ヲ與フ可キ者又ハ許諾ヲ受ク可キ者ニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
第六十條第二項、第六十一條及ヒ第六十二條ノ規定ハ此無效訴權ニ之ヲ適用ス
第百三十三條　婿養子緣組ニ付テハ當事者ハ緣組又ハ婚姻ノ無效言渡ヲ原因トシテ婚姻又ハ緣組ノ無效ヲ請求スルコトヲ得但無效言渡ノ後三个月ヲ過キタルトキハ其訴權ヲ失フ
第五節　養子緣組ノ效力
第百三十四條　養子ハ緣組ノ日ヨリ養家ニ於テ嫡出子ノ權利及ヒ義務ヲ有ス
第百三十五條　養子ハ特別ニ職業ヲ營ムニ因リテ取得シタル利益及ヒ其齎帶シ又ハ相續、贈與若クハ遺贈ニ因リテ取得シタル財產ノ所有權ヲ有ス但未成年中ノ財產管理ハ第九章ノ規定ニ從ヒテ養父母ニ屬ス
第六節　罰則
第百三十六條　緣組申出ノ時ニ必要ノ書類ヲ差出タサシメサル身分取扱吏ハ二圓以上二十圓以下ノ過料ニ處ス
緣組ノ不成立又ハ無效タル可キ法律上ノ原因アルコトヲ知リテ其儀式ヲ行フヲ差止メサル身分取扱吏ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
第八章　養子ノ離緣
第一節　協議ノ離緣
第百三十七條　養子ヲ爲シタル者及ヒ養子ト爲リタル者ハ協議ヲ以テ離緣ヲ爲スコトヲ得
然レトモ十五年未滿ニテ養子ト爲リタル者ノ離緣ハ滿十五年ニ至ラサル間ニ限リ養子ヲ爲シタル者ト緣組承諾ノ權ヲ有スル者トノ協議ヲ以テ之ヲ爲ス
第百三十八條　離緣ヲ爲サントスル養子ハ緣組許諾ノ爲メ定メタル規則ニ從ヒ其父母、祖父母又ハ後見人ノ許諾ヲ受クルコトヲ要ス
第百三十九條　當事者ハ離緣協議書ニ左ノ書類ヲ添ヘテ身分取扱吏ニ屆出ツ可シ
第一　緣組證書
第二　離緣ノ爲メニ必要ナル許諾書又ハ許諾ヲ得ル能ハサル事由ヲ證スル書類
第二節　特定原因ノ離緣
第百四十條　離緣ハ左ノ原因アルニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
第一　養子ヨリ養家ノ尊屬親ニ對シ又ハ養家ノ尊屬親ヨリ養子ニ對スル暴虐、脅迫、遺棄又ハ重大ノ侮辱
第二　重罪ニ因レル處刑
第三　竊盜又ハ詐欺取財ノ罪ニ因レル重禁錮一年以上ノ處刑
第四　浪費
第八十二條及ヒ第八十八條ノ規定ハ離緣ニ之ヲ適用ス
第百四十一條　離緣ヲ請求スル訴權ハ養子ヲ爲シタル者及ヒ養子ト爲リタル者ノミニ屬ス
養子ヲ爲シタル者又ハ養子ト爲リタル者カ死亡シタルトキハ離緣ノ訴權ハ消滅ス但訴訟中ニ死亡シタル場合ニ於テハ現實ノ利益ヲ有スル者其訴訟ヲ續行スルコトヲ得
第百四十二條　養子ヲ爲シタル者カ禁治產中ニ在ルトキハ後見人又ハ後見監督人ハ親族會ノ許可ヲ得テ離緣ヲ請求スルコトヲ得
養子ト爲リタル者カ禁治產中ニ在ルトキハ實家ノ父母、祖父母又ハ戶主ヨリ離緣ヲ請求スルコトヲ得
第百四十三條　養子ノ滿十五年ニ至ラサル間ハ緣組承諾ノ權ヲ有スル者ヨリ離緣ヲ請求スルコトヲ得
第百四十四條　養子カ養父母ト同居スルトキハ裁判所ハ離緣ノ訴訟中養子ヲシテ住家ヲ去ラシムルコトヲ得
此場合ニ於テハ養子ハ衣服其他ノ日用物品ヲ持去リ且必要アルトキハ養料ヲ請求スルコトヲ得
裁判所ハ養子ノ請求ニ因リテ其財產ヲ保存スル爲メニ必要ナル處分ヲ命スルコトヲ得
第百四十五條　離緣ハ養子ノ家督相續後之ヲ爲スコトヲ得ス
第三節　離緣ノ效力
第百四十六條　離緣ハ其屆出又ハ裁判確定ノ後ニ非サレハ效力ヲ生セス
第百四十七條　離緣ト爲リタル養子ハ自己ノ過失ノ有無ニ拘ハラス其所有財產ニ限リ之ヲ請求スルコトヲ得但養家ノ爲メニ消費シタルモノハ此限ニ在ラス
第百四十八條　婿養子緣組ニ付テハ當事者ハ離緣ヲ原因トシテ離婚ヲ請求シ又離婚ヲ原因トシテ離緣ヲ請求スルコトヲ得但離婚又ハ離緣ヨリ三个月ヲ過キタルトキハ其訴權ヲ失フ
第九章　親權
第一節　子ノ身上ニ對スル權
第百四十九條　親權ハ父之ヲ行フ
父死亡シ又ハ親權ヲ行フ能ハサルトキハ母之ヲ行フ
父又ハ母其家ヲ去リタルトキハ親權ヲ行フコトヲ得ス
第百五十條　未成年ノ子ハ親權ヲ行フ父又ハ母ノ許可ヲ受クルニ非サレハ父母ノ住家又ハ其指定シタル住家ヲ去ルコトヲ得ス
子カ許可ヲ受ケスシテ其住家ヲ去リタルトキハ父又ハ母ハ區裁判所ニ申請シテ歸家セシムルコトヲ得
第百五十一條　父又ハ母ハ子ヲ懲戒スル權ヲ有ス但過度ノ懲戒ヲ加フルコトヲ得ス
第百五十二條　子ノ行狀ニ付キ重大ナル不滿意ノ事由アルトキハ父又ハ母ハ區裁判所ニ申請シテ其子ヲ感化場又ハ懲戒場ニ入ルルコトヲ得
入場ノ日數ハ六个月ヲ超過セサル期間內ニ於テ之ヲ定ム可シ但父又ハ母ハ裁判所ニ申請シテ更ニ其日數ヲ增減スルコトヲ得
右申請ニ付テハ總テ裁判上ノ書面及ヒ手續ヲ用ユルコトヲ得ス
裁判所ハ檢事ノ意見ヲ聽キテ決定ヲ爲ス可シ父、母及ヒ子ハ其決定ニ對シテ抗吿ヲ爲スコトヲ得
第二節　子ノ財產ノ管理
第百五十三條　父ハ未成年ナル子ノ總テノ行爲ニ付テ之ヲ代表シ自己ノ財產ニ於ケル如ク其財產ヲ管理ス
第百五十四條　父ノ管理ニ於テハ第百九十四條ニ記載シタル行爲ハ尙ホ之ヲ管理行爲ト看做ス
第百五十五條　子ハ特別ニ職業ヲ營ムニ因リテ取得シタル利益及ヒ相續、贈與又ハ遺贈ニ因リテ取得シタル財產ノ所有權ヲ有ス
第百五十六條　父ハ管理ノ止ミタルトキハ子ニ其財產ヲ引渡ス可シ但收益ハ子ノ養育敎育ノ費用及ヒ管理ノ費用ニ供シタルモノト看做ス
第百五十七條　本節ノ規定ハ母カ子ノ財產ヲ管理スル場合ニ之ヲ適用ス
然レトモ母ハ管理ヲ辭スルコトヲ得
第三節　嫡母、繼父及ヒ繼母ニ特別ナル規則
第百五十八條　嫡母、繼父又ハ繼母ノ親權ヲ行フ場合ニ於テハ相談人ヲ付スルコトヲ得
此相談人ハ配偶者證書若クハ遺言書ヲ以テ之ヲ定メ又ハ親族會其議決ヲ以テ之ヲ定ム
第百五十九條　相談人ハ後見監督人ト同一ノ權限及ヒ義務ヲ有ス
第百六十條　配偶者カ相談人ヲ定メサル場合ニ於テ親族會ヲ招集セサルトキ又ハ配偶者若クハ親族會ノ定メタル相談人ニ相談セサルトキハ區裁判所ハ檢事ノ請求ニ因リ嫡母、繼父又ハ繼母ニ對シテ親權行使ノ禁止ヲ宣吿スルコトヲ得
第十章　後見
總則
第百六十一條　後見ハ未成年者ノ父又ハ母ニシテ生存スル者ノ死亡ニ因リテ開始ス
父母共ニ生存シ又ハ其一方ノ生存スルモ親權ヲ行フ能ハサルトキ又ハ母カ子ノ財產ノ管理ヲ辭スルトキモ亦同シ
第百六十二條　一家ニ未成年者數人アルモ後見人ハ一人タル可シ
第百六十三條　後見人ハ親族會ノ免除ヲ得サル限リハ後見ヲ承諾ス可シ若シ後見人之ヲ承諾セス又ハ其任務ヲ怠ルトキハ利害關係人又ハ檢事ノ請求ニ因リテ區裁判所ハ代務者ヲ命スルコトヲ得
後見人ハ代務者ノ管理ノ費用ヲ負擔シ且其管理ニ付キ責ニ任ス
第一節　後見人
第百六十四條　親權ヲ行フ父又ハ母ハ其生前ニ於テ親族、姻族又ハ他人ノ中ヨリ後見人タル可キ者ヲ指定スル權ヲ有ス
第百六十五條　後見人ノ指定ハ遺言書若クハ證書ヲ以テ之ヲ爲シ又ハ區裁判所ニ口述シテ之ヲ爲ス可シ此口述ニ付テハ調書ヲ作ルコトヲ要ス
第百六十六條　父又ハ母カ後見人ヲ指定セサリシトキハ其家ノ祖父後見人ト爲ル但未成年ノ家族ニ付テハ成年ノ戶主後見人ト爲ル
第百六十七條　遺言後見人モ祖父若クハ戶主タル後見人モ有ラサルトキ又ハ此等ノ後見人カ免除セラレ除斥セラレ罷黜セラレ若クハ死亡シタルトキハ親族會ニ於テ後見人ヲ選定ス
第百六十八條　未成年者ヲ有スル人ノ死亡シタルトキ又ハ未成年者ヲ有スル父若クハ母ノ婚姻其他ノ事故ニ因リテ他家ニ入リタルトキハ區裁判所ハ未成年者ノ親族若クハ利害關係人ノ請求ニ因リ後見人ヲ設定スル爲メ親族會ヲ招集ス可シ
第二節　後見監督人
第百六十九條　後見ニハ一人ノ後見監督人ヲ付スルコトヲ得
後見監督人ハ後見人ヲ定ムルト同一ノ手續ニ從ヒテ之ヲ指定シ又ハ親族會ニ於テ之ヲ選定ス
本章第四節及ヒ第五節ノ規定ハ後見監督人ニ之ヲ適用ス
第百七十條　後見監督人ヲ置カサル場合ニ於テ監督ヲ要スルコト有ルトキハ親族會ニ於テ會員一人ヲ選定シ臨時ニ後見監督人ノ任務ヲ行ハシム
第三節　親族會
第百七十一條　親族會ハ未成年者ノ最近親族三人以上ヲ以テ之ヲ設ク但親族三人ニ滿タサルトキハ未成年者ニ緣故アル者ヲ以テ之ヲ補足ス
本家及ヒ分家ノ戶主ハ親族會ニ列スルコトヲ得
第百七十二條　親族會ハ親族、後見人、後見監督人、保佐人又ハ利害關係人ノ求メニ因リテ集會ス
第百七十三條　戶主成年ナルトキハ家族ノ爲メ親族會ヲ設クルコトヲ要セス
第百七十四條　養子ノ親族會ニハ實家ノ親族モ其會員タルコトヲ得
第百七十五條　會員ハ自己ノ利害ニ關係アル會議ニ列スルコトヲ得ス
第百七十六條　親族會ヲ設クル能ハサルトキハ區裁判所其事ヲ行フ
第百七十七條　未成年者ノ親族會ノ外親族會ヲ組成スル必要アルトキモ亦本節ノ規定ヲ適用ス
第四節　後見ノ免除
第百七十八條　左ニ揭クル者ハ當然後見人タルコトヲ免除セラル
第一　現役ニ服スル軍人、軍屬
第二　被後見人住居ノ市又ハ郡ノ外ニ於テ公務ニ從事スル人
第百七十九條　後見免除ノ求メハ親族會之ヲ決ス後見人解任ヲ求メタルトキモ亦同シ
第五節　後見人及ヒ親族會員ノ缺格、除斥及ヒ罷黜
第百八十條　左ニ揭クル者ハ後見人タルコトヲ得ス又親族會員タルコトヲ得ス
第一　未成年者
第二　民事上禁治產者及ヒ准禁治產者
第三　未成年者ノ身分又ハ財產ニ對シテ訴訟ヲ爲ス人及ヒ其人ノ尊屬親、卑屬親、配偶者
第百八十一條　左ニ揭クル者ハ後見及ヒ親族會ヨリ除斥セラル可シ現ニ任務ニ從事スル者ハ之ヲ罷黜ス
第一　甚シキ不行跡ナル人
第二　後見管理ニ不能又ハ不正實ヲ顯ハセル後見人
第三　任務ヲ免黜セラレタル裁判上ノ保佐人
第四　公權剝奪、公權停止及ヒ刑事上禁治產ヲ受ケタル人
第五　復權ヲ得サル破產者及ヒ家資分散者
第百八十二條　後見人及ヒ親族會員ノ除斥又ハ罷黜ハ親族會ニ於テ之ヲ爲ス
第六節　後見人ノ管理
第百八十三條　後見人後見ノ開始ヲ知ルトキハ直チニ任務ニ就クコトヲ要ス
親族會ニ於テ後見人ヲ選定シ其後見人在席スルトキハ直チニ任務ニ就キ若シ在席セサルトキハ通知ヲ得タル日ヨリ任務ニ就クコトヲ要ス
第百八十四條　後見人ハ未成年者ヲ監護シ其敎育ヲ擔任ス
尊屬後見人及ヒ戶主後見人ヲ除ク外後見人若シ未成年者ノ在來ノ住居又ハ敎育方法ヲ變更セントスルトキハ親族會ニ協議ス可シ
第百八十五條　後見人ハ父母ノ如ク未成年者ヲ懲戒スルコトヲ得
未成年者ノ行狀ニ付キ重大ナル不滿意ノ事由アルトキハ後見人ハ親族會ノ許可ヲ得タル上第百五十二條ノ規定ニ從ヒテ未成年者ニ對スル處分ヲ爲スコトヲ得
後見人カ其權ヲ濫用シ又ハ其義務ヲ怠ルトキハ未成年者及ヒ其親族ハ親族會ニ之ヲ申吿スルコトヲ得
第百八十六條　後見人ハ未成年者ノ總テノ行爲ニ付テ之ヲ代表シ善良ナル管理者ノ如ク其財產ヲ管理シ管理ノ失當又ハ過失ヨリ生スル損害賠償ノ責ニ任ス
第百八十七條　後見人ハ當然其任務ニ就ク可キ日ヨリ十日內ニ後見監督人ノ立會ヲ得テ未成年者ノ財產ヲ調査ス可シ
財產目錄ノ調製ハ二个月內ニ之ヲ終了スルコトヲ要ス但親族會ハ狀況ニ從ヒテ延期ヲ許スコトヲ得
第百八十八條　後見人カ未成年者ノ債務者又ハ債權者ナルトキハ目錄ノ調製前其旨ヲ公證人又ハ親族會ニ明言スルコトヲ要ス
後見人カ債權ノ存立ヲ知リテ之ヲ明言セサリシトキハ其債權ヲ喪失ス又債務ノ存立ヲ知リテ之ヲ明言セサリシトキハ區裁判所ハ其後見人ヲ罷黜スルコトヲ得但罷黜ノ場合ニ於テハ三十圓以下ノ過料ニ處スルコトヲ得
第百八十九條　目錄調製ヲ終了セサル間ハ後見人ハ要急闕ク可カラサル管理行爲ノミヲ爲スコトヲ得
第百九十條　後見人ハ任務執行ノ初ニ於テ親族會ニ協議シ未成年者ノ養育ノ需用、敎育ノ程度ト其資產トニ從ヒ每年費ス可キ金額及ヒ財產管理ニ係ル費用ヲ定ム
親族會ハ相當ノ給料ヲ與フル一人又ハ數人ノ管理者ヲ後見人ノ自己ノ責任ヲ以テ使用スルヲ許スコトヲ得
第百九十一條　後見人ハ未成年者ノ元本及ヒ收益ノ剩額ヲ每次ニ官ノ貯金預所又ハ確實ナル銀行ニ預ク可シ其預ケサリシ金額ニ付テハ法律上ノ利息ヲ辨濟ス可シ
後見人カ未成年者ノ財產ノ利用方法ヲ變更セントスルトキハ親族會ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
第百九十二條　尊屬後見人及ヒ戶主後見人ヲ除ク外後見人ハ一个年內ノ管理ノ狀況ヲ親族會ニ報吿ス可シ
第百九十三條　後見人ハ未成年者ノ財產ニ付テハ管理ノ權ヲ有スルニ止マリ此權外ノ行爲ハ法律ニ定メタル條件ニ依ルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第百九十四條　左ニ揭クル行爲ニ關シテハ後見人ハ親族會ノ許可ヲ得ルコトヲ要ス
第一　元本ヲ利用シ又ハ借財ヲ爲スコト
第二　不動產及ヒ重要ナル動產ヲ讓渡シ之ニ物權ヲ設定シ又ハ之ヲ取得スルコト
第三　動產、不動產ニ係ル訴訟又ハ和解、仲裁ニ關スルコト
第四　相續、遺贈若クハ贈與ヲ受諾シ又ハ抛棄スルコト
第五　新築、改築、增築又ハ大修繕ヲ爲スコト
第六　財產編第百十九條ニ定メタル期間ヲ超ユル賃貸ヲ爲スコト
第百九十五條　後見人ハ未成年者ノ財產ヲ讓受クルコトヲ得ス又未成年者ニ對スル權利ヲ讓受クルコトヲ得ス
第百九十六條　後見人ハ親族會ノ許可ヲ得ルニ非サレハ未成年者ノ不動產ヲ賃借スルコトヲ得ス
第百九十七條　後見人ノ其權內ニ於テ爲シタル行爲ハ未成年者ヲ覊束ス
第七節　後見監督人ノ任務
第百九十八條　後見監督人ハ後見人ノ管理ヲ監視スルコトニ任ス
後見監督人ハ後見人ヲ缺クトキト雖モ後見ノ任務ヲ行フコトヲ得ス此場合ニ於テハ直チニ後任ノ後見人ヲ定ムル手續ヲ爲スコトヲ要ス
第百九十九條　未成年者ト後見人トノ間ニ利益相反スルトキハ後見監督人ハ未成年者ヲ代表ス
第二百條　必要ナル場合ニ於テハ後見監督人ハ保存行爲ヲ爲スコトヲ得
第二百一條　法律上後見監督人ノ立會フ可キ行爲ニシテ其立會ナクシテ爲シタルモノハ無效トス
第八節　後見人ノ終了
第二百二條　後見ノ任務ハ後見人ノ一身ニ止マリ其相續人ニ移轉セス然レトモ相續人カ成年者ナルトキハ後任ノ後見人ノ任務ニ就クマテ管理ヲ繼續ス可シ
第二百三條　未成年者カ成年ニ達シ又ハ自治產ニ至ルニ因リテ後見ノ止ムトキハ後見人ハ其計算ヲ終了スルマテ管理ヲ繼續ス
第二百四條　假ニ管理ヲ爲ス者ハ必要ナル行爲ノミヲ爲スコトヲ得
第九節　後見ノ計算
第二百五條　後見人ハ管理ノ終了スルトキハ其計算ヲ爲ス可シ
第二百六條　後見ノ決算ハ後見監督人ノ立會ニテ未成年者ノ成年ニ達シタル者又ハ其自治產ニ至リタル者ニ對シテ之ヲ爲ス
後見カ後見人ノ身上ニ係リテ終了スルトキハ決算ハ後任ノ後見人ニ對シテ之ヲ爲シ親族會ノ許可ニ付ス但第百八條ノ場合ニ於テハ決算ハ後見監督人ニ對シテ之ヲ爲ス
後見カ未成年者ノ死亡ニ因リテ終了スルトキハ決算ハ其相續人ニ對シテ之ヲ爲ス
後見ノ決算ニ係ル費用ハ未成年者ノ負擔ニ屬ス
第二百七條　後見ノ決算ハ管理終了ノ日ヨリ三个月內ニ之ヲ爲ス可シ但親族會ハ當事者ノ求メニ因リテ延期ヲ許スコトヲ得
第二百八條　後見人ト未成年者ノ成年ニ達シタル者トノ合意ニシテ後見ノ決算前ニ爲シタルモノハ總テ無效トス
第二百九條　後見ノ費用ハ豫算ノ定額ヲ超ユルト雖モ後見人其有益タルコトヲ證スルトキハ未成年者ノ負擔ニ屬ス
第二百十條　後見人ヨリ未成年者ニ返濟ス可キ金額ハ決算完結ノ日ヨリ當然利息ヲ生ス
未成年者ヨリ後見人ニ返濟ス可キ金額ハ決算完結ノ後後見人ノ催吿ニ因リテ利息ヲ生ス
第二百十一條　後見ノ計算ニ係ル未成年者ノ訴權ハ五个年ノ時效ニ因リテ消滅ス後見人其他假ニ後見管理ヲ爲シタル人ノ未成年者ニ對スル訴權モ亦同シ
未成年者ト後見監督人又ハ親族會員トノ間ノ後見ニ係ル訴權ニ付テモ亦前項ノ規定ヲ適用ス
此期間ハ未成年者ノ成年ニ達シ又ハ死亡シタル日ヨリ起算シ第二百八條ノ場合ニ於テ後見ノ計算ニ係ル訴權ニ付テハ合意無效ノ裁判言渡ノ日ヨリ起算ス
第二百十二條　後見監督人及ヒ假ニ後見管理ヲ爲シタル人ハ代理契約ノ原則ニ從ヒテ過失ノ責ニ任ス
第十一章　自治產
第二百十三條　未成年者ハ婚姻ヲ爲スニ因リテ當然自治產ノ權ヲ得
第二百十四條　親權ヲ行フ父又ハ母ハ滿十五年ニ達シタル未成年ノ子ニ自治產ヲ許スコトヲ得
此自治產ハ身分取扱吏ニ屆出ツ可シ
第二百十五條　後見ニ服スル未成年者ノ滿十七年ニ達シタルトキハ親族會ハ其未成年者ニ自治產ヲ許スコトヲ得
此自治產ハ後見人ヨリ身分取扱吏ニ屆出ツ可シ
第二百十六條　自治產ノ未成年者ハ之ヲ保佐ニ付ス
親權ヲ行ヒタル父又ハ母ハ當然保佐人ト爲ル
親權ヲ行フ父又ハ母ハ其生前ニ第百六十五條ノ規定ニ從ヒテ保佐人ヲ指定スルコトヲ得若シ之ヲ指定セサリシトキハ其家ノ祖父保佐人ト爲リ家族ニ付テハ成年ノ戶主保佐人ト爲ル
夫ハ當然未成年ノ婦ノ保佐人ト爲ル
此他ノ場合ニ於テハ親族會ニ於テ保佐人ヲ選定ス
第二百十七條　後見人ニ關シテ定メタル免除、缺格、除斥及ヒ罷黜ノ規則ハ之ヲ保佐人ニ適用ス
第二百十八條　自治產ノ未成年者ハ保佐人ノ立會アルニ非サレハ元本ヲ領收スルコトヲ得ス
第二百十九條　第百九十四條ニ揭ケタル行爲ニ付テハ自治產ノ未成年者ハ保佐人ノ立會アルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第二百二十條　父母ヲ除ク外保佐人ハ後見人ト同シク過失ノ責ニ任ス
第二百二十一條　自治產ヲ許サレタル未成年者カ不行跡又ハ財產管理ノ失當ニ因リテ自治產者タルニ適セサルトキハ親族會ハ其自治產ヲ廢止スルコトヲ得
親權ヲ行ヒタル父又ハ母ハ自治產ヲ廢止スルコトヲ得若シ此等ノ者アラサルトキハ親族會員又ハ保佐人ハ此廢止ヲ親族會ニ求ムルコトヲ得
未成年者ハ自治產廢止ノ日ヨリ親權又ハ後見ニ服シ成年ニ達スルマテ復タ自治產者ト爲ルコトヲ得ス
第十二章　禁治產
第一節　民事上禁治產
第二百二十二條　心神喪失ノ常況ニ在ル者ハ時時本心ニ復スルコト有ルモ其治產ヲ禁スルコトヲ得
第二百二十三條　禁治產ハ配偶者、四親等內ノ親族、戶主及ヒ檢事ヨリ之ヲ區裁判所ニ請求スルコトヲ得
禁治產ヲ請求スル權利ヲ有スル一人ノ申立ニ因リテ言渡シタル裁判ハ總テノ人ニ對シテ既判力ヲ有ス
第二百二十四條　禁治產者ハ之ヲ後見ニ付ス
配偶者ハ當然相互ニ後見人ト爲ル若シ配偶者アラサルトキハ其家ノ父後見人ト爲リ父アラサルトキハ親權ヲ行フコトヲ得ヘキ母後見人ト爲ル
父又ハ母ハ第百六十五條ニ定メタル方式ニ從ヒテ後見人ヲ指定スルコトヲ得若シ指定セサリシトキハ第百六十六條ノ規定ヲ適用ス
法律上ノ後見人モ遺言後見人モ有ラス又ハ此等ノ後見人カ免除セラレ除斥セラレ若クハ罷黜セラレタルトキハ第十章ニ定メタル方式ニ從ヒ親族會ニ於テ後見人ヲ選定ス
第二百二十五條　配偶者、尊屬親、卑屬親及ヒ戶主ヲ除ク外何人タリトモ十个年以上禁治產者ノ後見ヲ擔任スルコトヲ要セス
第二百二十六條　未成年者ノ後見ニ係ル規定ハ禁治產者ノ後見ニ之ヲ適用ス
第二百二十七條　疾病ノ性質ト資產ノ狀況トニ從ヒテ禁治產者ヲ自宅ニ療養セシメ又ハ之ヲ病院ニ入ラシムルハ親族會ノ決議ニ依ル但瘋癲病院ニ入ラシメ又ハ自宅ニ監置スル手續ハ特別法ヲ以テ之ヲ定ム
第二百二十八條　法律上ノ後見人ハ第百九十二條ニ定メタル管理狀況ノ報吿ヲ爲スコトヲ要セス
第二百二十九條　禁治產者ノ財產ヲ以テ其子孫ノ敎育、婚姻又ハ營業ノ資ニ供セントスルトキハ親族會ノ許可ヲ得ルコトヲ要ス
第二百三十條　禁治產者ハ禁治產ノ裁判言渡ノ日ヨリ無能力者トス
裁判言渡後ニ爲シタル禁治產者ノ行爲ハ之ヲ銷除スルコトヲ得
禁治產ノ裁判言渡前ニ爲シタル禁治產者ノ行爲ニ對シテモ其行爲ノ當時ニ於テ喪心ノ明確ナルトキハ銷除訴權ヲ行フコトヲ得
第二百三十一條　禁治產ノ原因止ミタルトキハ本人、配偶者、親族、姻族、戶主、後見人又ハ檢事ノ請求ニ因リテ其禁ヲ解ク可シ
禁治產者ハ解禁ノ裁判言渡後ニ非サレハ其權利ヲ囘復スルコトヲ得ス
第二節　准禁治產
第二百三十二條　心神耗弱者、聾啞者、盲者及ヒ浪費者ハ准禁治產者ト爲シテ之ヲ保佐ニ付スルコトヲ得
准禁治產ノ言渡ハ配偶者、三親等內ノ親族及ヒ戶主ノ請求ニ因リ區裁判所之ヲ爲ス
保佐人ニ付テハ第二百二十四條及ヒ第二百二十五條ノ規定ヲ適用ス
第二百三十三條　第二百十七條乃至第二百二十條ノ規定ハ之ヲ准禁治產ニ適用ス
裁判所ハ狀況ニ從ヒ保佐人ノ立會アルニ非サレハ管理行爲ヲモ爲スコトヲ得サル旨ヲ言渡スコトヲ得
第二百三十四條　准禁治產者カ保佐人ノ立會ナクシテ爲シタル行爲ニ付テハ第二百三十條ノ規定ヲ適用ス
第二百三十五條　准禁治產ノ原因止ミタルトキハ本人、配偶者、親族、姻族、戶主、保佐人又ハ檢事ノ請求ニ因リテ其禁ヲ解ク可シ
第三節　刑事上禁治產
第二百三十六條　刑事上禁治產ヲ受ケタル者ハ其財產ヲ管理スルコトヲ得ス又遺言ヲ以テスル外ハ其財產ヲ處分スルコトヲ得ス
第二百三十七條　刑事上禁治產者ニハ後見人ヲ付シテ其財產ヲ管理セシム此後見人ノ指定及ヒ管理ノ方法ニ付テハ民事上禁治產者ノ後見ニ係ル規定ヲ適用ス
第二百二十九條ノ場合ニ於テハ禁治產者ノ同意ヲ得ルヲ以テ足ル
第四節　瘋癲者ノ財產ノ假管理
第二百三十八條　禁治產ヲ受ケサル瘋癲者アルトキハ配偶者、親族、戶主及ヒ檢事ハ區裁判所ノ許可ヲ得テ特別法ニ定ムル手續ニ從ヒ之ヲ瘋癲病院ニ入レ又ハ自宅ニ監置スルコトヲ得
此場合ニ於テハ裁判所ハ直チニ假管理人ヲ指定ス
第二百三十九條　瘋癲病院ニ入リ又ハ自宅ニ監置セラレタル者ハ入院中又ハ監置中其財產ヲ管理シ及ヒ處分スルコトヲ得ス
第二百四十條　假管理人ハ瘋癲者ノ總テノ行爲ニ付テ之ヲ代表シ禁治產者ノ後見人ト同視セラル但必要ナル行爲ニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第二百四十一條　瘋癲者ノ入院中又ハ監置中ニ行爲ヲ爲シタル證據アルトキハ其行爲ヲ銷除スルコトヲ得但相手方カ瘋癲者ノ本心ニテ行爲ヲ爲シタルコトヲ證スルトキハ此限ニ在ラス
第二百四十二條　瘋癲者ノ無能力ハ區裁判所カ假管理ヲ解クニ因リテ止ム
第十三章　戶主及ヒ家族
第二百四十三條　戶主トハ一家ノ長ヲ謂ヒ家族トハ戶主ノ配偶者及ヒ其家ニ在ル親族、姻族ヲ謂フ
戶主及ヒ家族ハ其家ノ氏ヲ稱ス
第二百四十四條　戶主ハ家族ニ對シテ養育及ヒ普通敎育ノ費用ヲ負擔ス但家族カ自ラ其費用ヲ辨スルコトヲ得ルトキ又ハ戶主ノ許諾ヲ受ケスシテ他所ニ在ルトキハ此限ニ在ラス
第二百四十五條　家族ハ特別ニ職業ヲ營ムニ因リテ取得シタル利益及ヒ其齎帶シ又ハ遺產相續、贈與若クハ遺贈ニ因リテ取得シタル財產ノ所有權ヲ有ス
然レトモ家族カ其家ノ爲メ消費シタル財產ニ付テハ戶主ニ對シテ償還ヲ求ムルコトヲ得ス
第二百四十六條　家族ハ婚姻又ハ養子緣組ヲ爲サントスルトキハ年齡ニ拘ハラス戶主ノ許諾ヲ受ク可シ
第二百四十七條　他家ニ入リテ夫、婦又ハ養子ト爲リタル者ハ婚姻ノ無效、養子緣組ノ無效、離婚又ハ離緣ノ場合ニ於テハ實家ニ復歸ス
然レトモ此者カ婚姻又ハ養子緣組ニ付キ實家戶主ノ許諾ヲ受ケサリシトキハ戶主ハ復歸ノ事由ヲ知リタル日ヨリ一个月內ニ身分取扱吏ニ申立テ復歸ヲ拒ムコトヲ得
第二百四十八條　他家ニ入リテ夫又ハ婦ト爲リタル者ハ其配偶者ノ死亡シタルトキト雖モ婚家ヨリ更ニ他ノ家ニ入ルコトヲ得ス
然レトモ婚家及ヒ實家ノ戶主ノ許諾ヲ受ケテ實家ニ復歸スルコトヲ得
第二百四十九條　實家ニ復歸ス可キ者又ハ復歸セントスル者カ復歸スル能ハサルトキハ一家ヲ新立ス
第二百五十條　推定家督相續人ニ非サル家族タル男子カ戶主ノ許諾ヲ受ケスシテ婚姻ヲ爲シタルトキハ一家ヲ新立ス
第二百五十一條　家督相續ニ因リテ戶主ト爲リタル者ハ其家ヲ廢スルコトヲ得ス但分家ヨリ本家ヲ承繼シ其他正當ノ事由アルトキハ區裁判所ノ許可ヲ得テ廢家スルコトヲ得
第二百五十二條　戶主カ國民分限ヲ喪失シタルトキハ廢家シタルモノトシ推定家督相續人ハ一家ヲ新立シ前戶主ノ家族ハ新戶主ノ家ニ入ル
第二百五十三條　戶主カ婚姻其他ノ原因ニ由リテ適法ニ廢家シ他家ニ入リタルトキハ其家族モ亦從テ其家ニ入ル
第二百五十四條　卑屬親ヲ有スル者カ婚姻若クハ養子緣組ノ無效又ハ離婚若クハ離緣ニ因リテ婚家又ハ緣家ヲ去ルトキハ卑屬親ハ仍ホ其家ニ屬ス
第二百五十五條　父母ノ知レサル子ハ一家ヲ新立ス
第二百五十六條　他家ニ入リテ夫、婦又ハ養子ト爲リタル者ハ配偶者又ハ養子ヲ爲シタル者ト協議ノ上兩家ノ戶主ノ許諾ヲ受ケテ實家ニ在ル卑屬親ヲ自家ニ引取ルコトヲ得
婚姻若クハ養子緣組ノ無效又ハ離婚若クハ離緣ニ因リテ婚家又ハ緣家ヲ去リタル者ハ配偶者又ハ養子ヲ爲セシ者ト協議ノ上兩家ノ戶主ノ許諾ヲ受ケテ其家ニ在ル卑屬親ヲ自家ニ引取ルコトヲ得
第二百五十七條　戶主カ家族ニ對シテ婚姻其他ノ事件ニ付キ許諾ヲ與フ可キ場合ニ於テ未成年ナルトキ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ戶主ニ對シテ親權ヲ行フ者又ハ後見人之ヲ代表ス
第二百五十八條　入夫婚姻ノ場合ニ於テハ婚姻中入夫ハ戶主ヲ代表シテ其權ヲ行フ
第二百五十九條　戶主失踪ノ宣言アリタル後其家督相續ノ占有ヲ得タル者ハ其占有中戶主ノ權ヲ行フ
第二百六十條　單身戶主失踪ノ宣言アリテ其亡失若クハ最後音信ノ日ヨリ三十个年ニ至ルモ家督相續ノ占有者ナキトキハ絕家ス
第二百六十一條　戶主死亡シテ家督相續人ナキトキハ絕家シ其家族ハ一家ヲ新立ス
第十四章　住所
第二百六十二條　民法上ノ住所ハ本籍地ニ在ルモノトス
第二百六十三條　戶主ハ本籍ヲ移ス地ノ身分取扱吏ニ申述シテ住所ヲ變更スルコトヲ得
未成年者又ハ民事上禁治產者タル戶主ノ住所ハ親族會ノ許可ヲ得テ後見人之ヲ變更スルコトヲ得
第二百六十四條　家族カ獨立シテ一家ヲ成ストキハ本籍ヲ定ムル地ノ身分取扱吏ニ其意思ヲ申述シテ住所ヲ設定スルコトヲ得
一家新立ノ未成年者ニ付テハ後見人住所ヲ設定ス可シ
第二百六十五條　外國人始メテ日本ニ住所ヲ定ムルトキハ其意思竝ニ本國、氏名及ヒ出生年月日ヲ其地ノ身分取扱吏ニ申述シ家族アルトキハ其氏名及ヒ出生年月日ヲモ申述ス可シ
第二百六十六條　本籍地カ生計ノ主要タル地ト異ナルトキハ主要地ヲ以テ住所ト爲ス
第二百六十七條　左ノ場合ニ於テハ居所ヲ以テ住所ニ代用ス
第一　住所ノ知レサルトキ
第二　日本ニ住所ヲ定メサル外國人ニ關スルトキ
第二百六十八條　何人ト雖モ或ル行爲又ハ事務ノ爲メニ假住所ヲ選定スルコトヲ得但此選定ハ書面ヲ以テスルコトヲ要ス
第十五章　失踪
第一節　失踪ノ推定
第二百六十九條　住所及ヒ居所ヨリ亡失シ又ハ音信絕エテ生死分明ナラサル人ハ之ヲ失踪者ト推定ス
此推定ノ裁判ハ本人ノ住所ノ區裁判所之ヲ爲ス
第二百七十條　失踪ノ推定ヲ受ケタル者カ總理代理人ヲ定置キタルトキハ其代理人ハ失踪ノ推定中本人ノ財產ヲ管理ス但必要アルトキハ裁判所ハ現實ノ利益ヲ有スル關係人、推定相續人又ハ檢事ノ請求ニ因リテ代理人ノ解任ヲ言渡シ又ハ其後任ヲ指定スルコトヲ得
第二百七十一條　失踪ノ推定ヲ受ケタル者カ總理代理人ヲ定置カサリシトキハ裁判所ハ前條ニ揭ケタル者ノ請求ニ因リテ管理人ヲ指定ス
此管理人ニハ成ル可ク推定相續人ヲ指定スルコトヲ要ス
第二百七十二條　代理人又ハ管理人ハ管理行爲ヲ爲ス權限ノミヲ有ス他ノ行爲ニ付テハ必要ノ場合ニ限リ裁判所ノ許可ヲ得テ之ヲ爲スコトヲ得
代理人又ハ管理人ハ本人ノ利益ニ關係アル目錄調製、計算及ヒ淸算ニ付テ本人ヲ代表ス
第二百七十三條　管理人ハ失踪者ノ動產及ヒ證書ノ目錄ヲ調製ス可シ又不動產ノ形狀ヲ確定セシムル爲メ鑑定人ノ選定ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得鑑定人ノ報吿書ハ裁判所ノ認可ニ付スルコトヲ要ス此等ノ手續ノ費用ハ本人ノ財產ヲ以テ之ヲ支辨ス
關係人、推定相續人又ハ檢事ノ請求アルトキハ本條ノ規定ヲ代理人ニ適用スルコトヲ得
第二百七十四條　代理人又ハ管理人ハ推定相續人ヲ除ク外其請求ニ因リテ裁判所ノ定メタル給料ヲ受ク裁判所ハ管理及ヒ財產返還ノ擔保トシテ保證人其他相當ノ擔保ヲ立テシムルコトヲ得
第二百七十五條　代理人又ハ管理人ハ失踪者ノ子孫ノ敎育、婚姻又ハ營業ノ爲メ資財ヲ與フルニ付テハ區裁判所ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
第二節　失踪ノ宣言
第二百七十六條　失踪者カ代理人ヲ定置カサリシトキハ五个年又代理人ヲ定置キタルトキハ任期ノ長短ヲ問ハス七个年ニ至ルモ其生死ノ音信ヲ得サルニ於テハ失踪者ノ死亡ニ因リテ發生スル權利ヲ其財產上ニ有スル者ハ失踪者ノ住所ノ區裁判所ニ失踪ノ宣言ヲ請求スルコトヲ得
第二百七十七條　右請求ノ許ス可キモノナルトキハ裁判所ハ失踪者ノ住所及ヒ其最後ノ居所ノ地ニ於テ證人訊問ヲ爲ス可キコトヲ命ス可シ此證人訊問ニ付テハ民事訴訟法ニ定メタル忌避ノ規則ヲ適用セス
第二百七十八條　證人訊問ヲ命スル決定ハ裁判所ノ揭示板ニ揭示シ且官報又ハ公報ニ揭載シテ之ヲ公示ス可シ
第二百七十九條　失踪宣言ノ裁判ハ證人訊問ヲ命シタル決定ヨリ一个年ノ後ニ非サレハ之ヲ宣吿スルコトヲ得ス
此裁判ハ前條ノ手續ニ從ヒテ之ヲ公示ス可シ
第三節　失踪宣言ノ效力
第二百八十條　失踪宣言ノ裁判アリタルトキハ失踪者ノ遺言書ハ關係人、推定相續人又ハ檢事ノ請求ニ因リテ之ヲ開封ス可シ
失踪者ノ亡失又ハ最後音信ノ日ニ於ケル推定相續人其他失踪者ノ死亡ニ因リテ發生スル權利ヲ其財產上ニ有スル者ハ直チニ其財產ヲ占有スルコトヲ得
第二百八十一條　失踪者ニ屬スル財產ノ占有ニ付テハ總テ相續ニ關スル規定ヲ適用ス
此占有ヲ得タル者ハ第三者ニ對シテハ財產ノ所有者トス
然レトモ占有者ハ推定相續人ヲ除ク外財產返還ノ擔保トシテ裁判所カ相當ト認ムル保證人其他ノ擔保ヲ立ツ可シ其保證人ノ義務又ハ擔保ハ十五个年ノ後止ム
第二百八十二條　失踪者ノ現出シ又ハ音信アリタルトキハ失踪宣言ノ效力ハ即時ニ止ム
失踪者ハ其財產ヲ現狀ノ儘ニテ取囘シ又占有者ノ處分ニ因リテ不當ニ利得シタルモノヲ取戾スコトヲ得
第二百八十三條　果實ニ付テハ失踪者カ其亡失又ハ最後音信ノ日ヨリ十个年內ニ現出スルトキハ其五分ノ一ヲ取戾スコトヲ得十个年後ハ其全部ヲ失フ
第二百八十四條　失踪者ノ相續順位ニ在ル者ハ他ノ者カ財產占有ヲ得タル日ヨリ三十个年間其財產ノ返還ヲ請求スルコトヲ得
此場合ニ於テモ果實ハ前條ノ規定ニ從ヒテ之ヲ取戾スコトヲ得
第四節　失踪ノ推定及ヒ宣言ニ關スル通則
第二百八十五條　失踪シテ生存ノ確實ナラサル人ニ歸ス可キ權利ヲ請求スル者ハ其人カ權利ノ發生セシ日ニ生存シタルヲ證スルコトヲ要ス此擧證ヲ爲ササル間ハ其請求ヲ受理セス
第二百八十六條　失踪シテ生存ノ確實ナラサル人ニ歸ス可キ相續ハ次順位ノ者ニ屬ス
失踪者ニ歸ス可キ財產ヲ相續スル者ハ財產目錄ヲ調製ス可シ
第二百八十七條　前二條ノ規定ハ失踪者又ハ其相續人及ヒ承繼人ニ屬スル相續ノ請求其他ノ權利ヲ行フヲ妨クルコト無シ此等ノ權利ハ普通ノ時效ニ因ルニ非サレハ消滅セス
第五節　不在者ニ關スル規則
第二百八十八條　生存ノ確實ナル人カ住所若クハ居所ヲ去リテ其財產ヲ管理スル者アラサルトキ又ハ裁判所カ未タ失踪ヲ推定セサルモ本人ノ不在ノ爲メ其財產ノ放置セラルルトキ又ハ失踪ノ推定中若クハ宣言後ニ失踪者ノ生存ノ確實ト爲リタルトキハ區裁判所ハ利害關係人又ハ檢事ノ請求ニ因リテ必要ノ保存處分ヲ命スルコトヲ得
第十六章　身分ニ關スル證書
第二百八十九條　出生、婚姻、養子緣組、死亡其他各人ノ身分ニ關スル事件ハ身分取扱吏ノ主管スル帳簿ニ之ヲ記載ス可シ
第二百九十條　帳簿ニ記載シタル證書ハ公正證書ノ證據力ヲ有ス但違法ノ記載ハ效力ナシ
合式ノ謄本ハ證書ト同一ノ效力ヲ有ス
第二百九十一條　帳簿ノ設備ナク若クハ中絕シタルトキ又ハ其全部若クハ一分ノ毀損シ亡滅シタルトキ又ハ其記載上甚シキ違式、錯誤若クハ脫漏アリテ信用ヲ置ク可カラサルトキ又ハ身分取扱吏ノ詐欺若クハ過失ニ因リテ證書ヲ作ラサリシトキハ證人又ハ私ノ書類ヲ以テ先ツ其事實ヲ證シ且身分上ノ事件ヲ證スルコトヲ得
第二百九十二條　證書ノ訂正ハ裁判ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第二百九十三條　帳簿ノ調製、證書ノ記載、屆出ノ手續其他ノ事項ハ特別法ヲ以テ之ヲ規定ス
朕民法中財産取得編人事編ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム此法律ハ明治二十六年一月一日ヨリ施行スヘキコトヲ命ス
御名御璽
明治二十三年十月六日
内閣総理大臣　伯爵　山県有朋
内務大臣　伯爵　西郷従道
司法大臣　伯爵　山田顕義
大蔵大臣　伯爵　松方正義
陸軍大臣　伯爵　大山巌
逓信大臣　伯爵　後藤象二郎
外務大臣　子爵　青木周蔵
海軍大臣　子爵　樺山資紀
文部大臣　芳川顕正
農商務大臣　陸奥宗光
法律第九十八号
民法人事編目録
第一章
私権ノ享有及ヒ行使
第二章
国民分限
第一節
国民分限ノ取得
第二節
国民分限ノ喪失及ヒ回復
第三節
国民分限変更ノ方式及ヒ効力
第三章
親属及ヒ姻属
第四章
婚姻
第一節
婚姻ヲ為スニ必要ナル条件
第二節
婚姻ノ儀式
第三節
日本人外国ニ於テ為シ及ヒ外国人日本ニ於テ為ス婚姻
第四節
婚姻成立ノ証拠
第五節
婚姻ノ不成立及ヒ無効
第六節
婚姻ノ効力
第七節
罰則
第五章
離婚
第一節
協議ノ離婚
第二節
特定原因ノ離婚
第一款
離婚及ヒ不受理ノ原因
第二款
仮処分
第三款
離婚ノ訴
第三節
離婚ノ効力
第六章
親子
第一節
親子ノ分限ノ証拠
第二節
否認訴権
第三節
庶子及ヒ私生子ノ適出子ト為ル権
第七章
養子縁組
第一節
養子縁組ニ必要ナル条件
第二節
養子縁組ノ儀式
第三節
養子縁組ノ証拠
第四節
養子縁組ノ不成立及ヒ無効
第五節
養子縁組ノ効力
第六節
罰則
第八章
養子ノ離縁
第一節
協議ノ離縁
第二節
特定原因ノ離縁
第三節
離縁ノ効力
第九章
親権
第一節
子ノ身上ニ対スル権
第二節
子ノ財産ノ管理
第三節
嫡母、継父及ヒ継母ニ特別ナル規則
第十章
後見
総則
第一節
後見人
第二節
後見監督人
第三節
親族会
第四節
後見ノ免除
第五節
後見人及ヒ親族会員ノ欠格、除斥及ヒ罷黜
第六節
後見人ノ管理
第七節
後見監督人ノ任務
第八節
後見ノ終了
第九節
後見ノ計算
第十一章
自治産
第十二章
禁治産
第一節
民事上禁治産
第二節
准禁治産
第三節
刑事上禁治産
第四節
瘋癲者ノ財産ノ仮管理
第十三章
戸主及ヒ家族
第十四章
住所
第十五章
失踪
第一節
失踪ノ推定
第二節
失踪ノ宣言
第三節
失踪宣言ノ効力
第四節
失踪ノ推定及ヒ宣言ニ関スル通則
第五節
不在者ニ関スル規則
第十六章
身分ニ関スル証書
民法
人事編
第一章　私権ノ享有及ヒ行使
第一条　凡ソ人ハ私権ヲ享有シ法律ニ定メタル無能力者ニ非サル限リハ自ラ其私権ヲ行使スルコトヲ得
第二条　胎内ノ子ト雖モ其利益ヲ保護スルニ付テハ既ニ生マレタル者ト看做ス
第三条　私権ノ行使ニ関スル成年ハ満二十年トス但法律ニ特別ノ規定アルトキハ此限ニ在ラス
第四条　外国人ハ法律又ハ条約ニ禁止アルモノヲ除ク外私権ヲ享有ス
第五条　法人ハ公私ヲ問ハス法律ノ認許スルニ非サレハ成立スルコトヲ得ス又法律ノ規定ニ従フニ非サレハ私権ヲ享有スルコトヲ得ス
第六条　法律ハ外国法人ノ成立ヲ認許セス但条約又ハ特許アルトキハ此限ニ在ラス
成立ノ認許ヲ得タル外国法人ハ日本ニ成立スル同種ノ者ト同一ノ私権ヲ享有ス但条約中又ハ特許中ニ其権利ヲ制限シタルトキハ此限ニ在ラス
第二章　国民分限
第一節　国民分限ノ取得
第七条　日本人ノ子ハ外国ニ於テ生マレタルトキト雖モ日本人トス
父母分限ヲ異ニスルトキハ父ノ分限ヲ以テ子ノ分限ヲ定ム
父ノ知レサルトキハ子ハ母ノ分限ニ従フ
父母共ニ知レサルトキハ日本ニ於テ生マレタル子ハ日本人トス若シ其出生地ノ知レサルトキハ現ニ日本国内ニ在ル者ハ日本人トス
第八条　左ノ場合中ノ一ニ在ル子ハ日本人ノ分限ヲ選択スルコトヲ得
第一　父カ外国人タルモ母ノ日本人タルトキ
第二　外国人ノ子タルモ日本ニ生マレタルトキ
第三　日本人ノ分限ヲ失ヒタル者ノ子ニシテ其分限喪失ノ後ニ生マレタル者ナルトキ
第四　帰化人ノ子ニシテ成年者ナルトキ
第九条　日本人ノ分限ヲ選択セント欲スル子ハ本国法律ニ従ヒテ成年ニ至リシ時ヨリ一个年内ニ其意思ヲ申述シ且其申述ヨリ一个年内ニ住所ヲ日本ニ定ム可シ
成年ノ後ニ至リテ外国人ノ認知シタル私出子ハ認知ヨリ又帰化人ノ子ハ帰化ヨリ一个年内ニ右ノ申述ヲ為スコトヲ得
第十条　日本人ト婚姻スル外国ノ女ハ日本人ノ分限ヲ取得シ婚姻解消ノ後ト雖モ其分限ヲ保有ス
第十一条　外国人ハ帰化ニ因リテ日本人ノ分限ヲ取得スルコトヲ得其条件及ヒ方式ハ特別法ヲ以テ之ヲ規定ス
帰化人ノ婦及ヒ未成年ノ子ハ日本ニ住居ヲ定メタルトキハ日本人ノ分限ヲ取得ス
第二節　国民分限ノ喪失及ヒ回復
第十二条　日本人ハ左ノ場合ニ於テ其分限ヲ失フ
第一　任意ニ外国人ノ分限ヲ取得シタルトキ
第二　日本政府ノ允許ナクシテ外国政府ノ官職ヲ受ケ又ハ外国ノ軍隊ニ入リタルトキ
第十三条　前条ノ場合ニ於テ日本人ノ分限ヲ失ヒタル者其分限ヲ回復セント欲スルトキハ日本政府ノ允許ヲ得タル上帰国シテ其意思ヲ申述シ且一个年内ニ住所ヲ日本ニ定ムルトキハ其分限ヲ回復ス
第十四条　日本人ノ分限ヲ失ヒタル者ノ婦及ヒ未成年ノ子ハ引続キ日本ニ住居スルニ非サレハ日本人ノ分限ヲ失フ但婦ハ第十五条第二項ノ規定ニ従ヒ又未成年ノ子ハ第九条第一項ノ規定ニ従ヒ其分限ヲ回復スルコトヲ得
第十五条　外国人ト婚姻スル日本ノ女ハ日本人ノ分限ヲ失フ
然レトモ婚姻解消ノ後日本ニ住居シ又ハ復帰シ且日本ニ住所ヲ定ムルコトヲ申述スルトキハ其分限ヲ回復ス
第三節　国民分限変更ノ方式及ヒ効力
第十六条　国民分限ノ変更ニ関スル申述ハ日本ニ在リテハ住居地ノ身分取扱吏ニ外国ニ在リテハ日本公使館又ハ日本領事館ニ之ヲ為ス可シ
此申述ハ部理代理人ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
第十七条　国民分限ノ変更ハ将来ニ非サレハ其効力ヲ生セス
第十八条　国民分限ハ出生ノ時ヲ以テ之ヲ定ム然レトモ懐胎ヨリ出生マテノ間父又ハ母ノ分限ニ変更アリタルトキハ子ハ日本ニ住居スル場合ニ限リ日本人ノ分限ヲ保有ス
第三章　親属及ヒ姻属
第十九条　親属トハ血統ノ相連結スル者ノ関係ヲ謂フ
六親等ノ外ハ親属ノ関係アルモ民法上ノ効力ヲ生セス
第二十条　親属ノ遠近ハ世数ヲ以テ之ヲ定メ一世ヲ以テ一親等トス
親等ノ連続スルヲ親系ト為ス彼ヨリ此ニ直下スル者ノ親系ヲ直系ト謂ヒ其直下セスシテ同始祖ニ出ツル者ノ親系ヲ傍系ト謂フ
直系ニ於テ自己ノ出ツル所ノ親族ヲ尊属親ト謂ヒ自己ヨリ出ツル所ノ親族ヲ卑属親ト謂フ
第二十一条　直系ニ於テハ親族ノ世数ヲ算シテ親等ヲ定ム
傍系ニ於テハ親族ノ一人ヨリ同始祖ニ遡リ又其始祖ヨリ他ノ一人ニ下タル其間ノ世数ヲ算シテ親等ヲ定ム
第二十二条　養子縁組ハ養子ト養父母及ヒ其親族トノ間ニ親属ニ同シキ関係ヲ生ス但養子トハ男女ヲ総称ス
第二十三条　嫡母、継父又ハ継母ト其配偶者ノ子トノ関係ハ親子ニ準ス
第二十四条　姻属トハ婚姻ニ因リテ夫婦ノ一方ト其配偶者ノ親族トノ間ニ生スル関係ヲ謂フ
然レトモ婦ノ夫家ニ於ケル又入夫ノ婦家ニ於ケル尊属親トノ関係ハ親属ニ準ス
第二十五条　夫婦ノ一方ノ親族ハ其親系及ヒ親等ニ於テ配偶者ノ姻族トス
姻属ノ関係ハ婚姻無効ノ判決又ハ離婚ニ因リテ止ム又生存配偶者其家ヲ去ルニ因リテ止ム
第二十六条　直系ノ親族ハ相互ニ養料ヲ給スル義務ヲ負担ス
嫡母、継父又ハ継母ト其配偶者ノ子トノ間及ヒ婦又ハ入夫ト夫家又ハ婦家ノ尊属親トノ間モ亦同シ
第二十七条　兄弟姉妹ノ間ニハ疾病其他本人ノ責ニ帰セサル事故ニ因リテ自ラ生活スル能ハサル場合ニ限リ相互ニ養料ヲ給スル義務アリ
第二十八条　養料ノ義務ヲ負担ス可キ者ノ順位ハ左ノ如シ
第一　第二十六条ニ掲ケタル者
第二　兄弟姉妹
直系ノ親族ノ間ハ其親等ノ最モ近キ者養料ノ義務ヲ負担ス
第二十九条　養料ハ之ヲ受ク可キ者ノ必需ト之ヲ給ス可キ者ノ資産トニ応シテ其額ヲ定ム
第四章　婚姻
第一節　婚姻ヲ為スニ必要ナル条件
第三十条　男ハ満十七年女ハ満十五年ニ至ラサレハ婚姻ヲ為スコトヲ得ス
第三十一条　配偶者アル者ハ重子テ婚姻ヲ為スコトヲ得ス
第三十二条　夫ノ失踪ニ原因スル離婚ノ場合ヲ除ク外女ハ前婚解消ノ後六个月内ニ再婚ヲ為スコトヲ得ス
此制禁ハ其分娩シタル日ヨリ止ム
第三十三条　姦通ノ原因ニ由リテ離婚ノ裁判ヲ言渡サレタル曲者ハ相姦者ト婚姻ヲ為スコトヲ得ス
第三十四条　直系ニ於テハ尊属親ト卑属親トノ間婚姻ヲ禁ス
第三十五条　傍系ニ於テハ兄弟姉妹及ヒ伯叔父姑甥姪ノ間婚姻ヲ禁ス
第三十六条　直系ノ姻族ノ間ハ其関係ノ止ミタル後ト雖モ婚姻ヲ禁ス
第三十七条　養子ト養父母又ハ其尊属親トノ間及ヒ養父母又ハ其尊属親ト養子ノ配偶者又ハ其卑属親トノ間ハ離縁ノ後ト雖モ婚姻ヲ禁ス
第三十八条　子ハ父母ノ許諾ヲ受クルニ非サレハ婚姻ヲ為スコトヲ得ス
父母ノ一方カ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ他ノ一方ノ許諾ヲ以テ足ル
継父又ハ継母アル場合ニ於テ其配偶者タル母又ハ父ノ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ継父又ハ継母ノ許諾ヲ受ク可シ其許諾ニ付テハ第九章第三節ノ規定ヲ適用ス
第三十九条　父母共ニ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ其家ノ祖父母ノ許諾ヲ受ク可シ
祖父母ノ一方カ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ他ノ一方ノ許諾ヲ以テ足ル
第四十条　父母、祖父母悉ク死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ満二十年ニ至ラサル者ニ限リ後見人ノ許諾ヲ受ク可シ
第四十一条　父母ノ知レサル子ハ二十年未満ニ限リ後見人ノ許諾ヲ受ク可シ
第四十二条　育児院ニ在リテ父母ノ知レサル子ノ婚姻ハ二十年未満ニ限リ院長ノ許諾ヲ受ク可シ
第二節　婚姻ノ儀式
第四十三条　婚姻ノ儀式ハ当事者ノ一方ノ住所又ハ居所ノ地ニ於テ之ヲ行フ可シ
双方ハ婚姻ノ儀式ヲ行フ前ニ其地ノ身分取扱吏ニ婚姻ヲ為サントスル申出ヲ為スコトヲ要ス但此申出ハ代理人ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
第四十四条　双方ハ前条ノ申出ヲ為ス時ニ於テ左ノ書類ヲ差出タス可シ
第一　出生証書
第二　前婚ノ解消ヲ証スル証書
第三　婚姻ニ必要ナル許諾書又ハ其許諾ヲ得ル能ハサル事由ヲ証スル書類
第四十五条　双方又ハ一方カ出生証書ヲ呈示スル能ハサルトキハ出生地、住所又ハ居所ノ区裁判所ノ授付シタル保証書ヲ以テ出生証書ニ代用スルコトヲ得
保証書ハ男女ヲ問ハス又親族ト否トヲ問ハス証人二人カ左ノ諸件ニ付キ区裁判所ニ為シタル申述ヲ記載ス
第一　本人ノ氏名、職業、住所及ヒ居所並ニ其父母分明ナルトキハ其氏名、職業、住所及ヒ居所
第二　本人ノ出生ノ地及ヒ年月日
第三　本人ノ出生証書ヲ呈示スル能ハサル原因及ヒ証人ノ其事実ヲ聞知シタル縁由
第四十六条　身分取扱吏ハ婚姻ノ儀式ヲ行フ障碍ト為ル可キ法律上ノ原因アルコトヲ知リタルトキハ其儀式ヲ行フコトヲ差止ム可シ
此場合ニ於テハ身分取扱吏ハ理由ヲ記シタル差止書ヲ授付ス可シ
当事者此差止ヲ不当ナリト思料スルトキハ区裁判所ニ抗告シテ其取消ヲ求ムルコトヲ得
裁判所ハ休暇事件ト同シク之ヲ取扱フ可シ
第四十七条　婚姻ハ証人二人ノ立会ヲ得テ慣習ニ従ヒ其儀式ヲ行フニ因リテ成ル
当事者ノ承諾ハ此儀式ヲ行フニ因リテ成立ス
第四十八条　婚姻ノ儀式ハ其申出ノ日ヨリ三日後三十日内ニ之ヲ行フコトヲ要ス
第四十九条　婚姻ノ儀式ヲ行ヒタルトキハ双方ヨリ十日内ニ身分取扱吏ニ其届出ヲ為ス可シ但此届出ハ代理人ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
第三節　日本人外国ニ於テ為シ及ヒ外国人日本ニ於テ為ス婚姻
第五十条　外国ニ於テ日本人ノ間又ハ日本人ト外国人トノ間ニ婚姻ヲ為ストキハ其国ノ規則ニ従ヒテ儀式ヲ行フコトヲ得但本章第一節ニ定メタル条件ニ違背セサルコトヲ要ス
第五十一条　外国ニ於テ日本人ノ間ニ日本ノ規則ニ従ヒテ婚姻ヲ為ストキハ其国ニ在ル日本公使館又ハ日本領事館ニ婚姻ノ申出ヲ為スコトヲ要ス
婚姻ノ儀式ヲ行ヒタルトキハ第四十九条ノ規定ニ従ヒテ其届出ヲ為ス可シ
第五十二条　日本ニ於テ外国人カ婚姻ヲ為サントスルトキハ其能力ハ本国ノ法律ニ従フ但第三十一条乃至第三十七条ノ条件ニ違背セサルコトヲ要ス
外国人ハ婚姻ノ申出ヲ為ス時ニ於テ婚姻ヲ為スニ障碍ナキコトヲ証スル本国相当官署ノ認定書ヲ差出タス可シ
第四節　婚姻成立ノ証拠
第五十三条　婚姻成立ノ証拠ハ婚姻証書ヲ以テ之ヲ挙ク可シ但第二百九十一条ニ規定スルモノハ此限ニ在ラス
第五十四条　婚姻証書ヲ増減シ毀棄シ隠匿シ又ハ片紙ニ記載シタル場合ニ於テ刑事又ハ民事ノ訴訟ニ因リテ婚姻ノ成立ヲ認メタル判決ハ之ヲ婚姻証書ニ代用スルコトヲ得
第五節　婚姻ノ不成立及ヒ無効
第五十五条　人違、喪心又ハ強暴ニ因リテ双方又ハ一方ノ承諾ノ全ク欠欠シタル婚姻ハ不成立トス
第三十四条乃至第三十七条ノ規定ニ違ヒテ為シタル婚姻モ亦不成立トス
婚姻ノ不成立ハ何人ニ限ラス何時ニテモ之ヲ申立ツルコトヲ得
第五十六条　第三十条、第三十一条及ヒ第三十三条ノ規定ニ違ヒテ婚姻ヲ為シタルトキハ双方、尊属親又ハ現実ノ利益ヲ有スル者ヨリ何時ニテモ其無効ヲ請求スルコトヲ得
右同一ノ場合ニ於テ検事ハ夫婦ノ生存中ニ限リ職権ヲ以テ婚姻ノ無効ヲ請求スルコトヲ得
第五十七条　不適齢ニ付キ無効ヲ請求スル権利ハ左ノ場合ニ於テ消滅ス
第一　適齢ナラサリシ者カ適齢ニ至レル後明示ニテ婚姻ヲ認諾シ又ハ三个月ヲ過キタルトキ
第二　無効ノ請求後ト雖モ婦カ適齢ナラスシテ懐胎シタルトキ
第三　夫カ適齢ナラスシテ婦ノ懐胎シタルトキ但婦ノ姦通ヲ証スルトキハ格別ナリトス
第五十八条　重婚ニ原因スル婚姻無効ノ請求アリタル場合ニ於テ後婚ノ双方カ前婚ノ不成立、無効又ハ離婚ヲ主張スルトキハ先ツ其裁判ヲ為ス可シ
前婚ノ配偶者カ失踪シタルトキハ其失踪中ハ重婚ノ無効訴権ヲ行フコトヲ得ス
第五十九条　左ノ場合ニ於テハ婚姻ハ無効トス
第一　身分取扱吏ニ婚姻ノ申出ヲ為サス又ハ其差止ヲ受ケタルニ拘ハラス儀式ヲ行ヒタルトキ
第二　身分取扱吏ノ管轄違ナルトキ
第三　第四十八条ノ規定ニ違ヒテ儀式ヲ行ヒタルトキ
第四　証人二人ノ立会ナクシテ儀式ヲ行ヒタルトキ
此無効ハ第五十六条ニ掲ケタル者ヨリ之ヲ請求スルコトヲ得但婚姻儀式後一个年ヲ過キタルトキハ無効訴権ヲ行フコトヲ得ス
第六十条　第三十八条乃至第四十二条ニ定メタル許諾ナクシテ婚姻ヲ為シタルトキハ其許諾ヲ与フ可キ者又ハ之ヲ受ク可キ者ヨリ其無効ヲ請求スルコトヲ得
許諾アリタル場合ト雖モ其許諾カ強暴ニ原因シタルトキモ亦同シ
第六十一条　前条ノ場合ニ於テ婚姻ノ許諾ヲ与フ可キ者カ婚姻ヲ認諾セスシテ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ法律ニ定メタル順位ニ従ヒテ其許諾ヲ与フ可キ者ハ無効訴権ヲ行フコトヲ得
第六十二条　第六十条ニ掲ケタル無効訴権ハ左ノ場合ニ於テ消滅ス
第一　婚姻ノ許諾ヲ与フ可キ者カ認諾ヲ為シ又ハ婚姻アリタルコトヲ知リシ後三个月ヲ過キタルトキ
第二　三个月内ト雖モ許諾ヲ受ク可キ者カ婚姻上ノ成年ニ至リ又ハ死亡シタルトキ
第六十三条　強暴ニ因リテ承諾ニ瑕疵アル婚姻ノ無効ハ強暴ヲ受ケタル者ニ限リ之ヲ請求スルコトヲ得
第六十四条　前条ノ場合ニ於テ配偶者強暴ヲ免カレタル後明示ニテ認諾シ又ハ三个月間引続キ同居シタルトキハ婚姻ノ無効ヲ請求スルコトヲ得ス其同居セサル場合ニ於テモ無効訴権ハ一个年ヲ以テ消滅ス
第六十五条　裁判所ハ婚姻ノ不成立又ハ無効ノ訴訟中夫婦ノ一方ノ請求ニ因リ又ハ職権ヲ以テ婦又ハ夫ニ住家ヲ去ル可キヲ命スルコトヲ得
第六十六条　無効ノ言渡アリタル婚姻ハ子ニ付テハ其出生ノ婚姻前後ナルヲ問ハス法律上ノ効力ヲ生ス
第六節　婚姻ノ効力
第六十七条　婚姻ハ其儀式ヲ行ヒタル日ヨリ効力ヲ生ス但夫婦財産契約ニ付テハ婚姻ノ届出後ニ非サレハ第三者ニ対シテ婚姻ノ効力ヲ援用スルコトヲ得ス
第六十八条　婦ハ夫ノ許可ヲ得ルニ非サレハ贈与ヲ為シ之ヲ受諾シ不動産ヲ譲渡シ之ヲ担保ニ供シ借財ヲ為シ債権ヲ譲渡シ之ヲ質入シ元本ヲ領収シ保証ヲ約シ及ヒ身体ニ羈絆ヲ受クル約束ヲ為スコトヲ得ス又和解ヲ為シ仲裁ヲ受ケ及ヒ訴訟ヲ起スコトヲ得ス
第六十九条　夫ノ許可ハ特定又ハ総括ナルコトヲ得但総括ノ許可ハ証書ヲ以テ之ヲ与フルコトヲ要ス
夫ハ夫婦財産契約ニ依リテ与ヘタル総括ノ許可ト雖モ之ヲ廃罷スルコトヲ得
第七十条　左ノ場合ニ於テハ婦ハ夫ノ許可ヲ得ルコトヲ要セス
第一　夫カ失踪ノ推定ヲ受ケタルトキ
第二　夫カ禁治産又ハ准禁治産ヲ受ケタルトキ
第三　夫カ瘋癲ノ為メ病院又ハ監置ニ在ルトキ
第七十一条　夫ハ婦ニ与ヘタル許可ニ因リテ義務ヲ負担セス
第七十二条　夫ノ許可ヲ得スシテ婦ノ為シタル行為ハ之ヲ銷除スルコトヲ得
此銷除ハ夫婦ノ各自及ヒ婦ノ承継人ニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
第七十三条　夫ニ属スル銷除訴権ハ其銷除シ得ヘキ行為ヲ知リタル日ヨリ五个年ノ時効ニ因リ又ハ婚姻ノ解消ニ因リテ消滅ス
婦及ヒ其承継人ニ属スル銷除訴権ハ婚姻解消ノ日ヨリ五个年ノ時効ニ因リテ消滅ス
財産編第五百四十四条以下ノ規定ハ本条ノ銷除訴権ニ之ヲ適用ス
第七節　罰則
第七十四条　婚姻申出ノ時ニ必要ノ書類ヲ差出タサシメサル身分取扱吏ハ弐円以上弐拾円以下ノ過料ニ処ス
第七十五条　婚姻ノ不成立又ハ無効タル可キ法律上ノ原因アルヲ知リテ其儀式ヲ行フコトヲ差止メサル身分取扱吏ハ三円以上三拾円以下ノ罰金ニ処ス
第七十六条　第三十二条ノ制禁ニ違背シテ再婚ヲ為シタル婦ハ弐円以上弐拾円以下ノ罰金ニ処ス其情ヲ知リテ婚姻ヲ為シタル夫及ヒ婚姻ノ儀式ヲ行フコトヲ差止メサル身分取扱吏モ亦同シ
第七十七条　夫婦ノ一方ニシテ婚姻ノ無効ヲ致シタル原因ヲ知リ之ヲ他ノ一方ニ隠秘シタル者ハ三円以上三拾円以下ノ罰金ニ処ス
第五章　離婚
第一節　協議ノ離婚
第七十八条　夫婦ハ下ニ定メタル条件及ヒ方式ニ従ヒ協議ヲ以テ離婚ヲ為スコトヲ得
第七十九条　離婚セントスル夫婦ハ婚姻許諾ノ為メ第四章第一節ニ定メタル規則ニ従ヒ各其父母、祖父母又ハ後見人ノ許諾ヲ受クルコトヲ要ス
第八十条　夫婦ハ離婚協議書ニ左ノ書類ヲ添ヘテ身分取扱吏ニ届出ツ可シ
第一　婚姻証書
第二　離婚ノ許諾ヲ与フ可キ者ノ許諾書若シ其者死亡シ又ハ意思ヲ表スル能ハサルトキハ死亡証書又ハ其事由ヲ証スル書類
第二節　特定原因ノ離婚
第一款　離婚及ヒ不受理ノ原因
第八十一条　離婚ハ左ノ原因アルニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
第一　姦通但夫ノ姦通ハ刑ニ処セラレタル場合ニ限ル
第二　同居ニ堪ヘサル暴虐、脅迫及ヒ重大ノ侮辱
第三　重罪ニ因レル処刑
第四　窃盗、詐欺取財又ハ猥褻ノ罪ニ因レル重禁錮一年以上ノ処刑
第五　悪意ノ遺棄
第六　失踪ノ宣言
第七　婦又ハ入夫ヨリ其家ノ尊属親ニ対シ又ハ尊属親ヨリ婦又ハ入夫ニ対スル暴虐、脅迫及ヒ重大ノ侮辱
第八十二条　離婚ノ請求ヲ為ス一方ニ対シテ離婚ノ原因存スルトキハ他ノ一方モ反訴ヲ以テ離婚ヲ請求スルコトヲ得
然レトモ前条第三号及ヒ第四号ニ記載スル重罪又ハ軽罪ノ刑ニ処セラレタル一方ハ他ノ一方ノ処刑ヲ原因トシテ離婚ヲ請求スルコトヲ得ス
第二款　仮処分
第八十三条　離婚ノ訴訟中子ノ監護ハ原告又ハ被告タルヲ問ハス夫ニ属ス但入夫及ヒ婿養子ニ付テハ婦ニ属ス
然レトモ裁判所ハ夫、婦、親族又ハ検事ノ請求ニ因リ子ノ利益ヲ慮リテ其監護ヲ他ノ一方又ハ第三者ニ命スルコトヲ得
第八十四条　離婚ノ訴訟中婦ハ原告又ハ被告タルヲ問ハス裁判所ノ許可ヲ得テ住家ヲ去ルコトヲ得此場合ニ於テハ自己ノ衣服其他ノ日用物品ヲ持去リ且必要アルトキハ養料ヲ請求スルコトヲ得
裁判所ハ夫ノ意見ヲ聴キテ婦ノ移居ス可キ家屋ヲ指示スルコトヲ要ス若シ婦カ正当ノ理由ナクシテ其家屋ヲ去ルトキハ夫ハ養料ヲ拒ムコトヲ得
第八十五条　入夫及ヒ婿養子ニ付テハ裁判所ハ離婚ノ訴訟中夫ヲシテ住家ヲ去ラシムルコトヲ得此場合ニ於テハ前条第一項ノ規定ヲ適用ス
第八十六条　裁判所ハ住家ヲ去ル婦又ハ夫ノ請求ニ因リ其財産ヲ保存スル為メニ必要ナル処分ヲ命スルコトヲ得
第三款　離婚ノ訴
第八十七条　離婚ヲ請求スル訴権ハ夫婦ノミニ属ス
第八十八条　離婚ノ原因ハ通常ノ証拠方法ヲ以テ之ヲ証ス可シ但シ自白ノミヲ以テ之ヲ証スルコトヲ得ス又卑属親ヲ除ク外親族、姻族又ハ雇人ニ関スル忌避ノ規定ヲ適用セス
第三節　離婚ノ効力
第八十九条　離婚ハ其届出又ハ裁判確定ノ後ニ非サレハ効力ヲ生セス
第九十条　離婚ノ後子ノ監護ハ夫ニ属ス但入夫及ヒ婿養子ニ付テハ婦ニ属ス
然レトモ裁判所ハ夫、婦、親族又ハ検事ノ請求ニ因リ子ノ利益ヲ慮リテ之ヲ他ノ一方又ハ第三者ノ監護ニ付スルコトヲ得
第六章　親子
第一節　親子ノ分限ノ証拠
第九十一条　婚姻中ニ懐胎シタル子ハ夫ノ子トス
婚姻ノ儀式ヨリ百八十日後又ハ夫ノ死亡若クハ離婚ヨリ三百日内ニ生マレタル子ハ婚姻中ニ懐胎シタルモノト推定ス
第九十二条　嫡出子ハ出生証書ヲ以テ之ヲ証ス
第九十三条　出生証書ヲ呈示スル能ハサルトキハ親子ノ分限ハ嫡出子タル身分ノ占有ヲ以テ之ヲ証スルコトヲ得但第二百九十一条ノ規定ノ適用ヲ妨ケス
第九十四条　身分ノ占有トハ夫婦ト其婚姻ニ因リテ生マレタリト主張スル者トノ間其者ノ出生ノ時ヨリ親子ノ分限ヲ証スルニ足ル可キ事実ノ湊合スルヲ謂フ其事実ノ著明ナルモノ左ノ如シ
第一　子ナリト主張スル者カ常ニ其父ナリトスル者ノ氏ヲ称シタルコト
第二　子ナリト主張スル者カ常ニ其父母ナリトスル者ヨリ嫡出子ノ如ク取扱ハレ其養育、教育ヲ受ケタルコト
第三　子ナリト主張スル者カ常ニ親族及ヒ世上ニ於テ嫡出子ト認メラレタルコト
第九十五条　庶子ハ父ノ届出ニ基ク出生証書ヲ以テ之ヲ証ス但身分ノ占有ニ関スル規定ヲ適用ス
第九十六条　父ノ知レサル子ハ私生子トス
第九十七条　私生子ハ出生証書ヲ以テ之ヲ証ス但身分ノ占有ニ関スル規定ヲ適用ス
第九十八条　私生子ハ父之ヲ認知スルニ因リテ庶子ト為ル
第九十九条　庶子ノ出生届及ヒ認知ハ父自ラ身分取扱吏ニ之ヲ為スコトヲ要ス未成年者ト雖モ自ラ之ヲ為スコトヲ得
第二節　否認訴権
第百条　否認訴権ハ夫ノミニ属ス但子ノ出生後ニ非サレハ之ヲ行フコトヲ得ス
第百一条　夫カ民事上ノ禁治産ヲ受ケタルトキハ後見人又ハ後見監督人ハ親族会ノ許可ヲ得テ否認訴権ヲ行フコトヲ得
第百二条　夫カ子ノ出生ノ場所ニ在ルトキハ出生ヨリ三个月ノ期間内ニ限リ否認訴権ヲ行フコトヲ得但夫カ婦ト住家ヲ異ニシ又ハ婦カ子ノ出生ヲ夫ニ隠秘シタルトキハ此期間ハ子ノ出生ヲ知リタル日ヨリ起算ス
若シ夫カ遠隔ノ地ニ在ルトキハ訴権ノ期間ヲ四个月トシ子ノ出生ヲ知リタル日ヨリ起算ス
第三節　庶子及ヒ私生子ノ嫡出子ト為ル権
第百三条　庶子ハ父母ノ婚姻ニ因リテ嫡出子ト為ル
私生子ハ父母ノ婚姻ノ後父ノ認知シタルニ因リテ嫡出子ト為ル
第百四条　死亡シタル子ト雖モ前条ノ規定ニ依リ嫡出子ト為ル此場合ニ於テハ其効力ハ子ノ生ミタル子ヲ利ス
第百五条　父母ノ婚姻ノ時マテニ父子ノ分限確定シタル者ハ婚姻ノ日ヨリ又婚姻ノ後ニ確定シタル者ハ確定ノ日ヨリ嫡出子ノ権利ヲ有ス
第七章　養子縁組
第一節　養子縁組ニ必要ナル条件
第百六条　何人ト雖モ養子ト為ル可キ者ヨリ年長ニシテ成年ナルニ非サレハ養子ヲ為スコトヲ得ス
遺言ヲ為ス能力アル者ハ遺言養子ヲ為スコトヲ得
第百七条　家督相続ヲ為ス可キ男子アル者ハ養子ヲ為スコトヲ得ス
第百八条　後見人ハ管理ノ計算ヲ為ササル前ニ被後見人ヲ養子ト為スコトヲ得ス但遺言養子ト為スハ此限ニ在ラス
第百九条　戸主ニ非サル者ハ養子ヲ為スコトヲ得ス但推定家督相続人ニシテ戸主ノ許諾ヲ得タル者ハ此限ニ在ラス
第百十条　配偶者アル者ハ其配偶者ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ養子ヲ為スコトヲ得ス但配偶者カ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ此限ニ在ラス
配偶者アル者ハ其配偶者ト一致スルニ非サレハ養子ト為ルコトヲ得ス
第百十一条　家督相続ニ因リテ戸主ト為リタル者ハ他人ノ養子ト為ルコトヲ得ス
又推定家督相続人ハ他人ノ養子ト為ルコトヲ得ス
然レトモ分家ヨリ本家ヲ承継スル必要アルトキハ本条ノ規定ヲ適用セス
第百十二条　外国人ハ日本人ノ養子ト為ルコトヲ得ス
第二節　養子縁組ノ儀式
第百十三条　養子縁組ハ当事者ノ承諾ニ因リテ成ル
此承諾ハ証人二人ノ立会ヲ得テ慣習ニ従ヒ縁組ノ儀式ヲ行フニ因リテ成立ス
縁組ノ儀式ヲ行フニ付テハ第四十三条、第四十六条及ヒ第四十八条ノ規定ヲ適用ス
第百十四条　当事者ハ身分取扱吏ニ縁組ノ申出ヲ為ス時ニ於テ左ノ書類ヲ差出タス可シ
第一　養子ヲ為ス者及ヒ養子ト為ル者ノ出生証書又ハ之ニ代用スル保証書
第二　家督相続ヲ為ス可キ男子ナキコトヲ証スル身分取扱吏ノ認定書又ハ推定家督相続人廃除ノ証書
第三　配偶者ノ承諾書又ハ承諾ヲ得ル能ハサル事由ヲ証スル書類
第四　後見管理ノ計算ヲ為シタル証明書
第五　縁組ニ必要ナル許諾書又ハ許諾ヲ得ル能ハサル事由ヲ証スル書類
第百十五条　満十五年ニ至ラサル子ノ縁組ハ父母之ヲ承諾スルコトヲ得
父母ノ一方カ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ他ノ一方ニ於テ縁組ヲ承諾スルコトヲ得
父母共ニ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ其家ノ祖父母若シ其一方カ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ他ノ一方ニ於テ縁組ヲ承諾スルコトヲ得
第百十六条　満十五年ニ至リタル者ハ父母ノ許諾ヲ受ケテ縁組ヲ承諾スルコトヲ得
父母ノ一方カ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ他ノ一方ノ許諾ヲ以テ足ル
父母共ニ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ其家ノ祖父母ノ許諾ヲ受ク可シ若シ祖父母ノ一方カ死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ他ノ一方ノ許諾ヲ以テ足ル
第百十七条　父母、祖父母悉ク死亡シ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ二十年未満ノ者ニ限リ前二条ニ定メタル年齢ノ区別ニ従ヒテ後見人之ヲ承諾シ又ハ其許諾ヲ与フ
第百十八条　私生子ノ養子縁組ニ付テハ母之ヲ承諾シ又ハ其許諾ヲ与フ
父母ノ知レサル子ニ付テハ前条ノ規定ヲ適用ス
第百十九条　前数条ノ場合ニ於テ継父又ハ継母アルトキハ第三十八条第三項ノ規定ヲ適用ス
第百二十条　育児院ニ在リテ父母ノ知レサル子ノ縁組ハ二十年未満ニ限リ第百十五条及ヒ第百十六条ニ定メタル年齢ノ区別ニ従ヒテ院長之ヲ承諾シ又ハ其許諾ヲ与フルコトヲ得
第百二十一条　婿養子縁組ニ付テハ婚姻ノ申出ヲ為ス時ニ於テ当事者ハ婿養子縁組ヲ為スノ意思ヲ身分取扱吏ニ申出ツ可シ
此縁組ニ必要ナル条件ノ欠欠スルトキハ身分取扱吏ハ婚姻ノ儀式ヲ差止ムルコトヲ得
此縁組ハ婚姻ノ儀式ヲ行フニ因リテ成ル
第百二十二条　遺言養子縁組ハ遺言書ヲ以テ之ヲ為ス
此遺言ハ養子ヲ為ス者ノ死亡ノ日ニ家督相続ヲ為ス可キ卑属親アルトキハ其効ヲ失フ
第百二十三条　遺言養子ヲ為ス者ノ死亡シタルトキハ第百十五条以下ノ規定ニ従ヒテ縁組ノ受諾ヲ為ス可シ
第百二十四条　縁組ノ儀式ヲ行ヒ又ハ縁組ノ受諾ヲ為シタルトキハ当事者ヨリ十日内ニ身分取扱吏ニ届出ツ可シ但此届出ハ代理人ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
第百二十五条　第五十条乃至第五十二条ノ規定ハ之ヲ縁組ニ適用ス但本章第一節ニ定メタル条件ニ違背セサルコトヲ要ス
第三節　養子縁組ノ証拠
第百二十六条　縁組ハ縁組証書ヲ以テ之ヲ証ス但第二百九十一条ノ規定ノ適用ヲ妨ケス
第五十四条ノ規定ハ縁組ニ之ヲ適用ス
第四節　養子縁組ノ不成立及ヒ無効
第百二十七条　縁組ハ人違、喪心又ハ強暴ニ因リテ承諾ノ全ク欠欠シタルトキハ不成立トス
第百二十八条　縁組ハ本章第一節ニ定メタル条件ノ一ニ違背シタルトキハ無効トス
此無効ハ第百三十条ノ場合ヲ除ク外当事者其他現実ノ利益ヲ有スル者及ヒ検事ヨリ何時ニテモ之ヲ請求スルコトヲ得
第百二十九条　縁組ハ左ノ場合ニ於テ無効トス
第一　縁組ノ申出ヲ為サス又ハ身分取扱吏ノ差止ヲ受ケタルニ拘ハラス儀式ヲ行ヒタルトキ
第二　証人二人ノ立会ナクシテ儀式ヲ行ヒタルトキ
第三　第四十八条ノ規定ニ違ヒテ儀式ヲ行ヒタルトキ
第四　縁組ノ申出ヲ受ケタル身分取扱吏ノ管轄違ナルトキ
此無効ハ儀式後一个年内ニ限リ前条ニ掲ケタル者ヨリ之ヲ請求スルコトヲ得
第百三十条　第百八条又ハ第百九条但書ノ規定ニ違ヒタル縁組ノ無効ハ被後見人又ハ養家ノ戸主ニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
被後見人カ成年ニ至リ又ハ戸主カ縁組ヲ知リタル後縁組ヲ認諾シ又ハ三个月ヲ過キタルトキハ其訴権ヲ失フ
第百三十一条　強暴ノ為メ承諾ニ瑕疵アル縁組ノ無効ハ強暴ヲ受ケタル者ニ限リ之ヲ請求スルコトヲ得但強暴ヲ免カレタル後縁組ヲ認諾シ又ハ三个月ヲ過キタルトキハ其訴権ヲ失フ
第百三十二条　第百十六条乃至第百二十条ニ定メタル許諾ナクシテ為シタル縁組ノ無効ハ許諾ヲ与フ可キ者又ハ許諾ヲ受ク可キ者ニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
第六十条第二項、第六十一条及ヒ第六十二条ノ規定ハ此無効訴権ニ之ヲ適用ス
第百三十三条　婿養子縁組ニ付テハ当事者ハ縁組又ハ婚姻ノ無効言渡ヲ原因トシテ婚姻又ハ縁組ノ無効ヲ請求スルコトヲ得但無効言渡ノ後三个月ヲ過キタルトキハ其訴権ヲ失フ
第五節　養子縁組ノ効力
第百三十四条　養子ハ縁組ノ日ヨリ養家ニ於テ嫡出子ノ権利及ヒ義務ヲ有ス
第百三十五条　養子ハ特別ニ職業ヲ営ムニ因リテ取得シタル利益及ヒ其齎帯シ又ハ相続、贈与若クハ遺贈ニ因リテ取得シタル財産ノ所有権ヲ有ス但未成年中ノ財産管理ハ第九章ノ規定ニ従ヒテ養父母ニ属ス
第六節　罰則
第百三十六条　縁組申出ノ時ニ必要ノ書類ヲ差出タサシメサル身分取扱吏ハ二円以上二十円以下ノ過料ニ処ス
縁組ノ不成立又ハ無効タル可キ法律上ノ原因アルコトヲ知リテ其儀式ヲ行フヲ差止メサル身分取扱吏ハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス
第八章　養子ノ離縁
第一節　協議ノ離縁
第百三十七条　養子ヲ為シタル者及ヒ養子ト為リタル者ハ協議ヲ以テ離縁ヲ為スコトヲ得
然レトモ十五年未満ニテ養子ト為リタル者ノ離縁ハ満十五年ニ至ラサル間ニ限リ養子ヲ為シタル者ト縁組承諾ノ権ヲ有スル者トノ協議ヲ以テ之ヲ為ス
第百三十八条　離縁ヲ為サントスル養子ハ縁組許諾ノ為メ定メタル規則ニ従ヒ其父母、祖父母又ハ後見人ノ許諾ヲ受クルコトヲ要ス
第百三十九条　当事者ハ離縁協議書ニ左ノ書類ヲ添ヘテ身分取扱吏ニ届出ツ可シ
第一　縁組証書
第二　離縁ノ為メニ必要ナル許諾書又ハ許諾ヲ得ル能ハサル事由ヲ証スル書類
第二節　特定原因ノ離縁
第百四十条　離縁ハ左ノ原因アルニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
第一　養子ヨリ養家ノ尊属親ニ対シ又ハ養家ノ尊属親ヨリ養子ニ対スル暴虐、脅迫、遺棄又ハ重大ノ侮辱
第二　重罪ニ因レル処刑
第三　窃盗又ハ詐欺取財ノ罪ニ因レル重禁錮一年以上ノ処刑
第四　浪費
第八十二条及ヒ第八十八条ノ規定ハ離縁ニ之ヲ適用ス
第百四十一条　離縁ヲ請求スル訴権ハ養子ヲ為シタル者及ヒ養子ト為リタル者ノミニ属ス
養子ヲ為シタル者又ハ養子ト為リタル者カ死亡シタルトキハ離縁ノ訴権ハ消滅ス但訴訟中ニ死亡シタル場合ニ於テハ現実ノ利益ヲ有スル者其訴訟ヲ続行スルコトヲ得
第百四十二条　養子ヲ為シタル者カ禁治産中ニ在ルトキハ後見人又ハ後見監督人ハ親族会ノ許可ヲ得テ離縁ヲ請求スルコトヲ得
養子ト為リタル者カ禁治産中ニ在ルトキハ実家ノ父母、祖父母又ハ戸主ヨリ離縁ヲ請求スルコトヲ得
第百四十三条　養子ノ満十五年ニ至ラサル間ハ縁組承諾ノ権ヲ有スル者ヨリ離縁ヲ請求スルコトヲ得
第百四十四条　養子カ養父母ト同居スルトキハ裁判所ハ離縁ノ訴訟中養子ヲシテ住家ヲ去ラシムルコトヲ得
此場合ニ於テハ養子ハ衣服其他ノ日用物品ヲ持去リ且必要アルトキハ養料ヲ請求スルコトヲ得
裁判所ハ養子ノ請求ニ因リテ其財産ヲ保存スル為メニ必要ナル処分ヲ命スルコトヲ得
第百四十五条　離縁ハ養子ノ家督相続後之ヲ為スコトヲ得ス
第三節　離縁ノ効力
第百四十六条　離縁ハ其届出又ハ裁判確定ノ後ニ非サレハ効力ヲ生セス
第百四十七条　離縁ト為リタル養子ハ自己ノ過失ノ有無ニ拘ハラス其所有財産ニ限リ之ヲ請求スルコトヲ得但養家ノ為メニ消費シタルモノハ此限ニ在ラス
第百四十八条　婿養子縁組ニ付テハ当事者ハ離縁ヲ原因トシテ離婚ヲ請求シ又離婚ヲ原因トシテ離縁ヲ請求スルコトヲ得但離婚又ハ離縁ヨリ三个月ヲ過キタルトキハ其訴権ヲ失フ
第九章　親権
第一節　子ノ身上ニ対スル権
第百四十九条　親権ハ父之ヲ行フ
父死亡シ又ハ親権ヲ行フ能ハサルトキハ母之ヲ行フ
父又ハ母其家ヲ去リタルトキハ親権ヲ行フコトヲ得ス
第百五十条　未成年ノ子ハ親権ヲ行フ父又ハ母ノ許可ヲ受クルニ非サレハ父母ノ住家又ハ其指定シタル住家ヲ去ルコトヲ得ス
子カ許可ヲ受ケスシテ其住家ヲ去リタルトキハ父又ハ母ハ区裁判所ニ申請シテ帰家セシムルコトヲ得
第百五十一条　父又ハ母ハ子ヲ懲戒スル権ヲ有ス但過度ノ懲戒ヲ加フルコトヲ得ス
第百五十二条　子ノ行状ニ付キ重大ナル不満意ノ事由アルトキハ父又ハ母ハ区裁判所ニ申請シテ其子ヲ感化場又ハ懲戒場ニ入ルルコトヲ得
入場ノ日数ハ六个月ヲ超過セサル期間内ニ於テ之ヲ定ム可シ但父又ハ母ハ裁判所ニ申請シテ更ニ其日数ヲ増減スルコトヲ得
右申請ニ付テハ総テ裁判上ノ書面及ヒ手続ヲ用ユルコトヲ得ス
裁判所ハ検事ノ意見ヲ聴キテ決定ヲ為ス可シ父、母及ヒ子ハ其決定ニ対シテ抗告ヲ為スコトヲ得
第二節　子ノ財産ノ管理
第百五十三条　父ハ未成年ナル子ノ総テノ行為ニ付テ之ヲ代表シ自己ノ財産ニ於ケル如ク其財産ヲ管理ス
第百五十四条　父ノ管理ニ於テハ第百九十四条ニ記載シタル行為ハ尚ホ之ヲ管理行為ト看做ス
第百五十五条　子ハ特別ニ職業ヲ営ムニ因リテ取得シタル利益及ヒ相続、贈与又ハ遺贈ニ因リテ取得シタル財産ノ所有権ヲ有ス
第百五十六条　父ハ管理ノ止ミタルトキハ子ニ其財産ヲ引渡ス可シ但収益ハ子ノ養育教育ノ費用及ヒ管理ノ費用ニ供シタルモノト看做ス
第百五十七条　本節ノ規定ハ母カ子ノ財産ヲ管理スル場合ニ之ヲ適用ス
然レトモ母ハ管理ヲ辞スルコトヲ得
第三節　嫡母、継父及ヒ継母ニ特別ナル規則
第百五十八条　嫡母、継父又ハ継母ノ親権ヲ行フ場合ニ於テハ相談人ヲ付スルコトヲ得
此相談人ハ配偶者証書若クハ遺言書ヲ以テ之ヲ定メ又ハ親族会其議決ヲ以テ之ヲ定ム
第百五十九条　相談人ハ後見監督人ト同一ノ権限及ヒ義務ヲ有ス
第百六十条　配偶者カ相談人ヲ定メサル場合ニ於テ親族会ヲ招集セサルトキ又ハ配偶者若クハ親族会ノ定メタル相談人ニ相談セサルトキハ区裁判所ハ検事ノ請求ニ因リ嫡母、継父又ハ継母ニ対シテ親権行使ノ禁止ヲ宣告スルコトヲ得
第十章　後見
総則
第百六十一条　後見ハ未成年者ノ父又ハ母ニシテ生存スル者ノ死亡ニ因リテ開始ス
父母共ニ生存シ又ハ其一方ノ生存スルモ親権ヲ行フ能ハサルトキ又ハ母カ子ノ財産ノ管理ヲ辞スルトキモ亦同シ
第百六十二条　一家ニ未成年者数人アルモ後見人ハ一人タル可シ
第百六十三条　後見人ハ親族会ノ免除ヲ得サル限リハ後見ヲ承諾ス可シ若シ後見人之ヲ承諾セス又ハ其任務ヲ怠ルトキハ利害関係人又ハ検事ノ請求ニ因リテ区裁判所ハ代務者ヲ命スルコトヲ得
後見人ハ代務者ノ管理ノ費用ヲ負担シ且其管理ニ付キ責ニ任ス
第一節　後見人
第百六十四条　親権ヲ行フ父又ハ母ハ其生前ニ於テ親族、姻族又ハ他人ノ中ヨリ後見人タル可キ者ヲ指定スル権ヲ有ス
第百六十五条　後見人ノ指定ハ遺言書若クハ証書ヲ以テ之ヲ為シ又ハ区裁判所ニ口述シテ之ヲ為ス可シ此口述ニ付テハ調書ヲ作ルコトヲ要ス
第百六十六条　父又ハ母カ後見人ヲ指定セサリシトキハ其家ノ祖父後見人ト為ル但未成年ノ家族ニ付テハ成年ノ戸主後見人ト為ル
第百六十七条　遺言後見人モ祖父若クハ戸主タル後見人モ有ラサルトキ又ハ此等ノ後見人カ免除セラレ除斥セラレ罷黜セラレ若クハ死亡シタルトキハ親族会ニ於テ後見人ヲ選定ス
第百六十八条　未成年者ヲ有スル人ノ死亡シタルトキ又ハ未成年者ヲ有スル父若クハ母ノ婚姻其他ノ事故ニ因リテ他家ニ入リタルトキハ区裁判所ハ未成年者ノ親族若クハ利害関係人ノ請求ニ因リ後見人ヲ設定スル為メ親族会ヲ招集ス可シ
第二節　後見監督人
第百六十九条　後見ニハ一人ノ後見監督人ヲ付スルコトヲ得
後見監督人ハ後見人ヲ定ムルト同一ノ手続ニ従ヒテ之ヲ指定シ又ハ親族会ニ於テ之ヲ選定ス
本章第四節及ヒ第五節ノ規定ハ後見監督人ニ之ヲ適用ス
第百七十条　後見監督人ヲ置カサル場合ニ於テ監督ヲ要スルコト有ルトキハ親族会ニ於テ会員一人ヲ選定シ臨時ニ後見監督人ノ任務ヲ行ハシム
第三節　親族会
第百七十一条　親族会ハ未成年者ノ最近親族三人以上ヲ以テ之ヲ設ク但親族三人ニ満タサルトキハ未成年者ニ縁故アル者ヲ以テ之ヲ補足ス
本家及ヒ分家ノ戸主ハ親族会ニ列スルコトヲ得
第百七十二条　親族会ハ親族、後見人、後見監督人、保佐人又ハ利害関係人ノ求メニ因リテ集会ス
第百七十三条　戸主成年ナルトキハ家族ノ為メ親族会ヲ設クルコトヲ要セス
第百七十四条　養子ノ親族会ニハ実家ノ親族モ其会員タルコトヲ得
第百七十五条　会員ハ自己ノ利害ニ関係アル会議ニ列スルコトヲ得ス
第百七十六条　親族会ヲ設クル能ハサルトキハ区裁判所其事ヲ行フ
第百七十七条　未成年者ノ親族会ノ外親族会ヲ組成スル必要アルトキモ亦本節ノ規定ヲ適用ス
第四節　後見ノ免除
第百七十八条　左ニ掲クル者ハ当然後見人タルコトヲ免除セラル
第一　現役ニ服スル軍人、軍属
第二　被後見人住居ノ市又ハ郡ノ外ニ於テ公務ニ従事スル人
第百七十九条　後見免除ノ求メハ親族会之ヲ決ス後見人解任ヲ求メタルトキモ亦同シ
第五節　後見人及ヒ親族会員ノ欠格、除斥及ヒ罷黜
第百八十条　左ニ掲クル者ハ後見人タルコトヲ得ス又親族会員タルコトヲ得ス
第一　未成年者
第二　民事上禁治産者及ヒ准禁治産者
第三　未成年者ノ身分又ハ財産ニ対シテ訴訟ヲ為ス人及ヒ其人ノ尊属親、卑属親、配偶者
第百八十一条　左ニ掲クル者ハ後見及ヒ親族会ヨリ除斥セラル可シ現ニ任務ニ従事スル者ハ之ヲ罷黜ス
第一　甚シキ不行跡ナル人
第二　後見管理ニ不能又ハ不正実ヲ顕ハセル後見人
第三　任務ヲ免黜セラレタル裁判上ノ保佐人
第四　公権剥奪、公権停止及ヒ刑事上禁治産ヲ受ケタル人
第五　復権ヲ得サル破産者及ヒ家資分散者
第百八十二条　後見人及ヒ親族会員ノ除斥又ハ罷黜ハ親族会ニ於テ之ヲ為ス
第六節　後見人ノ管理
第百八十三条　後見人後見ノ開始ヲ知ルトキハ直チニ任務ニ就クコトヲ要ス
親族会ニ於テ後見人ヲ選定シ其後見人在席スルトキハ直チニ任務ニ就キ若シ在席セサルトキハ通知ヲ得タル日ヨリ任務ニ就クコトヲ要ス
第百八十四条　後見人ハ未成年者ヲ監護シ其教育ヲ担任ス
尊属後見人及ヒ戸主後見人ヲ除ク外後見人若シ未成年者ノ在来ノ住居又ハ教育方法ヲ変更セントスルトキハ親族会ニ協議ス可シ
第百八十五条　後見人ハ父母ノ如ク未成年者ヲ懲戒スルコトヲ得
未成年者ノ行状ニ付キ重大ナル不満意ノ事由アルトキハ後見人ハ親族会ノ許可ヲ得タル上第百五十二条ノ規定ニ従ヒテ未成年者ニ対スル処分ヲ為スコトヲ得
後見人カ其権ヲ濫用シ又ハ其義務ヲ怠ルトキハ未成年者及ヒ其親族ハ親族会ニ之ヲ申告スルコトヲ得
第百八十六条　後見人ハ未成年者ノ総テノ行為ニ付テ之ヲ代表シ善良ナル管理者ノ如ク其財産ヲ管理シ管理ノ失当又ハ過失ヨリ生スル損害賠償ノ責ニ任ス
第百八十七条　後見人ハ当然其任務ニ就ク可キ日ヨリ十日内ニ後見監督人ノ立会ヲ得テ未成年者ノ財産ヲ調査ス可シ
財産目録ノ調製ハ二个月内ニ之ヲ終了スルコトヲ要ス但親族会ハ状況ニ従ヒテ延期ヲ許スコトヲ得
第百八十八条　後見人カ未成年者ノ債務者又ハ債権者ナルトキハ目録ノ調製前其旨ヲ公証人又ハ親族会ニ明言スルコトヲ要ス
後見人カ債権ノ存立ヲ知リテ之ヲ明言セサリシトキハ其債権ヲ喪失ス又債務ノ存立ヲ知リテ之ヲ明言セサリシトキハ区裁判所ハ其後見人ヲ罷黜スルコトヲ得但罷黜ノ場合ニ於テハ三十円以下ノ過料ニ処スルコトヲ得
第百八十九条　目録調製ヲ終了セサル間ハ後見人ハ要急闕ク可カラサル管理行為ノミヲ為スコトヲ得
第百九十条　後見人ハ任務執行ノ初ニ於テ親族会ニ協議シ未成年者ノ養育ノ需用、教育ノ程度ト其資産トニ従ヒ毎年費ス可キ金額及ヒ財産管理ニ係ル費用ヲ定ム
親族会ハ相当ノ給料ヲ与フル一人又ハ数人ノ管理者ヲ後見人ノ自己ノ責任ヲ以テ使用スルヲ許スコトヲ得
第百九十一条　後見人ハ未成年者ノ元本及ヒ収益ノ剰額ヲ毎次ニ官ノ貯金預所又ハ確実ナル銀行ニ預ク可シ其預ケサリシ金額ニ付テハ法律上ノ利息ヲ弁済ス可シ
後見人カ未成年者ノ財産ノ利用方法ヲ変更セントスルトキハ親族会ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
第百九十二条　尊属後見人及ヒ戸主後見人ヲ除ク外後見人ハ一个年内ノ管理ノ状況ヲ親族会ニ報告ス可シ
第百九十三条　後見人ハ未成年者ノ財産ニ付テハ管理ノ権ヲ有スルニ止マリ此権外ノ行為ハ法律ニ定メタル条件ニ依ルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
第百九十四条　左ニ掲クル行為ニ関シテハ後見人ハ親族会ノ許可ヲ得ルコトヲ要ス
第一　元本ヲ利用シ又ハ借財ヲ為スコト
第二　不動産及ヒ重要ナル動産ヲ譲渡シ之ニ物権ヲ設定シ又ハ之ヲ取得スルコト
第三　動産、不動産ニ係ル訴訟又ハ和解、仲裁ニ関スルコト
第四　相続、遺贈若クハ贈与ヲ受諾シ又ハ抛棄スルコト
第五　新築、改築、増築又ハ大修繕ヲ為スコト
第六　財産編第百十九条ニ定メタル期間ヲ超ユル賃貸ヲ為スコト
第百九十五条　後見人ハ未成年者ノ財産ヲ譲受クルコトヲ得ス又未成年者ニ対スル権利ヲ譲受クルコトヲ得ス
第百九十六条　後見人ハ親族会ノ許可ヲ得ルニ非サレハ未成年者ノ不動産ヲ賃借スルコトヲ得ス
第百九十七条　後見人ノ其権内ニ於テ為シタル行為ハ未成年者ヲ羈束ス
第七節　後見監督人ノ任務
第百九十八条　後見監督人ハ後見人ノ管理ヲ監視スルコトニ任ス
後見監督人ハ後見人ヲ欠クトキト雖モ後見ノ任務ヲ行フコトヲ得ス此場合ニ於テハ直チニ後任ノ後見人ヲ定ムル手続ヲ為スコトヲ要ス
第百九十九条　未成年者ト後見人トノ間ニ利益相反スルトキハ後見監督人ハ未成年者ヲ代表ス
第二百条　必要ナル場合ニ於テハ後見監督人ハ保存行為ヲ為スコトヲ得
第二百一条　法律上後見監督人ノ立会フ可キ行為ニシテ其立会ナクシテ為シタルモノハ無効トス
第八節　後見人ノ終了
第二百二条　後見ノ任務ハ後見人ノ一身ニ止マリ其相続人ニ移転セス然レトモ相続人カ成年者ナルトキハ後任ノ後見人ノ任務ニ就クマテ管理ヲ継続ス可シ
第二百三条　未成年者カ成年ニ達シ又ハ自治産ニ至ルニ因リテ後見ノ止ムトキハ後見人ハ其計算ヲ終了スルマテ管理ヲ継続ス
第二百四条　仮ニ管理ヲ為ス者ハ必要ナル行為ノミヲ為スコトヲ得
第九節　後見ノ計算
第二百五条　後見人ハ管理ノ終了スルトキハ其計算ヲ為ス可シ
第二百六条　後見ノ決算ハ後見監督人ノ立会ニテ未成年者ノ成年ニ達シタル者又ハ其自治産ニ至リタル者ニ対シテ之ヲ為ス
後見カ後見人ノ身上ニ係リテ終了スルトキハ決算ハ後任ノ後見人ニ対シテ之ヲ為シ親族会ノ許可ニ付ス但第百八条ノ場合ニ於テハ決算ハ後見監督人ニ対シテ之ヲ為ス
後見カ未成年者ノ死亡ニ因リテ終了スルトキハ決算ハ其相続人ニ対シテ之ヲ為ス
後見ノ決算ニ係ル費用ハ未成年者ノ負担ニ属ス
第二百七条　後見ノ決算ハ管理終了ノ日ヨリ三个月内ニ之ヲ為ス可シ但親族会ハ当事者ノ求メニ因リテ延期ヲ許スコトヲ得
第二百八条　後見人ト未成年者ノ成年ニ達シタル者トノ合意ニシテ後見ノ決算前ニ為シタルモノハ総テ無効トス
第二百九条　後見ノ費用ハ予算ノ定額ヲ超ユルト雖モ後見人其有益タルコトヲ証スルトキハ未成年者ノ負担ニ属ス
第二百十条　後見人ヨリ未成年者ニ返済ス可キ金額ハ決算完結ノ日ヨリ当然利息ヲ生ス
未成年者ヨリ後見人ニ返済ス可キ金額ハ決算完結ノ後後見人ノ催告ニ因リテ利息ヲ生ス
第二百十一条　後見ノ計算ニ係ル未成年者ノ訴権ハ五个年ノ時効ニ因リテ消滅ス後見人其他仮ニ後見管理ヲ為シタル人ノ未成年者ニ対スル訴権モ亦同シ
未成年者ト後見監督人又ハ親族会員トノ間ノ後見ニ係ル訴権ニ付テモ亦前項ノ規定ヲ適用ス
此期間ハ未成年者ノ成年ニ達シ又ハ死亡シタル日ヨリ起算シ第二百八条ノ場合ニ於テ後見ノ計算ニ係ル訴権ニ付テハ合意無効ノ裁判言渡ノ日ヨリ起算ス
第二百十二条　後見監督人及ヒ仮ニ後見管理ヲ為シタル人ハ代理契約ノ原則ニ従ヒテ過失ノ責ニ任ス
第十一章　自治産
第二百十三条　未成年者ハ婚姻ヲ為スニ因リテ当然自治産ノ権ヲ得
第二百十四条　親権ヲ行フ父又ハ母ハ満十五年ニ達シタル未成年ノ子ニ自治産ヲ許スコトヲ得
此自治産ハ身分取扱吏ニ届出ツ可シ
第二百十五条　後見ニ服スル未成年者ノ満十七年ニ達シタルトキハ親族会ハ其未成年者ニ自治産ヲ許スコトヲ得
此自治産ハ後見人ヨリ身分取扱吏ニ届出ツ可シ
第二百十六条　自治産ノ未成年者ハ之ヲ保佐ニ付ス
親権ヲ行ヒタル父又ハ母ハ当然保佐人ト為ル
親権ヲ行フ父又ハ母ハ其生前ニ第百六十五条ノ規定ニ従ヒテ保佐人ヲ指定スルコトヲ得若シ之ヲ指定セサリシトキハ其家ノ祖父保佐人ト為リ家族ニ付テハ成年ノ戸主保佐人ト為ル
夫ハ当然未成年ノ婦ノ保佐人ト為ル
此他ノ場合ニ於テハ親族会ニ於テ保佐人ヲ選定ス
第二百十七条　後見人ニ関シテ定メタル免除、欠格、除斥及ヒ罷黜ノ規則ハ之ヲ保佐人ニ適用ス
第二百十八条　自治産ノ未成年者ハ保佐人ノ立会アルニ非サレハ元本ヲ領収スルコトヲ得ス
第二百十九条　第百九十四条ニ掲ケタル行為ニ付テハ自治産ノ未成年者ハ保佐人ノ立会アルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
第二百二十条　父母ヲ除ク外保佐人ハ後見人ト同シク過失ノ責ニ任ス
第二百二十一条　自治産ヲ許サレタル未成年者カ不行跡又ハ財産管理ノ失当ニ因リテ自治産者タルニ適セサルトキハ親族会ハ其自治産ヲ廃止スルコトヲ得
親権ヲ行ヒタル父又ハ母ハ自治産ヲ廃止スルコトヲ得若シ此等ノ者アラサルトキハ親族会員又ハ保佐人ハ此廃止ヲ親族会ニ求ムルコトヲ得
未成年者ハ自治産廃止ノ日ヨリ親権又ハ後見ニ服シ成年ニ達スルマテ復タ自治産者ト為ルコトヲ得ス
第十二章　禁治産
第一節　民事上禁治産
第二百二十二条　心神喪失ノ常況ニ在ル者ハ時時本心ニ復スルコト有ルモ其治産ヲ禁スルコトヲ得
第二百二十三条　禁治産ハ配偶者、四親等内ノ親族、戸主及ヒ検事ヨリ之ヲ区裁判所ニ請求スルコトヲ得
禁治産ヲ請求スル権利ヲ有スル一人ノ申立ニ因リテ言渡シタル裁判ハ総テノ人ニ対シテ既判力ヲ有ス
第二百二十四条　禁治産者ハ之ヲ後見ニ付ス
配偶者ハ当然相互ニ後見人ト為ル若シ配偶者アラサルトキハ其家ノ父後見人ト為リ父アラサルトキハ親権ヲ行フコトヲ得ヘキ母後見人ト為ル
父又ハ母ハ第百六十五条ニ定メタル方式ニ従ヒテ後見人ヲ指定スルコトヲ得若シ指定セサリシトキハ第百六十六条ノ規定ヲ適用ス
法律上ノ後見人モ遺言後見人モ有ラス又ハ此等ノ後見人カ免除セラレ除斥セラレ若クハ罷黜セラレタルトキハ第十章ニ定メタル方式ニ従ヒ親族会ニ於テ後見人ヲ選定ス
第二百二十五条　配偶者、尊属親、卑属親及ヒ戸主ヲ除ク外何人タリトモ十个年以上禁治産者ノ後見ヲ担任スルコトヲ要セス
第二百二十六条　未成年者ノ後見ニ係ル規定ハ禁治産者ノ後見ニ之ヲ適用ス
第二百二十七条　疾病ノ性質ト資産ノ状況トニ従ヒテ禁治産者ヲ自宅ニ療養セシメ又ハ之ヲ病院ニ入ラシムルハ親族会ノ決議ニ依ル但瘋癲病院ニ入ラシメ又ハ自宅ニ監置スル手続ハ特別法ヲ以テ之ヲ定ム
第二百二十八条　法律上ノ後見人ハ第百九十二条ニ定メタル管理状況ノ報告ヲ為スコトヲ要セス
第二百二十九条　禁治産者ノ財産ヲ以テ其子孫ノ教育、婚姻又ハ営業ノ資ニ供セントスルトキハ親族会ノ許可ヲ得ルコトヲ要ス
第二百三十条　禁治産者ハ禁治産ノ裁判言渡ノ日ヨリ無能力者トス
裁判言渡後ニ為シタル禁治産者ノ行為ハ之ヲ銷除スルコトヲ得
禁治産ノ裁判言渡前ニ為シタル禁治産者ノ行為ニ対シテモ其行為ノ当時ニ於テ喪心ノ明確ナルトキハ銷除訴権ヲ行フコトヲ得
第二百三十一条　禁治産ノ原因止ミタルトキハ本人、配偶者、親族、姻族、戸主、後見人又ハ検事ノ請求ニ因リテ其禁ヲ解ク可シ
禁治産者ハ解禁ノ裁判言渡後ニ非サレハ其権利ヲ回復スルコトヲ得ス
第二節　准禁治産
第二百三十二条　心神耗弱者、聾唖者、盲者及ヒ浪費者ハ准禁治産者ト為シテ之ヲ保佐ニ付スルコトヲ得
准禁治産ノ言渡ハ配偶者、三親等内ノ親族及ヒ戸主ノ請求ニ因リ区裁判所之ヲ為ス
保佐人ニ付テハ第二百二十四条及ヒ第二百二十五条ノ規定ヲ適用ス
第二百三十三条　第二百十七条乃至第二百二十条ノ規定ハ之ヲ准禁治産ニ適用ス
裁判所ハ状況ニ従ヒ保佐人ノ立会アルニ非サレハ管理行為ヲモ為スコトヲ得サル旨ヲ言渡スコトヲ得
第二百三十四条　准禁治産者カ保佐人ノ立会ナクシテ為シタル行為ニ付テハ第二百三十条ノ規定ヲ適用ス
第二百三十五条　准禁治産ノ原因止ミタルトキハ本人、配偶者、親族、姻族、戸主、保佐人又ハ検事ノ請求ニ因リテ其禁ヲ解ク可シ
第三節　刑事上禁治産
第二百三十六条　刑事上禁治産ヲ受ケタル者ハ其財産ヲ管理スルコトヲ得ス又遺言ヲ以テスル外ハ其財産ヲ処分スルコトヲ得ス
第二百三十七条　刑事上禁治産者ニハ後見人ヲ付シテ其財産ヲ管理セシム此後見人ノ指定及ヒ管理ノ方法ニ付テハ民事上禁治産者ノ後見ニ係ル規定ヲ適用ス
第二百二十九条ノ場合ニ於テハ禁治産者ノ同意ヲ得ルヲ以テ足ル
第四節　瘋癲者ノ財産ノ仮管理
第二百三十八条　禁治産ヲ受ケサル瘋癲者アルトキハ配偶者、親族、戸主及ヒ検事ハ区裁判所ノ許可ヲ得テ特別法ニ定ムル手続ニ従ヒ之ヲ瘋癲病院ニ入レ又ハ自宅ニ監置スルコトヲ得
此場合ニ於テハ裁判所ハ直チニ仮管理人ヲ指定ス
第二百三十九条　瘋癲病院ニ入リ又ハ自宅ニ監置セラレタル者ハ入院中又ハ監置中其財産ヲ管理シ及ヒ処分スルコトヲ得ス
第二百四十条　仮管理人ハ瘋癲者ノ総テノ行為ニ付テ之ヲ代表シ禁治産者ノ後見人ト同視セラル但必要ナル行為ニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
第二百四十一条　瘋癲者ノ入院中又ハ監置中ニ行為ヲ為シタル証拠アルトキハ其行為ヲ銷除スルコトヲ得但相手方カ瘋癲者ノ本心ニテ行為ヲ為シタルコトヲ証スルトキハ此限ニ在ラス
第二百四十二条　瘋癲者ノ無能力ハ区裁判所カ仮管理ヲ解クニ因リテ止ム
第十三章　戸主及ヒ家族
第二百四十三条　戸主トハ一家ノ長ヲ謂ヒ家族トハ戸主ノ配偶者及ヒ其家ニ在ル親族、姻族ヲ謂フ
戸主及ヒ家族ハ其家ノ氏ヲ称ス
第二百四十四条　戸主ハ家族ニ対シテ養育及ヒ普通教育ノ費用ヲ負担ス但家族カ自ラ其費用ヲ弁スルコトヲ得ルトキ又ハ戸主ノ許諾ヲ受ケスシテ他所ニ在ルトキハ此限ニ在ラス
第二百四十五条　家族ハ特別ニ職業ヲ営ムニ因リテ取得シタル利益及ヒ其齎帯シ又ハ遺産相続、贈与若クハ遺贈ニ因リテ取得シタル財産ノ所有権ヲ有ス
然レトモ家族カ其家ノ為メ消費シタル財産ニ付テハ戸主ニ対シテ償還ヲ求ムルコトヲ得ス
第二百四十六条　家族ハ婚姻又ハ養子縁組ヲ為サントスルトキハ年齢ニ拘ハラス戸主ノ許諾ヲ受ク可シ
第二百四十七条　他家ニ入リテ夫、婦又ハ養子ト為リタル者ハ婚姻ノ無効、養子縁組ノ無効、離婚又ハ離縁ノ場合ニ於テハ実家ニ復帰ス
然レトモ此者カ婚姻又ハ養子縁組ニ付キ実家戸主ノ許諾ヲ受ケサリシトキハ戸主ハ復帰ノ事由ヲ知リタル日ヨリ一个月内ニ身分取扱吏ニ申立テ復帰ヲ拒ムコトヲ得
第二百四十八条　他家ニ入リテ夫又ハ婦ト為リタル者ハ其配偶者ノ死亡シタルトキト雖モ婚家ヨリ更ニ他ノ家ニ入ルコトヲ得ス
然レトモ婚家及ヒ実家ノ戸主ノ許諾ヲ受ケテ実家ニ復帰スルコトヲ得
第二百四十九条　実家ニ復帰ス可キ者又ハ復帰セントスル者カ復帰スル能ハサルトキハ一家ヲ新立ス
第二百五十条　推定家督相続人ニ非サル家族タル男子カ戸主ノ許諾ヲ受ケスシテ婚姻ヲ為シタルトキハ一家ヲ新立ス
第二百五十一条　家督相続ニ因リテ戸主ト為リタル者ハ其家ヲ廃スルコトヲ得ス但分家ヨリ本家ヲ承継シ其他正当ノ事由アルトキハ区裁判所ノ許可ヲ得テ廃家スルコトヲ得
第二百五十二条　戸主カ国民分限ヲ喪失シタルトキハ廃家シタルモノトシ推定家督相続人ハ一家ヲ新立シ前戸主ノ家族ハ新戸主ノ家ニ入ル
第二百五十三条　戸主カ婚姻其他ノ原因ニ由リテ適法ニ廃家シ他家ニ入リタルトキハ其家族モ亦従テ其家ニ入ル
第二百五十四条　卑属親ヲ有スル者カ婚姻若クハ養子縁組ノ無効又ハ離婚若クハ離縁ニ因リテ婚家又ハ縁家ヲ去ルトキハ卑属親ハ仍ホ其家ニ属ス
第二百五十五条　父母ノ知レサル子ハ一家ヲ新立ス
第二百五十六条　他家ニ入リテ夫、婦又ハ養子ト為リタル者ハ配偶者又ハ養子ヲ為シタル者ト協議ノ上両家ノ戸主ノ許諾ヲ受ケテ実家ニ在ル卑属親ヲ自家ニ引取ルコトヲ得
婚姻若クハ養子縁組ノ無効又ハ離婚若クハ離縁ニ因リテ婚家又ハ縁家ヲ去リタル者ハ配偶者又ハ養子ヲ為セシ者ト協議ノ上両家ノ戸主ノ許諾ヲ受ケテ其家ニ在ル卑属親ヲ自家ニ引取ルコトヲ得
第二百五十七条　戸主カ家族ニ対シテ婚姻其他ノ事件ニ付キ許諾ヲ与フ可キ場合ニ於テ未成年ナルトキ又ハ其意思ヲ表スル能ハサルトキハ戸主ニ対シテ親権ヲ行フ者又ハ後見人之ヲ代表ス
第二百五十八条　入夫婚姻ノ場合ニ於テハ婚姻中入夫ハ戸主ヲ代表シテ其権ヲ行フ
第二百五十九条　戸主失踪ノ宣言アリタル後其家督相続ノ占有ヲ得タル者ハ其占有中戸主ノ権ヲ行フ
第二百六十条　単身戸主失踪ノ宣言アリテ其亡失若クハ最後音信ノ日ヨリ三十个年ニ至ルモ家督相続ノ占有者ナキトキハ絶家ス
第二百六十一条　戸主死亡シテ家督相続人ナキトキハ絶家シ其家族ハ一家ヲ新立ス
第十四章　住所
第二百六十二条　民法上ノ住所ハ本籍地ニ在ルモノトス
第二百六十三条　戸主ハ本籍ヲ移ス地ノ身分取扱吏ニ申述シテ住所ヲ変更スルコトヲ得
未成年者又ハ民事上禁治産者タル戸主ノ住所ハ親族会ノ許可ヲ得テ後見人之ヲ変更スルコトヲ得
第二百六十四条　家族カ独立シテ一家ヲ成ストキハ本籍ヲ定ムル地ノ身分取扱吏ニ其意思ヲ申述シテ住所ヲ設定スルコトヲ得
一家新立ノ未成年者ニ付テハ後見人住所ヲ設定ス可シ
第二百六十五条　外国人始メテ日本ニ住所ヲ定ムルトキハ其意思並ニ本国、氏名及ヒ出生年月日ヲ其地ノ身分取扱吏ニ申述シ家族アルトキハ其氏名及ヒ出生年月日ヲモ申述ス可シ
第二百六十六条　本籍地カ生計ノ主要タル地ト異ナルトキハ主要地ヲ以テ住所ト為ス
第二百六十七条　左ノ場合ニ於テハ居所ヲ以テ住所ニ代用ス
第一　住所ノ知レサルトキ
第二　日本ニ住所ヲ定メサル外国人ニ関スルトキ
第二百六十八条　何人ト雖モ或ル行為又ハ事務ノ為メニ仮住所ヲ選定スルコトヲ得但此選定ハ書面ヲ以テスルコトヲ要ス
第十五章　失踪
第一節　失踪ノ推定
第二百六十九条　住所及ヒ居所ヨリ亡失シ又ハ音信絶エテ生死分明ナラサル人ハ之ヲ失踪者ト推定ス
此推定ノ裁判ハ本人ノ住所ノ区裁判所之ヲ為ス
第二百七十条　失踪ノ推定ヲ受ケタル者カ総理代理人ヲ定置キタルトキハ其代理人ハ失踪ノ推定中本人ノ財産ヲ管理ス但必要アルトキハ裁判所ハ現実ノ利益ヲ有スル関係人、推定相続人又ハ検事ノ請求ニ因リテ代理人ノ解任ヲ言渡シ又ハ其後任ヲ指定スルコトヲ得
第二百七十一条　失踪ノ推定ヲ受ケタル者カ総理代理人ヲ定置カサリシトキハ裁判所ハ前条ニ掲ケタル者ノ請求ニ因リテ管理人ヲ指定ス
此管理人ニハ成ル可ク推定相続人ヲ指定スルコトヲ要ス
第二百七十二条　代理人又ハ管理人ハ管理行為ヲ為ス権限ノミヲ有ス他ノ行為ニ付テハ必要ノ場合ニ限リ裁判所ノ許可ヲ得テ之ヲ為スコトヲ得
代理人又ハ管理人ハ本人ノ利益ニ関係アル目録調製、計算及ヒ清算ニ付テ本人ヲ代表ス
第二百七十三条　管理人ハ失踪者ノ動産及ヒ証書ノ目録ヲ調製ス可シ又不動産ノ形状ヲ確定セシムル為メ鑑定人ノ選定ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得鑑定人ノ報告書ハ裁判所ノ認可ニ付スルコトヲ要ス此等ノ手続ノ費用ハ本人ノ財産ヲ以テ之ヲ支弁ス
関係人、推定相続人又ハ検事ノ請求アルトキハ本条ノ規定ヲ代理人ニ適用スルコトヲ得
第二百七十四条　代理人又ハ管理人ハ推定相続人ヲ除ク外其請求ニ因リテ裁判所ノ定メタル給料ヲ受ク裁判所ハ管理及ヒ財産返還ノ担保トシテ保証人其他相当ノ担保ヲ立テシムルコトヲ得
第二百七十五条　代理人又ハ管理人ハ失踪者ノ子孫ノ教育、婚姻又ハ営業ノ為メ資財ヲ与フルニ付テハ区裁判所ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
第二節　失踪ノ宣言
第二百七十六条　失踪者カ代理人ヲ定置カサリシトキハ五个年又代理人ヲ定置キタルトキハ任期ノ長短ヲ問ハス七个年ニ至ルモ其生死ノ音信ヲ得サルニ於テハ失踪者ノ死亡ニ因リテ発生スル権利ヲ其財産上ニ有スル者ハ失踪者ノ住所ノ区裁判所ニ失踪ノ宣言ヲ請求スルコトヲ得
第二百七十七条　右請求ノ許ス可キモノナルトキハ裁判所ハ失踪者ノ住所及ヒ其最後ノ居所ノ地ニ於テ証人訊問ヲ為ス可キコトヲ命ス可シ此証人訊問ニ付テハ民事訴訟法ニ定メタル忌避ノ規則ヲ適用セス
第二百七十八条　証人訊問ヲ命スル決定ハ裁判所ノ掲示板ニ掲示シ且官報又ハ公報ニ掲載シテ之ヲ公示ス可シ
第二百七十九条　失踪宣言ノ裁判ハ証人訊問ヲ命シタル決定ヨリ一个年ノ後ニ非サレハ之ヲ宣告スルコトヲ得ス
此裁判ハ前条ノ手続ニ従ヒテ之ヲ公示ス可シ
第三節　失踪宣言ノ効力
第二百八十条　失踪宣言ノ裁判アリタルトキハ失踪者ノ遺言書ハ関係人、推定相続人又ハ検事ノ請求ニ因リテ之ヲ開封ス可シ
失踪者ノ亡失又ハ最後音信ノ日ニ於ケル推定相続人其他失踪者ノ死亡ニ因リテ発生スル権利ヲ其財産上ニ有スル者ハ直チニ其財産ヲ占有スルコトヲ得
第二百八十一条　失踪者ニ属スル財産ノ占有ニ付テハ総テ相続ニ関スル規定ヲ適用ス
此占有ヲ得タル者ハ第三者ニ対シテハ財産ノ所有者トス
然レトモ占有者ハ推定相続人ヲ除ク外財産返還ノ担保トシテ裁判所カ相当ト認ムル保証人其他ノ担保ヲ立ツ可シ其保証人ノ義務又ハ担保ハ十五个年ノ後止ム
第二百八十二条　失踪者ノ現出シ又ハ音信アリタルトキハ失踪宣言ノ効力ハ即時ニ止ム
失踪者ハ其財産ヲ現状ノ儘ニテ取回シ又占有者ノ処分ニ因リテ不当ニ利得シタルモノヲ取戻スコトヲ得
第二百八十三条　果実ニ付テハ失踪者カ其亡失又ハ最後音信ノ日ヨリ十个年内ニ現出スルトキハ其五分ノ一ヲ取戻スコトヲ得十个年後ハ其全部ヲ失フ
第二百八十四条　失踪者ノ相続順位ニ在ル者ハ他ノ者カ財産占有ヲ得タル日ヨリ三十个年間其財産ノ返還ヲ請求スルコトヲ得
此場合ニ於テモ果実ハ前条ノ規定ニ従ヒテ之ヲ取戻スコトヲ得
第四節　失踪ノ推定及ヒ宣言ニ関スル通則
第二百八十五条　失踪シテ生存ノ確実ナラサル人ニ帰ス可キ権利ヲ請求スル者ハ其人カ権利ノ発生セシ日ニ生存シタルヲ証スルコトヲ要ス此挙証ヲ為ササル間ハ其請求ヲ受理セス
第二百八十六条　失踪シテ生存ノ確実ナラサル人ニ帰ス可キ相続ハ次順位ノ者ニ属ス
失踪者ニ帰ス可キ財産ヲ相続スル者ハ財産目録ヲ調製ス可シ
第二百八十七条　前二条ノ規定ハ失踪者又ハ其相続人及ヒ承継人ニ属スル相続ノ請求其他ノ権利ヲ行フヲ妨クルコト無シ此等ノ権利ハ普通ノ時効ニ因ルニ非サレハ消滅セス
第五節　不在者ニ関スル規則
第二百八十八条　生存ノ確実ナル人カ住所若クハ居所ヲ去リテ其財産ヲ管理スル者アラサルトキ又ハ裁判所カ未タ失踪ヲ推定セサルモ本人ノ不在ノ為メ其財産ノ放置セラルルトキ又ハ失踪ノ推定中若クハ宣言後ニ失踪者ノ生存ノ確実ト為リタルトキハ区裁判所ハ利害関係人又ハ検事ノ請求ニ因リテ必要ノ保存処分ヲ命スルコトヲ得
第十六章　身分ニ関スル証書
第二百八十九条　出生、婚姻、養子縁組、死亡其他各人ノ身分ニ関スル事件ハ身分取扱吏ノ主管スル帳簿ニ之ヲ記載ス可シ
第二百九十条　帳簿ニ記載シタル証書ハ公正証書ノ証拠力ヲ有ス但違法ノ記載ハ効力ナシ
合式ノ謄本ハ証書ト同一ノ効力ヲ有ス
第二百九十一条　帳簿ノ設備ナク若クハ中絶シタルトキ又ハ其全部若クハ一分ノ毀損シ亡滅シタルトキ又ハ其記載上甚シキ違式、錯誤若クハ脱漏アリテ信用ヲ置ク可カラサルトキ又ハ身分取扱吏ノ詐欺若クハ過失ニ因リテ証書ヲ作ラサリシトキハ証人又ハ私ノ書類ヲ以テ先ツ其事実ヲ証シ且身分上ノ事件ヲ証スルコトヲ得
第二百九十二条　証書ノ訂正ハ裁判ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
第二百九十三条　帳簿ノ調製、証書ノ記載、届出ノ手続其他ノ事項ハ特別法ヲ以テ之ヲ規定ス