朕行政裁判法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十三年六月二十八日
內閣總理大臣 伯爵 山縣有朋
內務大臣 伯爵 西鄕從道
司法大臣 伯爵 山田顯義
大藏大臣 伯爵 松方正義
陸軍大臣 伯爵 大山巖
遞信大臣 伯爵 後藤象二郞
外務大臣 子爵 靑木周藏
海軍大臣 子爵 樺山資紀
文部大臣 芳川顯正
農商務大臣 陸奧宗光
法律第四十八號
行政裁判法
第一章 行政裁判所組織
第一條 行政裁判所ハ之ヲ東京ニ置ク
第二條 行政裁判所ニ長官一人及評定官ヲ置ク評定官ノ員數ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
行政裁判所ニ書記ヲ置ク其員數及職務ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條 長官ハ勅任トス評定官ハ勅任又ハ奏任トス
長官及評定官ハ三十歲以上ニシテ五年以上高等行政官ノ職ヲ奉シタル者若クハ裁判官ノ職ヲ奉シタル者ヨリ內閣總理大臣ノ上奏ニ依リ任命セラルヽモノトス
書記ハ長官之ヲ判任ス
第四條 長官及評定官ハ在職中左ノ諸件ヲ爲スコトヲ得ス
一 公然政事ニ關係スルコト
二 政黨ノ黨員又ハ政社ノ社員トナリ又ハ衆議院議員府縣郡市町村會ノ議員若クハ參事會員タルコト
三 兼官ノ場合ヲ除ク外俸給アル又ハ金錢ノ利益ヲ目的トスル公務ニ就クコト
四 商業ヲ營ミ其他行政上ノ命令ヲ以テ禁シタル業務ヲ營ムコト
第五條 第六條ノ場合ヲ除ク外長官及評定官ハ刑法ノ宣吿又ハ懲戒ノ處分ニ由ルニ非サレハ其意ニ反シテ退官轉官又ハ非職ヲ命セラルヽコトナシ
行政裁判所ノ長官又ハ評定官ヲ兼任スル者ハ其本官在職中前項ヲ適用ス
懲戒處分ノ法ハ別ニ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六條 長官及評定官身體若クハ精神ノ衰弱ニ因リ職務ヲ執ルコト能ハサルトキハ內閣總理大臣ハ行政裁判所ノ總會ノ決議ニ依リ其退職ヲ上奏スルコトヲ得
第七條 長官ハ行政裁判所ノ事務ヲ總理ス
長官故障アルトキハ評定官中官等最モ高キ者之ヲ代理ス官等同シキトキハ任官ノ順序ニ依リ其先ナル者之ヲ代理ス
第八條 長官ハ自ラ裁判長トナリ若クハ評定官ニ裁判長ヲ命スルコトヲ得
部ヲ分ツノ必要アルトキハ其組織及事務分配ハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第九條 行政裁判所ノ裁判ハ裁判長及評定官ヲ併セ五人以上ノ列席合議ヲ要ス但列席ノ人員ハ奇數ニ限ル若シ缺席ノ爲偶數トナリタルトキハ官等最モ低キ評定官ヲ議決ヨリ除ク官等同シキトキハ任官ノ順序ニ依リ其後ナル者ヲ除ク
議決ハ過半數ニ依ル
第十條 長官又ハ評定官ハ左ノ場合ニ於テ評議及議決ニ加ハルコトヲ得ス
一 裁判スヘキ事件自己又ハ父母兄弟姊妹若クハ妻子ノ身上ニ關スルトキ
二 裁判スヘキ事件一私人ノ資格ヲ以テ意見ヲ述ヘタルモノ又ハ理事者代理者若クハ職務外ノ地位ニ於テ取扱ヒタルモノニ關スルトキ
三 裁判スヘキ事件行政官タルノ資格ヲ以テ其事件ノ處分又ハ裁決ニ參與シタルモノニ關スルトキ
第十一條 前條ノ場合ニ於テ原吿又ハ被吿ハ原因ヲ疏明シテ文書又ハ口頭ヲ以テ長官又ハ評定官ヲ忌避スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ行政裁判所ハ本人ヲ囘避セシメ之ヲ議決ス
第十二條 忌避若クハ除斥ノ原因タル事情ニ付キ長官又ハ評定官ヨリ申出アルトキ又ハ他ノ事由ヨリシテ長官又ハ評定官カ法律ニ依リ評議及決議ニ加ハルヲ得サルノ疑アルトキハ行政裁判所ハ本人ヲ囘避セシメ之ヲ議決ス
第十三條 行政裁判所ノ處務規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四條 行政訴訟ノ辯護人タルコトヲ得ルハ行政裁判所ノ認許シタル辯護士ニ限ル
第二章 行政裁判所權限
第十五條 行政裁判所ハ法律勅令ニ依リ行政裁判所ニ出訴ヲ許シタル事件ヲ審判ス
第十六條 行政裁判所ハ損害要償ノ訴訟ヲ受理セス
第十七條 行政訴訟ハ法律勅令ニ特別ノ規程アルモノヲ除ク外地方上級行政廳ニ訴願シ其裁決ヲ經タル後ニ非サレハ之ヲ提起スルコトヲ得ス
各省大臣ノ處分又ハ內閣直轄官廳又ハ地方上級行政廳ノ處分ニ對シテハ直ニ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
各省又ハ內閣ニ訴願ヲ爲シタルトキハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得ス
第十八條 行政裁判所ノ判決ハ其事件ニ付キ關係ノ行政廳ヲ覊束ス
第十九條 行政裁判所ノ裁判ニ對シテハ再審ヲ求ムルコトヲ得ス
第二十條 行政裁判所ハ其權限ニ關シテハ自ラ之ヲ決定ス
行政裁判所ト通常裁判所又ハ特別裁判所トノ間ニ起ル權限ノ爭議ハ權限裁判所ニ於テ之ヲ裁判ス
第二十一條 行政裁判所ノ判決ノ執行ハ通常裁判所ニ囑託スルコトヲ得
第三章 行政訴訟手續
第二十二條 行政訴訟ハ行政廳ニ於テ處分書若クハ裁決書ヲ交付シ又ハ吿知シタル日ヨリ六十日以內ニ提起スヘシ六十日ヲ經過シタルトキハ行政訴訟ヲ爲スコトヲ得ス但法律勅令ニ特別ノ規程アルモノハ此限ニ在ラス
訴訟提起ノ日限其他此法律ニ依リ行政裁判所ノ指定スル日限ノ計算竝ニ災害事變ノ爲メ遷延シタル期限ニ關シテハ民事訴訟ノ規程ヲ適用ス
第二十三條 行政訴訟ハ法律勅令ニ特別ノ規程アルモノヲ除ク外行政廳ノ處分又ハ裁決ノ執行ヲ停止セス但行政廳及行政裁判所ハ其職權ニ依リ又ハ原吿ノ願ニ依リ必要ト認ムルトキハ其處分又ハ裁決ノ執行ヲ停止スルコトヲ得
第二十四條 行政訴訟ハ文書ヲ以テ行政裁判所ニ提起スヘシ
法律ニ依リ法人ト認メラレタル者ハ其名ヲ以テ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第二十五條 訴狀ハ左ノ事項ヲ記載シ原吿署名捺印スヘシ
一 原吿ノ身分、職業、住所、年齡
二 被吿ノ行政廳又ハ其他ノ被吿
三 要求ノ事件及其理由
四 立證
五 年月日
訴狀ニハ原吿ノ經歷シタル訴願書裁決書竝ニ證據書類ヲ添フヘシ
第二十六條 訴狀ニハ被吿ニ送付スル爲メニ必要文書ノ副本ヲ添フヘシ
第二十七條 行政裁判所ハ原吿ノ訴狀ニ就テ審査シ若シ法律勅令ニ依リ行政訴訟ヲ提起スヘカラサルモノナルカ又ハ適法ノ手續ニ違背スルモノナルトキハ其理由ヲ付シタル裁決書ヲ以テ之ヲ却下スヘシ
其訴狀ノ方式ヲ缺クニ止マルモノハ之ヲ改正セシムル爲メ期限ヲ指定シテ還付スヘシ
第二十八條 行政裁判所ニ於テ訴狀ヲ受理シタルトキハ其副本ヲ被吿ニ送付シ相當ノ期限ヲ指定シテ答辯書ヲ差出サシムヘシ
答辯書ニハ原吿ニ送付スル爲メ必要文書ノ副本ヲ添フヘシ
第二十九條 行政裁判所ハ必要ナリト認ムルトキハ其期限ヲ指定シテ原吿被吿交互ニ辯駁書及再度ノ答辯書ヲ差出サシムヘシ
第三十條 行政裁判所ハ訴狀及答辯書ノ附屬文書ノ副本ヲ原吿被吿交互ニ送付スル代リニ所內ニ於テ之ヲ閱覽セシムルコトヲ得
第三十一條 行政裁判所ハ訴訟審問中其事件ノ利害ニ關係アル第三者ヲ訴訟ニ加ハラシメ又ハ第三者ノ願ニ依リ訴訟ニ加ハルコトヲ許可スルヲ得
前項ノ場合ニ於テハ行政裁判所ノ判決ハ第三者ニ對シテモ亦其効力ヲ有ス
第三十二條 行政官廳ハ其官吏又ハ其申立ニ依リ主務大臣ヨリ命シタル委員ヲシテ訴訟代理ヲ爲サシムルコトヲ得
代理者ハ委任狀ヲ以テ代人タルコトヲ證明スヘシ
第三十三條 行政裁判所ハ豫メ指定シタル期日ニ於テ原吿被吿及第三者ヲ召喚シテ審廷ヲ開キ口頭審問ヲ爲スヘシ
原吿被吿及第三者ニ於テ口頭審問ヲ爲スコトヲ望マサル旨ヲ申立タル場合ニ於テハ行政裁判所ハ文書ニ就キ直ニ判決ヲ爲スコトヲ得
第三十四條 審廷ニ於テハ原吿被吿及第三者ノ辯明ヲ聽クヘシ
審廷ニ於テハ裁判長ノ許可ヲ得タル者ヨリ順次發言スヘシ
原吿被吿及第三者ハ事實上及法律上ノ㸃ニ就キ文書ニ盡サヽル所ヲ補足シ又ハ誤謬ヲ更正シ若クハ新ニ證憑ヲ提出シ及證書ヲ提示スルコトヲ得
第三十五條 主務大臣ハ必要ト認ムル場合ニ於テハ公益ヲ辯護スル爲メ委員ヲ命シ審廷ニ差出スコトヲ得
行政裁判所ハ判決ヲ爲ス前ニ委員ヲシテ意見ヲ陳述セシムヘシ
第三十六條 行政裁判所ノ對審判決ハ之ヲ公開ス
安寧秩序又ハ風俗ヲ害スルノ虞アリ又ハ行政廳ノ要求アルトキハ行政裁判所ノ決議ヲ以テ對審ノ公開ヲ停ムルコトヲ得
第三十七條 公開ヲ停ムルノ決議ヲ爲シタルトキハ公衆ヲ退カシムルノ前之ヲ言渡ス
第三十八條 行政裁判所ハ原吿被吿及第三者ニ出廷ヲ命シ竝ニ必要ト認ムル證憑ヲ徵シ證人及鑑定人ヲ召喚シ審問ニ應シ證明及鑑定ヲ爲サシムルコトヲ得
證人又ハ鑑定人トシテ審問ニ應シ證明及鑑定ヲ爲スヘキ義務ニ關シテハ民事訴訟ノ規程ヲ適用ス其義務ヲ盡サヽル場合ニ於テ處分スヘキ科罰ハ行政裁判所自ラ之ヲ判決ス
行政裁判所ハ口頭審問ニ於テ擧證ノ手續ヲ爲シ又ハ評定官ニ委任シ若クハ通常裁判所又ハ行政廳ニ囑託シテ之カ調査ヲ爲サシムルコトヲ得
第三十九條 行政裁判所ニ於テ審問中ノ事件ニ關シ民事上ノ訴訟起ルコトアリテ通常裁判ノ確定ヲ待ツノ必要アリト認ムルトキハ其審判ヲ中止スルコトヲ得
第四十條 審問手續ニ關スル故障ノ申立ハ行政裁判所自ラ之ヲ判決ス
第四十一條 召喚ノ期日ニ於テ原吿若クハ被吿若クハ第三者出廷セサルコトアルモ行政裁判所ハ其審判ヲ中止セス
原吿被吿及第三者共ニ出廷セサルトキハ行政裁判所ハ審問ヲ行ハス直ニ判決ヲ爲スコトヲ得
第四十二條 裁判宣吿書ハ理由ヲ付シ裁判長評定官及書記之ニ署名捺印シ其謄本ニ行政裁判所ノ印章ヲ捺シ之ヲ原吿被吿及第三者ニ交付スヘシ
行政訴訟ノ文書ニハ訴訟用印紙ヲ貼用スルヲ要セス
第四十三條 行政訴訟手續ニ關シ此法律ニ規程ナキモノハ行政裁判所ノ定ムル所ニ依リ民事訴訟ニ關スル規程ヲ適用スルコトヲ得
第四章 附則
第四十四條 此法律ハ明治二十三年十月一日ヨリ施行ス
第四十五條 第二十條第二項ノ權限爭議ハ權限裁判所ヲ設クル迄ノ間樞密院ニ於テ之ヲ裁定ス
裁定ノ手續ハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第四十六條 從前ノ法令ニシテ此法律ト牴觸スルモノハ此法律施行ノ日ヨリ廢止ス
第四十七條 此法律施行ノ前既ニ行政訴訟トシテ受理シ審理中ニ係ルモノハ仍從前ノ成規ニ依リ處分スヘシ
朕行政裁判法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十三年六月二十八日
内閣総理大臣 伯爵 山県有朋
内務大臣 伯爵 西郷従道
司法大臣 伯爵 山田顕義
大蔵大臣 伯爵 松方正義
陸軍大臣 伯爵 大山巌
逓信大臣 伯爵 後藤象二郎
外務大臣 子爵 青木周蔵
海軍大臣 子爵 樺山資紀
文部大臣 芳川顕正
農商務大臣 陸奥宗光
法律第四十八号
行政裁判法
第一章 行政裁判所組織
第一条 行政裁判所ハ之ヲ東京ニ置ク
第二条 行政裁判所ニ長官一人及評定官ヲ置ク評定官ノ員数ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
行政裁判所ニ書記ヲ置ク其員数及職務ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三条 長官ハ勅任トス評定官ハ勅任又ハ奏任トス
長官及評定官ハ三十歳以上ニシテ五年以上高等行政官ノ職ヲ奉シタル者若クハ裁判官ノ職ヲ奉シタル者ヨリ内閣総理大臣ノ上奏ニ依リ任命セラルヽモノトス
書記ハ長官之ヲ判任ス
第四条 長官及評定官ハ在職中左ノ諸件ヲ為スコトヲ得ス
一 公然政事ニ関係スルコト
二 政党ノ党員又ハ政社ノ社員トナリ又ハ衆議院議員府県郡市町村会ノ議員若クハ参事会員タルコト
三 兼官ノ場合ヲ除ク外俸給アル又ハ金銭ノ利益ヲ目的トスル公務ニ就クコト
四 商業ヲ営ミ其他行政上ノ命令ヲ以テ禁シタル業務ヲ営ムコト
第五条 第六条ノ場合ヲ除ク外長官及評定官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ処分ニ由ルニ非サレハ其意ニ反シテ退官転官又ハ非職ヲ命セラルヽコトナシ
行政裁判所ノ長官又ハ評定官ヲ兼任スル者ハ其本官在職中前項ヲ適用ス
懲戒処分ノ法ハ別ニ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六条 長官及評定官身体若クハ精神ノ衰弱ニ因リ職務ヲ執ルコト能ハサルトキハ内閣総理大臣ハ行政裁判所ノ総会ノ決議ニ依リ其退職ヲ上奏スルコトヲ得
第七条 長官ハ行政裁判所ノ事務ヲ総理ス
長官故障アルトキハ評定官中官等最モ高キ者之ヲ代理ス官等同シキトキハ任官ノ順序ニ依リ其先ナル者之ヲ代理ス
第八条 長官ハ自ラ裁判長トナリ若クハ評定官ニ裁判長ヲ命スルコトヲ得
部ヲ分ツノ必要アルトキハ其組織及事務分配ハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第九条 行政裁判所ノ裁判ハ裁判長及評定官ヲ併セ五人以上ノ列席合議ヲ要ス但列席ノ人員ハ奇数ニ限ル若シ欠席ノ為偶数トナリタルトキハ官等最モ低キ評定官ヲ議決ヨリ除ク官等同シキトキハ任官ノ順序ニ依リ其後ナル者ヲ除ク
議決ハ過半数ニ依ル
第十条 長官又ハ評定官ハ左ノ場合ニ於テ評議及議決ニ加ハルコトヲ得ス
一 裁判スヘキ事件自己又ハ父母兄弟姉妹若クハ妻子ノ身上ニ関スルトキ
二 裁判スヘキ事件一私人ノ資格ヲ以テ意見ヲ述ヘタルモノ又ハ理事者代理者若クハ職務外ノ地位ニ於テ取扱ヒタルモノニ関スルトキ
三 裁判スヘキ事件行政官タルノ資格ヲ以テ其事件ノ処分又ハ裁決ニ参与シタルモノニ関スルトキ
第十一条 前条ノ場合ニ於テ原告又ハ被告ハ原因ヲ疏明シテ文書又ハ口頭ヲ以テ長官又ハ評定官ヲ忌避スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ行政裁判所ハ本人ヲ回避セシメ之ヲ議決ス
第十二条 忌避若クハ除斥ノ原因タル事情ニ付キ長官又ハ評定官ヨリ申出アルトキ又ハ他ノ事由ヨリシテ長官又ハ評定官カ法律ニ依リ評議及決議ニ加ハルヲ得サルノ疑アルトキハ行政裁判所ハ本人ヲ回避セシメ之ヲ議決ス
第十三条 行政裁判所ノ処務規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四条 行政訴訟ノ弁護人タルコトヲ得ルハ行政裁判所ノ認許シタル弁護士ニ限ル
第二章 行政裁判所権限
第十五条 行政裁判所ハ法律勅令ニ依リ行政裁判所ニ出訴ヲ許シタル事件ヲ審判ス
第十六条 行政裁判所ハ損害要償ノ訴訟ヲ受理セス
第十七条 行政訴訟ハ法律勅令ニ特別ノ規程アルモノヲ除ク外地方上級行政庁ニ訴願シ其裁決ヲ経タル後ニ非サレハ之ヲ提起スルコトヲ得ス
各省大臣ノ処分又ハ内閣直轄官庁又ハ地方上級行政庁ノ処分ニ対シテハ直ニ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
各省又ハ内閣ニ訴願ヲ為シタルトキハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得ス
第十八条 行政裁判所ノ判決ハ其事件ニ付キ関係ノ行政庁ヲ羈束ス
第十九条 行政裁判所ノ裁判ニ対シテハ再審ヲ求ムルコトヲ得ス
第二十条 行政裁判所ハ其権限ニ関シテハ自ラ之ヲ決定ス
行政裁判所ト通常裁判所又ハ特別裁判所トノ間ニ起ル権限ノ争議ハ権限裁判所ニ於テ之ヲ裁判ス
第二十一条 行政裁判所ノ判決ノ執行ハ通常裁判所ニ嘱託スルコトヲ得
第三章 行政訴訟手続
第二十二条 行政訴訟ハ行政庁ニ於テ処分書若クハ裁決書ヲ交付シ又ハ告知シタル日ヨリ六十日以内ニ提起スヘシ六十日ヲ経過シタルトキハ行政訴訟ヲ為スコトヲ得ス但法律勅令ニ特別ノ規程アルモノハ此限ニ在ラス
訴訟提起ノ日限其他此法律ニ依リ行政裁判所ノ指定スル日限ノ計算並ニ災害事変ノ為メ遷延シタル期限ニ関シテハ民事訴訟ノ規程ヲ適用ス
第二十三条 行政訴訟ハ法律勅令ニ特別ノ規程アルモノヲ除ク外行政庁ノ処分又ハ裁決ノ執行ヲ停止セス但行政庁及行政裁判所ハ其職権ニ依リ又ハ原告ノ願ニ依リ必要ト認ムルトキハ其処分又ハ裁決ノ執行ヲ停止スルコトヲ得
第二十四条 行政訴訟ハ文書ヲ以テ行政裁判所ニ提起スヘシ
法律ニ依リ法人ト認メラレタル者ハ其名ヲ以テ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第二十五条 訴状ハ左ノ事項ヲ記載シ原告署名捺印スヘシ
一 原告ノ身分、職業、住所、年齢
二 被告ノ行政庁又ハ其他ノ被告
三 要求ノ事件及其理由
四 立証
五 年月日
訴状ニハ原告ノ経歴シタル訴願書裁決書並ニ証拠書類ヲ添フヘシ
第二十六条 訴状ニハ被告ニ送付スル為メニ必要文書ノ副本ヲ添フヘシ
第二十七条 行政裁判所ハ原告ノ訴状ニ就テ審査シ若シ法律勅令ニ依リ行政訴訟ヲ提起スヘカラサルモノナルカ又ハ適法ノ手続ニ違背スルモノナルトキハ其理由ヲ付シタル裁決書ヲ以テ之ヲ却下スヘシ
其訴状ノ方式ヲ欠クニ止マルモノハ之ヲ改正セシムル為メ期限ヲ指定シテ還付スヘシ
第二十八条 行政裁判所ニ於テ訴状ヲ受理シタルトキハ其副本ヲ被告ニ送付シ相当ノ期限ヲ指定シテ答弁書ヲ差出サシムヘシ
答弁書ニハ原告ニ送付スル為メ必要文書ノ副本ヲ添フヘシ
第二十九条 行政裁判所ハ必要ナリト認ムルトキハ其期限ヲ指定シテ原告被告交互ニ弁駁書及再度ノ答弁書ヲ差出サシムヘシ
第三十条 行政裁判所ハ訴状及答弁書ノ附属文書ノ副本ヲ原告被告交互ニ送付スル代リニ所内ニ於テ之ヲ閲覧セシムルコトヲ得
第三十一条 行政裁判所ハ訴訟審問中其事件ノ利害ニ関係アル第三者ヲ訴訟ニ加ハラシメ又ハ第三者ノ願ニ依リ訴訟ニ加ハルコトヲ許可スルヲ得
前項ノ場合ニ於テハ行政裁判所ノ判決ハ第三者ニ対シテモ亦其効力ヲ有ス
第三十二条 行政官庁ハ其官吏又ハ其申立ニ依リ主務大臣ヨリ命シタル委員ヲシテ訴訟代理ヲ為サシムルコトヲ得
代理者ハ委任状ヲ以テ代人タルコトヲ証明スヘシ
第三十三条 行政裁判所ハ予メ指定シタル期日ニ於テ原告被告及第三者ヲ召喚シテ審廷ヲ開キ口頭審問ヲ為スヘシ
原告被告及第三者ニ於テ口頭審問ヲ為スコトヲ望マサル旨ヲ申立タル場合ニ於テハ行政裁判所ハ文書ニ就キ直ニ判決ヲ為スコトヲ得
第三十四条 審廷ニ於テハ原告被告及第三者ノ弁明ヲ聴クヘシ
審廷ニ於テハ裁判長ノ許可ヲ得タル者ヨリ順次発言スヘシ
原告被告及第三者ハ事実上及法律上ノ点ニ就キ文書ニ尽サヽル所ヲ補足シ又ハ誤謬ヲ更正シ若クハ新ニ証憑ヲ提出シ及証書ヲ提示スルコトヲ得
第三十五条 主務大臣ハ必要ト認ムル場合ニ於テハ公益ヲ弁護スル為メ委員ヲ命シ審廷ニ差出スコトヲ得
行政裁判所ハ判決ヲ為ス前ニ委員ヲシテ意見ヲ陳述セシムヘシ
第三十六条 行政裁判所ノ対審判決ハ之ヲ公開ス
安寧秩序又ハ風俗ヲ害スルノ虞アリ又ハ行政庁ノ要求アルトキハ行政裁判所ノ決議ヲ以テ対審ノ公開ヲ停ムルコトヲ得
第三十七条 公開ヲ停ムルノ決議ヲ為シタルトキハ公衆ヲ退カシムルノ前之ヲ言渡ス
第三十八条 行政裁判所ハ原告被告及第三者ニ出廷ヲ命シ並ニ必要ト認ムル証憑ヲ徴シ証人及鑑定人ヲ召喚シ審問ニ応シ証明及鑑定ヲ為サシムルコトヲ得
証人又ハ鑑定人トシテ審問ニ応シ証明及鑑定ヲ為スヘキ義務ニ関シテハ民事訴訟ノ規程ヲ適用ス其義務ヲ尽サヽル場合ニ於テ処分スヘキ科罰ハ行政裁判所自ラ之ヲ判決ス
行政裁判所ハ口頭審問ニ於テ挙証ノ手続ヲ為シ又ハ評定官ニ委任シ若クハ通常裁判所又ハ行政庁ニ嘱託シテ之カ調査ヲ為サシムルコトヲ得
第三十九条 行政裁判所ニ於テ審問中ノ事件ニ関シ民事上ノ訴訟起ルコトアリテ通常裁判ノ確定ヲ待ツノ必要アリト認ムルトキハ其審判ヲ中止スルコトヲ得
第四十条 審問手続ニ関スル故障ノ申立ハ行政裁判所自ラ之ヲ判決ス
第四十一条 召喚ノ期日ニ於テ原告若クハ被告若クハ第三者出廷セサルコトアルモ行政裁判所ハ其審判ヲ中止セス
原告被告及第三者共ニ出廷セサルトキハ行政裁判所ハ審問ヲ行ハス直ニ判決ヲ為スコトヲ得
第四十二条 裁判宣告書ハ理由ヲ付シ裁判長評定官及書記之ニ署名捺印シ其謄本ニ行政裁判所ノ印章ヲ捺シ之ヲ原告被告及第三者ニ交付スヘシ
行政訴訟ノ文書ニハ訴訟用印紙ヲ貼用スルヲ要セス
第四十三条 行政訴訟手続ニ関シ此法律ニ規程ナキモノハ行政裁判所ノ定ムル所ニ依リ民事訴訟ニ関スル規程ヲ適用スルコトヲ得
第四章 附則
第四十四条 此法律ハ明治二十三年十月一日ヨリ施行ス
第四十五条 第二十条第二項ノ権限争議ハ権限裁判所ヲ設クル迄ノ間枢密院ニ於テ之ヲ裁定ス
裁定ノ手続ハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第四十六条 従前ノ法令ニシテ此法律ト牴触スルモノハ此法律施行ノ日ヨリ廃止ス
第四十七条 此法律施行ノ前既ニ行政訴訟トシテ受理シ審理中ニ係ルモノハ仍従前ノ成規ニ依リ処分スヘシ