(車両等の消毒の義務)
第四条 農林水産大臣が口蹄疫のまん延を防止するために車両等の消毒の義務を課す必要がある地域として指定する地域内において、都道府県知事が農林水産省令で定める消毒のための設備を設置している場所を通行しようとする者は、農林水産省令で定める基準に基づいて、当該設備を利用して、当該者の使用する車両その他の農林水産省令で定める物品を消毒しなければならない。
2 都道府県知事は、口蹄疫のまん延を防止するため特に必要があるときは、前項に規定する設備を設置している場所を通行しようとする者の使用する同項に規定する物品について、当該者による消毒に代えて、当該都道府県の職員にこれを消毒させることができる。
3 第一項の地域内において、都道府県知事が農林水産省令で定める消毒のための設備を設置している場所を通行しようとする者は、農林水産省令で定める基準に基づいて、当該設備を利用して、自らその身体を消毒しなければならない。
4 都道府県知事は、第一項又は前項に規定する設備を設置している場所ごとに、公衆の見やすい場所に、農林水産省令で定める表示をしなければならない。
5 第一項の指定は、都道府県知事の申請に基づき、行うものとする。
6 農林水産大臣は、前項の規定にかかわらず、口蹄疫のまん延が二以上の都道府県の区域にわたる場合その他必要があると認める場合には、関係都道府県知事の意見を聴いて、第一項の指定を行うことができる。
7 農林水産大臣は、第一項の指定をしたときは、その旨を官報で公示しなければならない。
8 前項の規定は、第一項の指定の解除をしたときに準用する。
(患畜又は疑似患畜の死体の焼却又は埋却の支援)
第五条 農林水産大臣が口蹄疫のまん延を防止するために患畜又は疑似患畜の死体の焼却又は埋却の支援を行う必要がある地域として指定する地域内に存する患畜又は疑似患畜の死体の所有者は、家畜伝染病予防法(昭和二十六年法律第百六十六号。以下「法」という。)第二十一条第一項の規定にかかわらず、当該死体を焼却し、又は埋却することが困難な場合には、家畜防疫員に対し、これらの死体の焼却又は埋却を求めることができる。
2 家畜防疫員は、前項の規定による求めがあったときは、当該求めのあった死体を焼却し、又は埋却するものとする。
3 国は、前項又は法第二十一条第四項の規定により家畜防疫員が行う患畜又は疑似患畜の死体の焼却又は埋却の円滑な実施に資するため、埋却の用に供する土地の確保、埋却のために必要な作業に従事する者の派遣その他の必要な措置を講ずるものとする。
4 第一項の指定に係る地域をその区域に含む地方公共団体は、第二項又は法第二十一条第四項の規定により家畜防疫員が行う患畜又は疑似患畜の死体の焼却又は埋却の円滑な実施に資するため、埋却の用に供する土地の確保、埋却のために必要な作業に従事する者の確保その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
5 第一項の指定については、前条第五項から第八項までの規定を準用する。
(患畜等以外の家畜の殺処分等)
第六条 都道府県知事は、法第三章に規定する措置だけでは口蹄疫のまん延の防止が困難であり、かつ、急速かつ広範囲にわたる口蹄疫のまん延を防止するためやむを得ない必要があるときは、農林水産大臣が口蹄疫のまん延を防止するために患畜等以外の家畜の殺処分を行う必要がある地域として指定する地域内において都道府県知事が指定する家畜(患畜及び疑似患畜を除く。)を所有する者に、期限を定めて当該家畜を殺すべきことを勧告することができる。
2 前項の勧告を受けた者が当該勧告に従わないとき又は家畜の所有者若しくはその所在が知れないため同項の勧告をすることができない場合において緊急の必要があるときは、都道府県知事は、家畜防疫員に当該家畜を殺させることができる。
3 都道府県知事は、第一項の勧告をし、又は前項に規定する措置を実施する場合には、同時に、農林水産省令で定めるところにより、当該勧告をし、又は当該措置を実施する理由その他の農林水産省令で定める事項を書面により通知しなければならない。ただし、当該事項を書面により通知しないで当該勧告をし、又は当該措置を実施すべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。
4 都道府県知事は、前項ただし書の場合においては、当該勧告又は措置の後相当の期間内に、農林水産省令で定めるところにより、同項の理由その他の農林水産省令で定める事項を記載した書面を交付しなければならない。
5 家畜防疫員は、口蹄疫のまん延を防止するため必要があるときは、第一項の規定による勧告に係る家畜につき、殺す場所又は殺す方法を指示することができる。
6 第一項の勧告に従ってその所有する家畜を自ら殺した者又は第二項の規定により殺された家畜の死体の所有者は、家畜防疫員が農林水産省令で定める基準に基づいてする指示に従い、遅滞なく、当該死体を焼却し、又は埋却しなければならない。
7 家畜防疫員は、口蹄疫のまん延を防止するため緊急の必要があるときは、前項の規定による指示に代えて、自らこれを焼却し、又は埋却することができる。
8 第六項に規定する焼却又は埋却については前条第一項から第四項までの規定を、前項に規定する焼却又は埋却については同条第三項及び第四項の規定を準用する。
9 都道府県知事は、第一項の勧告に従ってその所有する家畜を自ら殺したため損失を受けた当該家畜の所有者に対し、その生産に要する費用その他の通常生ずべき損失として政令で定める損失を補てんしなければならない。
10 都道府県知事は、第二項の規定によりその所有する家畜を殺されたため損失を受けた当該家畜の所有者に対し、その生産に要する費用その他の通常生ずべき損失として政令で定める損失を補償しなければならない。
11 前二項の規定による補てん金又は補償金については、家畜の所有者が迅速にその交付を受けることができるよう、家畜の所有者からの請求を待たずに仮払をする方法その他の政令で定める方法により交付するものとする。
12 都道府県知事は、第六項の規定により家畜の死体を焼却し、又は埋却した者に対し、焼却又は埋却に要した費用を交付する。
13 第九項から前項までに定めるもののほか、第九項、第十項又は前項に定める措置に関し必要な事項は、政令で定める。
14 第一項の指定については、第四条第五項から第八項までの規定を準用する。
(化製場等に関する法律の特例)
第七条 第五条第二項(前条第八項において準用する場合を含む。)又は前条第六項若しくは第七項の規定により家畜の死体を焼却し、又は埋却する場合には、化製場等に関する法律(昭和二十三年法律第百四十号)第二条第二項の規定は、適用しない。
(農林水産大臣の都道府県知事に対する指示等)
第八条 農林水産大臣は、法第四十七条に定めるもののほか、口蹄疫のまん延により畜産に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、都道府県知事に第四条第二項若しくは第四項の規定による消毒に係る措置(当該措置に係る地域の指定が同条第六項の規定により行われた場合に限る。次項において同じ。)、第五条第二項(第六条第八項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の規定による焼却若しくは埋却に係る措置(当該措置に係る地域の指定が第五条第五項において準用される第四条第六項の規定により行われた場合に限る。次項において同じ。)又は第六条第一項の規定による勧告若しくは同条第二項の規定による措置(当該勧告又は措置に係る地域の指定が同条第十四項において準用される第四条第六項の規定により行われた場合に限る。次項において同じ。)を実施すべき旨を指示することができる。
2 農林水産大臣は、都道府県知事が前項の指示に従わないときその他特に必要があると認めるときは、第四条第二項若しくは第四項の規定による消毒に係る措置、第五条第二項の規定による焼却若しくは埋却に係る措置又は第六条第一項の規定による勧告若しくは同条第二項の規定による措置を自ら実施することができる。
3 農林水産大臣は、法第三十一条の規定による動物用生物学的製剤等の注射について法第四十七条の規定による指示をした場合において都道府県知事が当該指示に従わないときであって、動物用生物学的製剤等の注射を用いない措置では口蹄疫のまん延を防止することができないと認めるときは、家畜防疫官に当該注射を行わせることができる。
4 法第四十八条の規定は、第一項の指示をした場合に準用する。この場合において、「第二章又は第三章」とあるのは、「口蹄疫対策特別措置法第五条又は第六条」と読み替えるものとする。
(焼却又は埋却に関する留意事項)
第九条 法第二十一条第一項の規定による患畜又は疑似患畜の焼却又は埋却については、できる限り当該患畜又は疑似患畜がと殺された場所に近い場所で行われなければならない。
(家畜防疫員の確保)
第十条 都道府県知事は、当該地域内における家畜伝染病に関する知識経験を有する人材の活用を図ることにより、口蹄疫のまん延を防止するための施策を実施するために必要な家畜防疫員を確保するよう努めるものとする。
(簡易畜舎の建設等を促進するための農地法に係る措置)
第十一条 国は、口蹄疫のまん延を防止するための法第三十二条の規定による禁止又は制限に係る区域内に畜舎を有する者が、当該畜舎に隣接する農地を当該禁止又は制限に起因して建設することが必要となる一時的に使用する畜舎の敷地の用等に供することが可能となるよう、農地に関する制度等について、必要な措置を講ずるものとする。
(催物の開催の停止の要請等)
第十二条 都道府県知事は、口蹄疫のまん延を防止するため必要があるときは、法第三十三条に定めるもののほか、催物の開催者に対して、当該催物の開催の停止又は制限を要請することができる。
(患畜の判定の迅速化のための措置)
第十三条 国は、患畜の判定の迅速化に資するよう、家畜が所在する地域における専門家による患畜の判定の迅速な実施、口蹄疫の病原体の有無に係る検査の円滑かつ迅速な実施その他の必要な措置を講ずるものとする。
(口蹄疫のまん延を防止するための措置についての適切な配慮)
第十四条 国及び地方公共団体は、平成二十二年四月以降において発生が確認された口蹄疫のまん延を防止するための措置を講ずるに当たっては、できる限り関係者の意向を十分尊重するなど、当該措置が円滑に行われるよう適切な配慮をするものとする。
(口蹄疫のまん延の防止に関する調査研究等)
第十五条 国及び都道府県は、平成二十二年四月以降において発生が確認された口蹄疫の感染経路及びそのまん延の原因の究明、口蹄疫の予防及びまん延の防止のための研究開発の推進及びその成果の普及並びに調査研究の体制の整備、口蹄疫に係る検査体制の整備その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(偶蹄類に属する野生動物の監視等)
第十六条 都道府県知事は、偶蹄類に属する野生動物に係る口蹄疫の発生の状況の監視その他の当該野生動物に係る口蹄疫の発生の予防及びまん延の防止のために必要な措置を講ずるものとする。
(ねずみ等の駆除等の実施)
第十七条 家畜の所有者は、口蹄疫のまん延を防止するために、農林水産省令で定めるところにより、畜舎及びその周辺において、適切な消毒を実施するほか、その病原体を媒介するおそれがあるねずみ、昆虫等の駆除を実施するよう努めるものとする。