テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法
法令番号: 法律第1号
公布年月日: 平成20年1月16日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

我が国は、テロ対策特別措置法に基づき海上自衛隊による給油等の支援活動を実施し、国際的なテロの防止・根絶に貢献してきた。九・一一テロ攻撃の脅威が継続する中、国連安保理決議に基づき国際社会はテロ対策を継続している。本法案は、テロ対策海上阻止活動を行う諸外国の軍隊等への補給支援活動を通じて、我が国が国際社会のテロ根絶への取り組みに積極的かつ主体的に寄与し、国際社会の平和と安全の確保に資することを目的とする。

参照した発言:
第168回国会 衆議院 本会議 第7号

審議経過

第168回国会

衆議院
(平成19年10月23日)
(平成19年11月13日)
参議院
(平成19年11月28日)
(平成19年11月29日)
(平成19年12月4日)
(平成19年12月6日)
(平成19年12月11日)
(平成19年12月13日)
(平成19年12月18日)
(平成19年12月20日)
(平成19年12月25日)
(平成19年12月27日)
(平成20年1月8日)
(平成20年1月10日)
衆議院
(平成20年1月11日)
参議院
(平成20年1月11日)
テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法をここに公布する。
御名御璽
平成二十年一月十六日
内閣総理大臣 福田康夫
法律第一号
テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法
(目的)
第一条 この法律は、我が国がテロ対策海上阻止活動を行う諸外国の軍隊その他これに類する組織(以下「諸外国の軍隊等」という。)に対し旧平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法(平成十三年法律第百十三号)に基づいて実施した海上自衛隊による給油その他の協力支援活動が国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取組に貢献し、国際連合安全保障理事会決議第千七百七十六号においてその貢献に対する評価が表明されたことを踏まえ、あわせて、平成十三年九月十一日にアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃によってもたらされている脅威(以下「テロ攻撃による脅威」という。)がいまだ除去されていない現状において、同理事会決議第千三百六十八号、第千三百七十三号その他の同理事会決議が国際連合のすべての加盟国に対し国際的なテロリズムの行為の防止等のために適切な措置をとることを求めていることを受けて、国際社会が国際的なテロリズムの防止及び根絶のための取組を継続し、その一環として、諸外国の軍隊等がテロ攻撃による脅威の除去に努めることにより国際連合憲章の目的の達成に寄与する活動を行っていること、及び同理事会決議第千七百七十六号において当該活動の継続的な実施の必要性が強調されていることにかんがみ、テロ対策海上阻止活動を行う諸外国の軍隊等に対し補給支援活動を実施することにより、我が国が国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取組に引き続き積極的かつ主体的に寄与し、もって我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的とする。
(基本原則)
第二条 政府は、この法律に基づく補給支援活動を適切かつ迅速に実施することにより、国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取組に我が国として積極的かつ主体的に寄与し、もって我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に努めるものとする。
2 補給支援活動の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。
3 補給支援活動については、我が国領域及び現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域において実施するものとする。
一 公海(インド洋(ペルシャ湾を含む。以下同じ。)及び我が国の領域とインド洋との間の航行に際して通過する海域に限り、海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。第五条第五項において同じ。)及びその上空
二 外国(インド洋又はその沿岸に所在する国及び我が国の領域とこれらの国との間の航行に際して寄港する地が所在する国に限る。以下同じ。)の領域(当該補給支援活動が行われることについて当該外国の同意がある場合に限る。)
4 内閣総理大臣は、補給支援活動の実施に当たり、第四条第一項に規定する実施計画に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督する。
5 関係行政機関の長は、前条の目的を達成するため、補給支援活動の実施に関し、防衛大臣に協力するものとする。
(定義)
第三条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 テロ対策海上阻止活動 諸外国の軍隊等が行っているテロ攻撃による脅威の除去に努めることにより国際連合憲章の目的の達成に寄与する活動のうち、テロリスト、武器等の移動を国際的協調の下に阻止し及び抑止するためインド洋上を航行する船舶に対して検査、確認その他の必要な措置を執る活動をいう。
二 補給支援活動 テロ対策海上阻止活動の円滑かつ効果的な実施に資するため、自衛隊がテロ対策海上阻止活動に係る任務に従事する諸外国の軍隊等の艦船に対して実施する自衛隊に属する物品及び役務の提供(艦船若しくは艦船に搭載する回転翼航空機の燃料油の給油又は給水を内容とするものに限る。)に係る活動をいう。
(実施計画)
第四条 内閣総理大臣は、補給支援活動を実施するに当たっては、あらかじめ、補給支援活動に関する実施計画(以下「実施計画」という。)の案につき閣議の決定を求めなければならない。
2 実施計画に定める事項は、次のとおりとする。
一 補給支援活動の実施に関する基本方針
二 補給支援活動を実施する区域の指定に関する事項
三 補給支援活動を外国の領域で実施する自衛隊の部隊等(自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八条に規定する部隊等をいう。以下同じ。)の規模及び構成並びに装備並びに派遣期間
四 自衛隊がその事務又は事業の用に供し又は供していた物品以外の物品を調達して諸外国の軍隊等に譲与する場合には、その実施に係る重要事項
五 補給支援活動の実施のための関係行政機関の連絡調整に関する事項
六 その他補給支援活動の実施に関する重要事項
3 第一項の規定は、実施計画の変更について準用する。
(補給支援活動としての物品及び役務の提供の実施)
第五条 防衛大臣又はその委任を受けた者は、実施計画に従い、補給支援活動としての自衛隊に属する物品の提供を実施するものとする。
2 防衛大臣は、実施計画に従い、補給支援活動としての自衛隊による役務の提供について、実施要項を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとする。
3 防衛大臣は、前項の実施要項において、当該補給支援活動を実施する区域(以下この条において「実施区域」という。)を指定するものとする。
4 防衛大臣は、実施区域の全部又は一部がこの法律又は実施計画に定められた要件を満たさないものとなった場合には、速やかに、その指定を変更し、又はそこで実施されている活動の中断を命じなければならない。
5 補給支援活動のうち公海若しくはその上空又は外国の領域における活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の長又はその指定する者は、当該補給支援活動を実施している場所の近傍において、戦闘行為が行われるに至った場合又は付近の状況等に照らして戦闘行為が行われることが予測される場合には、当該補給支援活動の実施を一時休止し又は避難するなどして当該戦闘行為による危険を回避しつつ、前項の規定による措置を待つものとする。
6 第二項の規定は、同項の実施要項の変更(第四項の規定により実施区域を縮小する変更を除く。)について準用する。
(物品の無償貸付及び譲与)
第六条 防衛大臣又はその委任を受けた者は、その所管に属する前条第一項の物品につき、諸外国の軍隊等からテロ対策海上阻止活動の用に供するため当該物品の無償貸付又は譲与を求める旨の申出があった場合において、当該テロ対策海上阻止活動の円滑な実施に必要であると認めるときは、その所掌事務に支障を生じない限度において、当該申出に係る物品を当該諸外国の軍隊等に対し無償で貸し付け、又は譲与することができる。
(国会への報告)
第七条 内閣総理大臣は、次に掲げる事項を、遅滞なく、国会に報告しなければならない。
一 実施計画の決定又は変更があったときは、その内容
二 補給支援活動が終了したときは、その結果
(武器の使用)
第八条 補給支援活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官は、自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、武器を使用することができる。
2 前項の規定による武器の使用は、現場に上官が在るときは、その命令によらなければならない。ただし、生命又は身体に対する侵害又は危難が切迫し、その命令を受けるいとまがないときは、この限りでない。
3 第一項の場合において、当該現場に在る上官は、統制を欠いた武器の使用によりかえって生命若しくは身体に対する危険又は事態の混乱を招くこととなることを未然に防止し、当該武器の使用が同項及び次項の規定に従いその目的の範囲内において適正に行われることを確保する見地から必要な命令をするものとする。
4 第一項の規定による武器の使用に際しては、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条又は第三十七条に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。
(政令への委任)
第九条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(自衛隊法の一部改正)
第二条 自衛隊法の一部を次のように改正する。
附則第七項中第一号を削り、第二号を第一号とし、同号の次に次の一号を加える。
二 テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法(平成二十年法律第一号) 補給支援活動としての物品の提供
附則第八項中第一号を削り、第二号を第一号とし、同号の次に次の一号を加える。
二 テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法 部隊等による補給支援活動としての役務の提供
附則第九項第一号を削り、同項第二号中「前項第二号」を「前項第一号」に改め、同号を同項第一号とし、同号の次に次の一号を加える。
二 前項第二号に定める活動 自己と共に現場に所在する他の隊員又はその職務を行うに伴い自己の管理の下に入つた者
(この法律の失効等)
第三条 この法律は、施行の日から起算して一年を経過した日に、その効力を失う。ただし、その日より前に、補給支援活動を実施する必要がないと認められるに至ったときは、速やかに廃止するものとする。
第四条 前条の規定にかかわらず、施行の日から起算して一年を経過する日以後においても補給支援活動を実施する必要があると認められるに至ったときは、別に法律で定めるところにより、同日から起算して一年以内の期間を定めて、その効力を延長することができる。
第五条 前条の規定は、同条(この条において準用する場合を含む。)の規定により効力を延長した後その定めた期間を経過しようとする場合について準用する。
内閣総理大臣 福田康夫
外務大臣 高村正彦
防衛大臣 石破茂