(契約条件の変更の申出)
第二百四十条の二 保険会社(外国保険会社等を含む。第二百四十条の五、第二百四十条の六、第二百四十三条、第二百五十四条、第二百五十五条、第二百六十条第一項第二号、第六項及び第八項第二号並びに第二百七十条の六を除き、以下この章において同じ。)は、その業務又は財産の状況に照らしてその保険業(外国保険会社等にあっては、日本における保険業。以下この条、第二百四十条の十一、第二百四十一条及び第二百六十二条において同じ。)の継続が困難となる蓋然性がある場合には、内閣総理大臣に対し、当該保険会社に係る保険契約(変更対象外契約を除く。)について保険金額の削減その他の契約条項の変更(以下この節において「契約条件の変更」という。)を行う旨の申出をすることができる。
2 保険会社は、前項の申出をする場合には、契約条件の変更を行わなければ保険業の継続が困難となる蓋然性があり、保険契約者等(外国保険会社等の場合にあっては、日本における保険契約者等。以下この章において同じ。)の保護のため契約条件の変更がやむを得ない旨及びその理由を、文章をもって、示さなければならない。
3 内閣総理大臣は、第一項の申出に理由があると認めるときは、その申出を承認するものとする。
4 第一項に規定する「変更対象外契約」とは、契約条件の変更の基準となる日において既に保険事故が発生している保険契約(当該保険事故に係る保険金の支払により消滅することとなるものに限る。)その他の政令で定める保険契約をいう。
(業務の停止等)
第二百四十条の三 内閣総理大臣は、前条第三項の承認をした場合において、保険契約者等の保護のため必要があると認めるときは、当該保険会社に対し、期限を付して当該保険会社の保険契約の解約に係る業務の停止その他必要な措置を命ずることができる。
(契約条件の変更の限度)
第二百四十条の四 契約条件の変更は、契約条件の変更の基準となる日までに積み立てるべき責任準備金に対応する保険契約に係る権利に影響を及ぼすものであってはならない。
2 契約条件の変更によって変更される保険金、返戻金その他の給付金の計算の基礎となる予定利率については、保険契約者等の保護の見地から保険会社の資産の運用の状況その他の事情を勘案して政令で定める率を下回ってはならない。
(契約条件の変更の決議)
第二百四十条の五 保険会社は、契約条件の変更を行おうとするときは、第二百四十条の二第三項の承認を得た後、契約条件の変更につき、株主総会等の決議を経なければならない。
2 前項の場合には、商法第三百四十三条(定款変更の決議の方法)に定める決議又は第六十二条第二項に定める決議によらなければならない。
3 第一項の決議を行う場合には、保険会社は、商法第二百三十二条第一項(招集の通知)(第四十一条及び第四十九条において準用する場合を含む。)の規定による通知において、契約条件の変更がやむを得ない理由、契約条件の変更の内容、契約条件の変更後の業務及び財産の状況の予測、基金及び保険契約者等以外の債権者に対する債務の取扱いに関する事項、経営責任に関する事項その他の内閣府令で定める事項を示さなければならない。
4 第一項の決議を行う場合において、契約条件の変更に係る保険契約に関する契約者配当、剰余金の分配その他の金銭の支払に関する方針があるときは、前項の通知において、その内容を示さなければならない。
5 前項の方針については、その方針を定款に記載し、又は記録しなければならない。
(契約条件の変更における株主総会等の特別決議等に関する特例)
第二百四十条の六 株式会社である保険会社における前条第一項の決議又はこれとともに行う商法第二百十四条第一項(株式併合)、第二百四十五条第一項(営業の譲渡及び譲受け)、第二百八十条ノ二第二項(新株の有利発行)(同法第二百十一条第三項(会社が有する自己の株式の処分についての準用規定)において準用する場合を含む。)、第三百四十六条(ある種類の株主の総会)若しくは第三百七十五条第一項(資本の減少)若しくは第六十九条第二項、第百三十六条第二項若しくは第百四十四条第三項の規定による決議若しくは同法第三百四十三条(定款変更の決議の方法)、第三百四十五条第二項(ある種類の株主の総会)、第三百五十三条第五項(株式交換契約書の承認)(同法第三百六十五条第三項(株式移転事項の承認)において準用する場合を含む。)、第四百五条(解散の決議)若しくは第四百八条第四項(合併契約書の承認)に規定する決議は、これらの規定にかかわらず、出席した株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって、仮にすることができる。
2 株式会社である保険会社における前条第一項の決議とともに行う商法第三百四十八条第一項(株式の譲渡を制限する定款変更の決議方法)、第三百五十三条第六項(株式交換契約書の承認)、第三百六十五条第二項(株式移転事項の承認)又は第四百八条第五項(合併契約書の承認)の規定による決議は、これらの規定にかかわらず、出席した株主の過半数であって出席した株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって、仮にすることができる。
3 相互会社である保険会社における前条第一項の決議又はこれとともに行う第四十一条若しくは第四十九条において準用する商法第二百四十五条第一項(第二号を除く。)(営業の譲渡及び譲受け)若しくは第五十六条の二第二項、第六十条第二項、第八十六条第三項、第百三十六条第二項若しくは第百四十四条第三項の規定による決議若しくは第六十二条第二項、第百五十六条若しくは第百七十二条第一項に規定する決議は、これらの規定にかかわらず、出席した社員(総代会を設けているときは、総代)の議決権の四分の三以上に当たる多数をもって、仮にすることができる。
4 第一項の規定により仮にした決議(以下この条において「仮決議」という。)があった場合においては、各株主に対し、当該仮決議の趣旨を通知し、当該仮決議の日から一月以内に再度の株主総会を招集しなければならない。
5 前項の株主総会において第一項に規定する多数をもって仮決議を承認した場合には、当該承認のあった時に、当該仮決議をした事項に係る決議があったものとみなす。
6 前二項の規定は、第二項の規定により仮にした決議があった場合について準用する。この場合において、前項中「第一項」とあるのは、「第二項」と読み替えるものとする。
7 第四項及び第五項の規定は、第三項の規定により仮にした決議があった場合について準用する。この場合において、第四項中「各株主」とあるのは「各社員(総代会を設けているときは、各総代)」と、同項及び第五項中「株主総会」とあるのは「社員総会(総代会を設けているときは、総代会)」と、同項中「第一項」とあるのは「第三項」と読み替えるものとする。
(契約条件の変更に係る書類の備置き等)
第二百四十条の七 保険会社の取締役(委員会等設置会社等にあっては、執行役)は、第二百四十条の五第一項の決議を行うべき日の二週間前(外国保険会社等にあっては、契約条件の変更についての決定を行った日)から第二百四十条の十三第一項の公告の日まで、契約条件の変更がやむを得ない理由を示す書類、契約条件の変更の内容を示す書類、契約条件の変更後の業務及び財産の状況の予測を示す書類、基金及び保険契約者等以外の債権者に対する債務の取扱いに関する事項を示す書類、経営責任に関する事項を示す書類その他の内閣府令で定める書類(第二百四十条の五第四項に規定する方針がある場合にあっては、その方針の内容を示す書類を含む。)を各営業所又は各事務所(外国保険会社等にあっては、第百八十五条第一項に規定する支店等)に備え置かなければならない。
2 保険会社の株主又は保険契約者(外国保険会社等にあっては、日本における保険契約者)は、その営業時間又は事業時間内に限り、前項の書類の閲覧を求め、又は保険会社の定める費用を支払ってその謄本若しくは抄本の交付を求めることができる。
(保険調査人)
第二百四十条の八 内閣総理大臣は、第二百四十条の二第三項の承認をした場合において、必要があると認めるときは、保険調査人を選任し、保険調査人をして、契約条件の変更の内容その他の事項を調査させることができる。
2 前項の場合においては、内閣総理大臣は、保険調査人が調査すべき事項及び内閣総理大臣に対して調査の結果の報告をすべき期限を定めなければならない。
3 内閣総理大臣は、保険調査人が調査を適切に行っていないと認めるときは、保険調査人を解任することができる。
4 会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第八十条及び第八十一条第一項(管財人の注意義務並びに費用の前払及び報酬)の規定は、保険調査人について準用する。この場合において、同項中「裁判所」とあるのは、「内閣総理大臣」と読み替えるものとする。
5 前項において準用する会社更生法第八十一条第一項に規定する費用及び報酬は、第二百四十条の二第一項の保険会社(次条及び第三百十八条の二において「被調査会社」という。)の負担とする。
(保険調査人の調査等)
第二百四十条の九 保険調査人は、被調査会社の取締役、執行役、監査役及び支配人その他の使用人並びにこれらの者であった者に対し、被調査会社の業務及び財産の状況(これらの者であった者については、その者が当該被調査会社の業務に従事していた期間内に知ることのできた事項に係るものに限る。)につき報告を求め、又は被調査会社の帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
2 保険調査人は、その職務を行うため必要があるときは、官庁、公共団体その他の者に照会し、又は協力を求めることができる。
(保険調査人の秘密保持義務)
第二百四十条の十 保険調査人は、その職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。保険調査人がその職を退いた後も、同様とする。
2 保険調査人が法人であるときは、保険調査人の職務に従事するその役員及び職員は、その職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その役員又は職員が保険調査人の職務に従事しなくなった後においても、同様とする。
(契約条件の変更に係る承認)
第二百四十条の十一 保険会社は、第二百四十条の五第一項の決議(外国保険会社等にあっては、契約条件の変更についての決定。以下この節において同じ。)があった場合(第二百四十条の六第五項(同条第六項及び第七項において準用する場合を含む。)の規定により第二百四十条の五第一項の決議があったものとみなされる場合を含む。)には、当該決議の後、遅滞なく、当該決議に係る契約条件の変更について、内閣総理大臣の承認を求めなければならない。
2 内閣総理大臣は、当該保険会社において保険業の継続のために必要な措置が講じられた場合であって、かつ、第二百四十条の五第一項の決議に係る契約条件の変更が当該保険会社の保険業の継続のために必要なものであり、保険契約者等の保護の見地から適当であると認められる場合でなければ、前項の承認をしてはならない。
(契約条件の変更の通知及び異議申立て等)
第二百四十条の十二 保険会社は、前条第一項の承認があった場合には、当該承認があった日から二週間以内に、第二百四十条の五第一項の決議に係る契約条件の変更の主要な内容を公告するとともに、契約条件の変更に係る保険契約者(以下この条において「変更対象契約者」という。)に対し、同項の決議に係る契約条件の変更の内容を、書面をもって、通知しなければならない。
2 前項の場合においては、契約条件の変更がやむを得ない理由を示す書類、契約条件の変更後の業務及び財産の状況の予測を示す書類、基金及び保険契約者等以外の債権者に対する債務の取扱いに関する事項を示す書類、経営責任に関する事項を示す書類その他の内閣府令で定める書類(第二百四十条の五第四項に規定する方針がある場合にあっては、その方針の内容を示す書類を含む。)を添付し、変更対象契約者で異議がある者は、一定の期間内に異議を述べるべき旨を、前項の書面に付記しなければならない。
4 第二項の期間内に異議を述べた変更対象契約者の数が変更対象契約者の総数の十分の一を超え、かつ、当該異議を述べた変更対象契約者の保険契約に係る債権の額に相当する金額として内閣府令で定める金額が変更対象契約者の当該金額の総額の十分の一を超えるときは、契約条件の変更をしてはならない。
5 第二項の期間内に異議を述べた変更対象契約者の数又はその者の前項の内閣府令で定める金額が、同項に定める割合を超えないときは、当該変更対象契約者全員が当該契約条件の変更を承認したものとみなす。
(契約条件の変更の公告等)
第二百四十条の十三 保険会社は、契約条件の変更後、遅滞なく、契約条件の変更をしたことその他の内閣府令で定める事項を公告しなければならない。契約条件の変更をしないこととなったときも、同様とする。
2 保険会社は、契約条件の変更後三月以内に、当該契約条件の変更に係る保険契約者に対し、当該契約条件の変更後の保険契約者の権利及び義務の内容を通知しなければならない。