(目的)
第一条 この法律は、北朝鮮当局による未曾有の国家的犯罪行為によって拉致された被害者が、本邦に帰国することができずに北朝鮮に居住することを余儀なくされるとともに、本邦における生活基盤を失ったこと等その置かれている特殊な諸事情にかんがみ、被害者及び被害者の家族の支援に関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、帰国した被害者及び帰国し、又は入国した被害者の配偶者等の自立を促進し、被害者の拉致によって失われた生活基盤の再建等に資するため、拉致被害者等給付金の支給その他の必要な施策を講ずることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、「被害者」とは、北朝鮮当局によって拉致された日本国民として内閣総理大臣が認定した者をいい、「被害者の配偶者等」とは、被害者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)、子及び孫であって被害者でないものをいい、「被害者の家族」とは、被害者の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹をいう。
2 内閣総理大臣は、前項の認定をしようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長と協議するものとする。
(国等の責務)
第三条 国は、安否が確認されていない被害者及び被害者の配偶者等の安否の確認並びに被害者及び被害者の配偶者等の帰国又は入国のため、最大限の努力をするものとする。
2 国及び地方公共団体は、帰国した被害者及び帰国し、又は入国した被害者の配偶者等(以下「帰国被害者等」という。)を支援するため、有機的連携の下に必要な施策を講ずるものとする。
3 国は、必要があると認めるときは、地方公共団体が講ずる前項の施策について、援助を行うものとする。
4 国及び地方公共団体は、被害者及び被害者の配偶者等の安否等に関する情報を把握し、速やかに被害者及び被害者の家族に伝えること、被害者及び被害者の家族からの相談に応じること等きめ細かな対応に努めるものとする。
(帰国等に伴う費用)
第四条 国は、北朝鮮に居住する被害者又は被害者の配偶者等が帰国し、又は入国する場合には、内閣府令で定めるところにより、当該帰国又は入国に伴い必要となる費用を負担する。
(拉致被害者等給付金等の支給)
第五条 国は、帰国被害者等が本邦に永住する場合には、当該帰国被害者等に対し、内閣府令で定めるところにより、これらの者の自立を促進し、生活基盤の再建又は構築に資するため、拉致被害者等給付金を、五年を限度として、毎月、支給する。
2 国は、被害者の配偶者等が北朝鮮内にとどまっていること等帰国した被害者が永住の意思を決定することにつき困難な事情があると認められる間は、当該被害者に対し、内閣府令で定めるところにより、本邦に滞在している間の生活を援助するため、滞在援助金を、毎月、支給する。
(生活相談等)
第六条 国及び地方公共団体は、帰国被害者等が日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるようにするため、これらの者の相談に応じ必要な助言を行うこと、日本語の習得を援助すること等必要な施策を講ずるものとする。
(住宅の供給の促進)
第七条 国及び地方公共団体は、帰国被害者等の居住の安定を図るため、公営住宅(公営住宅法(昭和二十六年法律第百九十三号)第二条第二号に規定する公営住宅をいう。次項において同じ。)等の供給の促進のために必要な施策を講ずるものとする。
2 地方公共団体は、公営住宅の供給を行う場合には、帰国被害者等の居住の安定が図られるよう特別の配慮をするものとする。
(雇用の機会の確保)
第八条 国及び地方公共団体は、帰国被害者等の雇用の機会の確保を図るため、職業訓練の実施、就職のあっせん等必要な施策を講ずるものとする。
(教育の機会の確保)
第九条 国及び地方公共団体は、帰国被害者等が必要な教育を受けることができるようにするため、就学の円滑化、教育の充実等のために必要な施策を講ずるものとする。
(戸籍に関する手続に係る便宜の供与)
第十条 国は、帰国被害者等が戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)に規定する届出等の手続を行う場合においてその手続を円滑に行うことができるようにするため、必要な便宜を供与するものとする。
(国民年金の特例)
第十一条 帰国した被害者(帰国後引き続き一年以上本邦に住所を有する者に限る。以下同じ。)に係る北朝鮮当局によって拉致された日以降の期間であって政令で定めるものについては、政令で定めるところにより、国民年金法等の一部を改正する法律(昭和六十年法律第三十四号)第一条の規定による改正前の国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)による被保険者期間(以下「旧被保険者期間」という。)又は国民年金法第七条第一項第一号に規定する第一号被保険者としての国民年金の被保険者期間(以下「新被保険者期間」という。)とみなす。
2 国は、前項の規定により旧被保険者期間又は新被保険者期間とみなされた期間に係る当該帰国した被害者の保険料に相当する費用を負担する。
3 前項の規定により費用の負担が行われた期間に係る当該帰国した被害者の保険料は、納付されたものとみなす。
4 帰国した被害者及び帰国し、又は入国した被害者の配偶者等であって政令で定めるもの(帰国後又は入国後引き続き一年以上本邦に住所を有する者に限る。)に係る国民年金法に規定する事項及び前三項の規定の適用に関し必要な事項については、同法その他の法令の規定にかかわらず、政令で特別の定めをすることができる。
(譲渡等の禁止)
第十二条 拉致被害者等給付金及び滞在援助金(以下「拉致被害者等給付金等」という。)の支給を受ける権利は、譲渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。
(非課税)
第十三条 租税その他の公課は、拉致被害者等給付金等を標準として、課することができない。