(保護命令)
第十条 被害者が更なる配偶者からの暴力によりその生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときは、裁判所は、被害者の申立てにより、その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため、当該配偶者に対し、次の各号に掲げる事項を命ずるものとする。ただし、第二号に掲げる事項については、申立ての時において被害者及び当該配偶者が生活の本拠を共にする場合に限る。
一 命令の効力が生じた日から起算して六月間、被害者の住居(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この号において同じ。)その他の場所において被害者の身辺につきまとい、又は被害者の住居、勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいすることを禁止すること。
二 命令の効力が生じた日から起算して二週間、被害者と共に生活の本拠としている住居から退去すること。
(管轄裁判所)
第十一条 前条の規定による命令(以下「保護命令」という。)の申立てに係る事件(以下「保護命令事件」という。)は、相手方の住所(日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所)の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
2 保護命令の申立ては、次の各号に掲げる地を管轄する地方裁判所にもすることができる。
(保護命令の申立て)
第十二条 保護命令の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
二 更なる配偶者からの暴力により生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと認めるに足りる事情
三 配偶者暴力相談支援センターの職員又は警察職員に対し、配偶者からの暴力に関して相談し、又は援助若しくは保護を求めた事実の有無及びその事実があるときは、次に掲げる事項
イ 当該配偶者暴力相談支援センター又は当該警察職員の所属官署の名称
ロ 相談し、又は援助若しくは保護を求めた日時及び場所
ニ 相談又は申立人の求めに対して執られた措置の内容
2 前項の書面(以下「申立書」という。)に同項第三号イからニまでに掲げる事項の記載がない場合には、申立書には、同項第一号及び第二号に掲げる事項についての申立人の供述を記載した書面で公証人法(明治四十一年法律第五十三号)第五十八条ノ二第一項の認証を受けたものを添付しなければならない。
(迅速な裁判)
第十三条 裁判所は、保護命令事件については、速やかに裁判をするものとする。
(保護命令事件の審理の方法)
第十四条 保護命令は、口頭弁論又は相手方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。ただし、その期日を経ることにより保護命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。
2 申立書に第十二条第一項第三号イからニまでに掲げる事項の記載がある場合には、裁判所は、当該配偶者暴力相談支援センター又は当該所属官署の長に対し、申立人が相談し又は援助若しくは保護を求めた際の状況及びこれに対して執られた措置の内容を記載した書面の提出を求めるものとする。この場合において、当該配偶者暴力相談支援センター又は当該所属官署の長は、これに速やかに応ずるものとする。
3 裁判所は、必要があると認める場合には、前項の配偶者暴力相談支援センター若しくは所属官署の長又は申立人から相談を受け、若しくは援助若しくは保護を求められた職員に対し、同項の規定により書面の提出を求めた事項に関して更に説明を求めることができる。
(保護命令の申立てについての決定等)
第十五条 保護命令の申立てについての決定には、理由を付さなければならない。ただし、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる。
2 保護命令は、相手方に対する決定書の送達又は相手方が出頭した口頭弁論若しくは審尋の期日における言渡しによって、その効力を生ずる。
3 保護命令を発したときは、裁判所書記官は、速やかにその旨及びその内容を申立人の住所又は居所を管轄する警視総監又は道府県警察本部長(道警察本部の所在地を包括する方面を除く方面については、方面本部長)に通知するものとする。
(即時抗告)
第十六条 保護命令の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
2 前項の即時抗告は、保護命令の効力に影響を及ぼさない。
3 即時抗告があった場合において、保護命令の取消しの原因となることが明らかな事情があることにつき疎明があったときに限り、抗告裁判所は、申立てにより、即時抗告についての裁判が効力を生ずるまでの間、保護命令の効力の停止を命ずることができる。事件の記録が原裁判所に存する間は、原裁判所も、この処分を命ずることができる。
4 前項の規定による裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
5 前条第三項の規定は、第三項の場合及び抗告裁判所が保護命令を取り消した場合について準用する。
(保護命令の取消し)
第十七条 保護命令を発した裁判所は、第十条第一号に掲げる事項に係る保護命令の申立てをした者の申立てがあった場合には、当該保護命令を取り消さなければならない。同号に掲げる事項に係る保護命令が効力を生じた日から起算して三月が経過した場合において、当該保護命令を受けた者が申し立て、当該裁判所が当該保護命令の申立てをした者に異議がないことを確認したときも、同様とする。
2 第十五条第三項の規定は、前項の場合について準用する。
(保護命令の再度の申立て)
第十八条 保護命令が発せられた場合には、当該保護命令の申立ての理由となった配偶者からの暴力と同一の事実を理由とする再度の申立ては、第十条第一号に掲げる事項に係る保護命令に限り、することができる。
2 再度の申立てをする場合においては、申立書には、当該申立てをする時における第十二条第一項第二号の事情に関する申立人の供述を記載した書面で公証人法第五十八条ノ二第一項の認証を受けたものを添付しなければならない。
(事件の記録の閲覧等)
第十九条 保護命令に関する手続について、当事者は、裁判所書記官に対し、事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。ただし、相手方にあっては、保護命令の申立てに関し口頭弁論若しくは相手方を呼び出す審尋の期日の指定があり、又は相手方に対する保護命令の送達があるまでの間は、この限りでない。
(法務事務官による宣誓認証)
第二十条 法務局若しくは地方法務局又はその支局の管轄区域内に公証人がいない場合又は公証人がその職務を行うことができない場合には、法務大臣は、当該法務局若しくは地方法務局又はその支局に勤務する法務事務官に第十二条第二項及び第十八条第二項の認証を行わせることができる。
(民事訴訟法の準用)
第二十一条 この法律に特別の定めがある場合を除き、保護命令に関する手続に関しては、その性質に反しない限り、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定を準用する。
(最高裁判所規則)
第二十二条 この法律に定めるもののほか、保護命令に関する手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。