河川法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第64号
公布年月日: 平成7年4月5日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

都市の市街化進展に伴う計画的な治水対策の推進が求められる中、事業用地取得の円滑化と適正な土地利用を図りながら、河川整備と管理の適正化を進める必要性が生じている。また、河川区域内での車両・船舶等の違法放置物件の増加に対処する必要がある。これらの状況を踏まえ、地下の放水路や調節池等の河川管理施設について、河川区域の範囲を上下に限定する河川立体区域制度を新設し、併せて河川区域内の違法放置物件について、相手方を特定できない場合の監督処分手続きを整備するものである。

参照した発言:
第132回国会 衆議院 建設委員会 第9号

審議経過

第132回国会

衆議院
(平成7年3月8日)
参議院
(平成7年3月9日)
衆議院
(平成7年3月15日)
(平成7年3月17日)
参議院
(平成7年3月17日)
(平成7年3月28日)
(平成7年3月29日)
河川法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
平成七年四月五日
内閣総理大臣 村山富市
法律第六十四号
河川法の一部を改正する法律
河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)の一部を次のように改正する。
目次中「第三章 河川に関する費用(第五十九条―第七十四条)」を
第二章の二
河川立体区域(第五十八条の二―第五十八条の七)
第三章
河川に関する費用(第五十九条―第七十四条)
に改める。
第五十四条第一項中「河川区域」の下に「(第五十八条の二第一項の規定により指定したものを除く。第三項において同じ。)」を加える。
第五十六条第一項中「河川区域」の下に「(第五十八条の二第一項の規定により指定するものを除く。)」を加える。
第二章の次に次の一章を加える。
第二章の二 河川立体区域
(河川立体区域)
第五十八条の二 河川管理者は、河川管理施設が、地下に設けられたもの、建物その他の工作物内に設けられたもの又は洪水時の流水を貯留する空間を確保するためのもので柱若しくは壁及びこれらによつて支えられる人工地盤から成る構造を有するものである場合において、当該河川管理施設の存する地域の状況を勘案し、適正かつ合理的な土地利用の確保を図るため必要があると認めるときは、第六条第一項の規定にかかわらず、当該河川管理施設に係る河川区域を地下又は空間について一定の範囲を定めた立体的な区域として指定することができる。
2 河川管理者は、前項の河川区域(以下この章及び第百六条第三号において「河川立体区域」という。)を指定するときは、建設省令で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。これを変更し、又は廃止するときも、同様とする。
(河川保全立体区域)
第五十八条の三 河川管理者は、河川立体区域を指定する河川管理施設を保全するため必要があると認めるときは、当該河川立体区域に接する一定の範囲の地下又は空間を河川保全立体区域として指定することができる。
2 建設大臣は、河川保全立体区域を指定しようとするときは、あらかじめ、関係都道府県知事の意見を聴かなければならない。これを変更し、又は廃止しようとするときも、同様とする。
3 河川保全立体区域の指定は、当該河川管理施設を保全するため必要な最小限度の範囲に限つてするものとする。
4 河川管理者は、河川保全立体区域を指定するときは、建設省令で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。これを変更し、又は廃止するときも、同様とする。
5 河川保全区域が指定されている前条第一項の河川管理施設について、河川保全立体区域の指定があつたときは、当該河川保全区域の指定は、その効力を失う。
(河川保全立体区域における行為の制限)
第五十八条の四 河川保全立体区域内において、次に掲げる行為をしようとする者は、建設省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める行為については、この限りでない。
一 土地の掘削、盛土又は切土その他土地の形状を変更する行為
二 工作物の新築、改築又は除却
三 載荷重が一平方メートルにつき政令で定める重量以上の土石その他の物件の集積
2 第三十三条の規定は、相続人、合併により設立される法人その他の前項の許可を受けた者の一般承継人、同項の許可を受けた者からその許可に係る土地若しくは工作物又は当該許可に係る工作物の新築等をすべき土地(以下この項において「許可に係る土地等」という。)を譲り受けた者及び同項の許可を受けた者から賃貸借その他により当該許可に係る土地等を使用する権利を取得した者について準用する。
(河川予定立体区域)
第五十八条の五 河川管理者は、河川工事を施行するため必要があると認めるときは、河川工事の施行により新たに河川立体区域として指定すべき地下又は空間を河川予定立体区域として指定することができる。
2 河川予定立体区域の指定は、当該河川工事を施行することが当該工事の実施の計画からみて確実となつた日以後でなければ、してはならない。
3 河川管理者は、河川予定立体区域を指定するときは、建設省令で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。これを変更し、又は廃止するときも、同様とする。
4 河川予定地が指定されている第五十八条の二第一項の河川管理施設について、河川予定立体区域の指定があつたときは、当該河川予定地の指定は、その効力を失う。
(河川予定立体区域における行為の制限)
第五十八条の六 河川予定立体区域内において、次に掲げる行為をしようとする者は、建設省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める行為については、この限りでない。
一 土地の掘削、盛土、切土その他土地の形状を変更する行為
二 工作物の新築又は改築
2 河川管理者は、前項の規定による制限により損失を受けた者がある場合においては、その者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。
3 第二十二条第四項及び第五項の規定は前項の規定による損失の補償について、第三十三条の規定は相続人、合併により設立される法人その他の第一項の許可を受けた者の一般承継人、同項の許可を受けた者からその許可に係る土地若しくは工作物又は当該許可に係る工作物の新築等をすべき土地(以下この項において「許可に係る土地等」という。)を譲り受けた者及び同項の許可を受けた者から賃貸借その他により当該許可に係る土地等を使用する権利を取得した者について、準用する。
(河川管理者が権原を取得した河川予定立体区域)
第五十八条の七 河川管理者が河川予定立体区域内の地下又は空間について権原を取得した後においても、当該区域が河川立体区域となる前においても、この法律の適用については、その地下又は空間は、河川立体区域内の地下又は空間とみなす。ただし、罰則の適用については、特にその旨の定めがある場合に限る。
第七十五条に次の一項を加える。
3 前二項の規定により必要な措置をとることを命じようとする場合において、過失がなくて当該措置を命ずべき者を確知することができないときは、河川管理者は、その者の負担において、当該措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者にこれを行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、当該措置を行うべき旨及びその期限までに当該措置を行わないときは、河川管理者又はその命じた者若しくは委任した者が当該措置を行う旨を、あらかじめ公告しなければならない。
第七十七条第一項中「若しくは第五十七条第一項」を「、第五十七条第一項、第五十八条の四第一項若しくは第五十八条の六第一項」に、「第七十五条」を「第七十五条第一項若しくは第二項」に、「行なわせる」を「行わせる」に改める。
第八十七条中「又は河川予定地」を「、河川予定地、河川保全立体区域又は河川予定立体区域」に、「行なつて」を「行つて」に、「若しくは第五十七条第一項」を「、第五十七条第一項、第五十八条の四第一項若しくは第五十八条の六第一項」に、「行ない」を「行い」に改める。
第八十九条第一項中「若しくは河川予定地」を「、河川予定地、河川保全立体区域若しくは河川予定立体区域」に、「行なう」を「行う」に改める。
第九十五条中「行なう」を「行う」に、「及び第五十七条第一項」を「、第五十七条第一項、第五十八条の四第一項及び第五十八条の六第一項」に改める。
第九十七条第三項第一号中「若しくは第五十七条第一項」を「、第五十七条第一項、第五十八条の四第一項若しくは第五十八条の六第一項」に改める。
第百四条を次のように改める。
第百四条 次の各号の一に該当する者は、三月以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
一 第五十五条第一項の規定に違反して、河川保全区域内において同項各号の一に該当する行為をした者
二 第五十八条の四第一項の規定に違反して、河川保全立体区域内において同項各号の一に該当する行為をした者
第百五条第四号中「又は第五十五条第一項」を「、第五十五条第一項又は第五十八条の四第一項」に改める。
第百六条第三号中「河川予定地内の土地」の下に「又は第五十八条の七の規定により河川立体区域内の地下若しくは空間とみなされる河川予定立体区域内の地下若しくは空間」を加え、同条第四号及び第五号中「河川予定地内の土地」の下に「又は同号に規定する河川予定立体区域内の地下若しくは空間」を加える。
第百八条中「及び第五十七条第三項」を「、第五十七条第三項、第五十八条の四第二項及び第五十八条の六第三項」に改める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(不動産登記法の一部改正)
2 不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)の一部を次のように改正する。
第九十条第一項中「高規格堤防特別区域内」の下に「又ハ同法第五十八条の二第二項ノ河川立体区域内」を加え、同条第二項及び第三項中「高規格堤防特別区域内」の下に「若クハ河川立体区域内」を加える。
(採石法の一部改正)
3 採石法(昭和二十五年法律第二百九十一号)の一部を次のように改正する。
第十条第二項中「若しくは第五十六条」を「、第五十六条、第五十八条の三若しくは第五十八条の五」に、「土地若しくは河川予定地」を「土地、河川予定地、河川保全立体区域内の土地若しくは河川予定立体区域内の土地」に、「基き」を「基づき」に、「河川保全区域若しくは河川予定地」を「河川保全区域、河川予定地、河川保全立体区域若しくは河川予定立体区域」に改める。
(砂利採取法の一部改正)
4 砂利採取法(昭和四十三年法律第七十四号)の一部を次のように改正する。
第十六条中「及び同法第五十四条第一項」を「(同法第五十八条の二第一項の規定により指定されたものを含む。)、同法第五十四条第一項」に改め、「河川保全区域」の下に「及び同法第五十八条の三第一項に規定する河川保全立体区域」を、「第五十五条第一項」の下に「及び第五十八条の四第一項」を加える。
第二十七条第一項中「又は第五十五条第一項」を「、第五十五条第一項又は第五十八条の四第一項」に改め、同条第二項中「又は第五十五条第一項」を「、第五十五条第一項又は第五十八条の四第一項」に改め、「第五十五条第二項」の下に「及び第五十八条の四第二項」を加え、同条第三項中「又は第五十五条第一項」を「、第五十五条第一項又は第五十八条の四第一項」に改める。
(自転車道の整備等に関する法律の一部改正)
5 自転車道の整備等に関する法律(昭和四十五年法律第十六号)の一部を次のように改正する。
第六条第二項中「河川区域」の下に「(同法第五十八条の二の規定により指定されたものを含む。)」を加える。
法務大臣 前田勲男
通商産業大臣 橋本龍太郎
建設大臣 野坂浩賢
内閣総理大臣 村山富市