(趣旨)
第一条 この法律は、過度の国際取引による絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存を図ることの重要性にかんがみ、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(大正七年法律第三十二号)及び特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律(昭和四十七年法律第四十九号)に定めるもののほか、絶滅のおそれのある野生動植物の譲渡等の規制を行うとともに、その保護を図るための措置について定めるものとする。
(希少野生動植物)
第二条 この法律において「希少野生動植物」とは、本邦又は本邦以外の地域において過度の国際取引による絶滅のおそれのある野生動植物で政令で定めるもの(その卵若しくは種子又は加工品で政令で定めるものを含む。)をいう。
2 内閣総理大臣は、前項の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、自然環境保全審議会の意見を聴かなければならない。
(希少野生動植物の譲渡等の禁止)
第三条 希少野生動植物は、譲り渡し、若しくは譲り受け、又は引き渡し、若しくはその引渡しを受けてはならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一 環境庁長官が、総理府令で定める基準に従い、学術研究、繁殖その他の事由により特に必要であり、かつ、適切であると認めて許可をした場合
二 第六条第一項の規定による登録を受けた希少野生動植物を譲り渡し、若しくは譲り受け、又は引き渡し、若しくはその引渡しを受ける場合
三 希少野生動植物の輸出又は輸入に直接伴つて譲り渡し、若しくは譲り受け、又は引き渡し、若しくはその引渡しを受ける場合
四 希少野生動植物を譲り渡し、若しくは譲り受け、又は引き渡し、若しくはその引渡しを受ける場合におけるその当事者の一方又は双方が国の機関であるとき。
2 前項第一号の許可を受けようとする者は、総理府令で定めるところにより、環境庁長官に許可の申請をしなければならない。
3 第一項第一号の許可には、条件を付することができる。
4 前項の条件は、第一項第一号の許可に係る事項の確実な実施を図るため必要な最小限度のものに限り、かつ、当該許可を受ける者に不当な義務を課することになるものであつてはならない。
(陳列の禁止)
第四条 希少野生動植物は、販売の目的で陳列してはならない。ただし、第六条第一項の規定による登録を受けたものについては、この限りでない。
(措置命令)
第五条 環境庁長官は、第三条第三項の規定により付された許可の条件に違反している者に対して、当該許可に係る希少野生動植物の保護のために必要があると認めるときは、飼養施設の改善その他の必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
2 環境庁長官は、前条の規定に違反して希少野生動植物の陳列が行われているときは、当該陳列を行つている者に対して、その中止その他必要な措置を命ずることができる。
(希少野生動植物の登録)
第六条 環境庁長官は、希少野生動植物で商業的目的で繁殖されたものであることその他の政令で定める要件に該当するものの登録をするものとする。
2 前項の登録を受けようとする者は、総理府令で定めるところにより、環境庁長官に登録の申請をしなければならない。
3 環境庁長官は、第一項の規定による登録をしたときは、申請者に対し、総理府令で定めるところにより、登録票を交付しなければならない。
4 登録を受けた希少野生動植物を所持する者は、当該希少野生動植物の登録票を喪失し、又は盗取されたときは、総理府令で定めるところにより、環境庁長官に登録票の再交付を申請することができる。
5 環境庁長官は、前項の申請があつたときは、総理府令で定めるところにより、登録票を再交付するものとする。
(登録を受けた希少野生動植物の譲渡等)
第七条 登録を受けた希少野生動植物を譲り渡し、若しくは譲り受け、又は引き渡し、若しくはその引渡しを受ける者は、当該希少野生動植物の登録票とともにしなければならない。
2 登録票は、当該登録票に係る希少野生動植物とともにする場合を除いては、譲り渡し、若しくは譲り受け、又は引き渡し、若しくはその引渡しを受けてはならない。
3 登録を受けた希少野生動植物を譲り受け、又はその引渡しを受けた者は、総理府令で定めるところにより、三十日以内に環境庁長官にその旨を届け出なければならない。
(登録票の返納等)
第八条 登録を受けた希少野生動植物を所持する者は、次の各号の一に該当するに至つた場合においては、三十日以内に登録票(第二号の場合にあつては、回復した登録票)を環境庁長官に返納しなければならない。
一 当該希少野生動植物を喪失し、若しくは盗取されたことにより、又はその他の理由により所持しないこととなつた場合(登録票とともに当該希少野生動植物を譲り渡し、又は引き渡した場合を除く。)
二 登録票の再交付を受けた場合において、喪失し、又は盗取された登録票を回復したとき。
2 第六条第四項及び第五項の規定は、登録を受けた希少野生動植物を喪失し、又は盗取された者が、前項の規定により登録票を環境庁長官に返納した後、当該希少野生動植物を回復した場合について準用する。
(登録票の備付け)
第九条 登録を受けた希少野生動植物を販売の目的で陳列する場合には、登録票を備え付けておかなければならない。
(他の法律による処分との調整)
第十条 特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律第二条第一項に規定する特殊鳥類又はその卵である希少野生動植物については、同法第三条第一項ただし書の許可を受けた場合には、第三条第一項第一号の許可があつたものとみなす。
2 特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律第三条第二項の規定により付された同条第一項ただし書の許可の条件は、第三条第三項の規定により付された同条第一項第一号の許可の条件とみなす。
(立入検査)
第十一条 環境庁長官は、この法律の施行に必要な限度において、第三条第一項第一号の許可を受けた者又は希少野生動植物を販売の目的で陳列している者に対し、当該希少野生動植物の状況その他必要な事項の報告を求め、又はその職員をして、希少野生動植物の保管されているこれらの者の土地、店舗、事業所等に立ち入り、当該希少野生動植物若しくは飼養施設その他必要な物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められるものと解釈してはならない。
(希少野生動植物の保護)
第十二条 環境庁長官は、広報活動等を通じて、希少野生動植物の種の保存の重要性について、国民の理解を深めるよう適切な措置を講じなければならない。
2 希少野生動植物を所持する者は、当該希少野生動植物の種の保存することの重要性を自覚し、これを適切に管理しなければならない。
3 環境庁長官は、希少野生動植物の所持者に対して、当該希少野生動植物の保護を図るため必要があると認めるときは、飼養施設の改善その他の必要な措置について助言し、又は適当な飼養施設等のあつせんその他の措置を講ずることができる。
(国庫に帰属した希少野生動植物についての措置)
第十三条 関係行政機関の長は、法令の規定により国庫に帰属した希少野生動植物について必要な措置を講じなければならない。
(協議)
第十四条 環境庁長官は、第三条第一項第一号又は第六条第二項の総理府令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、農林水産大臣及び通商産業大臣に協議しなければならない。
(経過措置)
第十五条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
(罰則)
第十六条 次の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
二 第五条第一項又は第二項の規定による命令に違反した者
三 偽りその他不正の手段により第六条第一項の規定による登録を受けた者
第十七条 次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第三条第三項の規定により付された許可の条件に違反した者
第十八条 次の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
一 偽りその他不正の手段により第六条第五項(第八条第二項において準用する場合を含む。)の規定による登録票の再交付を受けた者
二 第七条第一項若しくは第二項、第八条第一項又は第九条の規定に違反した者
四 第十一条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
第十九条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。