相続税法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第78号
公布年月日: 昭和47年6月19日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

政府は、税制改正の一環として、夫婦間における財産相続の実情を考慮し、配偶者に対する相続税額の軽減措置を拡充するとともに、心身障害者である相続人について障害者控除を新設することを目的としている。具体的には、婚姻期間20年以上の配偶者については3000万円を限度とする取得額に対応する相続税相当額を控除し、婚姻期間10年から20年の場合は段階的に控除限度額を設定する。また、心身障害者については70歳までの年数1年につき、一般の場合は1万円、重度の場合は3万円の税額控除を行う。さらに、不動産の物納制度についても整備を行うものである。

参照した発言:
第68回国会 衆議院 大蔵委員会 第22号

審議経過

第68回国会

参議院
(昭和47年3月16日)
衆議院
(昭和47年4月25日)
(昭和47年4月26日)
(昭和47年5月9日)
(昭和47年5月10日)
(昭和47年5月12日)
(昭和47年5月16日)
(昭和47年5月17日)
(昭和47年5月18日)
(昭和47年5月19日)
参議院
(昭和47年5月23日)
(昭和47年5月30日)
(昭和47年6月1日)
(昭和47年6月6日)
(昭和47年6月8日)
(昭和47年6月9日)
(昭和47年6月12日)
(昭和47年6月16日)
相続税法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和四十七年六月十九日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第七十八号
相続税法の一部を改正する法律
相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)の一部を次のように改正する。
第十九条の二中「当該配偶者については」の下に「、次項の規定の適用を受ける場合を除き」を加え、同条に次の五項を加える。
2 被相続人との婚姻期間が十年以上である配偶者が当該被相続人からの相続又は遺贈により財産を取得した場合には、当該配偶者については、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した残額があるときは、当該残額をもつてその納付すべき相続税額とし、第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額以下であるときは、その納付すべき相続税額は、ないものとする。
一 当該配偶者につき第十五条から第十七条まで及び前条の規定により算出した金額
二 当該相続又は遺贈により財産を取得したすべての者に係る相続税の総額に、次に掲げる金額のうちいずれか少ない金額が当該相続又は遺贈により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格の合計額のうちに占める割合を乗じて算出した金額(当該金額が当該配偶者につき前項第二号の規定を適用して算出した金額に満たない場合には、当該算出した金額)
イ 千万円と二百万円に当該婚姻期間のうち十年をこえる年数を乗じて計算した金額との合計額(当該合計額が三千万円をこえる場合には、三千万円)
ロ 当該相続又は遺贈により財産を取得した配偶者に係る相続税の課税価格に相当する金額
3 前項の場合において、相続人が同項に規定する婚姻期間が十年以上である配偶者に該当するかどうかの判定は、同項の被相続人に係る相続開始の時の現況によるものとし、当該期間の計算に関し必要な事項は、政令で定める。
4 第二項の相続又は遺贈に係る第二十七条第一項の規定による申告書の提出期限(以下この条において「申告期限」という。)までに、当該相続又は遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によつてまだ分割されていない場合における第二項の規定の適用については、その分割されていない財産は、同項第二号ロの課税価格の計算の基礎とされる財産に含まれないものとする。ただし、その分割されていない財産が申告期限までに分割されなかつたことにつき、当該相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合において、当該財産の分割ができることとなつた日として政令で定める日の翌日から四月以内に当該財産が分割されたときは、当該財産については、この限りでない。
5 第二項の規定は、第二十七条第一項の規定による申告書に、第二項の規定の適用を受ける旨及び同項各号に掲げる金額の計算に関する明細の記載をし、かつ、同項の婚姻期間が十年以上である旨を証する書類その他の大蔵省令で定める書類を添附して、当該申告書をその申告期限内に提出した場合に限り、適用する。
6 税務署長は、前項の申告書の申告期限内の提出がなかつた場合又は同項の記載若しくは添附がない申告書の提出があつた場合においても、その申告期限内の提出がなかつたこと又はその記載若しくは添附がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、当該記載をした書類及び同項の大蔵省令で定める書類の提出があつた場合に限り、第二項の規定を適用することができる。
第十九条の三第一項中「除く」の下に「。次条第一項において同じ」を加え、同条の次に次の一条を加える。
(障害者控除)
第十九条の四 相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続又は遺贈に係る被相続人の第十五条第二項に規定する相続人に該当し、かつ、障害者である場合には、その者については、同条から前条までの規定により算出した金額から一万円(その者が特別障害者である場合には、三万円)にその者が七十歳に達するまでの年数(当該年数が一年未満であるとき又はこれに一年未満の端数があるときは、これを一年とする。)を乗じて算出した金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。
2 前項に規定する障害者とは、心神喪失の常況にある者、失明者その他の精神又は身体に障害がある者で政令で定めるものをいい、同項に規定する特別障害者とは、同項の障害者のうち精神又は身体に重度の障害がある者で政令で定めるものをいう。
3 前条第二項及び第三項の規定は、第一項の規定を適用する場合について準用する。この場合において、同条第二項中「前条」とあるのは、「第十九条の三」と読み替えるものとする。
第二十七条第一項中「第二十一条まで」を「第十九条まで、第十九条の二第一項及び第十九条の三から第二十一条まで」に改める。
第三十二条中第六号を第七号とし、第五号の次に次の一号を加える。
六 第十九条の二第四項ただし書の規定に該当したことにより、同項の分割が行なわれた時以後において同条第二項の規定を適用して計算した相続税額がその時前において同項の規定を適用して計算した相続税額と異なることとなつたこと(第一号に該当する場合を除く。)。
第四十三条第三項中「供せられているとき」を「供されており若しくは供されることが確実であると見込まれるとき、」に改め、同条第五項中「物納及び」を「物納(その撤回を含む。)及び」に改め、同項を同条第十項とし、同条第四項の次に次の五項を加える。
5 税務署長は、物納の許可をした不動産のうちに賃借権その他の不動産を使用する権利の目的となつている不動産がある場合において、当該物納の許可を受けた者が、その後物納に係る相続税を、金銭で一時に納付し、又は政令で定めるところにより延納の許可を受けて納付することができることとなつたときは、当該不動産については、その収納後においても、当該物納の許可を受けた日から一年以内にされたその者の申請により、その物納の撤回を承認することができる。ただし、当該不動産が換価されていたとき、又は公用若しくは公共の用に供されており若しくは供されることが確実であると見込まれるときは、この限りでない。
6 前項の規定による延納の許可を申請しようとする者は、第三十九条第一項の規定にかかわらず、前項の規定による物納の撤回の申請の際に当該延納の許可の申請をすることができる。
7 税務署長は、第五項の規定により物納の撤回を承認する場合において、その物納の撤回に係る相続税のうちに金銭で一時に納付すべき相続税があるときは、あらかじめ、その物納の撤回を申請した者に、一時に納付すべき相続税の額を通知しなければならない。この場合において、その物納の撤回を申請した者がその通知書が発せられた日から一月以内にその通知に係る相続税を完納しないときは、その者は、物納の撤回の申請を取り下げたものとみなす。
8 第五項の規定による物納の撤回の承認を受けた者は、その物納の撤回に係る相続税の納付にあわせて、当該相続税の納期限又は納付すべき日(同日前に物納の許可の申請があつた場合には、当該申請があつた日)の翌日から次の各号に掲げる相続税の区分に応じ当該各号に掲げる日までの期間につき、政令で定めるところにより計算した金額に相当する利子税を納付しなければならない。
一 前項の通知に係る相続税 当該相続税を納付した日
二 第五項の規定による延納の許可を受けた相続税 その延納期限(当該期限前に当該相続税の全部の納付があつた場合には、その納付の日)
9 第二項の規定により相続税の納付があつたものとされた日後に当該相続税に係る物納の撤回の承認があつた場合には、同日の翌日からその物納の撤回の承認があつた日までの期間に対応する部分の利子税は、前項の規定にかかわらず、納付することを要しないものとし、当該承認に係る不動産につき当該期間内に国が取得すべき賃貸料その他の使用料は、返還することを要しないものとする。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 改正後の相続税法(以下「新法」という。)の規定は、別段の定めがあるものを除き、昭和四十七年一月一日以後に相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により取得した財産に係る相続税について適用し、同日前に相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税については、なお従前の例による。
3 新法第十九条の二第二項に規定する配偶者が昭和四十七年一月一日以後に相続又は遺贈により財産を取得した場合において、当該相続又は遺贈に係る新法第二十七条第一項の規定による申告書の提出期限がこの法律の施行の日から起算して六月を経過する日の属する月の翌月の一日前に到来し、かつ、当該提出期限の翌日から当該翌月の一日までの間に当該財産の分割がされたときは、当該財産に係る相続税に対する新法第十九条の二及び第三十二条の規定の適用については、新法第十九条の二第四項ただし書の規定に該当したものとみなす。
4 新法第四十三条第五項から第九項までの規定は、この法律の施行の日以後に同条第五項の規定による物納の撤回の申請をすることができる期限が到来する場合について適用する。
5 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十条の四第十一項中「納期限までに、又は納付すべき日に」を「納期限又は納付すべき日までに」に、「及び第三項」を「、第三項及び第五項」に改め、「「贈与税」と」の下に「、同条第六項中「第三十九条第一項」とあるのは「第三十九条第三項」と、同条第七項中「相続税」とあるのは「贈与税」と、同条第八項中「相続税」とあるのは「贈与税」と、「納期限又は納付すべき日(同日前に物納の許可の申請があつた場合には、当該申請があつた日)」とあるのは「租税特別措置法第七十条の四第一項の規定による納期限」と、同条第九項中「相続税」とあるのは「贈与税」と」を加える。
第七十条の六第一項中「第三十八条第一項」の下に「又は第四十三条第五項」を加える。
6 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十三条の七第五号の次に次の一号を加える。
五の二 相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)第四十三条第五項(租税特別措置法第七十条の四第十一項において準用する場合を含む。)の規定による承認に基づき物納の許可があつた不動産をその物納の許可を受けた者に移す場合における不動産の取得
第三百四十三条第五項中「(昭和二十五年法律第七十三号)」を削る。
大蔵大臣 水田三喜男
内閣総理大臣 佐藤栄作