(趣旨)
第一条 この法律は、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約(以下「条約」という。)を実施するため、所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)、法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)及び地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の特例その他必要な事項を定めるものとする。
(配当に対する源泉徴収に係る所得税の税率の特例)
第二条 所得税法第一条第二項の規定に該当する個人又は同条第六項の規定に該当する法人(同条第七項の規定により法人とみなされる社団又は財団を含む。)で条約第三条第一項(d)に規定するフランスの居住者(条約第二十九条第一項の規定により条約が適用されるフランス共和国の海外領域に係る当該居住者に相当するもの及び条約の追加議定書Ⅰ第二項の規定によりフランスの居住者とみなされる者を含み、同議定書Ⅰ第三項に規定する者を除く。)であるもの(以下「フランスの居住者」という。)が支払を受ける条約第十一条第一項に規定する配当で同法の施行地にその源泉があるもの(その者の同法の施行地にある条約第四条に規定する恒久的施設(以下「恒久的施設」という。)に帰せられるものを除く。)に対する同法第十七条第一項、第十八条第二項又は第四十一条第一項若しくは第二項の規定の適用については、これらの規定中「百分の二十」とあるのは、「百分の十五」とする。
(利子、使用料等に対する源泉徴収に係る所得税の税率の特例)
第三条 フランスの居住者が支払を受ける条約第十二条第一項に規定する利子又は条約第十三条第一項若しくは第四項に規定する使用料若しくは収益で所得税法の施行地にその源泉があるもの(その者の同法の施行地にある恒久的施設に帰せられるものを除く。)に対する同法第十七条第一項、第十八条第二項又は第四十一条第一項若しくは第二項の規定の適用については、これらの規定中「百分の二十」とあるのは、「百分の十」とする。
2 前項の規定は、同項に規定する利子、使用料又は収益に対し所得税を課さず、又はこれらの所得に対する所得税額をその支払を受けるべき金額の百分の十に相当する金額以下とする他の法律の規定の適用を妨げない。
(配当、利子、使用料等に対する申告納税に係る所得税の軽減)
第四条 所得税法第一条第八項第一号に掲げる事業を有するフランスの居住者である個人が次の各号に掲げる所得を有する場合において、その者の所得税額のうち当該所得に対応する部分の金額が、第一号に規定する配当の金額、第二号に掲げる所得に係る収入金額及び第三号に掲げる所得の金額に当該各号に掲げる割合を乗じて計算した金額の合計額をこえるときは、その者の所得税額につき、そのこえる金額に相当する税額を軽減する。
二 前条第一項に規定する利子、使用料又は収益に係る所得 百分の十
三 条約第十四条第二項(C)の規定の適用を受ける収益で所得税法の施行地にその源泉があるものに係る所得(同法第九条の規定による総所得金額の計算上所得税の課税標準に含まれる部分に限る。) 百分の二十五
2 フランスの居住者である個人(前項に規定する者を除く。)が次の各号に掲げる所得を有する場合において、その者の所得税額のうち当該所得に対応する部分の金額が、第一号に掲げる所得に係る収入金額及び第二号に掲げる所得の金額に当該各号に掲げる割合を乗じて計算した金額の合計額をこえるときは、その者の所得税額につき、そのこえる金額に相当する税額を軽減する。
一 前条第一項に規定する使用料(その者の所得税法の施行地にある恒久的施設に帰せられるものを含まない。)で同法第一条第三項第一号に掲げる所得に該当するものに係る所得 百分の十
3 前二項に規定する所得税額のうちこれらの規定に規定する所得に対応する部分の金額は、当該所得の生じた年分につき、これらの規定の適用がないものとして計算した場合における所得税額に相当する金額から、当該所得が生じなかつたものとして計算した場合における所得税額に相当する金額を控除して得た金額とする。
(配当、利子、使用料等に対する法人税の軽減)
第五条 法人税法第一条第四項第一号に掲げる事業を有するフランスの居住者である法人(同条第二項の規定により法人とみなされる社団又は財団を含む。以下同じ。)が次の各号に掲げる所得を有する場合において、その者の法人税額のうち当該所得に対応する部分の金額が、第一号に規定する配当の金額、第二号に掲げる所得に係る収入金額及び第三号に掲げる所得の金額に当該各号に掲げる割合を乗じて計算した金額の合計額をこえるときは、その者の法人税額につき、そのこえる金額に相当する税額を軽減する。
一 第二条に規定する配当に係る所得 百分の十三・二
二 第三条第一項に規定する利子、使用料又は収益に係る所得 百分の八・八
三 条約第十四条第二項(C)の規定の適用を受ける収益で法人税法の施行地にその源泉があるものに係る所得 百分の二十五
2 フランスの居住者である法人(前項に規定する者を除く。)が次の各号に掲げる所得を有する場合において、その者の法人税額のうち当該所得に対応する部分の金額が、第一号に掲げる所得に係る収入金額及び第二号に掲げる所得の金額に当該各号に掲げる割合を乗じて計算した金額の合計額をこえるときは、その者の法人税額につき、そのこえる金額に相当する税額を軽減する。
3 前二項に規定する法人税額のうちこれらの規定に規定する所得に対応する部分の金額は、当該所得の生じた事業年度分につき、これらの規定の適用がないものとして計算した場合における法人税額に相当する金額から、当該所得が生じなかつたものとして計算した場合における法人税額に相当する金額を控除して得た金額とする。
(配当、利子、使用料等に係る法人の道府県民税又は市町村民税の税率の特例)
第六条 フランスの居住者である法人に対して課する次の各号に掲げる地方税については、その課税標準である法人税額のうち前条第一項各号に掲げる所得に対応する部分の金額に係る税率は、それぞれ次の各号に掲げる税率とする。
2 前項に規定するその課税標準である法人税額のうち前条第一項各号に掲げる所得に対応する部分の金額は、当該法人の法人税額のうち、当該所得に対応する部分の金額として同条第三項の規定により計算した金額から同条第一項又は第二項の規定によつて軽減された金額を控除した金額とする。
3 二以上の都道府県において事務所又は事業所を有する法人でこの条の規定の適用を受けるものが地方税法第五十七条第一項又は第三百二十一条の十三第一項の規定によりその法人税額を関係都道府県又は関係市町村に分割する場合には、当該法人税額をこの条の規定の適用がある部分の金額とその他の部分の金額とに区分して、それぞれ分割するものとする。
(地方税に関する条約第二十七条第二項の協議に係る手続)
第七条 大蔵大臣は、地方公共団体が課する租税に関し条約第二十七条第二項の協議をする場合には、あらかじめ自治大臣に協議し、その結果に基づいて、同項の協議をするものとする。
2 自治大臣は、前項の規定により大蔵大臣から協議を受けた場合には、必要に応じ、関係地方公共団体の意見をきかなければならない。
(実施規定)
第八条 第二条から前条までに定めるもののほか、条約の実施及びこの法律の適用に関し必要な事項は、大蔵省令、自治省令で定める。