臨時司法制度調査会設置法
法令番号: 法律第122号
公布年月日: 昭和37年5月11日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

近年の訴訟事件の増加と複雑化に伴い、裁判官の努力にもかかわらず訴訟遅延が著しい状況となっている。一方で裁判官志望者は減少傾向にあり、必要最小限の裁判官数の確保も困難な状況である。この事態を打開するため、裁判官の任用制度や給与制度等の根本的な再検討と抜本的対策の樹立が急務となっている。この問題は司法制度の根本に関わることから、各界の英知を集めて検討するため、内閣に臨時司法制度調査会を設置することとした。

参照した発言:
第40回国会 衆議院 内閣委員会 第6号

審議経過

第40回国会

衆議院
(昭和37年2月13日)
参議院
(昭和37年2月27日)
衆議院
(昭和37年4月10日)
(昭和37年4月12日)
(昭和37年4月13日)
参議院
(昭和37年4月17日)
(昭和37年4月19日)
(昭和37年4月23日)
臨時司法制度調査会設置法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十七年五月十一日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第百二十二号
臨時司法制度調査会設置法
(設置)
第一条 内閣に、臨時司法制度調査会(以下「調査会」という。)を置く。
(所掌事務)
第二条 調査会は、司法制度の運営の適正を確保するため、主として、次の各号に掲げる事項に関する緊急に必要な基本的かつ総合的な施策について調査審議する。
一 法曹一元の制度(裁判官は弁護士となる資格を有する者で裁判官としての職務以外の法律に関する職務に従事したもののうちから任命することを原則とする制度をいう。)に関する事項
二 前号に掲げるもののほか、裁判官及び検察官の任用制度及び給与制度に関する事項
2 調査会は、前項の施策に関して、内閣の諮問に答申し、又は内閣に意見を述べる。
3 調査会は、前項の答申又は意見を内閣から国会に報告するように、内閣に申し出ることができる。
(組織)
第三条 調査会は、委員二十人以内で組織する。
(委員)
第四条 委員は、次の各号に掲げる者について、内閣が任命する。
一 衆議院議員のうちから衆議院が指名する者 四人
二 参議院議員のうちから参議院が指名する者 三人
三 裁判官 三人
四 検察官 三人
五 弁護士 三人
六 学識経験のある者 四人以内
2 内閣は、前項第五号及び第六号の委員の任命については、あらかじめ両議院の同意を得なければならない。
3 第一項第五号及び第六号の委員について欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣は、前項の規定にかかわらず、これらの委員を任命することができる。
4 前項の場合においては、任命後最初の国会で両議院の承認を得なければならない。この場合において、両議院の承認を得られないときは、内閣は、直ちにその委員を罷免しなければならない。
5 内閣は、第一項第五号及び第六号の委員について、心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、両議院の同意を得て、これを罷免することができる。
6 委員は、非常勤とする。
7 裁判官である委員が特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)第九条の規定により受けるべき手当に関しては、同法第十四条の規定の例による。
(会長)
第五条 調査会に、会長一人を置き、委員の互選によつてこれを定める。
2 会長は、会務を総理する。
3 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。
(専門委員)
第六条 調査会に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。
2 専門委員は、学識経験のある者のうちから、会長の推薦により、内閣総理大臣が任命する。
3 専門委員は、当該専門の事項に関する調査が終了したときは、解任されるものとする。
4 専門委員は、非常勤とする。
(幹事)
第七条 調査会に、幹事を置く。
2 幹事は、学識経験のある者及び関係機関の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。
3 幹事は、調査会の所掌事務について、委員を補佐する。
4 幹事は、非常勤とする。
(資料提出の要求等)
第八条 調査会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、行政機関、裁判所並びに日本弁護士連合会及び弁護士会に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。
2 調査会は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に掲げる者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。
(事務局)
第九条 調査会の事務を処理させるため、調査会に、事務局を置く。
2 事務局に、事務局長、事務局事務官その他所要の職員を置く。
3 事務局長は、内閣総理大臣が任命する。
4 事務局長は、会長の命を受けて、事務局の事務を掌理し、部内の職員の任免、進退を行ない、かつ、その服務につき、これを監督する。
5 事務官は、命を受け、事務を整理する。
6 事務局長を除くほか、事務局に恒常的に置く必要がある職に充てるべき常勤の職員の定員は、四人とする。
(主任の大臣)
第十条 調査会に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。
(委任規定)
第十一条 この法律で定めるもののほか、調査会に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、昭和三十七年九月一日から施行する。ただし、附則第二項の規定は、公布の日から施行する。
(この法律の施行前における指名及び同意)
2 第四条第一項第一号及び第二号の指名並びに同条第二項の同意は、この法律(前項ただし書に係る部分を除く。)の施行前においても、これをすることができる。
(国家公務員法の一部改正)
3 国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)の一部を次のように改正する。
第二条第三項中第十一号の三を第十一号の四とし、第十一号の二の次に次の一号を加える。
十一の三 臨時司法制度調査会の委員
(法務省設置法の一部改正)
4 法務省設置法(昭和二十二年法律第百九十三号)の一部を次のように改正する。
附則第十七条の次に次の一条を加える。
第十八条 法務大臣は、臨時司法制度調査会設置法(昭和三十七年法律第百二十二号)第二条第一項に規定する施策については、臨時司法制度調査会が置かれている間は、法制審議会に諮問しないものとする。
(特別職の職員の給与に関する法律の一部改正)
5 特別職の職員の給与に関する法律の一部を次のように改正する。
第一条第十七号の二の次に次の一号を加える。
十七の三 臨時司法制度調査会の委員
(この法律の失効)
6 この法律は、昭和三十九年八月三十一日限り、その効力を失う。
内閣総理大臣 池田勇人
法務大臣 植木庚子郎
大蔵大臣 水田三喜男