日本科学技術情報センター法
法令番号: 法律第84号
公布年月日: 昭和32年4月30日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

科学技術の発展が世界経済と生活水準向上の原動力となる中、日本の科学技術進歩のためには、増大する内外の科学技術情報を迅速に収集・提供する必要がある。従来は学界や産業界が個別に情報収集を行っていたが、情報量が膨大で分散しており、十分活用されていない状況であった。そこで、科学技術振興政策の一環として、情報を総合的に収集・蓄積し提供する中枢機関として日本科学技術情報センターを設立することとした。これにより、研究調査の能率化と産業の生産活動の合理化に大きな効果が期待できる。

参照した発言:
第26回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第9号

審議経過

第26回国会

衆議院
参議院
(昭和32年3月7日)
衆議院
(昭和32年3月19日)
参議院
(昭和32年4月2日)
(昭和32年4月16日)
(昭和32年4月18日)
(昭和32年4月19日)
(昭和32年4月23日)
(昭和32年4月24日)
衆議院
(昭和32年5月19日)
参議院
(昭和32年5月19日)
日本科学技術情報センター法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十二年四月三十日
内閣総理大臣 岸信介
法律第八十四号
日本科学技術情報センター法
目次
第一章
総則(第一条―第十条)
第二章
役員及び職員(第十一条―第二十一条)
第三章
業務(第二十二条―第二十四条)
第四章
財務及び会計(第二十五条―第三十五条)
第五章
監督(第三十六条・第三十七条)
第六章
雑則(第三十八条―第四十一条)
第七章
罰則(第四十二条―第四十四条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 日本科学技術情報センターは、わが国における科学技術情報に関する中枢的機関として内外の科学技術情報を迅速かつ適確に提供することにより、わが国における科学技術の振興に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「科学技術情報」とは、科学技術(人文科学のみに係るものを除く。)に関する情報をいう。
(法人格)
第三条 日本科学技術情報センター(以下「情報センター」という。)は、法人とする。
(事務所)
第四条 情報センターは、主たる事務所を東京都に置く。
2 情報センターは、必要な地に従たる事務所を置くことができる。
(資本金)
第五条 情報センターの資本金は、その設立に際し政府及び政府以外の者が出資する額の合計額とする。
2 政府は、予算の範囲内において、情報センターに対し出資することができる。
3 情報センターは、必要があるときは、内閣総理大臣の認可を受けて、その資本金を増加することができる。
(出資証券)
第六条 情報センターは、出資に対し出資証券を発行する。
2 出資証券は、記名式とする。
3 前項に規定するもののほか、出資証券に関し必要な事項は、政令で定める。
(定款)
第七条 情報センターは、定款をもつて次の事項を規定しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 資本金、出資及び資産に関する事項
五 役員及び会議に関する事項
六 業務及びその執行に関する事項
七 会計に関する事項
八 公告に関する事項
九 定款の変更に関する事項
2 定款の変更は、内閣総理大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(登記)
第八条 情報センターは、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称使用の制限)
第九条 情報センターでない者は、日本科学技術情報センターという名称又はこれに類似する名称を用いてはならない。
(民法の準用)
第十条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、情報センターについて準用する。
第二章 役員及び職員
(役員)
第十一条 情報センターに、役員として、理事長一人、常務理事一人、理事四人以内及び監事二人以内を置く。
(役員の職務及び権限)
第十二条 理事長は、情報センターを代表し、その業務を総理する。
2 常務理事は、定款で定めるところにより、情報センターを代表し、理事長を補佐して情報センターの業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。
3 理事は、定款で定めるところにより、理事長を補佐して情報センターの業務を掌理し、理事長及び常務理事に事故があるときはその職務を代理し、理事長及び常務理事が欠員のときはその職務を行う。
4 監事は、情報センターの業務を監査する。
(役員の任命)
第十三条 理事長及び監事は、内閣総理大臣が任命する。
2 常務理事及び理事は、理事長が内閣総理大臣の認可を受けて任命する。
(役員の任期)
第十四条 理事長、常務理事及び理事の任期は、四年とし、監事の任期は、二年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第十五条 次の各号の一に該当する者は、役員となることができない。
一 国務大臣、国会議員、政府職員(人事院が指定する非常勤の者を除く。)、地方公共団体の議会の議員又は地方公共団体の長若しくは常勤の職員
二 政党の役員
(役員の解任)
第十六条 内閣総理大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が前条各号の一に該当するに至つたときは、その役員を解任しなければならない。
2 内閣総理大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が次の各号の一に該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反があるとき。
3 理事長は、前項の規定によりその任命に係る役員を解任しようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。
(役員の兼職禁止)
第十七条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、内閣総理大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第十八条 情報センターと理事長又は常務理事との利益が相反する事項については、これらの者は、代表権を有しない。この場合には、監事が情報センターを代表する。
(代理人の選任)
第十九条 理事長及び常務理事は、理事又は情報センターの職員のうちから、情報センターの業務の一部に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。
(職員の任命)
第二十条 情報センターの職員は、理事長が任命する。
(役員及び職員の公務員たる性質)
第二十一条 役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第三章 業務
(業務の範囲)
第二十二条 情報センターは、第一条の目的を達成するため、次の業務を行う。
一 内外の科学技術情報を収集すること。
二 内外の科学技術情報を分類し、整理し、及び保管すること。
三 内外の科学技術情報を定期的に、若しくは時宜に応じて、又は依頼に応じて提供すること。
四 前各号に掲げる業務を妨げない範囲内において、情報センターが保管する内外の科学技術情報を閲覧させること。
五 前各号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するために必要な業務を行うこと。
2 情報センターは、前項第五号に掲げる業務を行おうとするときは、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。
(業務の方法)
第二十三条 情報センターは、業務開始の際、業務の方法を定め、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務の方法に定めるべき事項は、総理府令で定める。
(関係機関との協力)
第二十四条 情報センターは、その業務を行うに際しては、できる限り、国立国会図書館その他の関係機関の文献及び資料の利用を図るほか、関係機関と緊密に協力しなければならない。
第四章 財務及び会計
(事業年度)
第二十五条 情報センターの事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終る。
(予算等の認可)
第二十六条 情報センターは、毎事業年度、予算、事業計画及び資金計画を作成し、事業年度開始前に内閣総理大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(決算)
第二十七条 情報センターは、毎事業年度の決算を翌年度の六月三十日までに完結しなければならない。
(財務諸表)
第二十八条 情報センターは、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下この条及び次条において「財務諸表」という。)を作成し、決算完結後二月以内に内閣総理大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
2 情報センターは、前項の規定により財務諸表を内閣総理大臣に提出するときは、これに予算の区分に従い作成した当該事業年度の決算報告書を添附し、並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見をつけなければならない。
(書類の送付)
第二十九条 情報センターは、第二十六条又は前条第一項の規定による認可又は承認を受けたときは、当該認可又は承認に係る予算、事業計画及び資金計画に関する書類又は財務諸表を、情報センターに出資した者のうち政府以外のものに送付しなければならない。
(利益及び損失の処理)
第三十条 情報センターは、毎事業年度、経営上利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額に政令で定める率を乗じて得た額以上の額を積み立てなければならない。
2 情報センターは、前項の規定による積立を行つた後、なお残余があるときは、内閣総理大臣の認可を受けて、その残余の額を出資者の出資に対しそれぞれその出資額に応じて分配することができる。
3 情報センターは、毎事業年度、経営上損失を生じたときは、第一項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金)
第三十一条 情報センターは、短期借入金をする場合には、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。
2 前項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができない金額に限り、内閣総理大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。
3 前項ただし書の規定により借り換えた短期借入金は、一年以内に償還しなければならない。
(補助金)
第三十二条 政府は、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、情報センターに対し第二十二条第一項第一号及び第二号に掲げる業務に要する経費の一部を補助することができる。
(余裕金の運用)
第三十三条 情報センターは、業務上の余裕金については、銀行への預金又は郵便貯金にするほか、これを他に運用してはならない。
(財産の処分等の制限)
第三十四条 情報センターは、総理府令で定める重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。
(総理府令への委任)
第三十五条 この法律及びこれに基く命令に規定するもののほか、情報センターの財務及び会計に関し必要な事項は、総理府令で定める。
第五章 監督
(監督)
第三十六条 情報センターは、内閣総理大臣が監督する。
2 内閣総理大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、情報センターに対して、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第三十七条 内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、情報センターに対して業務の状況に関し報告をさせ、又はその職員をして情報センターの事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の必要な物件を検査させることができる。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第六章 雑則
(関係行政機関の長の協力)
第三十八条 関係行政機関の長は、情報センターの行う科学技術情報の収集について、できる限り協力するものとする。
(解散)
第三十九条 情報センターの解散については、別に法律で定める。
(科学技術庁長官への委任)
第四十条 内閣総理大臣は、次の各号に掲げる権限を科学技術庁長官に対し委任することができる。
一 第七条第二項、第二十二条第二項、第二十三条第一項、第二十六条並びに第三十一条第一項及び第二項ただし書の規定による認可
二 第二十八条第一項の規定による承認
三 第三十七条第一項の規定による報告及び立入検査
(大蔵大臣との協議)
第四十一条 内閣総理大臣(前条の規定により科学技術庁長官に委任された場合には、科学技術庁長官)は、次の場合には、あらかじめ、大蔵大臣と協議しなければならない。
一 第五条第三項、第二十三条第一項、第二十六条、第三十一条第一項及び第二項ただし書並びに第三十四条の規定による認可をしようとするとき。
二 第二十八条第一項の規定による承認をしようとするとき。
三 第二十三条第二項、第三十四条及び第三十五条の規定により総理府令を定めようとするとき。
第七章 罰則
第四十二条 第三十七条第一項の規定に違反して報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合においては、その違反行為をした情報センターの役員又は職員を三万円以下の罰金に処する。
第四十三条 次の各号の一に該当する場合においては、その違反行為をした情報センターの役員又は職員を三万円以下の過料に処する。
一 この法律により内閣総理大臣(第四十条の規定により科学技術庁長官に委任された場合には、科学技術庁長官)の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第八条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第二十二条第一項に規定する業務以外の業務を行つたとき。
四 第三十三条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
五 第三十六条第二項の規定による内閣総理大臣の命令に違反したとき。
第四十四条 第九条の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(情報センターの設立)
第二条 内閣総理大臣は、第十三条第一項の例により、情報センターの理事長又は監事となるべき者を指名する。
2 前項の規定により指名された理事長又は監事となるべき者は、情報センターの成立の時において、この法律の規定により、それぞれ理事長又は監事に任命されたものとする。
3 内閣総理大臣は、設立委員を命じて、情報センターの設立に関する事務を処理させる。
4 設立委員は、定款を作成して、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。
5 設立委員は、前項の認可を受けたときは、政府以外の者に対し情報センターに対する出資を募集しなければならない。
6 設立委員は、前項の募集が終つたときは、内閣総理大臣に対し設立の認可を申請しなければならない。
7 設立委員は、前項の認可を受けたときは、政府及び出資の募集に応じた政府以外の者に対し、出資金の払込を求めなければならない。
8 設立委員は、出資金の払込があつた日において、その事務を第一項の規定により指名された理事長となるべき者に引き継がなければならない。
9 第一項の規定により指名された理事長となるべき者は、前項の事務引継を受けた日において、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
10 情報センターは、前項の規定による設立の登記をすることによつて成立する。
(経過規定)
第三条 第九条の規定は、この法律の施行の際現に日本科学技術情報センターに類似する名称を使用している者で、この法律の施行後三月以内に科学技術庁長官の許可を受けたものには適用しない。
2 この法律の施行の際現に日本科学技術情報センターという名称又はこれに類似する名称を使用している者(前項の許可を受けた者を除く。)は、この法律の施行後六月以内にその名称を変更しなければならない。この場合において、第九条の規定は、当該期間内は、これらの者には適用しない。
第四条 情報センターの最初の事業年度は、第二十五条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和三十三年三月三十一日に終るものとする。
第五条 情報センターの最初の事業年度の予算、事業計画及び資金計画については、第二十六条中「事業年度開始前に」とあるのは、「情報センターの成立後遅滞なく」と読み替えるものとする。
(登録税法の一部改正)
第六条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条第七号中「日本原子力研究所」の下に「、日本科学技術情報センター」を、「日本原子力研究所法」の下に「、日本科学技術情報センター法」を加える。
(科学技術庁設置法の一部改正)
第七条 科学技術庁設置法(昭和三十一年法律第四十九号)の一部を次のように改正する。
第十条に次の一号を加える。
六 日本科学技術情報センターに関すること。
内閣総理大臣 岸信介
法務大臣 中村梅吉
大蔵大臣 池田勇人