百貨店法
法令番号: 法律第百十六号
公布年月日: 昭和31年5月23日
法令の形式: 法律
百貨店法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十一年五月二十三日
内閣総理大臣 鳩山一郎
法律第百十六号
百貨店法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
百貨店業(第三条―第十条)
第三章
百貨店審議会(第十一条―第十六条)
第四章
雑則(第十七条―第十九条)
第五章
罰則(第二十条―第二十四条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、百貨店業の事業活動を調整することにより、中小商業の事業活動の機会を確保し、商業の正常な発達を図り、もつて国民経済の健全な進展に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「百貨店業」とは、物品販売業(物品加工修理業を含む。)であつて、これを営むための店舗のうちに、同一の店舗で床面積の合計が千五百平方メートル(都の特別区及び地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百五十五条第二項の市の区域内においては、三千平方メートル)以上のものを含むものをいう。
第二章 百貨店業
(営業の許可)
第三条 百貨店業を営もうとする者は、通商産業大臣の許可を受けなければならない。
(許可の申請)
第四条 前条の許可を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を通商産業大臣に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつてはその代表者の氏名及び住所
二 店舗の所在地及び床面積
2 前項の申請書には、店舗の図面、店舗における営業の種類を記載した書類その他通商産業省令で定める書類を添附しなければならない。
(許可の基準等)
第五条 通商産業大臣は、第三条の許可の申請があつた場合において、その百貨店業の事業活動が中小商業の事業活動に影響を及ぼし、中小商業者の利益を著しく害するおそれがあると認めるときは、同条の許可をしてはならない。
2 通商産業大臣は、第三条の規定による処分をしようとするときは、百貨店審議会の意見をきかなければならない。
3 百貨店審議会は、前項の場合において、その意見を定めようとするときは、その百貨店業を営むための店舗の所在地がその地区内にある商工会議所の意見並びに通商産業省令で定めるところにより申出をした利害関係のある事業者又はその団体及び参考人の意見をきかなければならない。
(店舗の新設等の許可)
第六条 第三条の許可を受けた者(以下「百貨店業者」という。)は、店舗を新設し、又はその床面積を増加しようとするときは、通商産業大臣の許可を受けなければならない。
2 前条の規定は、前項の許可に準用する。
(承継)
第七条 百貨店業者について相続又は合併があつたときは、相続人又は合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人は、百貨店業者の地位を承継する。
2 百貨店業者たる法人と百貨店業者たる他の法人との合併は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
3 第五条の規定は、前項の認可に準用する。
(閉店時刻及び休業日)
第八条 百貨店業者は、毎日、政令で定める時刻以後は、その店舗において顧客に対し営業をしてはならない。ただし、その政令で定める時刻前から引き続き店舗内にいる顧客に対しては、この限りでない。
2 百貨店業者は、毎月、政令で定める日数は、その店舗において顧客に対し営業をしてはならない。
(勧告)
第九条 通商産業大臣は、百貨店業者の出張販売、顧客の送迎その他の営業に関する行為がその百貨店業の事業活動を通じて中小商業の事業活動に影響を及ぼすおそれがある場合において、中小商業の維持育成を図り、商業の健全な発達に寄与するため特に必要があると認めるときは、その百貨店業者に対し、その行為をしないように勧告することができる。
2 通商産業大臣は、前項の規定による勧告をしたときは、その旨を公表しなければならない。
(許可の取消等)
第十条 通商産業大臣は、百貨店業者が第六条の規定により許可を受けなければならない事項を許可を受けないでしたとき、又は第八条の規定に違反したときは、第三条の許可を取り消し、又は一年以内の期間を定めてその営業の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
第三章 百貨店審議会
(設置)
第十一条 通商産業省に、百貨店審議会を置く。
(権限)
第十二条 百貨店審議会(以下「審議会」という。)は、この法律によりその権限に属させられた事項を調査審議するほか、通商産業大臣の諮問に応じ、百貨店業の事業活動の調整に関する重要事項を調査審議する。
(組織)
第十三条 審議会は、会長一人及び委員六人以内で組織する。
2 会長及び委員は、学識経験のある者のうちから、通商産業大臣が任命する。
(任期)
第十四条 会長及び委員の任期は、二年とする。
(勤務)
第十五条 会長及び委員は、非常勤とする。
(省令への委任)
第十六条 この章に定めるもののほか、審議会の運営に関し必要な事項は、通商産業省令で定める。
第四章 雑則
(報告の徴収)
第十七条 通商産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、百貨店業者に対し、その営業に関し報告をさせることができる。
(聴聞)
第十八条 通商産業大臣は、第十条の規定による処分をしようとするときは、その処分に係る百貨店業者に対し、相当な期間をおいて予告をした上、公開による聴聞を行わなければならない。
2 前項の予告においては、期日、場所及び事案の内容を示さなければならない。
3 聴聞に際しては、その処分に係る百貨店業者及び利害関係人に対し、その事案について証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(異議の申立)
第十九条 この法律又はこの法律に基く命令の規定によつてした処分に対して不服のある者は、その旨を記載した書面をもつて、通商産業大臣に異議の申立をすることができる。
2 通商産業大臣は、前項の異議の申立があつたときは、前条の例により公開による聴聞をした後、文書をもつて決定をし、その写を異議の申立をした者に送付しなければならない。
第五章 罰則
第二十条 次の各号の一に該当する者は、百万円以下の罰金に処する。
一 第三条の許可を受けないで百貨店業を営んだ者
二 第十条の規定による営業の停止の命令に違反した者
第二十一条 第六条第一項の許可を受けないで店舗を新設し、又はその床面積を増加した者は、三十万円以下の罰金に処する。
第二十二条 第八条の規定に違反して営業をした者は、十万円以下の罰金に処する。
第二十三条 第十七条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、三万円以下の罰金に処する。
第二十四条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前四条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一月をこえない範囲内で政令で定める日から施行する。
(経過規定)
第二条 この法律の施行の際現に百貨店業を営んでいる者は、第三条の許可を受けたものとみなす。
2 前項の規定により第三条の許可を受けたものとみなされた者は、この法律の施行の日から三十日以内に、第四条第一項各号に掲げる事項を記載した届出書に同条第二項に規定する書類を添附して、通商産業大臣に提出しなければならない。
第三条 通商産業大臣は、この法律の施行の際現に百貨店業の店舗とする目的で新築、増築又は改築の工事を施行している建築物を使用して百貨店業を営もうとする者がこの法律の施行の日から三週間以内に第三条又は第六条第一項の許可の申請をしたときは、第五条第一項(第六条第二項において準用する場合を含む)の規定にかかわらず、その百貨店業の事業活動が中小商業の事業活動に及ぼす影響及びこの法律の施行の際におけるその工事の施行の程度を考慮して許可するかどうかを決定しなければならない。
第四条 附則第二条第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、三万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の刑を科する。
(通商産業省設置法の改正)
第五条 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項第三十号及び第三十一号を次のように改める。
三十 百貨店業を許可すること。
三十一 削除
第九条第五号の次に次の一号を加える。
五の二 百貨店業に関すること。
第二十五条第一項の表中
産業合理化審議会
産業合理化に関する重要事項を調査審議すること。
産業合理化審議会
産業合理化に関する重要事項を調査審議すること。
百貨店審議会
百貨店業の事業活動の調整に関する重要事項を調査審議すること。
に改める。
通商産業大臣 石橋湛山
内閣総理大臣 鳩山一郎