(設置)
第一條 外国為替等(外国為替、外国通貨及びこれに準ずるもの、金銀地金並びに外国通貨をもつて表示する証券(財産権を証する証書及び帳簿を含む。)及び債権をいう。以下同じ。)の売買及びこれに伴う取引に関する政府の経理を明確にするため、特別会計を設置し、一般会計と区分して経理する。
(管理及び運営)
第二條 この会計は、外国為替管理委員会を所轄する内閣総理大臣が、法令の定めるところに従い、管理する。
2 内閣総理大臣は、外国為替管理委員会をしてこの会計の運営を行わしめる。
第三條 外国為替管理委員会は、外国為替等の売買及びこれに伴う取引上必要があると認めるときは、この会計に属する外国為替等を外国為替銀行(外国為替銀行の臨時措置等に関する政令(昭和二十四年政令第三百五十三号)に規定する外国為替銀行をいう。)及び外国にある外国銀行で大蔵大臣の指定するもの(以下「外国為替銀行等」と総称する。)に対して預入し、若しくは貸し付け(貸越の契約に基く場合を含む。以下本項中同じ。)、又はこの会計に属する現金(本邦通貨たる現金をいう。以下同じ。)を外国為替銀行等に預入し、若しくは貸し付けることができる。
2 外国為替管理委員会は、外国為替等の売買及びこれに伴う取引上必要があると認めるときは、この会計の負担で外国為替銀行等から外国為替等の預入を受け、若しくは借り入れ(借越の契約に基く場合を含む。)、又は外国為替手形の引受若しくは外国為替銀行等の外国為替等に係る債務の保証をし、又、この会計の負担で外国為替銀行等から現金の預入を受け、若しくは借越の契約に基いて借り入れることができる。
3 外国為替管理委員会は、外国為替等の売買及びこれに伴う取引上必要があるときは、この会計の負担で外国為替銀行等から外国為替等の寄託を受け、又は外国為替銀行等に外国為替等を寄託することができる。
(資本)
第四條 この会計においては、この法律施行の際外国為替資金に属していた資産の額からこれに属していた負債の額を控除した額、第五條の規定により貿易特別会計から繰り入れる金額及び附則第四項の規定によりこの会計に属するものとされる外国為替等に係る権利義務について権利の額から義務の額を控除した額に相当する金額の合計額を資本とする。
(歳入及び歳出)
第五條 この会計においては、外国為替等の売拂代金、貿易特別会計からの繰入金、第三條第一項の規定による現金の貸付金の償還金、第十四條第四項但書の規定による借入金及び融通証券の発行による收入金並びに附属雑收入をもつてその歳入とし、外国為替等の買取代金、第三條第一項の規定による現金の貸付金、一時借入金及び融通証券の利子、融通証券の発行及び償還に関する経費、第十四條第四項但書の規定による借入金及び融通証券の償還金、事務取扱費、事務委託費並びに附属諸費をもつてその歳出とする。
2 第三條第一項の規定による現金の預金及びその拂戻金並びに同條第二項の規定による現金の預り金及びその拂戻金は、この会計の歳入又は歳出とみなして経理するものとする。
3 第一項に規定する貿易特別会計からの繰入金は、予算の定めるところにより、同特別会計からこの会計の資本に充てるため繰り入れるものとする。
(歳入歳出予定計算書の作製及び送付)
第六條 内閣総理大臣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出予定計算書を作製し、これを大蔵大臣に送付しなければならない。
2 前項の歳入歳出予定計算書には、左の書類を添附しなければならない。
二 前年度及び当該年度の予定貸借対照表及び予定損益計算書
三 当該年度の外国為替等の売買及びこれに伴う取引の計画
(歳入歳出予算の区分)
第七條 この会計の歳入歳出予算は、歳入の性質及び歳出の目的に従つて、款及び項に区分する。
(予算の作成及び提出)
第八條 内閣は、毎会計年度、この会計の予算を作成し、一般会計の予算とともに、これを国会に提出しなければならない。
2 前項の予算には、第六條第一項に規定する歳入歳出予定計算書及び同條第二項に規定する書類を添附しなければならない。
(利益及び損失の処理)
第九條 この会計において、毎会計年度の損益計算上生じた利益又は損失は、翌年度に繰り越して整理するものとする。
2 前項に規定する損益計算の方法については、政令で定める。
(剩余金の繰入)
第十條 この会計において、毎会計年度における歳入歳出の決算上剩余金を生じたときは、これをその翌年度の歳入に繰り入れるものとする。
(外国為替等の価格の改定)
第十一條 この会計において保有する外国為替等の価格は、毎会計年度三月三十一日において外国為替相場(外国為替管理法に基く外国為替相場取極に関する命令(昭和十六年大蔵省令第七十九号)第一條の規定により大蔵大臣が指定する外国為替相場をいい、金銀地金については物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)に規定する統制額とする。)により改定するものとする。
(歳入歳出決定計算書の作製及び送付)
第十二條 内閣総理大臣は、毎会計年度、歳入歳出予定計算書と同一の区分により、この会計の歳入歳出決定計算書を作製し、これを大蔵大臣に送付しなければならない。
2 前項の歳入歳出決定計算書には、当該年度の貸借対照表、損益計算書及び財産目録を添附しなければならない。
(歳入歳出決算の作成及び提出)
第十三條 内閣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出決算を作成し、一般会計の歳入歳出決算とともに、これを国会に提出しなければならない。
2 前項の歳入歳出決算には、前條第一項に規定する歳入歳出決定計算書及び同條第二項に規定する書類を添附しなければならない。
(余裕金の預入並びに一時借入金及び融通証券)
第十四條 この会計において支拂上現金に余裕があるときは、大蔵省預金部に預け入れることができる。
2 この会計において支拂上現金に不足があるときは、この会計の負担において、一時借入金をし、又は融通証券を発行することができる。
3 前項の規定による一時借入金及び融通証券の限度額については、予算をもつて、国会の議決を経なければならない。
4 第二項の規定による一時借入金及び融通証券は、当該年度内に償還しなければならない。但し、歳入減少のため償還することができないときは、その償還することができない金額を限り、借入金をし、又は融通証券を発行することができる。
5 前項但書の規定による借入金又は融通証券は、一年内に償還しなければならない。
(起債、償還等の事務)
第十五條 前條の規定による一時借入金、借入金及び融通証券の起債、償還等に関する事務は、大蔵大臣が行う。
(国債整理基金特別会計への繰入)
第十六條 第十四條の規定による一時借入金、借入金及び融通証券の利子、融通証券の発行及び償還に関する諸費の支出に必要な金額並びに同條第四項但書の規定による借入金及び融通証券の償還金は、毎会計年度、国債整理基金特別会計に繰り入れなければならない。
(会計の運営に関する事務の委託)
第十七條 外国為替管理委員会は、この会計の運営に関する事務を日本銀行に取り扱わせることができる。
2 前項の場合において、外国為替管理委員会は、外国為替等の買取及びこれに伴う取引上必要な資金を日本銀行に交付することができる。
3 会計法(昭和二十二年法律第三十五号)第三十六條の規定は、前項の規定により交付を受けた資金の收支について適用する。
(支出未済額の繰越)
第十八條 この会計において支拂義務の生じた歳出金で、当該年度の出納の完結までに支出済とならなかつたものに係る歳出予算は、翌年度に繰り越して使用することができる。
2 前項の規定による繰越については、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第四十三條の規定は、適用しない。
3 内閣総理大臣は、第一項の規定による繰越をしたときは、大蔵大臣及び会計検査院に通知しなければならない。
4 第一項の規定により繰越をしたときは、当該経費については、財政法第三十一條第一項の規定による予算の配賦があつたものとみなす。
(金銀地金の取得)
第十九條 この会計において取得する金銀地金は、外国為替の取引上必要なものに限る。
(実施規定)
第二十條 この法律の実施のための手続その他その執行について必要な事項は、政令で定める。