第一條 昭和二十一年一月四日附連合國最高司令官覚書公務從事に適しない者の公職からの除去に関する件(同覚書の解釈として同日後補足された同覚書の適用の範囲及びその基準を含む。以下覚書という。)に基く公職に関する就職禁止、退職等については、この勅令の定めるところによる。
第二條 この勅令において公職とは、帝國議会の議員、官廳の職員、地方公共團体の職員及び議会の議員並びに特定の会社、協会、報道機関その他の團体の特定の職員の職等をいい、これを主要公職と普通公職に分ける。
主要公職及び普通公職は、內閣総理大臣がこれを指定する。
第三條 覚書に揭げる條項に該当する者が現に公職に在るときは、主要公職に在る者は、これを退職させるものとし、又、普通公職に在る者は、これを退職させることがあるものとする。
覚書に揭げる條項に該当する者としての指定を受けた者(以下覚書該当者という。)で公職に在るものが、覚書該当者としての指定又は公職の指定があつた日から二十日以內にその職を去らない場合においては、他の法令にかかわらず、その者は、二十一日目において、その職を失う。但し、內閣総理大臣又は地方長官は、特に必要があると認めるときは、三十日目まで、その者をその職に留まらせることができる。
覚書該当者は、主要公職たると普通公職たるとを問わず、あらたにすべての公職に就くことができない。
覚書該当者について余人を以て代えることが困難な事情があるときは、前三項の規定にかかわらず、內閣総理大臣の定めるところにより、期間を限つて、その者を主要公職又は普通公職に留め又は就かせることができる。
覚書該当者で前項の規定により公職に留まり又は就くことを認められたものは、その公職に在る間は、その公職に関する限り、これを覚書該当者でないものとみなす。
第四條 覚書該当者としての指定は、內閣総理大臣の定める公職の区分に從い、內閣総理大臣又は地方長官が公職適否審査委員会の審査の結果に基いて、これを行う。
第五條 公私の恩給、年金その他の手当又は利益を現に受ける者又は受ける資格のある者が、覚書該当者として退職し又はその職を失つたときは、その者はその覚書該当者としての指定を受けた時からその権利又は資格を失う。
內閣総理大臣は、前項に規定する者について、特殊の事情があると認めた場合においては、その定めるところにより、前項の規定の適用を免除することができる。
第六條 覚書該当者は、公選による公職については、その候補者となることができない。
公選による公職の候補者について、第四條の指定があつたときは、その者は、当該候補者たることを辞したものとみなす。
第七條 內閣総理大臣又は地方長官は、第四條の指定に関して、內閣総理大臣の定めるところにより、調査表を徵しなければならない。
前項の規定により徵した調査表は、直ちにこれを関係公職適否審査委員会に送付しなければならない。
內閣総理大臣又は地方長官は、関係公職適否審査委員会の要求に應じ、関係者をして委員会に対して資料を提出させ又は事実を說明させることができる。
第八條 地方長官は、貴族院多額納稅者議員互選規則第三十九條の互選人名簿を調製しようとする場合においては、互選人たるべき者からその者が覚書該当者でないことを証明する確認書の写を提出させなければならない。
前項の規定は、貴族院伯子男爵議員又は貴族院帝國学士院会員議員の選挙を行う場合に、これを準用する。但し、「地方長官」とあるのは、貴族院伯子男爵議員については「宗秩寮総裁」、貴族院帝國学士院会員議員については「帝國学士院長」と読み替えるものとする。
公選による公職の候補者について届出又は推薦届出を必要とする場合においては、その届出又は推薦届出をしようとする者は、選挙長その他これに準ずる者に対し、候補者となるべき者が覚書該当者でないことを証明する確認書の写を、併せて提出しなければならない。
前三項に規定する確認書は、內閣総理大臣の定めるところにより、本人の調査表に関する公職適否審査委員会の審査の結果に基いて、內閣総理大臣又は地方長官がこれを交付する。
第九條 內閣総理大臣又は地方長官は、公職適否審査委員会の審査の結果に基いて、覚書該当者としての指定をし又は確認書を交付したときは、直ちにこれを公表しなければならない。
第十條 覚書該当者の三親等內の親族及び配偶者は、覚書該当者の指定があつた日から十年間は、覚書該当者が覚書該当者として退職した公職(公職に在つた者が退職後、又、主要公職に就こうとした者が就職前、当該公職について覚書該当者としての指定を受けたときは、それぞれその職)に就くことができない。又、その覚書該当者の支配力を行つてはならない。
前項の規定は、公選による公職については、これを適用しない。
第十一條 公職に在る者は、その職務の執行又は政治上の活動に関し、覚書該当者の指示若しくは勧奬を受けその他覚書該当者と意思を通じ、又は覚書該当者から利益を受け、覚書該当者に代つてその支配の継続を実現するような行爲をしてはならない。
公職に在る者が前項の規定の違反事件に関し起訴されたときは、他の法令にかかわらず、その者は、その事件が裁判所にかかつている間、その職務の執行をすることができない。この場合において、法令に休職又は停職の定めのある職に在る者は、起訴と同時に休職又は停職を命ぜられたものとみなす。
第十二條 覚書該当者は、公職に在る者に対し、その職務の執行又は政治上の活動に関し、指示若しくは勧奬をしその他公職に在る者と意思を通じ、又はこれに利益を供與し、公職に在る者をして覚書該当者に代つてその支配の継続を実現するような行爲をさせてはならない。
第十三條 公職を退いた覚書該当者は、その退職当時の勤務先たる官公署若しくは会社その他の團体の執務の場所又はこれと同一の建物內に在る場所で当該官公署若しくは團体の管理に属する場所に出入し、又は自己の住居若しくは事務所を設けてはならない。但し、日常の生活のため必要がある場合その他正当の事由がある場合において出入するのは、この限りでない。
第十四條 覚書該当者で公職以外の新聞社、雜誌社その他の出版社、放送機関、映画製作会社、演劇興行会社その他すべての報道機関の役職員の職に在るものは、遲滯なくその職を退かなければならない。
覚書該当者は、あらたに前項に揭げる職に就いてはならない。
第十五條 左の各号の一に該当する者は、これを三年以下の懲役若しくは禁錮又は一万五千円以下の罰金に処する。
一 第七條第一項の調査表の重要な事項について虛僞の記載をし又は事実をかくした記載をした者
二 第七條第一項の調査表を徵せられてこれを提出しない者
三 第七條第三項の規定により資料の提出又は事実の說明を求められ、これに應じないか、又は重要な事項について虛僞の資料若しくは事実をかくした資料の提出又は虛僞の說明若しくは事実をかくした說明をした者
四 第八條第一項乃至第三項の規定により確認書の写を提出する場合において、不正の行爲があつた者
五 覚書に基いて報吿書を連合國最高司令官に提出する場合において、その報吿書に虛僞の記載をし、又は事実をかくした記載をした者
六 第十一條第一項又は第十二條乃至前條の規定に違反した者
前項の規定により刑罰に処せられた者で覚書該当者以外のものは、他の法令による外、その現に占める公職を失い、又、あらたに公職に就くことができない。
前項の者は、公選による公職の候補者となることができない。現にその候補者たる者は、候補者たることを辞したものとみなす。