増加所得税法
法令番号: 法律第六十三号
公布年月日: 昭和21年12月29日
法令の形式: 法律
朕は、帝國議会の協賛を経た増加所得税法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年十二月二十八日
内閣総理大臣 吉田茂
大藏大臣 石橋湛山
法律第六十三号
増加所得税法
第一條 左に掲げる所得を有する個人は、この法律により、増加所得税を納める義務がある。
一 第一種所得
昭和二十一年中に生じた所得税法第十條第一項第一号の不動産所得並びに同項第三号の甲種及び乙種の事業所得に該当する所得の金額の合計金額が、同法による同年分の不動産所得並びに甲種及び乙種の事業所得の決定金額の計算の基礎となつた所得金額の合計金額(同年分の当該所得の決定金額の計算の基礎となつた所得金額の合計金額が三千円に満たないとき又は当該所得の金額の決定がなかつたときは三千円)を超過する場合におけるその超過する所得
二 第二種所得
昭和二十一年中に生じた所得税法第十條第一項第五号の山林の所得
三 第三種所得
昭和二十一年三月三日から同年十二月三十一日までの間に生じた所得税法第十條第一項第八号の讓渡所得
第二條 この法律施行の際、この法律の施行地に住所を有せず且つ一年以上の居所を有しない個人が、この法律の施行地外に有する資産又は事業から生じた所得については、増加所得税は、これを課さない。
第三條 増加所得税を課すべき所得は、左の各号の規定により算出した金額による。
一 第一種所得は、所得税法第十條第一項第一号の不動産所得並びに同項第三号の甲種及び乙種の事業所得に該当する所得につき、昭和二十一年中の総收入金額から必要な経費(收入を得るのに必要な負債の利子を含む。以下同じ。)を控除した金額の合計金額から、同法による同年分の不動産所得並びに甲種及び乙種の事業所得の決定金額の計算の基礎となつた所得金額の合計金額(同年分の当該所得の決定金額の計算の基礎となつた所得金額の合計金額が三千円に満たないとき又は当該所得の決定がなかつたときは三千円)を差し引いた金額
二 第二種所得は、所得税法第十條第一項第五号の山林の所得につき、昭和二十一年中の総收入金額から必要な経費を控除した金額
三 第三種所得は、所得税法第十條第一項第八号の讓渡所得につき、昭和二十一年三月三日から同年十二月三十一日までの間の総收入金額から当該財産の取得價額、設備費、改良費及び讓渡に関する経費を控除した金額
第四條 第一種所得については、その所得金額から七千円を控除する。
第二種所得及び第三種所得については、その所得金額から各ゝ一万円を控除する。
戸主及びその同居家族の第一種所得及び第二種所得の所得金額は、各ゝこれを合算し、各ゝその総額について、前二項の規定を適用する。戸主と別居する二人以上の同居家族の第一種所得及び第二種所得の所得金額についても、また同樣とする。
第五條 増加所得税は、左の税率によりこれを賦課する。
一 第一種所得
所得金額を左の各級に区分し、逓次に各税率を適用する。
二万円以下の金額 百分の三十
二万円を超える金額 百分の四十
五万円を超える金額 百分の五十
十万円を超える金額 百分の六十
二十万円を超える金額 百分の七十
五十万円を超える金額 百分の八十
百万円を超える金額 百分の九十
二 第二種所得
所得金額を左の各級に区分し、逓次に各税率を適用する。
二万円以下の金額 百分の二十
二万円を超える金額 百分の三十
五万円を超える金額 百分の四十
十万円を超える金額 百分の五十
五十万円を超える金額 百分の六十
三 第三種所得
所得金額を左の各級に区分し、逓次に各税率を適用する。
二十万円以下の金額 百分の二十五
二十万円を超える金額 百分の四十五
五十万円を超える金額 百分の六十五
前項の場合において、戸主及びその同居家族の第一種所得及び第二種所得の所得金額は、各ゝこれを合算し、各ゝその総額に対して税率を適用して算出した金額を、各ゝその第一種所得及び第二種所得の所得金額に按分して、各ゝその税額を定める。戸主と別居する二人以上の同居家族の第一種所得及び第二種所得の所得金額についても、また同樣とする。
第六條 増加所得税について納税義務がある者は、命令の定めるところにより、昭和二十二年一月三十一日までに、所得の種類及び金額その他必要な事項を、政府に申告しなければならない。
第七條 第一種所得、第二種所得又は第三種所得の所得金額は、増加所得税調査委員会に諮問して、政府において、これを決定する。
前項の所得金額の決定について脱漏があることが発見されたときは、昭和二十五年十二月三十一日までは、増加所得税調査委員会に諮問して、政府において、その所得金額を決定することができる。
増加所得税調査委員会の閉会後、第一項の所得を有する者が納税義務があることを申し出た場合又は納税義務者が所得金額の増加があることを申し出た場合において、政府がその申出を相当と認めたときは、前二項の規定にかかわらず、増加所得税調査委員会に諮問することなくして、政府において、その所得金額を決定する。
増加所得税調査委員会に関する規程は、勅令でこれを定める。
第八條 前條の規定及び第十條において準用する所得税法第三十六條第四項の規定により所得金額を決定したときは、政府は、これを納税義務者に通知する。
第九條 増加所得税の納期限は、昭和二十二年三月三十一日までとする。但し、特別の事情があるときは、命令で特別の定をなすことができる。
第七條第二項若しくは第三項の規定又は第十條において準用する所得税法第三十六條第四項の規定により所得金額を決定した場合においては、前項の規定にかかわらず、直ちに、その税金を徴收する。
増加所得税の税額の全部又は一部について、納付を困難とする事情があるときは、納税義務者は、その納付を困難とする金額について、命令の定めるところにより、六箇月以内の延納を申請することができる。
前項の規定により延納を許可された場合においては、当該延納税額については、命令の定めるところにより、当該税額に年百分の十の割合を乘じて算出した金額に相当する税額を加算して、これを納付しなければならない。
第十條 所得税法第五條、第六條、第十一條第六号及び第七号、第十二條第二項、第三項及び第六項乃至第八項、第三十六條第四項、第三十九條第二項、第六十六條、第七十三條第二項、第七十五條、第七十六條、第八十一條、第八十二條及び第八十四條乃至第八十七條、租税特別措置法第三條並びに財産税法附則第三項及び第四項の規定は、増加所得税の課税について、これを準用する。
第十一條 詐僞その他不正の行爲により増加所得税を免れた者は、これを一年以下の懲役又はその免れた税金の三倍以下に相当する罰金若しくは科料に処する。
前項の罪を犯した者には、情状に因り、懲役及び罰金を併科することができる。
第一項の場合においては、政府は、直ちに、その所得金額を決定し、その税金を徴收する。
第十二條 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第十條において準用する所得税法第八十一條の規定による帳簿書類その他の物件の檢査を拒み、妨げ又は忌避した者
二 前号の帳簿書類で虚僞の記載をなしたものを呈示した者
三 第十條において準用する所得税法第八十一條又は第八十二條第一項の規定による質問に対し答弁をなさない者
四 前号の質問に対し虚僞の答弁をなした者
第十三條 第十條において準用する所得税法第六十六條の規定に違反した者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第十四條 増加所得税に関する調査に関する事務に從事している者又は從事していた者が、その事務に関して知り得た秘密を漏らし又は窃用したときは、これを二年以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。
第十五條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して第十一條又は第十二條第二号乃至第四号の違反行爲をなしたときは、その行爲者を罰する外、その法人又は人に対し、各本條の罰金刑を科する。
第十六條 第十一條第一項の罪を犯した者には、刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及び第六十六條の規定は、これを適用しない。但し、懲役刑に処するときは、この限りでない。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
この法律は、本州、北海道、四國、九州及びその附属の島(勅令で定める地域を除く。)にこれを施行する。
昭和二十二年一月三十一日までになすべき所得税法第三十四條第一項及び営業税法第十六條の申告は、これをなすことを要しない。
朕は、帝国議会の協賛を経た増加所得税法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年十二月二十八日
内閣総理大臣 吉田茂
大蔵大臣 石橋湛山
法律第六十三号
増加所得税法
第一条 左に掲げる所得を有する個人は、この法律により、増加所得税を納める義務がある。
一 第一種所得
昭和二十一年中に生じた所得税法第十条第一項第一号の不動産所得並びに同項第三号の甲種及び乙種の事業所得に該当する所得の金額の合計金額が、同法による同年分の不動産所得並びに甲種及び乙種の事業所得の決定金額の計算の基礎となつた所得金額の合計金額(同年分の当該所得の決定金額の計算の基礎となつた所得金額の合計金額が三千円に満たないとき又は当該所得の金額の決定がなかつたときは三千円)を超過する場合におけるその超過する所得
二 第二種所得
昭和二十一年中に生じた所得税法第十条第一項第五号の山林の所得
三 第三種所得
昭和二十一年三月三日から同年十二月三十一日までの間に生じた所得税法第十条第一項第八号の譲渡所得
第二条 この法律施行の際、この法律の施行地に住所を有せず且つ一年以上の居所を有しない個人が、この法律の施行地外に有する資産又は事業から生じた所得については、増加所得税は、これを課さない。
第三条 増加所得税を課すべき所得は、左の各号の規定により算出した金額による。
一 第一種所得は、所得税法第十条第一項第一号の不動産所得並びに同項第三号の甲種及び乙種の事業所得に該当する所得につき、昭和二十一年中の総収入金額から必要な経費(収入を得るのに必要な負債の利子を含む。以下同じ。)を控除した金額の合計金額から、同法による同年分の不動産所得並びに甲種及び乙種の事業所得の決定金額の計算の基礎となつた所得金額の合計金額(同年分の当該所得の決定金額の計算の基礎となつた所得金額の合計金額が三千円に満たないとき又は当該所得の決定がなかつたときは三千円)を差し引いた金額
二 第二種所得は、所得税法第十条第一項第五号の山林の所得につき、昭和二十一年中の総収入金額から必要な経費を控除した金額
三 第三種所得は、所得税法第十条第一項第八号の譲渡所得につき、昭和二十一年三月三日から同年十二月三十一日までの間の総収入金額から当該財産の取得価額、設備費、改良費及び譲渡に関する経費を控除した金額
第四条 第一種所得については、その所得金額から七千円を控除する。
第二種所得及び第三種所得については、その所得金額から各ゝ一万円を控除する。
戸主及びその同居家族の第一種所得及び第二種所得の所得金額は、各ゝこれを合算し、各ゝその総額について、前二項の規定を適用する。戸主と別居する二人以上の同居家族の第一種所得及び第二種所得の所得金額についても、また同様とする。
第五条 増加所得税は、左の税率によりこれを賦課する。
一 第一種所得
所得金額を左の各級に区分し、逓次に各税率を適用する。
二万円以下の金額 百分の三十
二万円を超える金額 百分の四十
五万円を超える金額 百分の五十
十万円を超える金額 百分の六十
二十万円を超える金額 百分の七十
五十万円を超える金額 百分の八十
百万円を超える金額 百分の九十
二 第二種所得
所得金額を左の各級に区分し、逓次に各税率を適用する。
二万円以下の金額 百分の二十
二万円を超える金額 百分の三十
五万円を超える金額 百分の四十
十万円を超える金額 百分の五十
五十万円を超える金額 百分の六十
三 第三種所得
所得金額を左の各級に区分し、逓次に各税率を適用する。
二十万円以下の金額 百分の二十五
二十万円を超える金額 百分の四十五
五十万円を超える金額 百分の六十五
前項の場合において、戸主及びその同居家族の第一種所得及び第二種所得の所得金額は、各ゝこれを合算し、各ゝその総額に対して税率を適用して算出した金額を、各ゝその第一種所得及び第二種所得の所得金額に按分して、各ゝその税額を定める。戸主と別居する二人以上の同居家族の第一種所得及び第二種所得の所得金額についても、また同様とする。
第六条 増加所得税について納税義務がある者は、命令の定めるところにより、昭和二十二年一月三十一日までに、所得の種類及び金額その他必要な事項を、政府に申告しなければならない。
第七条 第一種所得、第二種所得又は第三種所得の所得金額は、増加所得税調査委員会に諮問して、政府において、これを決定する。
前項の所得金額の決定について脱漏があることが発見されたときは、昭和二十五年十二月三十一日までは、増加所得税調査委員会に諮問して、政府において、その所得金額を決定することができる。
増加所得税調査委員会の閉会後、第一項の所得を有する者が納税義務があることを申し出た場合又は納税義務者が所得金額の増加があることを申し出た場合において、政府がその申出を相当と認めたときは、前二項の規定にかかわらず、増加所得税調査委員会に諮問することなくして、政府において、その所得金額を決定する。
増加所得税調査委員会に関する規程は、勅令でこれを定める。
第八条 前条の規定及び第十条において準用する所得税法第三十六条第四項の規定により所得金額を決定したときは、政府は、これを納税義務者に通知する。
第九条 増加所得税の納期限は、昭和二十二年三月三十一日までとする。但し、特別の事情があるときは、命令で特別の定をなすことができる。
第七条第二項若しくは第三項の規定又は第十条において準用する所得税法第三十六条第四項の規定により所得金額を決定した場合においては、前項の規定にかかわらず、直ちに、その税金を徴収する。
増加所得税の税額の全部又は一部について、納付を困難とする事情があるときは、納税義務者は、その納付を困難とする金額について、命令の定めるところにより、六箇月以内の延納を申請することができる。
前項の規定により延納を許可された場合においては、当該延納税額については、命令の定めるところにより、当該税額に年百分の十の割合を乗じて算出した金額に相当する税額を加算して、これを納付しなければならない。
第十条 所得税法第五条、第六条、第十一条第六号及び第七号、第十二条第二項、第三項及び第六項乃至第八項、第三十六条第四項、第三十九条第二項、第六十六条、第七十三条第二項、第七十五条、第七十六条、第八十一条、第八十二条及び第八十四条乃至第八十七条、租税特別措置法第三条並びに財産税法附則第三項及び第四項の規定は、増加所得税の課税について、これを準用する。
第十一条 詐偽その他不正の行為により増加所得税を免れた者は、これを一年以下の懲役又はその免れた税金の三倍以下に相当する罰金若しくは科料に処する。
前項の罪を犯した者には、情状に因り、懲役及び罰金を併科することができる。
第一項の場合においては、政府は、直ちに、その所得金額を決定し、その税金を徴収する。
第十二条 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第十条において準用する所得税法第八十一条の規定による帳簿書類その他の物件の検査を拒み、妨げ又は忌避した者
二 前号の帳簿書類で虚偽の記載をなしたものを呈示した者
三 第十条において準用する所得税法第八十一条又は第八十二条第一項の規定による質問に対し答弁をなさない者
四 前号の質問に対し虚偽の答弁をなした者
第十三条 第十条において準用する所得税法第六十六条の規定に違反した者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第十四条 増加所得税に関する調査に関する事務に従事している者又は従事していた者が、その事務に関して知り得た秘密を漏らし又は窃用したときは、これを二年以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。
第十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して第十一条又は第十二条第二号乃至第四号の違反行為をなしたときは、その行為者を罰する外、その法人又は人に対し、各本条の罰金刑を科する。
第十六条 第十一条第一項の罪を犯した者には、刑法第三十八条第三項但書、第三十九条第二項、第四十条、第四十一条、第四十八条第二項、第六十三条及び第六十六条の規定は、これを適用しない。但し、懲役刑に処するときは、この限りでない。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
この法律は、本州、北海道、四国、九州及びその附属の島(勅令で定める地域を除く。)にこれを施行する。
昭和二十二年一月三十一日までになすべき所得税法第三十四条第一項及び営業税法第十六条の申告は、これをなすことを要しない。