地方競馬法
法令番号: 法律第五十七號
公布年月日: 昭和21年11月20日
法令の形式: 法律
朕は、帝國議會の協贊を經た地方競馬法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年十一月十九日
内閣總理大臣 吉田茂
農林大臣 和田博雄
大藏大臣 石橋湛山
法律第五十七號
地方競馬法
第一條 都道府縣を區域とする馬匹組合聯合會(縣を區域とする馬匹組合を含む。以下これに同じ。)は、馬事の振興を圖るため、主務大臣の許可を受けて、この法律により、競馬を行ふことができる。
第十二條の馬事團體は、命令の定めるところにより、主務大臣の許可を受けて、前項の競馬を行ふことができる。
第二條 競馬施行者が、この法律により、競馬を開催しようとするときは、命令の定めるところにより、地方長官に屆出でねばならない。
第三條 この法律により、競馬を行ふ競馬場の數は、北海道三箇所以内、都府縣各ゝ一箇所以内である。
第四條 この法律により競馬に出すことのできる馬は、施行者たる馬匹組合聯合會の區域及び命令の定める區域に、命令の定める期間飼養せられる馬に限る。
第一條第二項の競馬については、前項の區域に關する規定は、これを適用しない。
第五條 競馬の開催は、競馬場毎に數へて、年四囘を超えることはできない。但し、主務大臣の許可を受けた場合は、年四囘を超えて競馬を開催することができる。
第六條 競馬開催の期間は、一囘につき、六日以内である。
第七條 競馬を開催するときは、入場者から入場料を取らねばならない。但し、地方長官の認可を受けて、無料入場者と定めた者からは、入場料を取らなくてもよい。
第八條 競馬施行者は、入場者に對して、一口の金額十圓以下の優勝馬票を、額面金額で賣出すことができる。
第九條 その競馬を開催する法人の役員又はその競馬の開催執務委員、騎手その他競馬の事務に從ふ者に對して、優勝馬票を賣出すことはできない。
第十條 競馬施行者は、優勝馬票の的中者に對して、命令の定めるところにより、その競走についての優勝馬票の賣得金の額を超えない範圍内において、拂戻金を交付する。但し、その金額は、優勝馬票の額面金額の百倍を超えることはできない。
優勝馬票の的中者の無い場合における賣得金又は前項但し書の規定によりできた超過金は、命令の定めるところにより、これを優勝馬票を買つた者に拂戻しをする。
前二項の拂戻金の債權は、一年間これを行はなければ、時效によつて消滅する。
第十一條 競馬施行者は、主務大臣の認可を受けて、優勝馬票の賣得金額の百分の二十五以内の金額を、自己の收入とすることができる。
第十二條 前條の場合には、競馬施行者は、命令の定めるところにより、納付金を馬匹組合聯合會の組織してゐる公益法人たる全國區域の馬事團體に納めなければならない。
第十三條 競馬場の開設又は維持、競走馬の出馬登録又は出場、競馬の觀覽、優勝馬票の賣出又は買入、拂戻金又は競馬賞金の支拂又は受取、その他競馬の施行又は開催に關しては、地方税を課することはできない。
第十四條 主務大臣は、公益上必要ありと認めるときは、第一條の許可を受けた者に對して、競馬場の設備の變更その他競馬の施行又は開催に關して、必要な事柄を命ずることができる。
第十五條 主務大臣は、競馬施行者又はその役員若しくは開催執務委員の行爲が、法令若しくはこれに基いてなす處分に違反し又は公益を害し若しくは害する虞があると認めるときは、次の處分をなすことができる。
一 第一條の許可の取消
二 競馬の停止
三 優勝馬票發賣の停止又は制限
四 開催執務委員の職務執行の停止
第十六條 左の各號の一に該當する者は、三年以下の懲役若しくは五千圓以下の罰金に處し、又はその刑を併せ科する。
一 第一條の許可を受けないで、優勝馬票を發賣したり、又はこれに類似の行爲をなした者
二 第十五條第三號の停止又は制限に違反して、優勝馬票を發賣した者
三 この法律による競馬の競走に關し、職業として、多數の者に對して財物を以て賭けごとをなした者
四 第九條に掲げる者にして、前號に規定する行爲の相手方になつたもの
第十七條 開催執務委員が、職務を執行するにあたり、これに對して、暴行又は脅迫を加へた者は、二年以下の懲役又は二千圓以下の罰金に處する。
團體若しくは多衆の威力を示し、團體若しくは多衆を假裝して威力を示し、又は兇器を示し若しくは數人共同して前項の罪を犯した者は、三年以下の懲役又は三千圓以下の罰金に處する。
第十八條 左の各號の一に該當する者は、二千圓以下の罰金に處する。
一 第九條に掲げる者に對して、同條に掲げる者なることを知つて、優勝馬票を賣出した者
二 第九條に掲げる者にして、優勝馬票を買入れ又は讓受けたもの
三 第十條第一項の規定による制限に違反して、拂戻金を支拂つた者
四 第十六條第一號乃至第三號に規定する行爲の相手方となつた者
第十九條 左の各號の一に該當する者は、二百圓以下の罰金又は科料に處する。
一 第四條に規定する馬でない馬を、出場せしめた者
二 第十條第一項の規定による制限に違反して、拂戻金の支拂を受けた者
第二十條 その競馬を開催する法人の役員又はその競馬の開催執務委員が、その職務に關して、賄賂を取り、又はこれを要求若しくは約束したときは、二年以下の懲役に處する。因つて不正の行爲をなし、又はなすべき行爲をなさないときは、五年以下の懲役に處する。
前項の場合において、受け取つた賄賂はこれを沒收する。若しその全部又は一部を沒收することができない場合には、その價額を追徴する。
第二十一條 前條第一項に掲げる者に對して、賄賂を支拂ひ、提供し、又は約束した者は、二年以下の懲役又は二千圓以下の罰金に處する。
前項の罪を犯した者が、自首したときは、その刑を減輕し、又は免除することができる。
第二十二條 競馬施行者である法人の役員又は開催執務委員が、第十五條第四號の規定による主務大臣の命令に違反したときは、千圓以下の過料に處する。
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條の規定は、前項の過料にこれを準用する。
第二十三條 競馬施行者が、この法律により收得する收入に對しては、所得税及び營業税を課せない。
附 則
この法律は、公布の日からこれを施行する。
馬券税法の一部を次のやうに改正する。
第一條中「競馬法」の下に「又ハ地方競馬法」を加へ、「又ハ軍馬資源保護法ニ依ル鍛錬馬競走」を削る。
第二條中「軍馬資源保護法」を「地方競馬法」に、「優等馬票」を「優勝馬票」に改める。
第三條中「優等馬票」を「優勝馬票」に改める。
第四條第一項中「競馬法ニ依ル」を「第一條ニ規定スル」に改め、「又ハ軍馬資源保護法ニ依ル鍛錬馬競走」及び「又ハ鍛錬馬競走」を削る。
第五條中「又ハ鍛錬馬競走」を削る。
第六條及び第七條中「競馬法ニ依ル」を「第一條ニ規定スル」に改め、「又ハ軍馬資源保護法ニ依ル鍛錬馬競走」を削る。
朕は、帝国議会の協賛を経た地方競馬法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年十一月十九日
内閣総理大臣 吉田茂
農林大臣 和田博雄
大蔵大臣 石橋湛山
法律第五十七号
地方競馬法
第一条 都道府県を区域とする馬匹組合連合会(県を区域とする馬匹組合を含む。以下これに同じ。)は、馬事の振興を図るため、主務大臣の許可を受けて、この法律により、競馬を行ふことができる。
第十二条の馬事団体は、命令の定めるところにより、主務大臣の許可を受けて、前項の競馬を行ふことができる。
第二条 競馬施行者が、この法律により、競馬を開催しようとするときは、命令の定めるところにより、地方長官に届出でねばならない。
第三条 この法律により、競馬を行ふ競馬場の数は、北海道三箇所以内、都府県各ゝ一箇所以内である。
第四条 この法律により競馬に出すことのできる馬は、施行者たる馬匹組合連合会の区域及び命令の定める区域に、命令の定める期間飼養せられる馬に限る。
第一条第二項の競馬については、前項の区域に関する規定は、これを適用しない。
第五条 競馬の開催は、競馬場毎に数へて、年四回を超えることはできない。但し、主務大臣の許可を受けた場合は、年四回を超えて競馬を開催することができる。
第六条 競馬開催の期間は、一回につき、六日以内である。
第七条 競馬を開催するときは、入場者から入場料を取らねばならない。但し、地方長官の認可を受けて、無料入場者と定めた者からは、入場料を取らなくてもよい。
第八条 競馬施行者は、入場者に対して、一口の金額十円以下の優勝馬票を、額面金額で売出すことができる。
第九条 その競馬を開催する法人の役員又はその競馬の開催執務委員、騎手その他競馬の事務に従ふ者に対して、優勝馬票を売出すことはできない。
第十条 競馬施行者は、優勝馬票の的中者に対して、命令の定めるところにより、その競走についての優勝馬票の売得金の額を超えない範囲内において、払戻金を交付する。但し、その金額は、優勝馬票の額面金額の百倍を超えることはできない。
優勝馬票の的中者の無い場合における売得金又は前項但し書の規定によりできた超過金は、命令の定めるところにより、これを優勝馬票を買つた者に払戻しをする。
前二項の払戻金の債権は、一年間これを行はなければ、時効によつて消滅する。
第十一条 競馬施行者は、主務大臣の認可を受けて、優勝馬票の売得金額の百分の二十五以内の金額を、自己の収入とすることができる。
第十二条 前条の場合には、競馬施行者は、命令の定めるところにより、納付金を馬匹組合連合会の組織してゐる公益法人たる全国区域の馬事団体に納めなければならない。
第十三条 競馬場の開設又は維持、競走馬の出馬登録又は出場、競馬の観覧、優勝馬票の売出又は買入、払戻金又は競馬賞金の支払又は受取、その他競馬の施行又は開催に関しては、地方税を課することはできない。
第十四条 主務大臣は、公益上必要ありと認めるときは、第一条の許可を受けた者に対して、競馬場の設備の変更その他競馬の施行又は開催に関して、必要な事柄を命ずることができる。
第十五条 主務大臣は、競馬施行者又はその役員若しくは開催執務委員の行為が、法令若しくはこれに基いてなす処分に違反し又は公益を害し若しくは害する虞があると認めるときは、次の処分をなすことができる。
一 第一条の許可の取消
二 競馬の停止
三 優勝馬票発売の停止又は制限
四 開催執務委員の職務執行の停止
第十六条 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役若しくは五千円以下の罰金に処し、又はその刑を併せ科する。
一 第一条の許可を受けないで、優勝馬票を発売したり、又はこれに類似の行為をなした者
二 第十五条第三号の停止又は制限に違反して、優勝馬票を発売した者
三 この法律による競馬の競走に関し、職業として、多数の者に対して財物を以て賭けごとをなした者
四 第九条に掲げる者にして、前号に規定する行為の相手方になつたもの
第十七条 開催執務委員が、職務を執行するにあたり、これに対して、暴行又は脅迫を加へた者は、二年以下の懲役又は二千円以下の罰金に処する。
団体若しくは多衆の威力を示し、団体若しくは多衆を仮装して威力を示し、又は兇器を示し若しくは数人共同して前項の罪を犯した者は、三年以下の懲役又は三千円以下の罰金に処する。
第十八条 左の各号の一に該当する者は、二千円以下の罰金に処する。
一 第九条に掲げる者に対して、同条に掲げる者なることを知つて、優勝馬票を売出した者
二 第九条に掲げる者にして、優勝馬票を買入れ又は譲受けたもの
三 第十条第一項の規定による制限に違反して、払戻金を支払つた者
四 第十六条第一号乃至第三号に規定する行為の相手方となつた者
第十九条 左の各号の一に該当する者は、二百円以下の罰金又は科料に処する。
一 第四条に規定する馬でない馬を、出場せしめた者
二 第十条第一項の規定による制限に違反して、払戻金の支払を受けた者
第二十条 その競馬を開催する法人の役員又はその競馬の開催執務委員が、その職務に関して、賄賂を取り、又はこれを要求若しくは約束したときは、二年以下の懲役に処する。因つて不正の行為をなし、又はなすべき行為をなさないときは、五年以下の懲役に処する。
前項の場合において、受け取つた賄賂はこれを没収する。若しその全部又は一部を没収することができない場合には、その価額を追徴する。
第二十一条 前条第一項に掲げる者に対して、賄賂を支払ひ、提供し、又は約束した者は、二年以下の懲役又は二千円以下の罰金に処する。
前項の罪を犯した者が、自首したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。
第二十二条 競馬施行者である法人の役員又は開催執務委員が、第十五条第四号の規定による主務大臣の命令に違反したときは、千円以下の過料に処する。
非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条の規定は、前項の過料にこれを準用する。
第二十三条 競馬施行者が、この法律により収得する収入に対しては、所得税及び営業税を課せない。
附 則
この法律は、公布の日からこれを施行する。
馬券税法の一部を次のやうに改正する。
第一条中「競馬法」の下に「又ハ地方競馬法」を加へ、「又ハ軍馬資源保護法ニ依ル鍛錬馬競走」を削る。
第二条中「軍馬資源保護法」を「地方競馬法」に、「優等馬票」を「優勝馬票」に改める。
第三条中「優等馬票」を「優勝馬票」に改める。
第四条第一項中「競馬法ニ依ル」を「第一条ニ規定スル」に改め、「又ハ軍馬資源保護法ニ依ル鍛錬馬競走」及び「又ハ鍛錬馬競走」を削る。
第五条中「又ハ鍛錬馬競走」を削る。
第六条及び第七条中「競馬法ニ依ル」を「第一条ニ規定スル」に改め、「又ハ軍馬資源保護法ニ依ル鍛錬馬競走」を削る。