南方開発金庫法
法令番号: 法律第三十三號
公布年月日: 昭和17年2月20日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル南方開發金庫法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十七年二月十九日
內閣總理大臣 東條英機
大藏大臣 賀屋興宣
法律第三十三號
南方開發金庫法
第一章 總則
第一條 南方開發金庫ハ南方地域ニ於ケル資源ノ開發及利用ニ必要ナル資金ヲ供給シ併セテ通貨及金融ノ調整ヲ圖ルヲ目的トス
南方開發金庫ハ法人トス
第二條 南方開發金庫ハ主タル事務所ヲ東京市ニ置ク
南方開發金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ必要ノ地ニ從タル事務所ヲ置クコトヲ得
第三條 南方開發金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ銀行其ノ他命令ヲ以テ定ムル法人ヲシテ業務ノ一部ヲ取扱ハシムルコトヲ得
第四條 南方開發金庫ノ資本金ハ一億圓トス但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
第五條 政府ハ一億圓ヲ南方開發金庫ニ出資スベシ
前項ノ出資ハ國債證券ヲ交付シテ之ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル國債證券ノ交付價格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大臣之ヲ定ム
第六條 政府ハ其ノ持分ノ一部ヲ讓渡スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ讓渡ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條 出資ノ第一囘ノ拂込金額ハ出資金額ノ十分ノ一ヲ下ラザル額トシ第二囘以後ノ出資ノ拂込ノ時期及金額ハ南方開發金庫主務大臣ノ認可ヲ受ケテ之ヲ定ム
第八條 南方開發金庫ハ定款ヲ以テ左ノ事項ヲ規定スベシ
一 目的
二 名稱
三 事務所ノ所在地
四 資本金額及資產ニ關スル事項
五 役員ニ關スル事項
六 業務及其ノ執行ニ關スル事項
七 債券ノ發行ニ關スル事項
八 會計ニ關スル事項
九 公吿ノ方法
定款ノ變更ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第九條 南方開發金庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ
第十條 南方開發金庫ニハ當分ノ內所得稅、法人稅及營業稅ヲ課セズ
北海道、府縣、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ當分ノ內南方開發金庫ノ事業ニ對シテハ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情ニ基キ內務大臣及大藏大臣ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十一條 南方開發金庫ニ付解散ヲ必要トスル事由發生シタル場合ニ於テ其ノ處置ニ關シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十二條 南方開發金庫ニ非ザル者ハ南方開發金庫又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用フルコトヲ得ズ
第二章 職員
第十三條 南方開發金庫ニ役員トシテ總裁副總裁各一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第十四條 總裁ハ南方開發金庫ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
副總裁ハ定款ノ定ムル所ニ依リ南方開發金庫ヲ代表シ總裁ヲ輔佐シテ南方開發金庫ノ業務ヲ掌理シ總裁事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ總裁缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ南方開發金庫ヲ代表シ總裁及副總裁ヲ輔佐シテ南方開發金庫ノ業務ヲ掌理シ總裁及副總裁共ニ事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ總裁及副總裁共ニ缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
監事ハ南方開發金庫ノ業務ヲ監査ス
第十五條 總裁及副總裁ハ勅裁ヲ經テ政府之ヲ命ズ
理事及監事ハ主務大臣之ヲ命ズ
總裁、副總裁、理事及監事ノ任期ハ二年トス
第十六條 總裁、副總裁及理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ從タル事務所ノ業務ニ關シ一切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行爲ヲ爲ス權限ヲ有スル代理人ヲ選任スルコトヲ得
第十七條 總裁、副總裁及理事ハ他ノ職業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十八條 南方開發金庫ノ職員ハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ從事スル職員ト看做ス
第三條ノ場合ニ於テ當該業務ニ從事スル銀行其ノ他命令ヲ以テ定ムル法人ノ職員ニ付亦前項ニ同ジ
前二項ノ職員ノ範圍ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三章 業務
第十九條 南方開發金庫ハ資源ノ開發及利用ノ爲必要ナル融資又ハ投資ヲ爲スノ外左ノ業務ヲ行フ
一 預リ金
二 地金銀ノ賣買
三 通貨ノ交換
四 爲替ノ賣買
南方開發金庫ハ前項ノ業務ニ附帶スル業務ヲ行フコトヲ得
第二十條 南方開發金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ前條ノ業務ノ外南方開發金庫ノ目的達成上必要ナル業務ヲ行フコトヲ得
第四章 債券
第二十一條 南方開發金庫ハ拂込出資金額ノ十倍ヲ限リ債券ヲ發行スルコトヲ得
第二十二條 南方開發金庫ハ債券借換ノ爲一時前條ノ制限ニ依ラズ債券ヲ發行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ債券ヲ發行シタルトキハ發行後一月以內ニ其ノ發行額面金額ニ相當スル舊債券ヲ償還スベシ
第二十三條 南方開發金庫ニ於テ債券ヲ發行セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十四條 政府ハ債券ノ元本ノ償還及利息ノ支拂ヲ保證スルコトヲ得
第二十五條 債券ノ消滅時效ハ元本ニ在リテハ十五年、利息ニ在リテハ五年ヲ以テ完成ス
第二十六條 債券ノ所有者ハ南方開發金庫ノ財產ニ付他ノ債權者ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ有ス
前項ノ規定ハ民法上ノ一般ノ先取特權ノ行使ヲ妨グルコトナシ
第二十七條 所得稅法及有價證券移轉稅法中國債以外ノ公債ニ關スル規定ハ債券ニ之ヲ準用ス
第二十八條 本章ニ規定スルモノヲ除クノ外債券ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章 會計
第二十九條 南方開發金庫ノ事業年度ハ四月ヨリ翌年三月迄トス
第三十條 南方開發金庫ハ設立ノ時及每事業年度ノ初ニ於テ財產目錄、貸借對照表及損益計算書ヲ作成シ主務大臣ノ承認ヲ受クベシ
第六章 監督及補助
第三十一條 南方開發金庫ハ主務大臣之ヲ監督ス
第三十二條 南方開發金庫借入金ヲ爲サントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十三條 南方開發金庫剩餘金ノ處分ヲ爲サントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十四條 南方開發金庫ハ業務開始ノ際業務ノ方法ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ニ重大ナル變更ヲ加ヘントスルトキ亦同ジ
南方開發金庫ハ每事業年度ノ初ニ於テ事業計畫及收支豫算ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ニ重大ナル變更ヲ加ヘントスルトキ亦同ジ
第三十五條 主務大臣ハ南方開發金庫ニ對シ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシメ、檢査ヲ爲シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第三十六條 役員ガ法令、定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル行爲ヲ爲シタルトキハ總裁及副總裁ニ付テハ政府、理事及監事ニ付テハ主務大臣之ヲ解任スルコトヲ得
第三十七條 政府ハ南方開發金庫ニ對シ第十九條第一項ニ規定スル融資又ハ投資ニ因リテ受ケタル損失ヲ補償スルノ契約ヲ爲スコトヲ得
前項ノ契約ハ之ニ基キ交付スベキ補償金ノ總額ガ帝國議會ノ協贊ヲ經タル金額ヲ超エザル範圍內ニ於テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第一項ノ損失ヲ決定スル基準ハ大藏大臣之ヲ定ム
第三十八條 前條第一項ノ損失及其ノ額ハ特別融通損失審査會之ヲ決定ス
第七章 罰則
第三十九條 左ノ場合ニ於テハ南方開發金庫ノ總裁、副總裁、理事又ハ監事ヲ千圓以下ノ過料ニ處ス
一 本法ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 本法ニ規定セザル業務ヲ行ヒタルトキ
三 第二十一條又ハ第二十二條第二項ノ規定ニ違反シ債券ノ發行ヲ爲シ又ハ償還ヲ爲サザルトキ
四 主務大臣ノ監督上ノ命令又ハ處分ニ違反シタルトキ
第四十條 左ノ場合ニ於テハ南方開發金庫ノ總裁、副總裁、理事又ハ監事ヲ五百圓以下ノ過料ニ處ス
一 本法又ハ本法ニ基キテ發スル勅令ニ違反シ登記ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登記ヲ爲シタルトキ
二 第三十條ノ規定ニ依ル書類ヲ作成セザルトキ、其ノ書類ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ爲シタルトキ又ハ其ノ書類ニ付主務大臣ノ承認ヲ受ケザルトキ
第四十一條 第十二條ノ規定ニ違反シ南方開發金庫又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用ヒタル者ハ五百圓以下ノ過料ニ處ス
附 則
第四十二條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十三條 政府ハ設立委員ヲ命ジ南方開發金庫ノ設立ニ關スル事務ヲ處理セシム
第四十四條 設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
前項ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ遲帶ナク出資ノ第一囘ノ拂込ヲ政府ニ稟請スベシ
第四十五條 出資ノ第一囘ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク其ノ事務ヲ南方開發金庫總裁ニ引渡スベシ
總裁前項ノ事務ノ引渡ヲ受ケタルトキハ總裁、副總裁、理事及監事ノ全員ハ設立ノ登記ヲ爲スベシ
南方開發金庫ハ設立ノ登記ヲ爲スニ因リテ成立ス
第四十六條 南方開發金庫ノ初事業年度ハ第二十九條ノ規定ニ拘ラズ成立ノ日ヨリ昭和十八年三月迄トス
第四十七條 本法ニ規定スルモノヲ除クノ外南方開發金庫ノ設立ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十八條 政府ハ南方開發金庫ニ對シ貸付ヲ爲スコトヲ得
前項ノ貸付ニ關スル歲入歲出ハ臨時軍事費特別會計ニ屬セシム
第四十九條 登錄稅法中左ノ通改正ス
第十九條第七號中「庶民金庫」ノ上ニ「南方開發金庫、」ヲ、「庶民金庫法」ノ上ニ「南方開發金庫法、」ヲ、同條第十八號中「庶民金庫」ノ上ニ「南方開發金庫、」ヲ加フ
第五十條 印紙稅法中左ノ通改正ス
第五條第六號ノ二ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
六ノ二ノ二 南方開發金庫ノ發スル債券
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル南方開発金庫法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十七年二月十九日
内閣総理大臣 東条英機
大蔵大臣 賀屋興宣
法律第三十三号
南方開発金庫法
第一章 総則
第一条 南方開発金庫ハ南方地域ニ於ケル資源ノ開発及利用ニ必要ナル資金ヲ供給シ併セテ通貨及金融ノ調整ヲ図ルヲ目的トス
南方開発金庫ハ法人トス
第二条 南方開発金庫ハ主タル事務所ヲ東京市ニ置ク
南方開発金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ必要ノ地ニ従タル事務所ヲ置クコトヲ得
第三条 南方開発金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ銀行其ノ他命令ヲ以テ定ムル法人ヲシテ業務ノ一部ヲ取扱ハシムルコトヲ得
第四条 南方開発金庫ノ資本金ハ一億円トス但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ増加スルコトヲ得
第五条 政府ハ一億円ヲ南方開発金庫ニ出資スベシ
前項ノ出資ハ国債証券ヲ交付シテ之ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル国債証券ノ交付価格ハ時価ヲ参酌シテ大蔵大臣之ヲ定ム
第六条 政府ハ其ノ持分ノ一部ヲ譲渡スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ譲渡ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七条 出資ノ第一回ノ払込金額ハ出資金額ノ十分ノ一ヲ下ラザル額トシ第二回以後ノ出資ノ払込ノ時期及金額ハ南方開発金庫主務大臣ノ認可ヲ受ケテ之ヲ定ム
第八条 南方開発金庫ハ定款ヲ以テ左ノ事項ヲ規定スベシ
一 目的
二 名称
三 事務所ノ所在地
四 資本金額及資産ニ関スル事項
五 役員ニ関スル事項
六 業務及其ノ執行ニ関スル事項
七 債券ノ発行ニ関スル事項
八 会計ニ関スル事項
九 公告ノ方法
定款ノ変更ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第九条 南方開発金庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ
第十条 南方開発金庫ニハ当分ノ内所得税、法人税及営業税ヲ課セズ
北海道、府県、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ当分ノ内南方開発金庫ノ事業ニ対シテハ地方税ヲ課スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情ニ基キ内務大臣及大蔵大臣ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十一条 南方開発金庫ニ付解散ヲ必要トスル事由発生シタル場合ニ於テ其ノ処置ニ関シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十二条 南方開発金庫ニ非ザル者ハ南方開発金庫又ハ之ニ類似スル名称ヲ用フルコトヲ得ズ
第二章 職員
第十三条 南方開発金庫ニ役員トシテ総裁副総裁各一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第十四条 総裁ハ南方開発金庫ヲ代表シ其ノ業務ヲ総理ス
副総裁ハ定款ノ定ムル所ニ依リ南方開発金庫ヲ代表シ総裁ヲ輔佐シテ南方開発金庫ノ業務ヲ掌理シ総裁事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ総裁欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ南方開発金庫ヲ代表シ総裁及副総裁ヲ輔佐シテ南方開発金庫ノ業務ヲ掌理シ総裁及副総裁共ニ事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ総裁及副総裁共ニ欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
監事ハ南方開発金庫ノ業務ヲ監査ス
第十五条 総裁及副総裁ハ勅裁ヲ経テ政府之ヲ命ズ
理事及監事ハ主務大臣之ヲ命ズ
総裁、副総裁、理事及監事ノ任期ハ二年トス
第十六条 総裁、副総裁及理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ従タル事務所ノ業務ニ関シ一切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行為ヲ為ス権限ヲ有スル代理人ヲ選任スルコトヲ得
第十七条 総裁、副総裁及理事ハ他ノ職業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十八条 南方開発金庫ノ職員ハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ従事スル職員ト看做ス
第三条ノ場合ニ於テ当該業務ニ従事スル銀行其ノ他命令ヲ以テ定ムル法人ノ職員ニ付亦前項ニ同ジ
前二項ノ職員ノ範囲ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三章 業務
第十九条 南方開発金庫ハ資源ノ開発及利用ノ為必要ナル融資又ハ投資ヲ為スノ外左ノ業務ヲ行フ
一 預リ金
二 地金銀ノ売買
三 通貨ノ交換
四 為替ノ売買
南方開発金庫ハ前項ノ業務ニ附帯スル業務ヲ行フコトヲ得
第二十条 南方開発金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ前条ノ業務ノ外南方開発金庫ノ目的達成上必要ナル業務ヲ行フコトヲ得
第四章 債券
第二十一条 南方開発金庫ハ払込出資金額ノ十倍ヲ限リ債券ヲ発行スルコトヲ得
第二十二条 南方開発金庫ハ債券借換ノ為一時前条ノ制限ニ依ラズ債券ヲ発行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ債券ヲ発行シタルトキハ発行後一月以内ニ其ノ発行額面金額ニ相当スル旧債券ヲ償還スベシ
第二十三条 南方開発金庫ニ於テ債券ヲ発行セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十四条 政府ハ債券ノ元本ノ償還及利息ノ支払ヲ保証スルコトヲ得
第二十五条 債券ノ消滅時効ハ元本ニ在リテハ十五年、利息ニ在リテハ五年ヲ以テ完成ス
第二十六条 債券ノ所有者ハ南方開発金庫ノ財産ニ付他ノ債権者ニ先チテ自己ノ債権ノ弁済ヲ受クル権利ヲ有ス
前項ノ規定ハ民法上ノ一般ノ先取特権ノ行使ヲ妨グルコトナシ
第二十七条 所得税法及有価証券移転税法中国債以外ノ公債ニ関スル規定ハ債券ニ之ヲ準用ス
第二十八条 本章ニ規定スルモノヲ除クノ外債券ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章 会計
第二十九条 南方開発金庫ノ事業年度ハ四月ヨリ翌年三月迄トス
第三十条 南方開発金庫ハ設立ノ時及毎事業年度ノ初ニ於テ財産目録、貸借対照表及損益計算書ヲ作成シ主務大臣ノ承認ヲ受クベシ
第六章 監督及補助
第三十一条 南方開発金庫ハ主務大臣之ヲ監督ス
第三十二条 南方開発金庫借入金ヲ為サントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十三条 南方開発金庫剰余金ノ処分ヲ為サントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十四条 南方開発金庫ハ業務開始ノ際業務ノ方法ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ニ重大ナル変更ヲ加ヘントスルトキ亦同ジ
南方開発金庫ハ毎事業年度ノ初ニ於テ事業計画及収支予算ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ニ重大ナル変更ヲ加ヘントスルトキ亦同ジ
第三十五条 主務大臣ハ南方開発金庫ニ対シ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ為サシメ、検査ヲ為シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第三十六条 役員ガ法令、定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル行為ヲ為シタルトキハ総裁及副総裁ニ付テハ政府、理事及監事ニ付テハ主務大臣之ヲ解任スルコトヲ得
第三十七条 政府ハ南方開発金庫ニ対シ第十九条第一項ニ規定スル融資又ハ投資ニ因リテ受ケタル損失ヲ補償スルノ契約ヲ為スコトヲ得
前項ノ契約ハ之ニ基キ交付スベキ補償金ノ総額ガ帝国議会ノ協賛ヲ経タル金額ヲ超エザル範囲内ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス
第一項ノ損失ヲ決定スル基準ハ大蔵大臣之ヲ定ム
第三十八条 前条第一項ノ損失及其ノ額ハ特別融通損失審査会之ヲ決定ス
第七章 罰則
第三十九条 左ノ場合ニ於テハ南方開発金庫ノ総裁、副総裁、理事又ハ監事ヲ千円以下ノ過料ニ処ス
一 本法ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 本法ニ規定セザル業務ヲ行ヒタルトキ
三 第二十一条又ハ第二十二条第二項ノ規定ニ違反シ債券ノ発行ヲ為シ又ハ償還ヲ為サザルトキ
四 主務大臣ノ監督上ノ命令又ハ処分ニ違反シタルトキ
第四十条 左ノ場合ニ於テハ南方開発金庫ノ総裁、副総裁、理事又ハ監事ヲ五百円以下ノ過料ニ処ス
一 本法又ハ本法ニ基キテ発スル勅令ニ違反シ登記ヲ為スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登記ヲ為シタルトキ
二 第三十条ノ規定ニ依ル書類ヲ作成セザルトキ、其ノ書類ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ為シタルトキ又ハ其ノ書類ニ付主務大臣ノ承認ヲ受ケザルトキ
第四十一条 第十二条ノ規定ニ違反シ南方開発金庫又ハ之ニ類似スル名称ヲ用ヒタル者ハ五百円以下ノ過料ニ処ス
附 則
第四十二条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十三条 政府ハ設立委員ヲ命ジ南方開発金庫ノ設立ニ関スル事務ヲ処理セシム
第四十四条 設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
前項ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ遅帯ナク出資ノ第一回ノ払込ヲ政府ニ稟請スベシ
第四十五条 出資ノ第一回ノ払込アリタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク其ノ事務ヲ南方開発金庫総裁ニ引渡スベシ
総裁前項ノ事務ノ引渡ヲ受ケタルトキハ総裁、副総裁、理事及監事ノ全員ハ設立ノ登記ヲ為スベシ
南方開発金庫ハ設立ノ登記ヲ為スニ因リテ成立ス
第四十六条 南方開発金庫ノ初事業年度ハ第二十九条ノ規定ニ拘ラズ成立ノ日ヨリ昭和十八年三月迄トス
第四十七条 本法ニ規定スルモノヲ除クノ外南方開発金庫ノ設立ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十八条 政府ハ南方開発金庫ニ対シ貸付ヲ為スコトヲ得
前項ノ貸付ニ関スル歳入歳出ハ臨時軍事費特別会計ニ属セシム
第四十九条 登録税法中左ノ通改正ス
第十九条第七号中「庶民金庫」ノ上ニ「南方開発金庫、」ヲ、「庶民金庫法」ノ上ニ「南方開発金庫法、」ヲ、同条第十八号中「庶民金庫」ノ上ニ「南方開発金庫、」ヲ加フ
第五十条 印紙税法中左ノ通改正ス
第五条第六号ノ二ノ次ニ左ノ一号ヲ加フ
六ノ二ノ二 南方開発金庫ノ発スル債券