兵器等製造事業特別助成法
法令番号: 法律第八號
公布年月日: 昭和17年2月13日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル兵器等製造事業特別助成法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十七年二月十二日
內閣總理大臣兼陸軍大臣 東條英機
海軍大臣 嶋田繁太郞
大藏大臣 賀屋興宣
法律第八號
兵器等製造事業特別助成法
第一條 本法ハ兵器等ノ生產力ノ確保ヲ圖ル爲其ノ製造事業ニ對シ特別ノ保護助成ヲ爲スヲ以テ目的トス
第二條 本法ニ於テ兵器等ト稱スルハ兵器、艦船、此等ノ部品其ノ他軍事上特ニ必要ナル物資ニシテ勅令ヲ以テ定ムルモノヲ謂ヒ兵器等製造事業者ト稱スルハ兵器等ノ生產及修理ノ事業ヲ營ム者ヲ謂フ
第三條 政府ハ兵器等ノ生產力ヲ確保スル爲必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ兵器等製造事業者ニ對シ兵器等製造設備ヲ無償ニテ貸付シ當該設備ニ依ル事業ノ經營ヲ命ズルコトヲ得
第四條 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ兵器等製造事業者ニ對シ前條ノ規定ニ依リテ當該事業者ニ貸付スベキ設備ノ建設ヲ命ズルコトヲ得此ノ場合ニ於テ設備ノ建設ニ要スル費用ハ命令ノ定ムル所ニ依リ國庫ノ負擔トス
第五條 政府ハ兵器等ノ生產力ヲ確保スル爲必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ兵器等製造事業者ニ對シ一定ノ期間內ニ政府ニ於テ買上グベキコトヲ條件トシテ必要ナル設備ノ新設、擴張又ハ改良ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル設備ノ買上ヲ爲ス場合ニ於テ事業ノ經營上當該設備ト一體不可離ノ關係ヲ有スト認ムベキ他ノ重要ナル設備アルトキハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ併セテ之ヲ買上グルコトヲ得
第六條 第三條ノ規定ニ依リ兵器等製造事業者ニ貸付シタル政府所有ノ設備ニ付當該事業者ノ申請アルトキハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ拂下グルコトヲ得
第七條 政府ハ兵器等ノ生產力ヲ確保スル爲必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ兵器等製造事業者ニ對シ其ノ事業ニ屬スル重要ナル設備ヲ指定シ之ニ付一定ノ期間內ニ償却ヲ爲スベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ償却ニ付テハ所得稅、法人稅其ノ他ノ租稅ノ課稅標準ノ計算ニ關シ命令ヲ以テ特例ヲ設クルコトヲ得
第一項ノ償却ニ係ル設備ニ依リ生產又ハ修理シタル兵器等ニ付政府ノ支拂フベキ代金ハ當該償却ヲ斟酌シテ之ヲ定ムルモノトス
第八條 第三條又ハ第五條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ係ル設備ハ兵器等製造事業者之ヲ政府ノ指定スル用途以外ノ用途ニ供スルコトヲ得ズ但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第五條第一項又ハ前條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ係ル設備ニ付テハ兵器等製造事業者ハ政府ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ讓渡其ノ他ノ處分ヲ爲スコトヲ得ズ
第九條 政府ハ兵器等ノ生產ノ技術又ハ設備ノ維持培養ヲ圖ル爲特ニ必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ兵器等製造事業者ニ對シ兵器等ノ生產又ハ修理ヲ命ズルコトヲ得
第十條 政府ハ軍事上必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ兵器等製造事業者ニ對シ必要ナル設備、工具、ジグ、檢査具若ハ圖面ノ保有ヲ命ジ、原料若ハ材料ノ取得及保有ヲ命ジ又ハ政府ニ屬スル此等ノ物ノ保管ヲ命ズルコトヲ得
政府ハ必要アリト認ムルトキハ前項ノ規定ニ依リ保有ヲ命ジタル物ニ付之ガ更新ヲ命ズルコトヲ得
前二項ノ規定ニ依ル命令ニ因リ生ジタル損失ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ政府之ヲ補償ス
前項ノ補償ヲ伴フベキ命令ハ之ニ因リ要スベキ補償金ノ總額ガ帝國議會ノ協贊ヲ經タル金額ヲ超エザル範圍內ニ於テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第十一條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依ル兵器等製造事業者ノ權利義務ハ事業ト共ニ其ノ承繼人ニ移轉ス
本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ爲シタル手續其ノ他ノ行爲ハ前項ノ承繼人ニ對シテモ亦其ノ效力ヲ有ス
第十二條 政府ハ必要アリト認ムルトキハ兵器等製造事業者ニ對シ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ命ズルコトヲ得
政府ハ必要アリト認ムルトキハ當該官吏ヲシテ兵器等製造事業者ノ事務所、營業所、工場、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨檢シ業務若ハ財產ノ狀況又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十三條 政府ハ第三條、第五條第一項又ハ第七條第一項ノ規定ニ依ル命令ヲ受ケタル兵器等製造事業者(以下受命事業者ト稱ス)ニ對シ其ノ命令ニ係ル事業ノ業務及會計ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第十四條 受命事業者タル法人ニシテ勅令ヲ以テ定ムルモノノ役員ノ選任及解任竝ニ其ノ目的變更ノ決議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
受命事業者タル法人ニシテ勅令ヲ以テ定ムルモノ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ政府ハ其ノ役員ヲ解任スルコトヲ得
第十五條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第八條第一項又ハ第二項ノ規定ニ違反シタル者
二 第十條第一項又ハ第二項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
第十六條 第十三條ノ規定ニ依ル命令又ハ處分ニ違反シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十七條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第十二條第一項ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者
二 同條第二項ノ規定ニ依ル當該官吏ノ臨檢檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者
第十八條 兵器等製造事業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ第十五條、第十六條又ハ前條第一號ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十九條 第十五條、第十六條及第十七條第一號ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル兵器等製造事業特別助成法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十七年二月十二日
内閣総理大臣兼陸軍大臣 東条英機
海軍大臣 嶋田繁太郎
大蔵大臣 賀屋興宣
法律第八号
兵器等製造事業特別助成法
第一条 本法ハ兵器等ノ生産力ノ確保ヲ図ル為其ノ製造事業ニ対シ特別ノ保護助成ヲ為スヲ以テ目的トス
第二条 本法ニ於テ兵器等ト称スルハ兵器、艦船、此等ノ部品其ノ他軍事上特ニ必要ナル物資ニシテ勅令ヲ以テ定ムルモノヲ謂ヒ兵器等製造事業者ト称スルハ兵器等ノ生産及修理ノ事業ヲ営ム者ヲ謂フ
第三条 政府ハ兵器等ノ生産力ヲ確保スル為必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ兵器等製造事業者ニ対シ兵器等製造設備ヲ無償ニテ貸付シ当該設備ニ依ル事業ノ経営ヲ命ズルコトヲ得
第四条 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ兵器等製造事業者ニ対シ前条ノ規定ニ依リテ当該事業者ニ貸付スベキ設備ノ建設ヲ命ズルコトヲ得此ノ場合ニ於テ設備ノ建設ニ要スル費用ハ命令ノ定ムル所ニ依リ国庫ノ負担トス
第五条 政府ハ兵器等ノ生産力ヲ確保スル為必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ兵器等製造事業者ニ対シ一定ノ期間内ニ政府ニ於テ買上グベキコトヲ条件トシテ必要ナル設備ノ新設、拡張又ハ改良ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル設備ノ買上ヲ為ス場合ニ於テ事業ノ経営上当該設備ト一体不可離ノ関係ヲ有スト認ムベキ他ノ重要ナル設備アルトキハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ併セテ之ヲ買上グルコトヲ得
第六条 第三条ノ規定ニ依リ兵器等製造事業者ニ貸付シタル政府所有ノ設備ニ付当該事業者ノ申請アルトキハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ払下グルコトヲ得
第七条 政府ハ兵器等ノ生産力ヲ確保スル為必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ兵器等製造事業者ニ対シ其ノ事業ニ属スル重要ナル設備ヲ指定シ之ニ付一定ノ期間内ニ償却ヲ為スベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ償却ニ付テハ所得税、法人税其ノ他ノ租税ノ課税標準ノ計算ニ関シ命令ヲ以テ特例ヲ設クルコトヲ得
第一項ノ償却ニ係ル設備ニ依リ生産又ハ修理シタル兵器等ニ付政府ノ支払フベキ代金ハ当該償却ヲ斟酌シテ之ヲ定ムルモノトス
第八条 第三条又ハ第五条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ係ル設備ハ兵器等製造事業者之ヲ政府ノ指定スル用途以外ノ用途ニ供スルコトヲ得ズ但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第五条第一項又ハ前条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ係ル設備ニ付テハ兵器等製造事業者ハ政府ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ譲渡其ノ他ノ処分ヲ為スコトヲ得ズ
第九条 政府ハ兵器等ノ生産ノ技術又ハ設備ノ維持培養ヲ図ル為特ニ必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ兵器等製造事業者ニ対シ兵器等ノ生産又ハ修理ヲ命ズルコトヲ得
第十条 政府ハ軍事上必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ兵器等製造事業者ニ対シ必要ナル設備、工具、ジグ、検査具若ハ図面ノ保有ヲ命ジ、原料若ハ材料ノ取得及保有ヲ命ジ又ハ政府ニ属スル此等ノ物ノ保管ヲ命ズルコトヲ得
政府ハ必要アリト認ムルトキハ前項ノ規定ニ依リ保有ヲ命ジタル物ニ付之ガ更新ヲ命ズルコトヲ得
前二項ノ規定ニ依ル命令ニ因リ生ジタル損失ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ政府之ヲ補償ス
前項ノ補償ヲ伴フベキ命令ハ之ニ因リ要スベキ補償金ノ総額ガ帝国議会ノ協賛ヲ経タル金額ヲ超エザル範囲内ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス
第十一条 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依ル兵器等製造事業者ノ権利義務ハ事業ト共ニ其ノ承継人ニ移転ス
本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ為シタル手続其ノ他ノ行為ハ前項ノ承継人ニ対シテモ亦其ノ効力ヲ有ス
第十二条 政府ハ必要アリト認ムルトキハ兵器等製造事業者ニ対シ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ命ズルコトヲ得
政府ハ必要アリト認ムルトキハ当該官吏ヲシテ兵器等製造事業者ノ事務所、営業所、工場、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨検シ業務若ハ財産ノ状況又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第十三条 政府ハ第三条、第五条第一項又ハ第七条第一項ノ規定ニ依ル命令ヲ受ケタル兵器等製造事業者(以下受命事業者ト称ス)ニ対シ其ノ命令ニ係ル事業ノ業務及会計ニ関シ監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第十四条 受命事業者タル法人ニシテ勅令ヲ以テ定ムルモノノ役員ノ選任及解任並ニ其ノ目的変更ノ決議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
受命事業者タル法人ニシテ勅令ヲ以テ定ムルモノ本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキハ政府ハ其ノ役員ヲ解任スルコトヲ得
第十五条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
一 第八条第一項又ハ第二項ノ規定ニ違反シタル者
二 第十条第一項又ハ第二項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
第十六条 第十三条ノ規定ニ依ル命令又ハ処分ニ違反シタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第十七条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
一 第十二条第一項ノ規定ニ依ル報告ヲ為サズ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタル者
二 同条第二項ノ規定ニ依ル当該官吏ノ臨検検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ質問ニ対シ答弁ヲ為サズ若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シタル者
第十八条 兵器等製造事業者ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ業務ニ関シ第十五条、第十六条又ハ前条第一号ノ違反行為ヲ為シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十九条 第十五条、第十六条及第十七条第一号ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム