戦争死亡傷害保険法
法令番号: 法律第七號
公布年月日: 昭和18年3月4日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル戰爭死亡傷害保險法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十八年三月三日
內閣總理大臣 東條英機
大藏大臣 賀屋興宣
法律第七號
戰爭死亡傷害保險法
第一條 本法ニ於テ戰爭死亡傷害保險トハ戰爭ノ際ニ於ケル戰鬪行爲又ハ之ニ關聯アル事件ニ因ル死亡傷害ノミヲ保險事故トスル保險ヲ謂フ
第二條 政府ノ指定スル保險會社ニ對シ保險料ヲ添ヘ戰爭死亡傷害保險契約ノ申込ヲ爲シタル者アルトキハ申込ノ時ニ於テ申込者ト當該保險會社トノ間ニ戰爭死亡傷害保險契約成立シタルモノト看做ス
前項ノ場合ニ於テ政府ノ指定スル保險會社ガ相互會社ナルトキハ申込者ハ戰爭死亡傷害保險契約ニ關シテハ其ノ社員ト爲ルコトナシ
第三條 政府ハ國民經濟上必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ戰爭死亡傷害保險ノ保險金ノ支拂ヲ受クル者ニ對シ其ノ保險金ノ處分ニ關シ必要ナル指示ヲ爲シ又ハ保險會社ニ對シ當該保險金ノ支拂ノ時期若ハ方法ニ關シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ支拂ヲ延期シタル保險金ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ利息ヲ附スベシ
第四條 本法ニ定ムルモノノ外保險事故、被保險者、保險金ヲ受取ルベキ者、保險金額、保險料、保險期間其ノ他戰爭死亡傷害保險ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條 戰爭死亡傷害保險ニ關スル書類ニハ印紙稅ヲ課セズ
第六條 政府ハ戰爭死亡傷害保險ニ關シ必要アリト認ムルトキハ保險會社、保險契約者、被保險者又ハ保險金ヲ受取ルベキ者ヲシテ必要ナル報吿ヲ爲サシムルコトヲ得
政府ハ戰爭死亡傷害保險ニ關シ必要アリト認ムルトキハ當該官吏ヲシテ保險會社ノ營業所其ノ他ノ場所ニ臨檢シ帳簿書類ヲ檢査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第七條 政府ハ戰爭死亡傷害保險ニ關スル業務ニ因リ保險會社ガ損失ヲ受ケタルトキハ當該保險會社ニ對シ其ノ損失ヲ補償ス
保險會社ハ戰爭死亡傷害保險ニ關スル業務ニ因リ利益ヲ得タルトキハ其ノ利益金ヲ政府ニ納付スベシ
前二項ノ損失及利益ヲ決定スル基準其ノ他損失補償及利益金納付ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第八條 法人稅法ニ依ル所得、營業稅法ニ依ル純益及臨時利得稅法ニ依ル利益ノ計算ニ付テハ保險會社ノ戰爭死亡傷害保險關係ニ基ク收入及前條第一項ノ規定ニ依ル補償金ハ其ノ總益金ヨリ、保險會社ノ戰爭死亡傷害保險關係ニ基ク支出及同條第二項ノ規定ニ依ル納付金ハ其ノ總損金ヨリ之ヲ控除ス
第九條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第六條第一項ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者
二 同條第二項ノ規定ニ依ル臨檢檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
法人又ハ人ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ前項第一號ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第一項第一號ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
戰爭保險臨時措置法中左ノ通改正ス
第十一條ノ二 法人稅法ニ依ル所得、營業稅法ニ依ル純益及臨時利得稅法ニ依ル利益ノ計算ニ付テハ保險會社ノ戰爭保險關係ニ基ク收入金額及其ノ利息、戰爭保險ノ保險事故發生シタル保險ノ目的ニ付損害保險契約アルトキハ其ノ保險料中命令ヲ以テ定ムル額竝ニ前條第一項ノ規定ニ依ル補償金ハ其ノ總益金ヨリ、保險會社ノ戰爭保險關係ニ基ク支拂金額及其ノ支拂ノ爲ニ借入レタル金額ノ利息竝ニ同條第二項ノ規定ニ依ル納付金ハ其ノ總損金ヨリ之ヲ控除ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル戦争死亡傷害保険法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十八年三月三日
内閣総理大臣 東条英機
大蔵大臣 賀屋興宣
法律第七号
戦争死亡傷害保険法
第一条 本法ニ於テ戦争死亡傷害保険トハ戦争ノ際ニ於ケル戦闘行為又ハ之ニ関連アル事件ニ因ル死亡傷害ノミヲ保険事故トスル保険ヲ謂フ
第二条 政府ノ指定スル保険会社ニ対シ保険料ヲ添ヘ戦争死亡傷害保険契約ノ申込ヲ為シタル者アルトキハ申込ノ時ニ於テ申込者ト当該保険会社トノ間ニ戦争死亡傷害保険契約成立シタルモノト看做ス
前項ノ場合ニ於テ政府ノ指定スル保険会社ガ相互会社ナルトキハ申込者ハ戦争死亡傷害保険契約ニ関シテハ其ノ社員ト為ルコトナシ
第三条 政府ハ国民経済上必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ戦争死亡傷害保険ノ保険金ノ支払ヲ受クル者ニ対シ其ノ保険金ノ処分ニ関シ必要ナル指示ヲ為シ又ハ保険会社ニ対シ当該保険金ノ支払ノ時期若ハ方法ニ関シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ支払ヲ延期シタル保険金ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ利息ヲ附スベシ
第四条 本法ニ定ムルモノノ外保険事故、被保険者、保険金ヲ受取ルベキ者、保険金額、保険料、保険期間其ノ他戦争死亡傷害保険ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五条 戦争死亡傷害保険ニ関スル書類ニハ印紙税ヲ課セズ
第六条 政府ハ戦争死亡傷害保険ニ関シ必要アリト認ムルトキハ保険会社、保険契約者、被保険者又ハ保険金ヲ受取ルベキ者ヲシテ必要ナル報告ヲ為サシムルコトヲ得
政府ハ戦争死亡傷害保険ニ関シ必要アリト認ムルトキハ当該官吏ヲシテ保険会社ノ営業所其ノ他ノ場所ニ臨検シ帳簿書類ヲ検査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第七条 政府ハ戦争死亡傷害保険ニ関スル業務ニ因リ保険会社ガ損失ヲ受ケタルトキハ当該保険会社ニ対シ其ノ損失ヲ補償ス
保険会社ハ戦争死亡傷害保険ニ関スル業務ニ因リ利益ヲ得タルトキハ其ノ利益金ヲ政府ニ納付スベシ
前二項ノ損失及利益ヲ決定スル基準其ノ他損失補償及利益金納付ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第八条 法人税法ニ依ル所得、営業税法ニ依ル純益及臨時利得税法ニ依ル利益ノ計算ニ付テハ保険会社ノ戦争死亡傷害保険関係ニ基ク収入及前条第一項ノ規定ニ依ル補償金ハ其ノ総益金ヨリ、保険会社ノ戦争死亡傷害保険関係ニ基ク支出及同条第二項ノ規定ニ依ル納付金ハ其ノ総損金ヨリ之ヲ控除ス
第九条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
一 第六条第一項ノ規定ニ依ル報告ヲ為サズ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタル者
二 同条第二項ノ規定ニ依ル臨検検査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
法人又ハ人ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ前項第一号ノ違反行為ヲ為シタルトキハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第一項第一号ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
戦争保険臨時措置法中左ノ通改正ス
第十一条ノ二 法人税法ニ依ル所得、営業税法ニ依ル純益及臨時利得税法ニ依ル利益ノ計算ニ付テハ保険会社ノ戦争保険関係ニ基ク収入金額及其ノ利息、戦争保険ノ保険事故発生シタル保険ノ目的ニ付損害保険契約アルトキハ其ノ保険料中命令ヲ以テ定ムル額並ニ前条第一項ノ規定ニ依ル補償金ハ其ノ総益金ヨリ、保険会社ノ戦争保険関係ニ基ク支払金額及其ノ支払ノ為ニ借入レタル金額ノ利息並ニ同条第二項ノ規定ニ依ル納付金ハ其ノ総損金ヨリ之ヲ控除ス