帝国石油株式会社法
法令番号: 法律第七十三號
公布年月日: 昭和16年3月15日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル帝國石油株式會社法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年三月十四日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
內務大臣 男爵 平沼騏一郞
陸軍大臣 東條英機
商工大臣 小林一三
大藏大臣 河田烈
海軍大臣 及川古志郞
法律第七十三號
帝國石油株式會社法
第一章 總則
第一條 帝國石油株式會社ハ石油資源ノ開發ヲ促進シ石油事業ノ振興ヲ圖ル爲必要ナル事業ヲ營ムコトヲ目的トスル株式會社トス
第二條 帝國石油株式會社ノ資本ハ一億圓トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
第三條 政府ハ五千萬圓ヲ限リ帝國石油株式會社ニ出資スベシ
政府所有ノ株式ノ株金拂込ハ其ノ他ノ株式ノ株金拂込ト之ヲ異ニスルコトヲ得
第四條 帝國石油株式會社ノ株金ノ第一囘拂込金額ハ株金ノ五分ノ一迄下ルコトヲ得
第五條 帝國石油株式會社ノ株式ハ記名式トシ政府、公共團體、帝國臣民又ハ帝國法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半數以上、資本ノ半額以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國人若ハ外國法人ニ屬セザルモノニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
第六條 帝國石油株式會社ニ非ザルモノハ帝國石油株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ以テ其ノ商號ト爲スコトヲ得ズ
第二章 役員
第七條 帝國石油株式會社ニ總裁副總裁各一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第八條 總裁ハ帝國石油株式會社ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
副總裁ハ總裁事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ總裁缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副總裁及理事ハ總裁ヲ補助シ帝國石油株式會社ノ業務ヲ分掌ス
監事ハ帝國石油株式會社ノ業務ヲ監査ス
第九條 總裁及副總裁ハ政府之ヲ命ジ其ノ任期ヲ五年トス
理事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ政府ノ認可ヲ受クルモノトシ其ノ任期ヲ四年トス
監事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ三年トス
石油事業ヲ監督スル官廳ノ官吏タリシ者ハ其ノ職ヲ退キタル後五年間帝國石油株式會社ノ役員ト爲ルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十條 總裁、副總裁及理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三章 營業
第十一條 帝國石油株式會社ハ左ノ事業ヲ營ムモノトス
一 石油資源ノ調査又ハ開發
二 石油ノ賣買
三 石油資源ノ開發事業ニ對スル資金ノ融通又ハ投資
四 前各號ノ事業ニ附帶スル事業
帝國石油株式會社ハ政府ノ認可ヲ受ケ前項ノ事業ノ外本會社ノ目的達成上必要ナル諸事業ヲ營ムコトヲ得
第四章 帝國石油債券
第十二條 帝國石油株式會社ハ拂込ミタル株金額ノ三倍ヲ限リ帝國石油債券ヲ發行スルコトヲ得
帝國石油債券ヲ發行スル場合ニ於テハ商法第三百四十三條ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ要セズ
第十三條 帝國石油債券ヲ發行セントスル場合ニ於テハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第十四條 政府ハ帝國石油債券ノ元本ノ償還及利息ノ支拂ニ付保證スルコトヲ得
第十五條 帝國石油債券ノ所有者ハ帝國石油株式會社ノ財產ニ付他ノ債權者ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ有ス
前項ノ規定ハ民法上ノ一般ノ先取特權ノ行使ヲ妨グルコトナシ
第五章 準備金
第十六條 帝國石油株式會社ハ每營業年度ニ準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補フ爲利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立テ且利益配當ノ平均ヲ得シムル爲利益金額ノ百分ノ二以上ヲ積立ツベシ
第六章 監督及助成
第十七條 政府ハ帝國石油株式會社ノ業務ヲ監督ス
第十八條 帝國石油株式會社借入金ヲ爲サントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第十九條 定款ノ變更、利益金ノ處分、合併及解散ノ決議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十條 帝國石油株式會社ハ每營業年度ノ事業計畫ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第二十一條 政府ハ帝國石油株式會社ノ業務ニ關シ監督上又ハ石油事業ノ振興上其ノ他公益上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十二條 政府ハ帝國石油株式會社ノ業務ニ關シ軍事上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十三條 政府ハ帝國石油株式會社監理官ヲ置キ帝國石油株式會社ノ業務ヲ監視セシム
第二十四條 帝國石油株式會社監理官ハ何時ニテモ帝國石油株式會社ノ金庫、帳簿及諸般ノ文書物件ヲ檢査スルコトヲ得
帝國石油株式會社監理官必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ帝國石油株式會社ニ命ジ業務ニ關スル諸般ノ計算及狀況ヲ報吿セシムルコトヲ得
帝國石油株式會社監理官ハ株主總會其ノ他諸般ノ會議ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十五條 政府ハ帝國石油株式會社ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第二十六條 帝國石油株式會社ハ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ對シ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズ
第二十七條 帝國石油株式會社ノ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ニ達セザルトキ(利益金額ナキトキ及缺損ヲ生ジタルトキヲ含ム)ハ政府ハ第十營業年度迄之ニ達セシムベキ金額ヲ補給スベシ
每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ハ先ヅ之ヲ前項ノ規定ニ依ル補給金ノ償還ニ充ツベシ
第十營業年度迄每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ二分ノ一ヲ配當準備ノ爲別ニ積立ツベシ
第二項ノ規定ニ依リ補給金ヲ償還シ尙殘餘アリタルトキハ之ヲ前項ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過シタル當該營業年度ノ利益金ト看做ス
前二項ノ規定ニ依ル積立金ハ後營業年度ニ於ケル第一項ノ規定ニ依ル補給金ノ計算ニ付テハ之ヲ配當シ得ベキ利益金ト看做ス
第二十八條 帝國石油株式會社ノ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超エ利益配當ヲ爲サントスルトキハ其ノ超過スル利益金額ハ利益配當ガ總株式ニ付拂込ミタル株金額ニ對シ均一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額及政府ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ一ト五トノ割合ヲ以テ之ヲ配當スベシ
第二十九條 帝國石油株式會社ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ本法施行ノ年及其ノ翌年ヨリ十年間其ノ事業ニ付所得ニ對スル法人稅及營業稅ヲ免除ス
帝國石油株式會社ノ所得又ハ純益ガ各事業年度ノ資本金額ニ對シ年百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユルトキハ其ノ超過額ニ相當スル所得又ハ純益ニ付テハ前項ノ規定ヲ適用セズ但シ本法施行ノ年及其ノ翌年ヨリ三年間ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ資本金額ノ計算方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一條ノ規定ニ依ル資金ノ融通又ハ投資ヨリ生ズル帝國石油株式會社ノ甲種ノ配當利子所得ニシテ第一項ニ規定スル法人稅及營業稅ノ免除期間內ニ生ジタルモノニハ命令ノ定ムル所ニ依リ分類所得稅ヲ課セズ
第三十條 北海道、府縣及市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ前條ノ期間帝國石油株式會社ニハ前條第二項ノ規定ニ依リ賦課セラレタル營業稅ノ附加稅ヲ除クノ外其ノ事業ニ對シ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情ニ基キ政府ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第七章 罰則
第三十一條 帝國石油株式會社左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ總裁又ハ總裁ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副總裁ヲ五千圓以下ノ過料ニ處ス副總裁又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副總裁又ハ理事ヲ過料ニ處スルコト亦同ジ
一 本法ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 第十一條ノ規定ニ依ラズシテ業務ヲ營ミタルトキ
三 第十二條第一項ノ規定ニ違反シ帝國石油債券ヲ發行シタルトキ
四 第二十一條又ハ第二十二條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタルトキ
第三十二條 帝國石油株式會社ノ總裁、副總裁又ハ理事第十條ノ規定ニ違反シタルトキハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第三十三條 第六條ノ規定ニ違反シタル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
附 則
第三十四條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十五條 昭和十五年七月二十四日設立セラレタル帝國石油資源開發株式會社(以下帝國石油資源開發株式會社ト稱ス)ハ命令ノ定ムル所ニ依リ商法第三百四十三條ニ定ムル株主總會ノ決議ヲ以テ帝國石油株式會社ト爲ルコトヲ得
帝國石油資源開發株式會社前項ノ決議ヲ爲シタルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第三十六條 前條ノ認可ヲ爲シタルトキハ政府ハ設立委員ヲ命ジ帝國石油資源開發株式會社ヲ帝國石油株式會社ト爲ス爲ニ必要ナル事務ヲ處理セシム
前項ノ設立委員ノ中少クトモ二人ハ帝國石油資源開發株式會社ノ取締役ノ中ヨリ之ヲ命ズルコトヲ要ス
設立委員ノ任命アリタル後ハ帝國石油資源開發株式會社ノ取締役ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ會社ノ常務ニ屬セザル行爲ヲ爲スコトヲ得ズ
第三十七條 設立委員ハ定款ヲ作成シ政府ノ認可ヲ受クベシ
第三十八條 前條ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ總株式ヨリ帝國石油資源開發株式會社ノ株式ニ引當テラルベキ株式及政府ニ割當ツベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第三十九條 株式申込證ニハ商法第百七十五條第二項第二號及第四號乃至第七號ニ規定スル事項ノ外定款認可ノ年月日ヲ記載スベシ
第四十條 設立委員ハ株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込證ヲ政府ニ提出シ其ノ檢査ヲ受クベシ
第四十一條 設立委員ハ前條ノ檢査ヲ受ケタル後遲滯ナク各新株ニ付第一囘ノ拂込ヲ爲サシムベシ
第四十二條 前條ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
第四十三條 創立總會ニ於テハ第九條ノ規定ニ準ジ理事及監事ノ選任ヲ行フベシ
第四十四條 創立總會終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ帝國石油株式會社總裁ニ引渡スベシ
第四十五條 帝國石油株式會社ノ成立ニ因リ帝國石油資源開發株式會社ハ之ニ吸收セラルルモノトシ帝國石油資源開發株式會社ノ權利義務ハ帝國石油株式會社ニ於テ之ヲ承繼ス
第四十六條 前條ノ規定ニ依リ帝國石油資源開發株式會社ガ帝國石油株式會社ト爲リタルトキハ法人稅法、營業稅法及臨時利得稅法ノ適用ニ關シテハ帝國石油資源開發株式會社ハ之ヲ合併ニ因リテ消滅シタル法人ト看做シ帝國石油株式會社ハ之ヲ合併ニ因リテ設立シタル法人ト看做ス
帝國石油株式會社ガ設立ノ登記ヲ受クルトキハ其ノ拂込株金額中帝國石油資源開發株式會社ノ拂込株金額ニ相當スル部分ニ付テハ登錄稅ヲ課セズ
第四十七條 第三十五條乃至前條ニ規定スルモノヲ除クノ外帝國石油資源開發株式會社ガ帝國石油株式會社ト爲ル場合ニ於テ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十八條 第三十五條第一項ノ決議ナキ場合又ハ其ノ決議ガ效力ヲ生ゼザル場合ニ於テ帝國石油株式會社ノ設立ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十九條 本法施行ノ際現ニ帝國石油株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ以テ商號ト爲ス會社ハ本法施行後六月以內ニ其ノ商號ヲ變更スルコトヲ要ス
第三十三條ノ規定ハ前項ノ期間內之ヲ前項ニ揭グル者ニ適用セズ
第五十條 
登錄稅法第六條第一項第十一號中「燃料興業債券、」ノ下ニ「帝國石油債券、」ヲ加フ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル帝国石油株式会社法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年三月十四日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
内務大臣 男爵 平沼騏一郎
陸軍大臣 東条英機
商工大臣 小林一三
大蔵大臣 河田烈
海軍大臣 及川古志郎
法律第七十三号
帝国石油株式会社法
第一章 総則
第一条 帝国石油株式会社ハ石油資源ノ開発ヲ促進シ石油事業ノ振興ヲ図ル為必要ナル事業ヲ営ムコトヲ目的トスル株式会社トス
第二条 帝国石油株式会社ノ資本ハ一億円トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ増加スルコトヲ得
第三条 政府ハ五千万円ヲ限リ帝国石油株式会社ニ出資スベシ
政府所有ノ株式ノ株金払込ハ其ノ他ノ株式ノ株金払込ト之ヲ異ニスルコトヲ得
第四条 帝国石油株式会社ノ株金ノ第一回払込金額ハ株金ノ五分ノ一迄下ルコトヲ得
第五条 帝国石油株式会社ノ株式ハ記名式トシ政府、公共団体、帝国臣民又ハ帝国法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半数以上、資本ノ半額以上若ハ議決権ノ過半数ガ外国人若ハ外国法人ニ属セザルモノニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
第六条 帝国石油株式会社ニ非ザルモノハ帝国石油株式会社又ハ之ニ類似ノ名称ヲ以テ其ノ商号ト為スコトヲ得ズ
第二章 役員
第七条 帝国石油株式会社ニ総裁副総裁各一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第八条 総裁ハ帝国石油株式会社ヲ代表シ其ノ業務ヲ総理ス
副総裁ハ総裁事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ総裁欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副総裁及理事ハ総裁ヲ補助シ帝国石油株式会社ノ業務ヲ分掌ス
監事ハ帝国石油株式会社ノ業務ヲ監査ス
第九条 総裁及副総裁ハ政府之ヲ命ジ其ノ任期ヲ五年トス
理事ハ株主総会ニ於テ之ヲ選任シ政府ノ認可ヲ受クルモノトシ其ノ任期ヲ四年トス
監事ハ株主総会ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ三年トス
石油事業ヲ監督スル官庁ノ官吏タリシ者ハ其ノ職ヲ退キタル後五年間帝国石油株式会社ノ役員ト為ルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十条 総裁、副総裁及理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三章 営業
第十一条 帝国石油株式会社ハ左ノ事業ヲ営ムモノトス
一 石油資源ノ調査又ハ開発
二 石油ノ売買
三 石油資源ノ開発事業ニ対スル資金ノ融通又ハ投資
四 前各号ノ事業ニ附帯スル事業
帝国石油株式会社ハ政府ノ認可ヲ受ケ前項ノ事業ノ外本会社ノ目的達成上必要ナル諸事業ヲ営ムコトヲ得
第四章 帝国石油債券
第十二条 帝国石油株式会社ハ払込ミタル株金額ノ三倍ヲ限リ帝国石油債券ヲ発行スルコトヲ得
帝国石油債券ヲ発行スル場合ニ於テハ商法第三百四十三条ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ要セズ
第十三条 帝国石油債券ヲ発行セントスル場合ニ於テハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第十四条 政府ハ帝国石油債券ノ元本ノ償還及利息ノ支払ニ付保証スルコトヲ得
第十五条 帝国石油債券ノ所有者ハ帝国石油株式会社ノ財産ニ付他ノ債権者ニ先チテ自己ノ債権ノ弁済ヲ受クル権利ヲ有ス
前項ノ規定ハ民法上ノ一般ノ先取特権ノ行使ヲ妨グルコトナシ
第五章 準備金
第十六条 帝国石油株式会社ハ毎営業年度ニ準備金トシテ資本ノ欠損ヲ補フ為利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立テ且利益配当ノ平均ヲ得シムル為利益金額ノ百分ノ二以上ヲ積立ツベシ
第六章 監督及助成
第十七条 政府ハ帝国石油株式会社ノ業務ヲ監督ス
第十八条 帝国石油株式会社借入金ヲ為サントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第十九条 定款ノ変更、利益金ノ処分、合併及解散ノ決議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第二十条 帝国石油株式会社ハ毎営業年度ノ事業計画ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
第二十一条 政府ハ帝国石油株式会社ノ業務ニ関シ監督上又ハ石油事業ノ振興上其ノ他公益上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第二十二条 政府ハ帝国石油株式会社ノ業務ニ関シ軍事上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第二十三条 政府ハ帝国石油株式会社監理官ヲ置キ帝国石油株式会社ノ業務ヲ監視セシム
第二十四条 帝国石油株式会社監理官ハ何時ニテモ帝国石油株式会社ノ金庫、帳簿及諸般ノ文書物件ヲ検査スルコトヲ得
帝国石油株式会社監理官必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ帝国石油株式会社ニ命ジ業務ニ関スル諸般ノ計算及状況ヲ報告セシムルコトヲ得
帝国石油株式会社監理官ハ株主総会其ノ他諸般ノ会議ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十五条 政府ハ帝国石油株式会社ノ決議又ハ役員ノ行為ガ法令、法令ニ基キテ為ス処分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第二十六条 帝国石油株式会社ハ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ対シ利益ノ配当ヲ為スコトヲ要セズ
第二十七条 帝国石油株式会社ノ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ四ノ割合ニ達セザルトキ(利益金額ナキトキ及欠損ヲ生ジタルトキヲ含ム)ハ政府ハ第十営業年度迄之ニ達セシムベキ金額ヲ補給スベシ
毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ハ先ヅ之ヲ前項ノ規定ニ依ル補給金ノ償還ニ充ツベシ
第十営業年度迄毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ二分ノ一ヲ配当準備ノ為別ニ積立ツベシ
第二項ノ規定ニ依リ補給金ヲ償還シ尚残余アリタルトキハ之ヲ前項ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過シタル当該営業年度ノ利益金ト看做ス
前二項ノ規定ニ依ル積立金ハ後営業年度ニ於ケル第一項ノ規定ニ依ル補給金ノ計算ニ付テハ之ヲ配当シ得ベキ利益金ト看做ス
第二十八条 帝国石油株式会社ノ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超エ利益配当ヲ為サントスルトキハ其ノ超過スル利益金額ハ利益配当ガ総株式ニ付払込ミタル株金額ニ対シ均一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額及政府ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ一ト五トノ割合ヲ以テ之ヲ配当スベシ
第二十九条 帝国石油株式会社ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ本法施行ノ年及其ノ翌年ヨリ十年間其ノ事業ニ付所得ニ対スル法人税及営業税ヲ免除ス
帝国石油株式会社ノ所得又ハ純益ガ各事業年度ノ資本金額ニ対シ年百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユルトキハ其ノ超過額ニ相当スル所得又ハ純益ニ付テハ前項ノ規定ヲ適用セズ但シ本法施行ノ年及其ノ翌年ヨリ三年間ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ資本金額ノ計算方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一条ノ規定ニ依ル資金ノ融通又ハ投資ヨリ生ズル帝国石油株式会社ノ甲種ノ配当利子所得ニシテ第一項ニ規定スル法人税及営業税ノ免除期間内ニ生ジタルモノニハ命令ノ定ムル所ニ依リ分類所得税ヲ課セズ
第三十条 北海道、府県及市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ前条ノ期間帝国石油株式会社ニハ前条第二項ノ規定ニ依リ賦課セラレタル営業税ノ附加税ヲ除クノ外其ノ事業ニ対シ地方税ヲ課スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情ニ基キ政府ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第七章 罰則
第三十一条 帝国石油株式会社左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ総裁又ハ総裁ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副総裁ヲ五千円以下ノ過料ニ処ス副総裁又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副総裁又ハ理事ヲ過料ニ処スルコト亦同ジ
一 本法ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 第十一条ノ規定ニ依ラズシテ業務ヲ営ミタルトキ
三 第十二条第一項ノ規定ニ違反シ帝国石油債券ヲ発行シタルトキ
四 第二十一条又ハ第二十二条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタルトキ
第三十二条 帝国石油株式会社ノ総裁、副総裁又ハ理事第十条ノ規定ニ違反シタルトキハ千円以下ノ過料ニ処ス
第三十三条 第六条ノ規定ニ違反シタル者ハ千円以下ノ過料ニ処ス
附 則
第三十四条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十五条 昭和十五年七月二十四日設立セラレタル帝国石油資源開発株式会社(以下帝国石油資源開発株式会社ト称ス)ハ命令ノ定ムル所ニ依リ商法第三百四十三条ニ定ムル株主総会ノ決議ヲ以テ帝国石油株式会社ト為ルコトヲ得
帝国石油資源開発株式会社前項ノ決議ヲ為シタルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第三十六条 前条ノ認可ヲ為シタルトキハ政府ハ設立委員ヲ命ジ帝国石油資源開発株式会社ヲ帝国石油株式会社ト為ス為ニ必要ナル事務ヲ処理セシム
前項ノ設立委員ノ中少クトモ二人ハ帝国石油資源開発株式会社ノ取締役ノ中ヨリ之ヲ命ズルコトヲ要ス
設立委員ノ任命アリタル後ハ帝国石油資源開発株式会社ノ取締役ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ会社ノ常務ニ属セザル行為ヲ為スコトヲ得ズ
第三十七条 設立委員ハ定款ヲ作成シ政府ノ認可ヲ受クベシ
第三十八条 前条ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ総株式ヨリ帝国石油資源開発株式会社ノ株式ニ引当テラルベキ株式及政府ニ割当ツベキ株式ヲ控除シタル残余ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第三十九条 株式申込証ニハ商法第百七十五条第二項第二号及第四号乃至第七号ニ規定スル事項ノ外定款認可ノ年月日ヲ記載スベシ
第四十条 設立委員ハ株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込証ヲ政府ニ提出シ其ノ検査ヲ受クベシ
第四十一条 設立委員ハ前条ノ検査ヲ受ケタル後遅滞ナク各新株ニ付第一回ノ払込ヲ為サシムベシ
第四十二条 前条ノ払込アリタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク創立総会ヲ招集スベシ
第四十三条 創立総会ニ於テハ第九条ノ規定ニ準ジ理事及監事ノ選任ヲ行フベシ
第四十四条 創立総会終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ帝国石油株式会社総裁ニ引渡スベシ
第四十五条 帝国石油株式会社ノ成立ニ因リ帝国石油資源開発株式会社ハ之ニ吸収セラルルモノトシ帝国石油資源開発株式会社ノ権利義務ハ帝国石油株式会社ニ於テ之ヲ承継ス
第四十六条 前条ノ規定ニ依リ帝国石油資源開発株式会社ガ帝国石油株式会社ト為リタルトキハ法人税法、営業税法及臨時利得税法ノ適用ニ関シテハ帝国石油資源開発株式会社ハ之ヲ合併ニ因リテ消滅シタル法人ト看做シ帝国石油株式会社ハ之ヲ合併ニ因リテ設立シタル法人ト看做ス
帝国石油株式会社ガ設立ノ登記ヲ受クルトキハ其ノ払込株金額中帝国石油資源開発株式会社ノ払込株金額ニ相当スル部分ニ付テハ登録税ヲ課セズ
第四十七条 第三十五条乃至前条ニ規定スルモノヲ除クノ外帝国石油資源開発株式会社ガ帝国石油株式会社ト為ル場合ニ於テ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十八条 第三十五条第一項ノ決議ナキ場合又ハ其ノ決議ガ効力ヲ生ゼザル場合ニ於テ帝国石油株式会社ノ設立ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十九条 本法施行ノ際現ニ帝国石油株式会社又ハ之ニ類似ノ名称ヲ以テ商号ト為ス会社ハ本法施行後六月以内ニ其ノ商号ヲ変更スルコトヲ要ス
第三十三条ノ規定ハ前項ノ期間内之ヲ前項ニ掲グル者ニ適用セズ
第五十条 
登録税法第六条第一項第十一号中「燃料興業債券、」ノ下ニ「帝国石油債券、」ヲ加フ