第三十九條 第一章ニ揭グル罪ヲ犯シ刑ニ處セラレタル者其ノ執行ヲ終リ釋放セラルベキ場合ニ於テ釋放後ニ於テ更ニ同章ニ揭グル罪ヲ犯スノ虞アルコト顯著ナルトキハ裁判所ハ檢事ノ請求ニ因リ本人ヲ豫防拘禁ニ付スル旨ヲ命ズルコトヲ得
第一章ニ揭グル罪ヲ犯シ刑ニ處セラレ其ノ執行ヲ終リタル者又ハ罪ノ執行猶豫ノ言渡ヲ受ケタル者思想犯保護觀察法ニ依リ保護觀察ニ付セラレ居ル場合ニ於テ保護觀察ニ依ルモ同章ニ揭グル罪ヲ犯スノ危險ヲ防止スルコト困難ニシテ更ニ之ヲ犯スノ虞アルコト顯著ナルトキ亦前項ニ同ジ
第四十條 豫防拘禁ノ請求ハ本人ノ現在地ヲ管轄スル地方裁判所ノ檢事其ノ裁判所ニ之ヲ爲スベシ
前項ノ請求ハ保護觀察ニ付セラレ居ル者ニ係ルトキハ其ノ保護觀察ヲ爲ス保護觀察所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ノ檢事其ノ裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ得
豫防拘禁ノ請求ヲ爲スニハ豫メ豫防拘禁委員會ノ意見ヲ求ムルコトヲ要ス
第四十一條 檢事ハ豫防拘禁ノ請求ヲ爲スニ付テハ必要ナル取調ヲ爲シ又ハ公務所ニ照會シテ必要ナル事項ノ報吿ヲ求ムルコトヲ得
前項ノ取調ヲ爲スニ付必要アル場合ニ於テハ司法警察官吏ヲシテ本人ヲ同行セシムルコトヲ得
第四十二條 檢事ハ本人定リタル住居ヲ有セザル場合又ハ逃亡シ若ハ逃亡スル虞アル場合ニ於テ豫防拘禁ノ請求ヲ爲スニ付必要アルトキハ本人ヲ豫防拘禁所ニ假ニ收容スルコトヲ得但シ已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於テハ監獄ニ假ニ收容スルコトヲ妨ゲズ
前項ノ假收容ハ本人ノ陳述ヲ聽キタル後ニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ但シ本人陳述ヲ肯ゼズ又ハ逃亡シタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第四十三條 前條ノ假收容ノ期間ハ十日トス其ノ期間內ニ豫防拘禁ノ請求ヲ爲サザルトキハ速ニ本人ヲ釋放スベシ
第四十四條 豫防拘禁ノ請求アリタルトキハ裁判所ハ本人ノ陳述ヲ聽キ決定ヲ爲スベシ此ノ場合ニ於テハ裁判所ハ本人ニ出頭ヲ命ズルコトヲ得
本人陳述ヲ肯ゼズ又ハ逃亡シタルトキハ陳述ヲ聽カズシテ決定ヲ爲スコトヲ得
刑ノ執行終了前豫防拘禁ノ請求アリタルトキハ裁判所ハ刑ノ執行終了後ト雖モ豫防拘禁ニ付スル旨ノ決定ヲ爲スコトヲ得
第四十五條 裁判所ハ事實ノ取調ヲ爲スニ付必要アル場合ニ於テハ參考人ニ出頭ヲ命ジ事實ノ陳述又ハ鑑定ヲ爲サシムルコトヲ得
裁判所ハ公務所ニ照會シテ必要ナル事項ノ報吿ヲ求ムルコトヲ得
第四十六條 檢事ハ裁判所ガ本人ヲシテ陳述ヲ爲サシメ又ハ參考人ヲシテ事實ノ陳述若ハ鑑定ヲ爲サシムル場合ニ立會ヒ意見ヲ開陳スルコトヲ得
第四十七條 本人ノ屬スル家ノ戶主、配偶者又ハ四親等內ノ血族若ハ三親等內ノ姻族ハ裁判所ノ許可ヲ受ケ輔佐人ト爲ルコトヲ得
輔佐人ハ裁判所ガ本人ヲシテ陳述ヲ爲サシメ若ハ參考人ヲシテ事實ノ陳述若ハ鑑定ヲ爲サシムル場合ニ立會ヒ意見ヲ開陳シ又ハ參考ト爲ルベキ資料ヲ提出スルコトヲ得
第四十八條 左ノ場合ニ於テハ裁判所ハ本人ヲ勾引スルコトヲ得
三 本人正當ノ理由ナクシテ第四十四條第一項ノ出頭命令ニ應ゼザルトキ
第四十九條 前條第一號又ハ第二號ニ規定スル事由アルトキハ裁判所ハ本人ヲ豫防拘禁所ニ假ニ收容スルコトヲ得但シ已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於テハ監獄ニ假ニ收容スルコトヲ妨ゲズ
本人監獄ニ在ルトキハ前項ノ事由ナシト雖モ之ヲ假ニ收容スルコトヲ得
第四十二條第二項ノ規定ハ第一項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第五十條 別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外刑事訴訟法中勾引ニ關スル規定ハ第四十八條ノ勾引ニ、勾留ニ關スル規定ハ第四十二條及前條ノ假收容ニ付之ヲ準用ス但シ保釋及責付ニ關スル規定ハ此ノ限ニ在ラズ
第五十一條 豫防拘禁ニ付セザル旨ノ決定ニ對シテハ檢事ハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
豫防拘禁ニ付スル旨ノ決定ニ對シテハ本人及輔佐人ハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第五十二條 別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外刑事訴訟法中決定ニ關スル規定ハ第四十四條ノ決定ニ、卽時抗吿ニ關スル規定ハ前條ノ卽時抗吿ニ付之ヲ準用ス
第五十三條 豫防拘禁ニ付セラレタル者ハ豫防拘禁所ニ之ヲ收容シ改悛セシムル爲必要ナル處置ヲ爲スベシ
第五十四條 豫防拘禁ニ付セラレタル者ハ法令ノ範圍內ニ於テ他人ト接見シ又ハ信書其ノ他ノ物ノ授受ヲ爲スコトヲ得
豫防拘禁ニ付セラレタル者ニ對シテハ信書其ノ他ノ物ノ檢閱、差押若ハ沒取ヲ爲シ又ハ保安若ハ懲戒ノ爲必要ナル處置ヲ爲スコトヲ得假ニ收容セラレタル者及本章ノ規定ニ依リ勾引狀ノ執行ヲ受ケ留置セラレタル者ニ付亦同ジ
第五十五條 豫防拘禁ノ期間ハ二年トス特ニ繼續ノ必要アル場合ニ於テハ裁判所ハ決定ヲ以テ之ヲ更新スルコトヲ得
豫防拘禁ノ期間滿了前更新ノ請求アリタルトキハ裁判所ハ期間滿了後ト雖モ更新ノ決定ヲ爲スコトヲ得
更新ノ決定ハ豫防拘禁ノ期間滿了後確定シタルトキト雖モ之ヲ期間滿了ノ時確定シタルモノト看做ス
第四十條、第四十一條及第四十四條乃至第五十二條ノ規定ハ更新ノ場合ニ付之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テ第四十九條第二項中監獄トアルハ豫防拘禁所トス
第五十六條 豫防拘禁ノ期間ハ決定確定ノ日ヨリ起算ス
拘禁セラレザル日數又ハ刑ノ執行ノ爲拘禁セラレタル日數ハ決定確定後ト雖モ前項ノ期間ニ算入セズ
第五十七條 決定確定ノ際本人受刑者ナルトキハ豫防拘禁ハ刑ノ執行終了後之ヲ執行ス
監獄ニ在ル本人ニ對シ豫防拘禁ヲ執行セントスル場合ニ於テ移送ノ準備其ノ他ノ事由ノ爲特ニ必要アルトキハ一時拘禁ヲ繼續スルコトヲ得
豫防拘禁ノ執行ハ本人ニ對スル犯罪ノ搜査其ノ他ノ事由ノ爲特ニ必要アルトキハ決定ヲ爲シタル裁判所ノ檢事又ハ本人ノ現在地ヲ管轄スル地方裁判所ノ檢事ノ指揮ニ因リ之ヲ停止スルコトヲ得
刑事訴訟法第五百三十四條乃至第五百三十六條及第五百四十四條乃至第五百五十二條ノ規定ハ豫防拘禁ノ執行ニ付之ヲ準用ス
第五十八條 豫防拘禁ニ付セラレタル者收容後其ノ必要ナキニ至リタルトキハ第五十五條ニ規定スル期間滿了前ト雖モ行政官廳ノ處分ヲ以テ之ヲ退所セシムベシ
第五十九條 豫防拘禁ノ執行ヲ爲サザルコト二年ニ及ビタルトキハ決定ヲ爲シタル裁判所ノ檢事又ハ本人ノ現在地ヲ管轄スル地方裁判所ノ檢事ハ事情ニ因リ其ノ執行ヲ免除スルコトヲ得
第六十條 天災事變ニ際シ豫防拘禁所內ニ於テ避難ノ手段ナシト認ムルトキハ收容セラレタル者ヲ他所ニ護送スベシ若シ護送スルノ暇ナキトキハ一時之ヲ解放スルコトヲ得
解放セラレタル者ハ解放後二十四時間內ニ豫防拘禁所又ハ警察官署ニ出頭スベシ
第六十一條 本章ノ規定ニ依リ豫防拘禁所若ハ監獄ニ收容セラレタル者又ハ勾引狀若ハ逮捕狀ヲ執行セラレタル者逃走シタルトキハ一年以下ノ懲役ニ處ス
前條第一項ノ規定ニ依リ解放セラレタル者同條第二項ノ規定ニ違反シタルトキ亦前項ニ同ジ
第六十二條 收容設備若ハ械具ヲ損壞シ、暴行若ハ脅迫ヲ爲シ又ハ二人以上通謀シテ前條第一項ノ罪ヲ犯シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
第六十四條 本法ニ規定スルモノノ外豫防拘禁ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十五條 朝鮮ニ在リテハ豫防拘禁ニ關シ地方裁判所ノ爲スベキ決定ハ地方法院ノ合議部ニ於テ之ヲ爲ス
朝鮮ニ在リテハ本章中地方裁判所ノ檢事トアルハ地方法院ノ檢事、思想犯保護觀察法トアルハ朝鮮思想犯保護觀察令、刑事訴訟法トアルハ朝鮮刑事令ニ於テ依ルコトヲ定メタル刑事訴訟法トス