治安維持法
法令番号: 法律第五十四號
公布年月日: 昭和16年3月10日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル治安維持法改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年三月八日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
內務大臣 男爵 平沼騏一郞
拓務大臣 秋田淸
陸軍大臣 東條英機
海軍大臣 及川古志郞
司法大臣 柳川平助
法律第五十四號
治安維持法
第一章 罪
第一條 國體ヲ變革スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ結社ノ役員其ノ他指導者タル任務ニ從事シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ七年以上ノ懲役ニ處シ情ヲ知リテ結社ニ加入シタル者又ハ結社ノ目的遂行ノ爲ニスル行爲ヲ爲シタル者ハ三年以上ノ有期懲役ニ處ス
第二條 前條ノ結社ヲ支援スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ結社ノ役員其ノ他指導者タル任務ニ從事シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ五年以上ノ懲役ニ處シ情ヲ知リテ結社ニ加入シタル者又ハ結社ノ目的遂行ノ爲ニスル行爲ヲ爲シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ處ス
第三條 第一條ノ結社ノ組織ヲ準備スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ結社ノ役員其ノ他指導者タル任務ニ從事シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ五年以上ノ懲役ニ處シ情ヲ知リテ結社ニ加入シタル者又ハ結社ノ目的遂行ノ爲ニスル行爲ヲ爲シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ處ス
第四條 前三條ノ目的ヲ以テ集團ヲ結成シタル者又ハ集團ヲ指導シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ處シ前三條ノ目的ヲ以テ集團ニ參加シタル者又ハ集團ニ關シ前三條ノ目的遂行ノ爲ニスル行爲ヲ爲シタル者ハ一年以上ノ有期懲役ニ處ス
第五條 第一條乃至第三條ノ目的ヲ以テ其ノ目的タル事項ノ實行ニ關シ協議若ハ煽動ヲ爲シ又ハ其ノ目的タル事項ヲ宣傳シ其ノ他其ノ目的遂行ノ爲ニスル行爲ヲ爲シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ處ス
第六條 第一條乃至第三條ノ目的ヲ以テ騷擾、暴行其ノ他生命、身體又ハ財產ニ害ヲ加フベキ犯罪ヲ煽動シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ處ス
第七條 國體ヲ否定シ又ハ神宮若ハ皇室ノ尊嚴ヲ冒瀆スベキ事項ヲ流布スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ結社ノ役員其ノ他指導者タル任務ニ從事シタル者ハ無期又ハ四年以上ノ懲役ニ處シ情ヲ知リテ結社ニ加入シタル者又ハ結社ノ目的遂行ノ爲ニスル行爲ヲ爲シタル者ハ一年以上ノ有期懲役ニ處ス
第八條 前條ノ目的ヲ以テ集團ヲ結成シタル者又ハ集團ヲ指導シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ處シ前條ノ目的ヲ以テ集團ニ參加シタル者又ハ集團ニ關シ前條ノ目的遂行ノ爲ニスル行爲ヲ爲シタル者ハ一年以上ノ有期懲役ニ處ス
第九條 前八條ノ罪ヲ犯サシムルコトヲ目的トシテ金品其ノ他ノ財產上ノ利益ヲ供與シ又ハ其ノ申込若ハ約束ヲ爲シタル者ハ十年以下ノ懲役ニ處ス情ヲ知リテ供與ヲ受ケ又ハ其ノ要求若ハ約束ヲ爲シタル者亦同ジ
第十條 私有財產制度ヲ否認スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ情ヲ知リテ結社ニ加入シタル者若ハ結社ノ目的遂行ノ爲ニスル行爲ヲ爲シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス
第十一條 前條ノ目的ヲ以テ其ノ目的タル事項ノ實行ニ關シ協議ヲ爲シ又ハ其ノ目的タル事項ノ實行ヲ煽動シタル者ハ七年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス
第十二條 第十條ノ目的ヲ以テ騷擾、暴行其ノ他生命、身體又ハ財產ニ害ヲ加フベキ犯罪ヲ煽動シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス
第十三條 前三條ノ罪ヲ犯サシムルコトヲ目的トシテ金品其ノ他ノ財產上ノ利益ヲ供與シ又ハ其ノ申込若ハ約束ヲ爲シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス情ヲ知リテ供與ヲ受ケ又ハ其ノ要求若ハ約束ヲ爲シタル者亦同ジ
第十四條 第一條乃至第四條、第七條、第八條及第十條ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第十五條 本章ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除ス
第十六條 本章ノ規定ハ何人ヲ問ハズ本法施行地外ニ於テ罪ヲ犯シタル者ニ亦之ヲ適用ス
第二章 刑事手續
第十七條 本章ノ規定ハ第一章ニ揭グル罪ニ關スル事件ニ付之ヲ適用ス
第十八條 檢事ハ被疑者ヲ召喚シ又ハ其ノ召喚ヲ司法警察官ニ命令スルコトヲ得
檢事ノ命令ニ因リ司法警察官ノ發スル召喚狀ニハ命令ヲ爲シタル檢事ノ職、氏名及其ノ命令ニ因リ之ヲ發スル旨ヲモ記載スベシ
召喚狀ノ送達ニ關スル裁判所書記及執達吏ニ屬スル職務ハ司法警察官吏之ヲ行フコトヲ得
第十九條 被疑者正當ノ事由ナクシテ前條ノ規定ニ依ル召喚ニ應ゼズ又ハ刑事訴訟法第八十七條第一項各號ニ規定スル事由アルトキハ檢事ハ被疑者ヲ勾引シ又ハ其ノ勾引ヲ他ノ檢事ニ囑託シ若ハ司法警察官ニ命令スルコトヲ得
前條第二項ノ規定ハ檢事ノ命令ニ因リ司法警察官ノ發スル勾引狀ニ付之ヲ準用ス
第二十條 勾引シタル被疑者ハ指定セラレタル場所ニ引致シタル時ヨリ四十八時間內ニ檢事又ハ司法警察官之ヲ訊問スベシ其ノ時間內ニ勾留狀ヲ發セザルトキハ檢事ハ被疑者ヲ釋放シ又ハ司法警察官ヲシテ之ヲ釋放セシムベシ
第二十一條 刑事訴訟法第八十七條第一項各號ニ規定スル事由アルトキハ檢事ハ被疑者ヲ勾留シ又ハ其ノ勾留ヲ司法警察官ニ命令スルコトヲ得
第十八條第二項ノ規定ハ檢事ノ命令ニ因リ司法警察官ノ發スル勾留狀ニ付之ヲ準用ス
第二十二條 勾留ニ付テハ警察官署又ハ憲兵隊ノ留置場ヲ以テ監獄ニ代用スルコトヲ得
第二十三條 勾留ノ期間ハ二月トス特ニ繼續ノ必要アルトキハ地方裁判所檢事又ハ區裁判所檢事ハ檢事長ノ許可ヲ受ケ一月每ニ勾留ノ期間ヲ更新スルコトヲ得但シ通ジテ一年ヲ超ユルコトヲ得ズ
第二十四條 勾留ノ事由消滅シ其ノ他勾留ヲ繼續スルノ必要ナシト思料スルトキハ檢事ハ速ニ被疑者ヲ釋放シ又ハ司法警察官ヲシテ之ヲ釋放セシムベシ
第二十五條 檢事ハ被疑者ノ住居ヲ制限シテ勾留ノ執行ヲ停止スルコトヲ得
刑事訴訟法第百十九條第一項ニ規定スル事由アル場合ニ於テハ檢事ハ勾留ノ執行停止ヲ取消スコトヲ得
第二十六條 檢事ハ被疑者ヲ訊問シ又ハ其ノ訊問ヲ司法警察官ニ命令スルコトヲ得
檢事ハ公訴提起前ニ限リ證人ヲ訊問シ又ハ其ノ訊問ヲ他ノ檢事ニ囑託シ若ハ司法警察官ニ命令スルコトヲ得
司法警察官檢事ノ命令ニ因リ被疑者又ハ證人ヲ訊問シタルトキハ命令ヲ爲シタル檢事ノ職、氏名及其ノ命令ニ因リ訊問シタル旨ヲ訊問調書ニ記載スベシ
第十八條第二項及第三項ノ規定ハ證人訊問ニ付之ヲ準用ス
第二十七條 檢事ハ公訴提起前ニ限リ押收、搜索若ハ檢證ヲ爲シ又ハ其ノ處分ヲ他ノ檢事ニ囑託シ若ハ司法警察官ニ命令スルコトヲ得
檢事ハ公訴提起前ニ限リ鑑定、通譯若ハ翻譯ヲ命ジ又ハ其ノ處分ヲ他ノ檢事ニ囑託シ若ハ司法警察官ニ命令スルコトヲ得
前條第三項ノ規定ハ押收、搜索又ハ檢證ノ調書及鑑定人、通事又ハ翻譯人ノ訊問調書ニ付之ヲ準用ス
第十八條第二項及第三項ノ規定ハ鑑定、通譯及翻譯ニ付之ヲ準用ス
第二十八條 刑事訴訟法中被吿人ノ召喚、勾引及勾留、被吿人及證人ノ訊問、押收、搜索、檢證、鑑定、通譯竝ニ翻譯ニ關スル規定ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外被疑事件ニ付之ヲ準用ス但シ保釋及責付ニ關スル規定ハ此ノ限ニ在ラズ
第二十九條 辯護人ハ司法大臣ノ豫メ指定シタル辯護士ノ中ヨリ之ヲ選任スベシ但シ刑事訴訟法第四十條第二項ノ規定ノ適用ヲ妨ゲズ
第三十條 辯護人ノ數ハ被吿人一人ニ付二人ヲ超ユルコトヲ得ズ
辯護人ノ選任ハ最初ニ定メタル公判期日ニ係ル召喚狀ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ十日ヲ經過シタルトキハ之ヲ爲スコトヲ得ズ但シ已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於テ裁判所ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三十一條 辯護人ハ訴訟ニ關スル書類ノ謄寫ヲ爲サントスルトキハ裁判長又ハ豫審判事ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
辯護人ノ訴訟ニ關スル書類ノ閱覽ハ裁判長又ハ豫審判事ノ指定シタル場所ニ於テ之ヲ爲スベシ
第三十二條 被吿事件公判ニ付セラレタル場合ニ於テ檢事必要アリト認ムルトキハ管轄移轉ノ請求ヲ爲スコトヲ得但シ第一囘公判期日ノ指定アリタル後ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ請求ハ事件ノ繫屬スル裁判所及移轉先裁判所ニ共通スル直近上級裁判所ニ之ヲ爲スベシ
第一項ノ請求アリタルトキハ決定アル迄訴訟手續ヲ停止スベシ
第三十三條 第一章ニ揭グル罪ヲ犯シタルモノト認メタル第一審ノ判決ニ對シテハ控訴ヲ爲スコトヲ得ズ
前項ニ規定スル第一審ノ判決ニ對シテハ直接上吿ヲ爲スコトヲ得
上吿ハ刑事訴訟法ニ於テ第二審ノ判決ニ對シ上吿ヲ爲スコトヲ得ル理由アル場合ニ於テ之ヲ爲スコトヲ得
上吿裁判所ハ第二審ノ判決ニ對スル上吿事件ニ關スル手續ニ依リ裁判ヲ爲スベシ
第三十四條 第一章ニ揭グル罪ヲ犯シタルモノト認メタル第一審ノ判決ニ對シ上吿アリタル場合ニ於テ上吿裁判所同章ニ揭グル罪ヲ犯シタルモノニ非ザルコトヲ疑フニ足ルベキ顯著ナル事由アルモノト認ムルトキハ判決ヲ以テ原判決ヲ破毀シ事件ヲ管轄控訴裁判所ニ移送スベシ
第三十五條 上吿裁判所ハ公判期日ノ通知ニ付テハ刑事訴訟法第四百二十二條第一項ノ期間ニ依ラザルコトヲ得
第三十六條 刑事手續ニ付テハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外一般ノ規定ノ適用アルモノトス
第三十七條 本章ノ規定ハ第二十二條、第二十三條、第二十九條、第三十條第一項、第三十二條、第三十三條及第三十四條ノ規定ヲ除クノ外軍法會議ノ刑事手續ニ付之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テ刑事訴訟法第八十七條第一項トアルハ陸軍軍法會議法第百四十三條又ハ海軍軍法會議法第百四十三條、刑事訴訟法第四百二十二條第一項トアルハ陸軍軍法會議法第四百四十四條第一項又ハ海軍軍法會議法第四百四十六條第一項トシ第二十五條第二項中刑事訴訟法第百十九條第一項ニ規定スル事由アル場合ニ於テハトアルハ何時ニテモトス
第三十八條 朝鮮ニ在リテハ本章中司法大臣トアルハ朝鮮總督、檢事長トアルハ覆審法院檢事長、地方裁判所檢事又ハ區裁判所檢事トアルハ地方法院檢事、刑事訴訟法トアルハ朝鮮刑事令ニ於テ依ルコトヲ定メタル刑事訴訟法トス但シ刑事訴訟法第四百二十二條第一項トアルハ朝鮮刑事令第三十一條トス
第三章 豫防拘禁
第三十九條 第一章ニ揭グル罪ヲ犯シ刑ニ處セラレタル者其ノ執行ヲ終リ釋放セラルベキ場合ニ於テ釋放後ニ於テ更ニ同章ニ揭グル罪ヲ犯スノ虞アルコト顯著ナルトキハ裁判所ハ檢事ノ請求ニ因リ本人ヲ豫防拘禁ニ付スル旨ヲ命ズルコトヲ得
第一章ニ揭グル罪ヲ犯シ刑ニ處セラレ其ノ執行ヲ終リタル者又ハ罪ノ執行猶豫ノ言渡ヲ受ケタル者思想犯保護觀察法ニ依リ保護觀察ニ付セラレ居ル場合ニ於テ保護觀察ニ依ルモ同章ニ揭グル罪ヲ犯スノ危險ヲ防止スルコト困難ニシテ更ニ之ヲ犯スノ虞アルコト顯著ナルトキ亦前項ニ同ジ
第四十條 豫防拘禁ノ請求ハ本人ノ現在地ヲ管轄スル地方裁判所ノ檢事其ノ裁判所ニ之ヲ爲スベシ
前項ノ請求ハ保護觀察ニ付セラレ居ル者ニ係ルトキハ其ノ保護觀察ヲ爲ス保護觀察所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ノ檢事其ノ裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ得
豫防拘禁ノ請求ヲ爲スニハ豫メ豫防拘禁委員會ノ意見ヲ求ムルコトヲ要ス
豫防拘禁委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十一條 檢事ハ豫防拘禁ノ請求ヲ爲スニ付テハ必要ナル取調ヲ爲シ又ハ公務所ニ照會シテ必要ナル事項ノ報吿ヲ求ムルコトヲ得
前項ノ取調ヲ爲スニ付必要アル場合ニ於テハ司法警察官吏ヲシテ本人ヲ同行セシムルコトヲ得
第四十二條 檢事ハ本人定リタル住居ヲ有セザル場合又ハ逃亡シ若ハ逃亡スル虞アル場合ニ於テ豫防拘禁ノ請求ヲ爲スニ付必要アルトキハ本人ヲ豫防拘禁所ニ假ニ收容スルコトヲ得但シ已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於テハ監獄ニ假ニ收容スルコトヲ妨ゲズ
前項ノ假收容ハ本人ノ陳述ヲ聽キタル後ニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ但シ本人陳述ヲ肯ゼズ又ハ逃亡シタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第四十三條 前條ノ假收容ノ期間ハ十日トス其ノ期間內ニ豫防拘禁ノ請求ヲ爲サザルトキハ速ニ本人ヲ釋放スベシ
第四十四條 豫防拘禁ノ請求アリタルトキハ裁判所ハ本人ノ陳述ヲ聽キ決定ヲ爲スベシ此ノ場合ニ於テハ裁判所ハ本人ニ出頭ヲ命ズルコトヲ得
本人陳述ヲ肯ゼズ又ハ逃亡シタルトキハ陳述ヲ聽カズシテ決定ヲ爲スコトヲ得
刑ノ執行終了前豫防拘禁ノ請求アリタルトキハ裁判所ハ刑ノ執行終了後ト雖モ豫防拘禁ニ付スル旨ノ決定ヲ爲スコトヲ得
第四十五條 裁判所ハ事實ノ取調ヲ爲スニ付必要アル場合ニ於テハ參考人ニ出頭ヲ命ジ事實ノ陳述又ハ鑑定ヲ爲サシムルコトヲ得
裁判所ハ公務所ニ照會シテ必要ナル事項ノ報吿ヲ求ムルコトヲ得
第四十六條 檢事ハ裁判所ガ本人ヲシテ陳述ヲ爲サシメ又ハ參考人ヲシテ事實ノ陳述若ハ鑑定ヲ爲サシムル場合ニ立會ヒ意見ヲ開陳スルコトヲ得
第四十七條 本人ノ屬スル家ノ戶主、配偶者又ハ四親等內ノ血族若ハ三親等內ノ姻族ハ裁判所ノ許可ヲ受ケ輔佐人ト爲ルコトヲ得
輔佐人ハ裁判所ガ本人ヲシテ陳述ヲ爲サシメ若ハ參考人ヲシテ事實ノ陳述若ハ鑑定ヲ爲サシムル場合ニ立會ヒ意見ヲ開陳シ又ハ參考ト爲ルベキ資料ヲ提出スルコトヲ得
第四十八條 左ノ場合ニ於テハ裁判所ハ本人ヲ勾引スルコトヲ得
一 本人定リタル住居ヲ有セザルトキ
二 本人逃亡シタルトキ又ハ逃亡スル虞アルトキ
三 本人正當ノ理由ナクシテ第四十四條第一項ノ出頭命令ニ應ゼザルトキ
第四十九條 前條第一號又ハ第二號ニ規定スル事由アルトキハ裁判所ハ本人ヲ豫防拘禁所ニ假ニ收容スルコトヲ得但シ已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於テハ監獄ニ假ニ收容スルコトヲ妨ゲズ
本人監獄ニ在ルトキハ前項ノ事由ナシト雖モ之ヲ假ニ收容スルコトヲ得
第四十二條第二項ノ規定ハ第一項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第五十條 別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外刑事訴訟法中勾引ニ關スル規定ハ第四十八條ノ勾引ニ、勾留ニ關スル規定ハ第四十二條及前條ノ假收容ニ付之ヲ準用ス但シ保釋及責付ニ關スル規定ハ此ノ限ニ在ラズ
第五十一條 豫防拘禁ニ付セザル旨ノ決定ニ對シテハ檢事ハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
豫防拘禁ニ付スル旨ノ決定ニ對シテハ本人及輔佐人ハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第五十二條 別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外刑事訴訟法中決定ニ關スル規定ハ第四十四條ノ決定ニ、卽時抗吿ニ關スル規定ハ前條ノ卽時抗吿ニ付之ヲ準用ス
第五十三條 豫防拘禁ニ付セラレタル者ハ豫防拘禁所ニ之ヲ收容シ改悛セシムル爲必要ナル處置ヲ爲スベシ
豫防拘禁所ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十四條 豫防拘禁ニ付セラレタル者ハ法令ノ範圍內ニ於テ他人ト接見シ又ハ信書其ノ他ノ物ノ授受ヲ爲スコトヲ得
豫防拘禁ニ付セラレタル者ニ對シテハ信書其ノ他ノ物ノ檢閱、差押若ハ沒取ヲ爲シ又ハ保安若ハ懲戒ノ爲必要ナル處置ヲ爲スコトヲ得假ニ收容セラレタル者及本章ノ規定ニ依リ勾引狀ノ執行ヲ受ケ留置セラレタル者ニ付亦同ジ
第五十五條 豫防拘禁ノ期間ハ二年トス特ニ繼續ノ必要アル場合ニ於テハ裁判所ハ決定ヲ以テ之ヲ更新スルコトヲ得
豫防拘禁ノ期間滿了前更新ノ請求アリタルトキハ裁判所ハ期間滿了後ト雖モ更新ノ決定ヲ爲スコトヲ得
更新ノ決定ハ豫防拘禁ノ期間滿了後確定シタルトキト雖モ之ヲ期間滿了ノ時確定シタルモノト看做ス
第四十條、第四十一條及第四十四條乃至第五十二條ノ規定ハ更新ノ場合ニ付之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テ第四十九條第二項中監獄トアルハ豫防拘禁所トス
第五十六條 豫防拘禁ノ期間ハ決定確定ノ日ヨリ起算ス
拘禁セラレザル日數又ハ刑ノ執行ノ爲拘禁セラレタル日數ハ決定確定後ト雖モ前項ノ期間ニ算入セズ
第五十七條 決定確定ノ際本人受刑者ナルトキハ豫防拘禁ハ刑ノ執行終了後之ヲ執行ス
監獄ニ在ル本人ニ對シ豫防拘禁ヲ執行セントスル場合ニ於テ移送ノ準備其ノ他ノ事由ノ爲特ニ必要アルトキハ一時拘禁ヲ繼續スルコトヲ得
豫防拘禁ノ執行ハ本人ニ對スル犯罪ノ搜査其ノ他ノ事由ノ爲特ニ必要アルトキハ決定ヲ爲シタル裁判所ノ檢事又ハ本人ノ現在地ヲ管轄スル地方裁判所ノ檢事ノ指揮ニ因リ之ヲ停止スルコトヲ得
刑事訴訟法第五百三十四條乃至第五百三十六條及第五百四十四條乃至第五百五十二條ノ規定ハ豫防拘禁ノ執行ニ付之ヲ準用ス
第五十八條 豫防拘禁ニ付セラレタル者收容後其ノ必要ナキニ至リタルトキハ第五十五條ニ規定スル期間滿了前ト雖モ行政官廳ノ處分ヲ以テ之ヲ退所セシムベシ
第四十條第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第五十九條 豫防拘禁ノ執行ヲ爲サザルコト二年ニ及ビタルトキハ決定ヲ爲シタル裁判所ノ檢事又ハ本人ノ現在地ヲ管轄スル地方裁判所ノ檢事ハ事情ニ因リ其ノ執行ヲ免除スルコトヲ得
第四十條第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第六十條 天災事變ニ際シ豫防拘禁所內ニ於テ避難ノ手段ナシト認ムルトキハ收容セラレタル者ヲ他所ニ護送スベシ若シ護送スルノ暇ナキトキハ一時之ヲ解放スルコトヲ得
解放セラレタル者ハ解放後二十四時間內ニ豫防拘禁所又ハ警察官署ニ出頭スベシ
第六十一條 本章ノ規定ニ依リ豫防拘禁所若ハ監獄ニ收容セラレタル者又ハ勾引狀若ハ逮捕狀ヲ執行セラレタル者逃走シタルトキハ一年以下ノ懲役ニ處ス
前條第一項ノ規定ニ依リ解放セラレタル者同條第二項ノ規定ニ違反シタルトキ亦前項ニ同ジ
第六十二條 收容設備若ハ械具ヲ損壞シ、暴行若ハ脅迫ヲ爲シ又ハ二人以上通謀シテ前條第一項ノ罪ヲ犯シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
第六十三條 前二條ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第六十四條 本法ニ規定スルモノノ外豫防拘禁ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十五條 朝鮮ニ在リテハ豫防拘禁ニ關シ地方裁判所ノ爲スベキ決定ハ地方法院ノ合議部ニ於テ之ヲ爲ス
朝鮮ニ在リテハ本章中地方裁判所ノ檢事トアルハ地方法院ノ檢事、思想犯保護觀察法トアルハ朝鮮思想犯保護觀察令、刑事訴訟法トアルハ朝鮮刑事令ニ於テ依ルコトヲ定メタル刑事訴訟法トス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第一章ノ改正規定ハ本法施行前從前ノ規定ニ定メタル罪ヲ犯シタル者ニ亦之ヲ適用ス但シ改正規定ニ定ムル刑ガ從前ノ規定ニ定メタル刑ヨリ重キトキハ從前ノ規定ニ定メタル刑ニ依リ處斷ス
第二章ノ改正規定ハ本法施行前公訴ヲ提起シタル事件ニ付テハ之ヲ適用セズ
第三章ノ改正規定ハ從前ノ規定ニ定メタル罪ニ付本法施行前刑ニ處セラレタル者ニ亦之ヲ適用ス
本法施行前朝鮮刑事令第十二條乃至第十五條ノ規定ニ依リ爲シタル搜査手續ハ本法施行後ト雖モ仍其ノ效力ヲ有ス
前項ノ搜査手續ニシテ本法ニ之ニ相當スル規定アルモノハ之ヲ本法ニ依リ爲シタルモノト看做ス
本法施行前朝鮮思想犯豫防拘禁令ニ依リ爲シタル豫防拘禁ニ關スル手續ハ本法施行後ト雖モ仍其ノ效力ヲ有ス
前項ノ豫防拘禁ニ關スル手續ニシテ本法ニ之ニ相當スル規定アルモノハ之ヲ本法ニ依リ爲シタルモノト看做ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル治安維持法改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年三月八日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
内務大臣 男爵 平沼騏一郎
拓務大臣 秋田清
陸軍大臣 東条英機
海軍大臣 及川古志郎
司法大臣 柳川平助
法律第五十四号
治安維持法
第一章 罪
第一条 国体ヲ変革スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ結社ノ役員其ノ他指導者タル任務ニ従事シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ七年以上ノ懲役ニ処シ情ヲ知リテ結社ニ加入シタル者又ハ結社ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ三年以上ノ有期懲役ニ処ス
第二条 前条ノ結社ヲ支援スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ結社ノ役員其ノ他指導者タル任務ニ従事シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ五年以上ノ懲役ニ処シ情ヲ知リテ結社ニ加入シタル者又ハ結社ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス
第三条 第一条ノ結社ノ組織ヲ準備スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ結社ノ役員其ノ他指導者タル任務ニ従事シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ五年以上ノ懲役ニ処シ情ヲ知リテ結社ニ加入シタル者又ハ結社ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス
第四条 前三条ノ目的ヲ以テ集団ヲ結成シタル者又ハ集団ヲ指導シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処シ前三条ノ目的ヲ以テ集団ニ参加シタル者又ハ集団ニ関シ前三条ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ一年以上ノ有期懲役ニ処ス
第五条 第一条乃至第三条ノ目的ヲ以テ其ノ目的タル事項ノ実行ニ関シ協議若ハ煽動ヲ為シ又ハ其ノ目的タル事項ヲ宣伝シ其ノ他其ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス
第六条 第一条乃至第三条ノ目的ヲ以テ騒擾、暴行其ノ他生命、身体又ハ財産ニ害ヲ加フベキ犯罪ヲ煽動シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス
第七条 国体ヲ否定シ又ハ神宮若ハ皇室ノ尊厳ヲ冒涜スベキ事項ヲ流布スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ結社ノ役員其ノ他指導者タル任務ニ従事シタル者ハ無期又ハ四年以上ノ懲役ニ処シ情ヲ知リテ結社ニ加入シタル者又ハ結社ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ一年以上ノ有期懲役ニ処ス
第八条 前条ノ目的ヲ以テ集団ヲ結成シタル者又ハ集団ヲ指導シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処シ前条ノ目的ヲ以テ集団ニ参加シタル者又ハ集団ニ関シ前条ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ一年以上ノ有期懲役ニ処ス
第九条 前八条ノ罪ヲ犯サシムルコトヲ目的トシテ金品其ノ他ノ財産上ノ利益ヲ供与シ又ハ其ノ申込若ハ約束ヲ為シタル者ハ十年以下ノ懲役ニ処ス情ヲ知リテ供与ヲ受ケ又ハ其ノ要求若ハ約束ヲ為シタル者亦同ジ
第十条 私有財産制度ヲ否認スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ情ヲ知リテ結社ニ加入シタル者若ハ結社ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
第十一条 前条ノ目的ヲ以テ其ノ目的タル事項ノ実行ニ関シ協議ヲ為シ又ハ其ノ目的タル事項ノ実行ヲ煽動シタル者ハ七年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
第十二条 第十条ノ目的ヲ以テ騒擾、暴行其ノ他生命、身体又ハ財産ニ害ヲ加フベキ犯罪ヲ煽動シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
第十三条 前三条ノ罪ヲ犯サシムルコトヲ目的トシテ金品其ノ他ノ財産上ノ利益ヲ供与シ又ハ其ノ申込若ハ約束ヲ為シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス情ヲ知リテ供与ヲ受ケ又ハ其ノ要求若ハ約束ヲ為シタル者亦同ジ
第十四条 第一条乃至第四条、第七条、第八条及第十条ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第十五条 本章ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減軽又ハ免除ス
第十六条 本章ノ規定ハ何人ヲ問ハズ本法施行地外ニ於テ罪ヲ犯シタル者ニ亦之ヲ適用ス
第二章 刑事手続
第十七条 本章ノ規定ハ第一章ニ掲グル罪ニ関スル事件ニ付之ヲ適用ス
第十八条 検事ハ被疑者ヲ召喚シ又ハ其ノ召喚ヲ司法警察官ニ命令スルコトヲ得
検事ノ命令ニ因リ司法警察官ノ発スル召喚状ニハ命令ヲ為シタル検事ノ職、氏名及其ノ命令ニ因リ之ヲ発スル旨ヲモ記載スベシ
召喚状ノ送達ニ関スル裁判所書記及執達吏ニ属スル職務ハ司法警察官吏之ヲ行フコトヲ得
第十九条 被疑者正当ノ事由ナクシテ前条ノ規定ニ依ル召喚ニ応ゼズ又ハ刑事訴訟法第八十七条第一項各号ニ規定スル事由アルトキハ検事ハ被疑者ヲ勾引シ又ハ其ノ勾引ヲ他ノ検事ニ嘱託シ若ハ司法警察官ニ命令スルコトヲ得
前条第二項ノ規定ハ検事ノ命令ニ因リ司法警察官ノ発スル勾引状ニ付之ヲ準用ス
第二十条 勾引シタル被疑者ハ指定セラレタル場所ニ引致シタル時ヨリ四十八時間内ニ検事又ハ司法警察官之ヲ訊問スベシ其ノ時間内ニ勾留状ヲ発セザルトキハ検事ハ被疑者ヲ釈放シ又ハ司法警察官ヲシテ之ヲ釈放セシムベシ
第二十一条 刑事訴訟法第八十七条第一項各号ニ規定スル事由アルトキハ検事ハ被疑者ヲ勾留シ又ハ其ノ勾留ヲ司法警察官ニ命令スルコトヲ得
第十八条第二項ノ規定ハ検事ノ命令ニ因リ司法警察官ノ発スル勾留状ニ付之ヲ準用ス
第二十二条 勾留ニ付テハ警察官署又ハ憲兵隊ノ留置場ヲ以テ監獄ニ代用スルコトヲ得
第二十三条 勾留ノ期間ハ二月トス特ニ継続ノ必要アルトキハ地方裁判所検事又ハ区裁判所検事ハ検事長ノ許可ヲ受ケ一月毎ニ勾留ノ期間ヲ更新スルコトヲ得但シ通ジテ一年ヲ超ユルコトヲ得ズ
第二十四条 勾留ノ事由消滅シ其ノ他勾留ヲ継続スルノ必要ナシト思料スルトキハ検事ハ速ニ被疑者ヲ釈放シ又ハ司法警察官ヲシテ之ヲ釈放セシムベシ
第二十五条 検事ハ被疑者ノ住居ヲ制限シテ勾留ノ執行ヲ停止スルコトヲ得
刑事訴訟法第百十九条第一項ニ規定スル事由アル場合ニ於テハ検事ハ勾留ノ執行停止ヲ取消スコトヲ得
第二十六条 検事ハ被疑者ヲ訊問シ又ハ其ノ訊問ヲ司法警察官ニ命令スルコトヲ得
検事ハ公訴提起前ニ限リ証人ヲ訊問シ又ハ其ノ訊問ヲ他ノ検事ニ嘱託シ若ハ司法警察官ニ命令スルコトヲ得
司法警察官検事ノ命令ニ因リ被疑者又ハ証人ヲ訊問シタルトキハ命令ヲ為シタル検事ノ職、氏名及其ノ命令ニ因リ訊問シタル旨ヲ訊問調書ニ記載スベシ
第十八条第二項及第三項ノ規定ハ証人訊問ニ付之ヲ準用ス
第二十七条 検事ハ公訴提起前ニ限リ押収、捜索若ハ検証ヲ為シ又ハ其ノ処分ヲ他ノ検事ニ嘱託シ若ハ司法警察官ニ命令スルコトヲ得
検事ハ公訴提起前ニ限リ鑑定、通訳若ハ翻訳ヲ命ジ又ハ其ノ処分ヲ他ノ検事ニ嘱託シ若ハ司法警察官ニ命令スルコトヲ得
前条第三項ノ規定ハ押収、捜索又ハ検証ノ調書及鑑定人、通事又ハ翻訳人ノ訊問調書ニ付之ヲ準用ス
第十八条第二項及第三項ノ規定ハ鑑定、通訳及翻訳ニ付之ヲ準用ス
第二十八条 刑事訴訟法中被告人ノ召喚、勾引及勾留、被告人及証人ノ訊問、押収、捜索、検証、鑑定、通訳並ニ翻訳ニ関スル規定ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外被疑事件ニ付之ヲ準用ス但シ保釈及責付ニ関スル規定ハ此ノ限ニ在ラズ
第二十九条 弁護人ハ司法大臣ノ予メ指定シタル弁護士ノ中ヨリ之ヲ選任スベシ但シ刑事訴訟法第四十条第二項ノ規定ノ適用ヲ妨ゲズ
第三十条 弁護人ノ数ハ被告人一人ニ付二人ヲ超ユルコトヲ得ズ
弁護人ノ選任ハ最初ニ定メタル公判期日ニ係ル召喚状ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ十日ヲ経過シタルトキハ之ヲ為スコトヲ得ズ但シ已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於テ裁判所ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三十一条 弁護人ハ訴訟ニ関スル書類ノ謄写ヲ為サントスルトキハ裁判長又ハ予審判事ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
弁護人ノ訴訟ニ関スル書類ノ閲覧ハ裁判長又ハ予審判事ノ指定シタル場所ニ於テ之ヲ為スベシ
第三十二条 被告事件公判ニ付セラレタル場合ニ於テ検事必要アリト認ムルトキハ管轄移転ノ請求ヲ為スコトヲ得但シ第一回公判期日ノ指定アリタル後ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ請求ハ事件ノ繋属スル裁判所及移転先裁判所ニ共通スル直近上級裁判所ニ之ヲ為スベシ
第一項ノ請求アリタルトキハ決定アル迄訴訟手続ヲ停止スベシ
第三十三条 第一章ニ掲グル罪ヲ犯シタルモノト認メタル第一審ノ判決ニ対シテハ控訴ヲ為スコトヲ得ズ
前項ニ規定スル第一審ノ判決ニ対シテハ直接上告ヲ為スコトヲ得
上告ハ刑事訴訟法ニ於テ第二審ノ判決ニ対シ上告ヲ為スコトヲ得ル理由アル場合ニ於テ之ヲ為スコトヲ得
上告裁判所ハ第二審ノ判決ニ対スル上告事件ニ関スル手続ニ依リ裁判ヲ為スベシ
第三十四条 第一章ニ掲グル罪ヲ犯シタルモノト認メタル第一審ノ判決ニ対シ上告アリタル場合ニ於テ上告裁判所同章ニ掲グル罪ヲ犯シタルモノニ非ザルコトヲ疑フニ足ルベキ顕著ナル事由アルモノト認ムルトキハ判決ヲ以テ原判決ヲ破毀シ事件ヲ管轄控訴裁判所ニ移送スベシ
第三十五条 上告裁判所ハ公判期日ノ通知ニ付テハ刑事訴訟法第四百二十二条第一項ノ期間ニ依ラザルコトヲ得
第三十六条 刑事手続ニ付テハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外一般ノ規定ノ適用アルモノトス
第三十七条 本章ノ規定ハ第二十二条、第二十三条、第二十九条、第三十条第一項、第三十二条、第三十三条及第三十四条ノ規定ヲ除クノ外軍法会議ノ刑事手続ニ付之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テ刑事訴訟法第八十七条第一項トアルハ陸軍軍法会議法第百四十三条又ハ海軍軍法会議法第百四十三条、刑事訴訟法第四百二十二条第一項トアルハ陸軍軍法会議法第四百四十四条第一項又ハ海軍軍法会議法第四百四十六条第一項トシ第二十五条第二項中刑事訴訟法第百十九条第一項ニ規定スル事由アル場合ニ於テハトアルハ何時ニテモトス
第三十八条 朝鮮ニ在リテハ本章中司法大臣トアルハ朝鮮総督、検事長トアルハ覆審法院検事長、地方裁判所検事又ハ区裁判所検事トアルハ地方法院検事、刑事訴訟法トアルハ朝鮮刑事令ニ於テ依ルコトヲ定メタル刑事訴訟法トス但シ刑事訴訟法第四百二十二条第一項トアルハ朝鮮刑事令第三十一条トス
第三章 予防拘禁
第三十九条 第一章ニ掲グル罪ヲ犯シ刑ニ処セラレタル者其ノ執行ヲ終リ釈放セラルベキ場合ニ於テ釈放後ニ於テ更ニ同章ニ掲グル罪ヲ犯スノ虞アルコト顕著ナルトキハ裁判所ハ検事ノ請求ニ因リ本人ヲ予防拘禁ニ付スル旨ヲ命ズルコトヲ得
第一章ニ掲グル罪ヲ犯シ刑ニ処セラレ其ノ執行ヲ終リタル者又ハ罪ノ執行猶予ノ言渡ヲ受ケタル者思想犯保護観察法ニ依リ保護観察ニ付セラレ居ル場合ニ於テ保護観察ニ依ルモ同章ニ掲グル罪ヲ犯スノ危険ヲ防止スルコト困難ニシテ更ニ之ヲ犯スノ虞アルコト顕著ナルトキ亦前項ニ同ジ
第四十条 予防拘禁ノ請求ハ本人ノ現在地ヲ管轄スル地方裁判所ノ検事其ノ裁判所ニ之ヲ為スベシ
前項ノ請求ハ保護観察ニ付セラレ居ル者ニ係ルトキハ其ノ保護観察ヲ為ス保護観察所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ノ検事其ノ裁判所ニ之ヲ為スコトヲ得
予防拘禁ノ請求ヲ為スニハ予メ予防拘禁委員会ノ意見ヲ求ムルコトヲ要ス
予防拘禁委員会ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十一条 検事ハ予防拘禁ノ請求ヲ為スニ付テハ必要ナル取調ヲ為シ又ハ公務所ニ照会シテ必要ナル事項ノ報告ヲ求ムルコトヲ得
前項ノ取調ヲ為スニ付必要アル場合ニ於テハ司法警察官吏ヲシテ本人ヲ同行セシムルコトヲ得
第四十二条 検事ハ本人定リタル住居ヲ有セザル場合又ハ逃亡シ若ハ逃亡スル虞アル場合ニ於テ予防拘禁ノ請求ヲ為スニ付必要アルトキハ本人ヲ予防拘禁所ニ仮ニ収容スルコトヲ得但シ已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於テハ監獄ニ仮ニ収容スルコトヲ妨ゲズ
前項ノ仮収容ハ本人ノ陳述ヲ聴キタル後ニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ但シ本人陳述ヲ肯ゼズ又ハ逃亡シタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第四十三条 前条ノ仮収容ノ期間ハ十日トス其ノ期間内ニ予防拘禁ノ請求ヲ為サザルトキハ速ニ本人ヲ釈放スベシ
第四十四条 予防拘禁ノ請求アリタルトキハ裁判所ハ本人ノ陳述ヲ聴キ決定ヲ為スベシ此ノ場合ニ於テハ裁判所ハ本人ニ出頭ヲ命ズルコトヲ得
本人陳述ヲ肯ゼズ又ハ逃亡シタルトキハ陳述ヲ聴カズシテ決定ヲ為スコトヲ得
刑ノ執行終了前予防拘禁ノ請求アリタルトキハ裁判所ハ刑ノ執行終了後ト雖モ予防拘禁ニ付スル旨ノ決定ヲ為スコトヲ得
第四十五条 裁判所ハ事実ノ取調ヲ為スニ付必要アル場合ニ於テハ参考人ニ出頭ヲ命ジ事実ノ陳述又ハ鑑定ヲ為サシムルコトヲ得
裁判所ハ公務所ニ照会シテ必要ナル事項ノ報告ヲ求ムルコトヲ得
第四十六条 検事ハ裁判所ガ本人ヲシテ陳述ヲ為サシメ又ハ参考人ヲシテ事実ノ陳述若ハ鑑定ヲ為サシムル場合ニ立会ヒ意見ヲ開陳スルコトヲ得
第四十七条 本人ノ属スル家ノ戸主、配偶者又ハ四親等内ノ血族若ハ三親等内ノ姻族ハ裁判所ノ許可ヲ受ケ輔佐人ト為ルコトヲ得
輔佐人ハ裁判所ガ本人ヲシテ陳述ヲ為サシメ若ハ参考人ヲシテ事実ノ陳述若ハ鑑定ヲ為サシムル場合ニ立会ヒ意見ヲ開陳シ又ハ参考ト為ルベキ資料ヲ提出スルコトヲ得
第四十八条 左ノ場合ニ於テハ裁判所ハ本人ヲ勾引スルコトヲ得
一 本人定リタル住居ヲ有セザルトキ
二 本人逃亡シタルトキ又ハ逃亡スル虞アルトキ
三 本人正当ノ理由ナクシテ第四十四条第一項ノ出頭命令ニ応ゼザルトキ
第四十九条 前条第一号又ハ第二号ニ規定スル事由アルトキハ裁判所ハ本人ヲ予防拘禁所ニ仮ニ収容スルコトヲ得但シ已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於テハ監獄ニ仮ニ収容スルコトヲ妨ゲズ
本人監獄ニ在ルトキハ前項ノ事由ナシト雖モ之ヲ仮ニ収容スルコトヲ得
第四十二条第二項ノ規定ハ第一項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第五十条 別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外刑事訴訟法中勾引ニ関スル規定ハ第四十八条ノ勾引ニ、勾留ニ関スル規定ハ第四十二条及前条ノ仮収容ニ付之ヲ準用ス但シ保釈及責付ニ関スル規定ハ此ノ限ニ在ラズ
第五十一条 予防拘禁ニ付セザル旨ノ決定ニ対シテハ検事ハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
予防拘禁ニ付スル旨ノ決定ニ対シテハ本人及輔佐人ハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第五十二条 別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外刑事訴訟法中決定ニ関スル規定ハ第四十四条ノ決定ニ、即時抗告ニ関スル規定ハ前条ノ即時抗告ニ付之ヲ準用ス
第五十三条 予防拘禁ニ付セラレタル者ハ予防拘禁所ニ之ヲ収容シ改悛セシムル為必要ナル処置ヲ為スベシ
予防拘禁所ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十四条 予防拘禁ニ付セラレタル者ハ法令ノ範囲内ニ於テ他人ト接見シ又ハ信書其ノ他ノ物ノ授受ヲ為スコトヲ得
予防拘禁ニ付セラレタル者ニ対シテハ信書其ノ他ノ物ノ検閲、差押若ハ没取ヲ為シ又ハ保安若ハ懲戒ノ為必要ナル処置ヲ為スコトヲ得仮ニ収容セラレタル者及本章ノ規定ニ依リ勾引状ノ執行ヲ受ケ留置セラレタル者ニ付亦同ジ
第五十五条 予防拘禁ノ期間ハ二年トス特ニ継続ノ必要アル場合ニ於テハ裁判所ハ決定ヲ以テ之ヲ更新スルコトヲ得
予防拘禁ノ期間満了前更新ノ請求アリタルトキハ裁判所ハ期間満了後ト雖モ更新ノ決定ヲ為スコトヲ得
更新ノ決定ハ予防拘禁ノ期間満了後確定シタルトキト雖モ之ヲ期間満了ノ時確定シタルモノト看做ス
第四十条、第四十一条及第四十四条乃至第五十二条ノ規定ハ更新ノ場合ニ付之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テ第四十九条第二項中監獄トアルハ予防拘禁所トス
第五十六条 予防拘禁ノ期間ハ決定確定ノ日ヨリ起算ス
拘禁セラレザル日数又ハ刑ノ執行ノ為拘禁セラレタル日数ハ決定確定後ト雖モ前項ノ期間ニ算入セズ
第五十七条 決定確定ノ際本人受刑者ナルトキハ予防拘禁ハ刑ノ執行終了後之ヲ執行ス
監獄ニ在ル本人ニ対シ予防拘禁ヲ執行セントスル場合ニ於テ移送ノ準備其ノ他ノ事由ノ為特ニ必要アルトキハ一時拘禁ヲ継続スルコトヲ得
予防拘禁ノ執行ハ本人ニ対スル犯罪ノ捜査其ノ他ノ事由ノ為特ニ必要アルトキハ決定ヲ為シタル裁判所ノ検事又ハ本人ノ現在地ヲ管轄スル地方裁判所ノ検事ノ指揮ニ因リ之ヲ停止スルコトヲ得
刑事訴訟法第五百三十四条乃至第五百三十六条及第五百四十四条乃至第五百五十二条ノ規定ハ予防拘禁ノ執行ニ付之ヲ準用ス
第五十八条 予防拘禁ニ付セラレタル者収容後其ノ必要ナキニ至リタルトキハ第五十五条ニ規定スル期間満了前ト雖モ行政官庁ノ処分ヲ以テ之ヲ退所セシムベシ
第四十条第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第五十九条 予防拘禁ノ執行ヲ為サザルコト二年ニ及ビタルトキハ決定ヲ為シタル裁判所ノ検事又ハ本人ノ現在地ヲ管轄スル地方裁判所ノ検事ハ事情ニ因リ其ノ執行ヲ免除スルコトヲ得
第四十条第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第六十条 天災事変ニ際シ予防拘禁所内ニ於テ避難ノ手段ナシト認ムルトキハ収容セラレタル者ヲ他所ニ護送スベシ若シ護送スルノ暇ナキトキハ一時之ヲ解放スルコトヲ得
解放セラレタル者ハ解放後二十四時間内ニ予防拘禁所又ハ警察官署ニ出頭スベシ
第六十一条 本章ノ規定ニ依リ予防拘禁所若ハ監獄ニ収容セラレタル者又ハ勾引状若ハ逮捕状ヲ執行セラレタル者逃走シタルトキハ一年以下ノ懲役ニ処ス
前条第一項ノ規定ニ依リ解放セラレタル者同条第二項ノ規定ニ違反シタルトキ亦前項ニ同ジ
第六十二条 収容設備若ハ械具ヲ損壊シ、暴行若ハ脅迫ヲ為シ又ハ二人以上通謀シテ前条第一項ノ罪ヲ犯シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス
第六十三条 前二条ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第六十四条 本法ニ規定スルモノノ外予防拘禁ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十五条 朝鮮ニ在リテハ予防拘禁ニ関シ地方裁判所ノ為スベキ決定ハ地方法院ノ合議部ニ於テ之ヲ為ス
朝鮮ニ在リテハ本章中地方裁判所ノ検事トアルハ地方法院ノ検事、思想犯保護観察法トアルハ朝鮮思想犯保護観察令、刑事訴訟法トアルハ朝鮮刑事令ニ於テ依ルコトヲ定メタル刑事訴訟法トス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第一章ノ改正規定ハ本法施行前従前ノ規定ニ定メタル罪ヲ犯シタル者ニ亦之ヲ適用ス但シ改正規定ニ定ムル刑ガ従前ノ規定ニ定メタル刑ヨリ重キトキハ従前ノ規定ニ定メタル刑ニ依リ処断ス
第二章ノ改正規定ハ本法施行前公訴ヲ提起シタル事件ニ付テハ之ヲ適用セズ
第三章ノ改正規定ハ従前ノ規定ニ定メタル罪ニ付本法施行前刑ニ処セラレタル者ニ亦之ヲ適用ス
本法施行前朝鮮刑事令第十二条乃至第十五条ノ規定ニ依リ為シタル捜査手続ハ本法施行後ト雖モ仍其ノ効力ヲ有ス
前項ノ捜査手続ニシテ本法ニ之ニ相当スル規定アルモノハ之ヲ本法ニ依リ為シタルモノト看做ス
本法施行前朝鮮思想犯予防拘禁令ニ依リ為シタル予防拘禁ニ関スル手続ハ本法施行後ト雖モ仍其ノ効力ヲ有ス
前項ノ予防拘禁ニ関スル手続ニシテ本法ニ之ニ相当スル規定アルモノハ之ヲ本法ニ依リ為シタルモノト看做ス