第一條 本法ニ於テ宗敎團體トハ神道敎派、佛敎宗派及基督敎其ノ他ノ宗敎ノ敎團(以下單ニ敎派、宗派、敎團ト稱ス)竝ニ寺院及敎會ヲ謂フ
第二條 敎派、宗派及敎團竝ニ敎會ハ之ヲ法人ト爲スコトヲ得
第三條 敎派、宗派又ハ敎團ヲ設立セントスルトキハ設立者ニ於テ敎規、宗制又ハ敎團規則ヲ具シ法人タラントスルモノニ在リテハ其ノ旨ヲ明ニシ主務大臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
敎規、宗制及敎團規則ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
五 管長、敎團統理者其ノ他ノ機關ノ組織、任免及職務權限ニ關スル事項
七 住職、敎會主管者、其ノ代務者及敎師ノ資格、名稱及任免其ノ他ノ進退竝ニ僧侶ニ關スル事項
敎規、宗制若ハ敎團規則ヲ變更セントスルトキ又ハ法人ニ非ザル敎派、宗派若ハ敎團ガ法人タラントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
第四條 敎派及宗派ニハ管長ヲ、敎團ニハ敎團統理者ヲ置クベシ
管長又ハ敎團統理者ハ敎派、宗派又ハ敎團ヲ統理シ之ヲ代表ス
管長又ハ敎團統理者缺ケタルトキ、未成年ナルトキ又ハ久シキニ亙リ職務ヲ行フコト能ハザルトキハ代務者ヲ置キ其ノ職務ヲ行ハシムベシ
管長、敎團統理者又ハ其ノ代務者就任セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
第五條 敎派、宗派又ハ敎團ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ合併又ハ解散ヲ爲スコトヲ得
第六條 寺院又ハ敎會ヲ設立セントスルトキハ設立者ニ於テ寺院規則又ハ敎會規則ヲ具シ第二項第五號ノ敎會ヲ除クノ外豫メ管長又ハ敎團統理者ノ承認ヲ經、法人タラントスル敎會ニ在リテハ其ノ旨ヲ明ニシ地方長官ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
寺院規則及敎會規則ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
五 敎派、宗派又ハ敎團ニ屬セザル敎會ニ在リテハ前號ニ規定スル事項ニ代ヘ其ノ奉ズル宗敎ノ名稱及敎義ノ大要竝ニ敎師ノ資格、名稱及任免其ノ他ノ進退ニ關スル事項
寺院規則若ハ敎會規則ヲ變更セントスルトキ又ハ法人ニ非ザル敎會ガ法人タラントスルトキハ檀徒、敎徒及信徒ノ總代ノ同意ヲ得前項第五號ノ敎會ヲ除クノ外豫メ管長又ハ敎團統理者ノ承認ヲ經、地方長官ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
第七條 寺院ニハ住職ヲ、敎會ニハ敎會主管者ヲ置クベシ
住職又ハ敎會主管者ハ寺院又ハ敎會ヲ主管シ之ヲ代表ス
住職又ハ敎會主管者缺ケタルトキ、未成年ナルトキ又ハ久シキニ亙リ職務ヲ行フコト能ハザルトキハ代務者ヲ置キ其ノ職務ヲ行ハシムベシ
第八條 寺院及敎會ニハ檀徒、敎徒及信徒ノ總代(以下單ニ總代ト稱ス)三人以上ヲ置クベシ
總代ハ寺院又ハ敎會ノ經營ニ關シ住職又ハ敎會主管者ヲ扶ク
總代ノ選任及解任ハ住職又ハ敎會主管者ヨリ之ヲ市町村長(市制第六條及第八十二條第三項ノ市ニ在リテハ區長、町村制ヲ施行セザル地ニ在リテハ之ニ準ズベキ者)ニ屆出ヅルコトヲ要ス
第九條 寺院又ハ法人タル敎會ハ命令ノ定ムル所ニ依リ寶物其ノ他不動產以外ノ重要ナル財產ニ付地方長官ニ於テ保管スル寺院財產臺帳又ハ敎會財產臺帳ニ登錄ヲ受クルコトヲ要ス
寺院財產臺帳又ハ敎會財產臺帳ヲ閱覽シ又ハ其ノ謄本若ハ抄本ノ交付ヲ受ケントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ請求スルコトヲ得
第十條 寺院又ハ法人タル敎會左ニ揭グル行爲ヲ爲サントスルトキハ總代ノ同意ヲ得第六條第二項第五號ノ敎會ヲ除クノ外管長又ハ敎團統理者ノ意見書ヲ添ヘ、地方長官ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
一 不動產又ハ寺院財產臺帳若ハ敎會財產臺帳ニ登錄セラレタル財產ヲ處分シ又ハ擔保ニ供スルコト
前項ノ場合ニ於テ總代ノ同意ヲ得ルコト能ハザルトキハ住職又ハ敎會主管者ハ其ノ事由ヲ具シ地方長官ノ承認ヲ求ムルコトヲ得
第一項ニ規定スル事項ニ付地方長官ノ認可ヲ受ケズシテ爲シタル行爲ハ之ヲ無效トス
第一項ニ規定スル事項ニ付總代ノ同意ヲ得ズシテ爲シタル行爲ハ第二項ノ規定ニ依リ地方長官ノ承認ヲ得タル場合ヲ除クノ外之ヲ無效トス
前二項ノ場合ニ於テ相手方ガ善意無過失ナルトキハ其ノ行爲ヲ爲シタル住職又ハ敎會主管者ハ相手方ノ選擇ニ從ヒ之ニ對シテ履行又ハ損害賠償ノ責ニ任ズ
第十一條 寺院又ハ敎會ハ第六條第二項第五號ノ敎會ヲ除クノ外豫メ管長又ハ敎團統理者ノ承認ヲ經、地方長官ノ認可ヲ受ケテ合併又ハ解散ヲ爲スコトヲ得
寺院又ハ敎會左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ地方長官ハ其ノ設立ノ認可ヲ取消スコトヲ得
一 堂宇又ハ會堂ノ滅失後五年內ニ其ノ施設ヲ爲サザルトキ
二 住職又ハ敎會主管者及其ノ代務者ヲ缺クコト三年以上ニ及ブトキ
第十二條 寺院ノ境內地ノ管理、境內地ノ區域ノ變更及境內建物ノ管理竝ニ敎會ノ構內地ノ管理、構內地ノ區域ノ變更及構內建物ノ管理ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十三條 法人タル宗敎團體ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ
第十四條 本法ニ規定スルモノヲ除クノ外宗敎團體ノ合併及解散ノ場合ニ於ケル必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十五條 民法第四十三條、第四十四條、第五十條、第五十一條第一項、第五十四條、第五十七條及第七十三條乃至第八十三條竝ニ民法施行法第二十四條、第二十六條及第二十七條ノ規定ハ法人タル宗敎團體ニ、民法第四十一條及第四十二條ノ規定ハ寺院及法人タル敎會ニ付之ヲ準用ス但シ民法第五十七條ノ規定ノ準用ニ依ル特別代理人ノ選任ハ敎規、宗制、敎團規則、寺院規則又ハ敎會規則ノ定ムル所ニ依ル
第十六條 宗敎團體又ハ敎師ノ行フ宗敎ノ敎義ノ宣布若ハ儀式ノ執行又ハ宗敎上ノ行事ガ安寧秩序ヲ妨ゲ又ハ臣民タルノ義務ニ背クトキハ主務大臣ハ之ヲ制限シ若ハ禁止シ、敎師ノ業務ヲ停止シ又ハ宗敎團體ノ設立ノ認可ヲ取消スコトヲ得
第十七條 宗敎團體又ハ其ノ機關ノ職ニ在ル者法令又ハ敎規、宗制、敎團規則、寺院規則若ハ敎會規則ニ違反シ其ノ他公益ヲ害スベキ行爲ヲ爲シタルトキハ主務大臣ハ之ヲ取消シ、停止シ若ハ禁止シ又ハ機關ノ職ニ在ル者ノ改任ヲ命ズルコトヲ得
敎師法令ニ違反シ其ノ他公益ヲ害スベキ行爲ヲ爲シタルトキハ主務大臣ハ其ノ業務ヲ停止スルコトヲ得
第十八條 主務大臣ハ宗敎團體ニ對シ監督上必要アル場合ニ於テハ報吿ヲ徵シ又ハ實況ヲ調査スルコトヲ得
第十九條 主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ本法ニ規定スル其ノ權限ノ一部ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
第二十條 第十一條第二項、第十六條又ハ第十七條ノ規定ニ依ル處分ニ對シ不服アル者ハ訴願ヲ爲スコトヲ得
第十一條第二項又ハ第十六條ニ規定スル設立認可ノ取消處分ヲ違法ニシテ之ニ依リ權利ヲ毀損セラレタリトスル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ル場合ニ於テハ訴願ヲ爲スコトヲ得ズ
第二十一條 宗敎團體ニ於テ公衆禮拜ノ用ニ供スル建物又ハ其ノ敷地ニシテ命令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ經タルモノハ不動產ノ先取特權、抵當權若ハ質權ノ實行ノ爲ニスル場合又ハ破產ノ場合ヲ除クノ外其ノ登記後ニ原因ヲ生ジタル私法上ノ金錢債權ノ爲ニ之ヲ差押フルコトヲ得ズ寺院財產臺帳又ハ敎會財產臺帳ニ登錄セラレタル寶物ニ付亦同ジ
第二十二條 宗敎團體ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ所得稅ヲ課セズ
寺院ノ境內地及敎會ノ構內地ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ地租ヲ免除ス但シ有料借地ナルトキハ此ノ限ニ在ラズ
北海道、府縣、市町村其ノ他ノ公共團體ハ宗敎團體ノ所得ニ對シ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ
第二十三條 宗敎團體ニ非ズシテ宗敎ノ敎義ノ宣布及儀式ノ執行ヲ爲ス結社(以下宗敎結社ト稱ス)ヲ組織シタルトキハ代表者ニ於テ規則ヲ定メ十四日內ニ地方長官ニ屆出ヅルコトヲ要ス屆出事項ニ變更ヲ生ジタルトキ亦同ジ
第二十四條 宗敎結社ノ代表者ハ其ノ結社ニ屬スル布敎者ノ氏名及住所ヲ遲滯ナク地方長官ニ屆出ヅルコトヲ要ス其ノ屆出事項ニ變更ヲ生ジタルトキ亦同ジ
第二十五條 第十六條乃至第十八條及第二十條第一項ノ規定ハ宗敎結社又ハ其ノ代表者若ハ布敎者ニ付之ヲ準用ス
第二十六條 敎師又ハ布敎者第十六條(前條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依ル制限、禁止若ハ業務ノ停止又ハ第十七條第二項(前條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依ル業務ノ停止ニ違反シタルトキハ六月以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
宗敎團體又ハ宗敎結社ニ對シ第十六條(前條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依ル制限又ハ禁止アリタル場合ニ於テ當該宗敎團體又ハ宗敎結社ノ代表者其ノ他ノ機關ノ職ニ在ル者、敎師又ハ布敎者制限又ハ禁止アリタルコトヲ知リテ其ノ行爲ヲ爲シタルトキ亦前項ニ同ジ
第二十七條 宗敎結社ノ代表者第二十三條ノ規定ニ依ル屆出ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ屆出ヲ爲シタルトキハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十八條 法人タル宗敎團體ノ代表者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ二百圓以下ノ過料ニ處ス
一 第十三條第一項又ハ第十五條ニ於テ準用スル民法第七十七條ノ規定ニ依ル登記ヲ爲サザルトキ
二 第十五條ニ於テ準用スル民法第五十一條第一項ノ規定ニ違反シ又ハ財產目錄ニ虛僞ノ記載ヲ爲シタルトキ
三 第十五條ニ於テ準用スル民法第八十二條ノ規定ニ依ル裁判所ノ檢査ヲ妨ゲタルトキ
四 第十五條ニ於テ準用スル民法第八十一條ノ規定ニ依ル破產宣吿ノ請求ヲ爲サザルトキ
五 第十五條ニ於テ準用スル民法第七十九條又ハ第八十一條ノ規定ニ依ル公吿ヲ爲サズ又ハ不正ノ公吿ヲ爲シタルトキ
宗敎團體又ハ宗敎結社ノ代表者第十八條(第二十五條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ、虛僞ノ報吿ヲ爲シ又ハ調査ヲ妨ゲタルトキ及宗敎結社ノ代表者第二十四條ノ規定ニ依ル屆出ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ屆出ヲ爲シタルトキ亦前項ニ同ジ
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前二項ノ過料ニ付之ヲ準用ス