第一條 本法ニ於テ航空機製造事業ト稱スルハ命令ヲ以テ定ムル航空機又ハ其ノ機體、發動機若ハプロペラノ製造ヲ爲ス事業ヲ謂フ
前項ノ事業ヲ營ム者ノ爲ス航空機ノ部分品若ハ附屬品ノ製造、其ノ事業者ノ用フル航空機用材料ノ製造又ハ航空機ノ修理ハ之ヲ當該事業ノ一部ト看做ス
第二條 航空機製造事業ヲ營マントスル者ハ政府ノ許可ヲ受クベシ
第三條 前條ノ許可ヲ受クルコトヲ得ベキ者ハ帝國法令ニ依リ設立シタル株式會社ニシテ其ノ株主ノ半數以上、取締役ノ半數以上、資本ノ半額以上及議決權ノ過半數ガ帝國臣民又ハ帝國法令ニ依リ設立シタル法人ニ屬スルモノニ限ル
前項ノ法人ハ其ノ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半數以上又ハ資本ノ半額以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國人又ハ外國法人ニ屬セザルモノナルコトヲ要ス
前條ノ許可ヲ受ケタル者前二項ノ規定ニ該當セザルニ至リタルトキハ許可ハ其ノ效力ヲ失フ
第四條 第二條ノ許可ヲ受ケタル會社ハ政府ノ指定スル期間內ニ其ノ事業ヲ開始スベシ
政府ハ正當ノ事由アリト認ムル場合ニ限リ前項ノ期間ノ延長ヲ許可スルコトヲ得
第二條ノ許可ヲ受ケタル會社前二項ノ期間內ニ其ノ事業ヲ開始セザルトキハ第二條ノ許可ハ其ノ效力ヲ失フ
第五條 航空機製造事業ヲ營ム會社(以下航空機製造會社ト稱ス)ハ命令ノ定ムル所ニ依リ事業計畫ヲ定メ政府ニ之ヲ屆出ヅベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
政府必要アリト認ムルトキハ事業計畫ノ變更ヲ命ズルコトヲ得
第六條 政府ハ航空機技術委員會ノ議ヲ經テ航空機ノ機體、發動機、プロペラ、部分品、材料又ハ附屬品ニ付其ノ規格ヲ定ムルコトヲ得
航空機製造會社ハ前項ノ規定ニ依リ規格ヲ定メタルモノニ付テハ規格ニ適合スルモノニ非ザレバ之ヲ製造又ハ使用スルコトヲ得ズ但シ政府ノ許可ヲ受ケタルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第七條 航空機製造會社其ノ事業ノ全部又ハ一部ヲ讓渡シ、廢止シ又ハ休止セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ許可ヲ受クベシ
航空機製造會社ノ合併又ハ解散ノ決議ハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第八條 航空機製造事業ハ土地收用法第二條ノ土地ヲ收用又ハ使用スルコトヲ得ル事業トシ同法ヲ適用ス
第九條 航空機製造會社ニハ勅令ノ定ムル所ニ依リ第二條ノ許可ヲ受ケタル年及其ノ翌年ヨリ五年間其ノ事業ニ付所得稅及營業收益稅ヲ免除ス
第十條 北海道、府縣及市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ前條ノ規定ニ依リ所得稅及營業收益稅ヲ免除セラレタル航空機製造會社ニハ其ノ免除セラレタル事業ニ對シ課稅スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情ニ基キ政府ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十一條 航空機製造會社其ノ事業ノ爲必要ナル器具、機械又ハ材料ヲ政府ノ認可ヲ受ケ輸入スルトキハ本法施行ノ日ヨリ五年間勅令ノ定ムル所ニ依リ輸入稅ヲ免除ス
第十二條 航空機製造會社本邦ニ於テ未ダ製造セラレタルコトナキ航空機又ハ其ノ機體、發動機若ハプロペラノ製造ヲ爲ス場合ニ於テハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ豫算ノ範圍內ニ於テ之ニ奬勵金ヲ交付スルコトヲ得航空機ノ部分品、材料又ハ附屬品ニシテ本邦ニ於テ未ダ製造セラレタルコトナキモノヲ製造スル場合亦同ジ
第十三條 航空機製造會社ハ事業擴張ノ場合ニ於テ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ事業ニ屬スル設備ノ費用ニ充ツル爲株金全額拂込前ト雖モ其ノ資本ヲ增加スルコトヲ得
第十四條 航空機製造會社ハ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ事業ニ屬スル設備ノ費用ニ充ツル爲商法ニ規定スル制限ヲ超エテ社債ヲ募集スルコトヲ得但シ社債ノ總額ハ拂込ミタル株金額ノ二倍ヲ超ユルコトヲ得ズ
最終ノ貸借對照表ニ依リ會計ニ現存スル財產ガ拂込ミタル株金額ニ滿タザルトキハ前項ノ規定ヲ適用セズ
第一項ノ規定ニ依リ募集スル社債ニ付テハ工場抵當法ニ依リ會社ノ事業ニ屬スルモノヲ抵當ト爲スコトヲ要ス但シ特別ノ事情アル場合ニ於テ政府其ノ必要ナシト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十五條 政府ハ航空機製造會社ニ對シ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシムルコトヲ得
政府ハ航空機製造會社ニ對シ業務及會計ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
政府監督上必要アリト認ムルトキハ當該官吏ヲシテ航空機製造會社ノ事務所、營業所、工場、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨檢シ業務若ハ財產ノ狀況又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十六條 政府ハ公益上必要アリト認ムルトキハ航空機製造會社ニ對シ航空機又ハ其ノ機體、發動機若ハプロペラノ販賣價格若ハ販賣條件ノ變更ヲ命ジ又ハ此等製品ノ供給ニ關シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第十七條 政府ハ軍事上必要アリト認ムルトキハ航空機製造會社ニ對シ左ノ各號ニ揭グル事項ヲ命ズルコトヲ得政府公益上必要アリト認ムルトキ第一號乃至第五號ニ揭グル事項ニ付亦同ジ
二 政府ノ指定スル航空機又ハ其ノ機體、發動機若ハプロペラノ製造
三 航空機ニ關スル特殊事項ノ硏究又ハ特殊設備ノ施設
四 航空機又ハ其ノ機體、發動機若ハプロペラノ製造技能者ノ養成
五 航空機又ハ其ノ機體、發動機若ハプロペラノ製造ニ關シ設備ノ共用其ノ他ノ航空機製造會社ニ對スル協力
八 特殊ナル事業計畫ノ設定又ハ其ノ計畫ニ付必要ナル演練
十一 前各號ニ揭グルモノヲ除クノ外特ニ必要ナル事項
前項第一號乃至第四號又ハ第六號第十一號ノ命令ニ因リ生ジタル損失ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ政府之ヲ補償ス
前項ノ補償ヲ伴フベキ命令ハ之ニ因リ要スベキ補償金ノ總額ガ帝國議會ノ協贊ヲ經タル金額ヲ超エザル範圍內ニ於テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第一項第五號ノ場合ニ於テ費用ノ負擔ニ付當事者間ニ協議調ハザルトキハ政府之ヲ裁定ス裁定ニ對シ不服アル者ハ裁定ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三月內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十八條 政府第十六條若ハ前條第一項第一號ノ命令又ハ前條第二項ノ補償金額ノ決定ヲ爲サントスルトキハ勅令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外航空機製造事業委員會ノ議ヲ經ベシ
航空機製造事業委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九條 航空機製造會社本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ政府ハ其ノ業務ヲ停止シ若ハ制限シ、第二條ノ許可ヲ取消シ又ハ取締役若ハ其ノ職務ヲ行フ監査役ノ解任ヲ爲スコトヲ得
第二十條 航空機ノ部分品、材料又ハ附屬品ノ製造事業ニシテ第一條ノ航空機製造事業ニ屬セザルモノニ關シテハ勅令ノ定ムル所ニ依リ本法ヲ準用ス
第二十一條 第二條ノ規定ニ違反シ許可ヲ受ケズシテ航空機製造事業ヲ營ミタル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十二條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第五條第一項ノ規定ニ違反シテ事業計畫ノ屆出ヲ爲サズ又ハ屆出デタル事業計畫ヲ實施セザル者
二 第五條第二項ノ規定ニ依ル變更命令ニ違反シテ事業計畫ヲ實施シタル者
三 第七條第一項ノ規定ニ違反シテ事業ヲ讓渡シ、廢止シ又ハ休止シタル者
四 第十六條又ハ第十七條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
第二十三條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第十五條第一項ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者
二 第十五條第二項ノ規定ニ依ル命令又ハ處分ニ違反シタル者
三 第十五條第三項ノ規定ニ依ル當該官吏ノ臨檢檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者
第二十四條 航空機製造會社ハ其ノ代理人、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第二十五條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ