航空機製造事業法
法令番号: 法律第四十一號
公布年月日: 昭和13年3月30日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル航空機製造事業法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年三月二十九日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
海軍大臣 米內光政
陸軍大臣 杉山元
遞信大臣 永井柳太郞
大藏大臣 賀屋興宣
商工大臣 吉野信次
內務大臣 末次信正
法律第四十一號
航空機製造事業法
第一條 本法ニ於テ航空機製造事業ト稱スルハ命令ヲ以テ定ムル航空機又ハ其ノ機體、發動機若ハプロペラノ製造ヲ爲ス事業ヲ謂フ
前項ノ事業ヲ營ム者ノ爲ス航空機ノ部分品若ハ附屬品ノ製造、其ノ事業者ノ用フル航空機用材料ノ製造又ハ航空機ノ修理ハ之ヲ當該事業ノ一部ト看做ス
第二條 航空機製造事業ヲ營マントスル者ハ政府ノ許可ヲ受クベシ
第三條 前條ノ許可ヲ受クルコトヲ得ベキ者ハ帝國法令ニ依リ設立シタル株式會社ニシテ其ノ株主ノ半數以上、取締役ノ半數以上、資本ノ半額以上及議決權ノ過半數ガ帝國臣民又ハ帝國法令ニ依リ設立シタル法人ニ屬スルモノニ限ル
前項ノ法人ハ其ノ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半數以上又ハ資本ノ半額以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國人又ハ外國法人ニ屬セザルモノナルコトヲ要ス
前條ノ許可ヲ受ケタル者前二項ノ規定ニ該當セザルニ至リタルトキハ許可ハ其ノ效力ヲ失フ
第四條 第二條ノ許可ヲ受ケタル會社ハ政府ノ指定スル期間內ニ其ノ事業ヲ開始スベシ
政府ハ正當ノ事由アリト認ムル場合ニ限リ前項ノ期間ノ延長ヲ許可スルコトヲ得
第二條ノ許可ヲ受ケタル會社前二項ノ期間內ニ其ノ事業ヲ開始セザルトキハ第二條ノ許可ハ其ノ效力ヲ失フ
第五條 航空機製造事業ヲ營ム會社(以下航空機製造會社ト稱ス)ハ命令ノ定ムル所ニ依リ事業計畫ヲ定メ政府ニ之ヲ屆出ヅベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
政府必要アリト認ムルトキハ事業計畫ノ變更ヲ命ズルコトヲ得
第六條 政府ハ航空機技術委員會ノ議ヲ經テ航空機ノ機體、發動機、プロペラ、部分品、材料又ハ附屬品ニ付其ノ規格ヲ定ムルコトヲ得
航空機製造會社ハ前項ノ規定ニ依リ規格ヲ定メタルモノニ付テハ規格ニ適合スルモノニ非ザレバ之ヲ製造又ハ使用スルコトヲ得ズ但シ政府ノ許可ヲ受ケタルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
航空機技術委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條 航空機製造會社其ノ事業ノ全部又ハ一部ヲ讓渡シ、廢止シ又ハ休止セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ許可ヲ受クベシ
航空機製造會社ノ合併又ハ解散ノ決議ハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第八條 航空機製造事業ハ土地收用法第二條ノ土地ヲ收用又ハ使用スルコトヲ得ル事業トシ同法ヲ適用ス
第九條 航空機製造會社ニハ勅令ノ定ムル所ニ依リ第二條ノ許可ヲ受ケタル年及其ノ翌年ヨリ五年間其ノ事業ニ付所得稅及營業收益稅ヲ免除ス
第十條 北海道、府縣及市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ前條ノ規定ニ依リ所得稅及營業收益稅ヲ免除セラレタル航空機製造會社ニハ其ノ免除セラレタル事業ニ對シ課稅スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情ニ基キ政府ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十一條 航空機製造會社其ノ事業ノ爲必要ナル器具、機械又ハ材料ヲ政府ノ認可ヲ受ケ輸入スルトキハ本法施行ノ日ヨリ五年間勅令ノ定ムル所ニ依リ輸入稅ヲ免除ス
第十二條 航空機製造會社本邦ニ於テ未ダ製造セラレタルコトナキ航空機又ハ其ノ機體、發動機若ハプロペラノ製造ヲ爲ス場合ニ於テハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ豫算ノ範圍內ニ於テ之ニ奬勵金ヲ交付スルコトヲ得航空機ノ部分品、材料又ハ附屬品ニシテ本邦ニ於テ未ダ製造セラレタルコトナキモノヲ製造スル場合亦同ジ
第十三條 航空機製造會社ハ事業擴張ノ場合ニ於テ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ事業ニ屬スル設備ノ費用ニ充ツル爲株金全額拂込前ト雖モ其ノ資本ヲ增加スルコトヲ得
第十四條 航空機製造會社ハ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ事業ニ屬スル設備ノ費用ニ充ツル爲商法ニ規定スル制限ヲ超エテ社債ヲ募集スルコトヲ得但シ社債ノ總額ハ拂込ミタル株金額ノ二倍ヲ超ユルコトヲ得ズ
最終ノ貸借對照表ニ依リ會計ニ現存スル財產ガ拂込ミタル株金額ニ滿タザルトキハ前項ノ規定ヲ適用セズ
第一項ノ規定ニ依リ募集スル社債ニ付テハ工場抵當法ニ依リ會社ノ事業ニ屬スルモノヲ抵當ト爲スコトヲ要ス但シ特別ノ事情アル場合ニ於テ政府其ノ必要ナシト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十五條 政府ハ航空機製造會社ニ對シ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシムルコトヲ得
政府ハ航空機製造會社ニ對シ業務及會計ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
政府監督上必要アリト認ムルトキハ當該官吏ヲシテ航空機製造會社ノ事務所、營業所、工場、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨檢シ業務若ハ財產ノ狀況又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十六條 政府ハ公益上必要アリト認ムルトキハ航空機製造會社ニ對シ航空機又ハ其ノ機體、發動機若ハプロペラノ販賣價格若ハ販賣條件ノ變更ヲ命ジ又ハ此等製品ノ供給ニ關シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第十七條 政府ハ軍事上必要アリト認ムルトキハ航空機製造會社ニ對シ左ノ各號ニ揭グル事項ヲ命ズルコトヲ得政府公益上必要アリト認ムルトキ第一號乃至第五號ニ揭グル事項ニ付亦同ジ
一 設備ノ擴張又ハ改良
二 政府ノ指定スル航空機又ハ其ノ機體、發動機若ハプロペラノ製造
三 航空機ニ關スル特殊事項ノ硏究又ハ特殊設備ノ施設
四 航空機又ハ其ノ機體、發動機若ハプロペラノ製造技能者ノ養成
五 航空機又ハ其ノ機體、發動機若ハプロペラノ製造ニ關シ設備ノ共用其ノ他ノ航空機製造會社ニ對スル協力
六 航空機用材料ノ保有
七 從業者又ハ工場其ノ他ノ設備ノ政府ニ對スル供用
八 特殊ナル事業計畫ノ設定又ハ其ノ計畫ニ付必要ナル演練
九 工場ノ警備又ハ防諜上必要ナル施設
十 航空機ニ關スル資料ノ提出
十一 前各號ニ揭グルモノヲ除クノ外特ニ必要ナル事項
前項第一號乃至第四號又ハ第六號第十一號ノ命令ニ因リ生ジタル損失ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ政府之ヲ補償ス
前項ノ補償ヲ伴フベキ命令ハ之ニ因リ要スベキ補償金ノ總額ガ帝國議會ノ協贊ヲ經タル金額ヲ超エザル範圍內ニ於テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第一項第五號ノ場合ニ於テ費用ノ負擔ニ付當事者間ニ協議調ハザルトキハ政府之ヲ裁定ス裁定ニ對シ不服アル者ハ裁定ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三月內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十八條 政府第十六條若ハ前條第一項第一號ノ命令又ハ前條第二項ノ補償金額ノ決定ヲ爲サントスルトキハ勅令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外航空機製造事業委員會ノ議ヲ經ベシ
航空機製造事業委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九條 航空機製造會社本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ政府ハ其ノ業務ヲ停止シ若ハ制限シ、第二條ノ許可ヲ取消シ又ハ取締役若ハ其ノ職務ヲ行フ監査役ノ解任ヲ爲スコトヲ得
第二十條 航空機ノ部分品、材料又ハ附屬品ノ製造事業ニシテ第一條ノ航空機製造事業ニ屬セザルモノニ關シテハ勅令ノ定ムル所ニ依リ本法ヲ準用ス
第二十一條 第二條ノ規定ニ違反シ許可ヲ受ケズシテ航空機製造事業ヲ營ミタル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十二條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第五條第一項ノ規定ニ違反シテ事業計畫ノ屆出ヲ爲サズ又ハ屆出デタル事業計畫ヲ實施セザル者
二 第五條第二項ノ規定ニ依ル變更命令ニ違反シテ事業計畫ヲ實施シタル者
三 第七條第一項ノ規定ニ違反シテ事業ヲ讓渡シ、廢止シ又ハ休止シタル者
四 第十六條又ハ第十七條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
第二十三條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第十五條第一項ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者
二 第十五條第二項ノ規定ニ依ル命令又ハ處分ニ違反シタル者
三 第十五條第三項ノ規定ニ依ル當該官吏ノ臨檢檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者
第二十四條 航空機製造會社ハ其ノ代理人、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第二十五條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ航空機製造事業ヲ營ム者又ハ其ノ事業ヲ承繼シタル者ハ本法施行ノ日ヨリ一年ヲ限リ第二條ノ規定ニ拘ラズ其ノ事業ヲ營ムコトヲ得
前項ニ揭グル者前項ノ期間內ニ第二條ノ許可ヲ申請シタル場合ニ於テ其ノ申請ニ對シ許可又ハ不許可ノ處分ノ日迄亦前項ニ同ジ
第九條ノ規定ハ第二項ニ揭グル者ガ第二條ノ許可ヲ受ケタル場合ニ於テハ事業開始ノ年ヲ以テ第二條ノ許可ヲ受ケタル年ト看做シ許可ノ日以後ノ分ニ付テノミ之ヲ適用ス
第十一條ノ規定ハ第二項ニ揭グル者ガ第二條ノ許可ヲ受クル前ニ於テ爲ス輸入ニ付テハ之ヲ適用セズ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル航空機製造事業法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年三月二十九日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
海軍大臣 米内光政
陸軍大臣 杉山元
逓信大臣 永井柳太郎
大蔵大臣 賀屋興宣
商工大臣 吉野信次
内務大臣 末次信正
法律第四十一号
航空機製造事業法
第一条 本法ニ於テ航空機製造事業ト称スルハ命令ヲ以テ定ムル航空機又ハ其ノ機体、発動機若ハプロペラノ製造ヲ為ス事業ヲ謂フ
前項ノ事業ヲ営ム者ノ為ス航空機ノ部分品若ハ附属品ノ製造、其ノ事業者ノ用フル航空機用材料ノ製造又ハ航空機ノ修理ハ之ヲ当該事業ノ一部ト看做ス
第二条 航空機製造事業ヲ営マントスル者ハ政府ノ許可ヲ受クベシ
第三条 前条ノ許可ヲ受クルコトヲ得ベキ者ハ帝国法令ニ依リ設立シタル株式会社ニシテ其ノ株主ノ半数以上、取締役ノ半数以上、資本ノ半額以上及議決権ノ過半数ガ帝国臣民又ハ帝国法令ニ依リ設立シタル法人ニ属スルモノニ限ル
前項ノ法人ハ其ノ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半数以上又ハ資本ノ半額以上若ハ議決権ノ過半数ガ外国人又ハ外国法人ニ属セザルモノナルコトヲ要ス
前条ノ許可ヲ受ケタル者前二項ノ規定ニ該当セザルニ至リタルトキハ許可ハ其ノ効力ヲ失フ
第四条 第二条ノ許可ヲ受ケタル会社ハ政府ノ指定スル期間内ニ其ノ事業ヲ開始スベシ
政府ハ正当ノ事由アリト認ムル場合ニ限リ前項ノ期間ノ延長ヲ許可スルコトヲ得
第二条ノ許可ヲ受ケタル会社前二項ノ期間内ニ其ノ事業ヲ開始セザルトキハ第二条ノ許可ハ其ノ効力ヲ失フ
第五条 航空機製造事業ヲ営ム会社(以下航空機製造会社ト称ス)ハ命令ノ定ムル所ニ依リ事業計画ヲ定メ政府ニ之ヲ届出ヅベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
政府必要アリト認ムルトキハ事業計画ノ変更ヲ命ズルコトヲ得
第六条 政府ハ航空機技術委員会ノ議ヲ経テ航空機ノ機体、発動機、プロペラ、部分品、材料又ハ附属品ニ付其ノ規格ヲ定ムルコトヲ得
航空機製造会社ハ前項ノ規定ニ依リ規格ヲ定メタルモノニ付テハ規格ニ適合スルモノニ非ザレバ之ヲ製造又ハ使用スルコトヲ得ズ但シ政府ノ許可ヲ受ケタルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
航空機技術委員会ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七条 航空機製造会社其ノ事業ノ全部又ハ一部ヲ譲渡シ、廃止シ又ハ休止セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ許可ヲ受クベシ
航空機製造会社ノ合併又ハ解散ノ決議ハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第八条 航空機製造事業ハ土地収用法第二条ノ土地ヲ収用又ハ使用スルコトヲ得ル事業トシ同法ヲ適用ス
第九条 航空機製造会社ニハ勅令ノ定ムル所ニ依リ第二条ノ許可ヲ受ケタル年及其ノ翌年ヨリ五年間其ノ事業ニ付所得税及営業収益税ヲ免除ス
第十条 北海道、府県及市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ前条ノ規定ニ依リ所得税及営業収益税ヲ免除セラレタル航空機製造会社ニハ其ノ免除セラレタル事業ニ対シ課税スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情ニ基キ政府ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十一条 航空機製造会社其ノ事業ノ為必要ナル器具、機械又ハ材料ヲ政府ノ認可ヲ受ケ輸入スルトキハ本法施行ノ日ヨリ五年間勅令ノ定ムル所ニ依リ輸入税ヲ免除ス
第十二条 航空機製造会社本邦ニ於テ未ダ製造セラレタルコトナキ航空機又ハ其ノ機体、発動機若ハプロペラノ製造ヲ為ス場合ニ於テハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ予算ノ範囲内ニ於テ之ニ奨励金ヲ交付スルコトヲ得航空機ノ部分品、材料又ハ附属品ニシテ本邦ニ於テ未ダ製造セラレタルコトナキモノヲ製造スル場合亦同ジ
第十三条 航空機製造会社ハ事業拡張ノ場合ニ於テ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ事業ニ属スル設備ノ費用ニ充ツル為株金全額払込前ト雖モ其ノ資本ヲ増加スルコトヲ得
第十四条 航空機製造会社ハ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ事業ニ属スル設備ノ費用ニ充ツル為商法ニ規定スル制限ヲ超エテ社債ヲ募集スルコトヲ得但シ社債ノ総額ハ払込ミタル株金額ノ二倍ヲ超ユルコトヲ得ズ
最終ノ貸借対照表ニ依リ会計ニ現存スル財産ガ払込ミタル株金額ニ満タザルトキハ前項ノ規定ヲ適用セズ
第一項ノ規定ニ依リ募集スル社債ニ付テハ工場抵当法ニ依リ会社ノ事業ニ属スルモノヲ抵当ト為スコトヲ要ス但シ特別ノ事情アル場合ニ於テ政府其ノ必要ナシト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十五条 政府ハ航空機製造会社ニ対シ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ為サシムルコトヲ得
政府ハ航空機製造会社ニ対シ業務及会計ニ関シ監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
政府監督上必要アリト認ムルトキハ当該官吏ヲシテ航空機製造会社ノ事務所、営業所、工場、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨検シ業務若ハ財産ノ状況又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第十六条 政府ハ公益上必要アリト認ムルトキハ航空機製造会社ニ対シ航空機又ハ其ノ機体、発動機若ハプロペラノ販売価格若ハ販売条件ノ変更ヲ命ジ又ハ此等製品ノ供給ニ関シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第十七条 政府ハ軍事上必要アリト認ムルトキハ航空機製造会社ニ対シ左ノ各号ニ掲グル事項ヲ命ズルコトヲ得政府公益上必要アリト認ムルトキ第一号乃至第五号ニ掲グル事項ニ付亦同ジ
一 設備ノ拡張又ハ改良
二 政府ノ指定スル航空機又ハ其ノ機体、発動機若ハプロペラノ製造
三 航空機ニ関スル特殊事項ノ研究又ハ特殊設備ノ施設
四 航空機又ハ其ノ機体、発動機若ハプロペラノ製造技能者ノ養成
五 航空機又ハ其ノ機体、発動機若ハプロペラノ製造ニ関シ設備ノ共用其ノ他ノ航空機製造会社ニ対スル協力
六 航空機用材料ノ保有
七 従業者又ハ工場其ノ他ノ設備ノ政府ニ対スル供用
八 特殊ナル事業計画ノ設定又ハ其ノ計画ニ付必要ナル演練
九 工場ノ警備又ハ防諜上必要ナル施設
十 航空機ニ関スル資料ノ提出
十一 前各号ニ掲グルモノヲ除クノ外特ニ必要ナル事項
前項第一号乃至第四号又ハ第六号第十一号ノ命令ニ因リ生ジタル損失ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ政府之ヲ補償ス
前項ノ補償ヲ伴フベキ命令ハ之ニ因リ要スベキ補償金ノ総額ガ帝国議会ノ協賛ヲ経タル金額ヲ超エザル範囲内ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス
第一項第五号ノ場合ニ於テ費用ノ負担ニ付当事者間ニ協議調ハザルトキハ政府之ヲ裁定ス裁定ニ対シ不服アル者ハ裁定ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三月内ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十八条 政府第十六条若ハ前条第一項第一号ノ命令又ハ前条第二項ノ補償金額ノ決定ヲ為サントスルトキハ勅令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外航空機製造事業委員会ノ議ヲ経ベシ
航空機製造事業委員会ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九条 航空機製造会社本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキハ政府ハ其ノ業務ヲ停止シ若ハ制限シ、第二条ノ許可ヲ取消シ又ハ取締役若ハ其ノ職務ヲ行フ監査役ノ解任ヲ為スコトヲ得
第二十条 航空機ノ部分品、材料又ハ附属品ノ製造事業ニシテ第一条ノ航空機製造事業ニ属セザルモノニ関シテハ勅令ノ定ムル所ニ依リ本法ヲ準用ス
第二十一条 第二条ノ規定ニ違反シ許可ヲ受ケズシテ航空機製造事業ヲ営ミタル者ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
第二十二条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ二千円以下ノ罰金ニ処ス
一 第五条第一項ノ規定ニ違反シテ事業計画ノ届出ヲ為サズ又ハ届出デタル事業計画ヲ実施セザル者
二 第五条第二項ノ規定ニ依ル変更命令ニ違反シテ事業計画ヲ実施シタル者
三 第七条第一項ノ規定ニ違反シテ事業ヲ譲渡シ、廃止シ又ハ休止シタル者
四 第十六条又ハ第十七条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
第二十三条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
一 第十五条第一項ノ規定ニ依ル報告ヲ為サズ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタル者
二 第十五条第二項ノ規定ニ依ル命令又ハ処分ニ違反シタル者
三 第十五条第三項ノ規定ニ依ル当該官吏ノ臨検検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ質問ニ対シ答弁ヲ為サズ若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シタル者
第二十四条 航空機製造会社ハ其ノ代理人、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ業務ニ関シ本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第二十五条 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ航空機製造事業ヲ営ム者又ハ其ノ事業ヲ承継シタル者ハ本法施行ノ日ヨリ一年ヲ限リ第二条ノ規定ニ拘ラズ其ノ事業ヲ営ムコトヲ得
前項ニ掲グル者前項ノ期間内ニ第二条ノ許可ヲ申請シタル場合ニ於テ其ノ申請ニ対シ許可又ハ不許可ノ処分ノ日迄亦前項ニ同ジ
第九条ノ規定ハ第二項ニ掲グル者ガ第二条ノ許可ヲ受ケタル場合ニ於テハ事業開始ノ年ヲ以テ第二条ノ許可ヲ受ケタル年ト看做シ許可ノ日以後ノ分ニ付テノミ之ヲ適用ス
第十一条ノ規定ハ第二項ニ掲グル者ガ第二条ノ許可ヲ受クル前ニ於テ為ス輸入ニ付テハ之ヲ適用セズ