第一條 相續開始シタルトキハ開始地ガ樺太ニ在ルト否トヲ問ハズ被相續人又ハ相續人ガ日本ノ國籍ヲ有スル者タルト否トヲ問ハズ樺太ニ在ル相續財產ニハ本令ニ依リ相續稅ヲ課ス
第二條 被相續人ガ樺太ニ住所ヲ有スルトキハ左ニ揭グル財產ヲ以テ樺太ニ在ル相續財產トス
一 樺太ニ在ル動產及不動產但シ相續稅法施行地、朝鮮又ハ臺灣ニ船籍ヲ有スル船舶ヲ除ク
被相續人ガ樺太ニ住所ヲ有セザルトキハ前項第一號及第二號ノ財產ヲ以テ樺太ニ在ル相續財產トス
相續開始前一年內ニ樺太ヨリ樺太外ニ轉ジタル者ノ住所ハ樺太ニ在ルモノト看做ス但シ樺太ヨリ相續稅法施行地、朝鮮又ハ臺灣ニ轉ジタル者ノ住所ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第三條 被相續人ガ樺太ニ住所ヲ有スルトキハ相續開始ノ際樺太ニ在ル相續財產ノ價額ニ相續開始前一年內ニ被相續人ガ樺太ニ在ル財產ニ付爲シタル贈與ノ價額ヲ加ヘ其ノ中ヨリ左ノ金額ヲ控除シタルモノヲ以テ課稅價格トス
三 債務(樺太外ニ在ル財產ヲ目的トスル留置權、特別ノ先取特權、質權、抵當權其ノ他之ニ準ズベキ擔保權ヲ以テ擔保セラルル債務及樺太外ニ在ル財產ニ關スル贈與ノ義務ヲ除ク)
被相續人ガ樺太ニ住所ヲ有セザルトキハ相續開始ノ際樺太ニ在ル相續財產ノ價額ニ相續開始前一年內ニ被相續人ガ樺太ニ在ル財產ニ付爲シタル贈與ノ價額ヲ加ヘ其ノ中ヨリ左ノ金額ヲ控除シタルモノヲ以テ課稅價格トス
二 其ノ財產ヲ目的トスル留置權、特別ノ先取特權、質權又ハ抵當權ヲ以テ擔保セラルル債務
國、公共團體又ハ慈善其ノ他ノ公益事業ニ對シ爲シタル贈與及遺贈ハ課稅價格ニ算入セズ
第四條 相續財產ノ價額、相續財產ノ價額ニ加算スベキ贈與ノ價額竝ニ相續財產ノ價額中ヨリ控除スベキ公課及債務金額ハ相續開始當時ノ現況ニ依ル
第五條 地上權、永小作權及定期金ニ付テハ政府ハ左ノ方法ニ依リ其ノ價額ヲ評定ス
一 地上權ニ付テハ左ノ金額ヲ以テ其ノ價額トス
殘存期間十年以下ナルモノ 地上權ノ目的タル土地ノ賃貸價格 二倍
殘存期間三十年以下ナルモノ 地上權ノ目的タル土地ノ賃貸價格 三倍
殘存期間五十年以下ナルモノ又ハ存續期間ノ定ナキモノ 地上權ノ目的タル土地ノ賃貸價格 五倍
殘存期間百年以下ナルモノ 地上權ノ目的タル土地ノ賃貸價格 七倍
殘存期間百年ヨリ長キモノ 地上權ノ目的タル土地ノ賃貸價格 十二倍
二 永小作權ニ付テハ左ノ金額ヲ以テ其ノ價額トス
殘存期間十年以下ナルモノ 永小作權ノ目的タル土地ノ賃貸價格 二倍
殘存期間三十年以下ナルモノ又ハ存續期間ノ定ナキモノ 永小作權ノ目的タル土地ノ賃貸價格 三倍
殘存期間五十年以下ナルモノ 永小作權ノ目的タル土地ノ賃貸價格 五倍
三 有期定期金ハ其ノ殘存期間ニ於ケル定期金ノ總額ヲ以テ其ノ價額トス但シ一年ノ定期金ノ二十倍ヲ超ユルコトヲ得ズ
四 無期定期金ハ其ノ一年ノ定期金ノ二十倍ヲ以テ其ノ價額トス
五 終身定期金ハ目的トセラレタル人ノ年齡ニ依リ左ノ期間ニ於ケル定期金ノ總額ヲ以テ其ノ價額トス
前項ノ規定ニ於テ土地ノ賃貸價格トハ貸主ガ公課、修繕費其ノ他土地ノ維持ニ必要ナル經費ヲ負擔スル條件ヲ以テ之ヲ賃貸スル場合ニ於テ貸主ノ收得スベキ一年分ノ金額ヲ謂フ
第六條 條件附權利、存續期間ノ不確定ナル權利、信託ノ利益ヲ受クベキ權利又ハ訴訟中ノ權利ニ付テハ政府ノ認ムル所ニ依リ其ノ價額ヲ評定ス
第三條第一項又ハ第二項ノ規定ニ依リ控除スベキ債務金額ハ政府ガ確實ト認メタルモノニ限ル
第七條 課稅價格ガ家督相續ニ在リテハ五千圓、遺產相續ニ在リテハ千圓ニ滿タザルトキハ相續稅ヲ課セズ
第八條 軍人又ハ軍屬ノ戰死又ハ戰爭ノ爲受ケタル傷痍疾病ニ起因シタル死亡ニ因リ相續開始シタルトキハ相續稅ヲ課セズ但シ傷痍者又ハ疾病者ニシテ負傷又ハ發病後一年ヲ經過シ死亡シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第九條 相續稅ハ課稅價格ヲ左ノ各級ニ區分シ其ノ各區分ニ對シ相續人ノ種類ニ從ヒ遞次ニ各稅率ヲ適用シテ之ヲ課ス
外國ノ法律ニ依リ開始シタル相續ニ關シテハ遺產相續ニ關スル稅率ヲ準用ス但シ相續人二人以上アル場合ニ於テ其ノ適用スベキ稅率相異ルトキハ最モ低キ稅率ヲ適用ス
第十條 相續人ノ廢除若ハ其ノ取消ニ關スル裁判ノ確定前又ハ相續ノ承認若ハ抛棄前ト雖モ政府ハ必要ニ依リ其ノ推定家督相續人又ハ推定遺產相續人ニ對スル稅率ヲ適用シ相續稅ヲ課スルコトヲ得
相續人アルコト分明ナラザルトキハ稅率ノ最モ高キ相續人ニ對スル稅率ヲ適用シテ相續稅ヲ課ス
前二項ノ規定ニ依リ課稅シタル後相續人確定シタルトキハ稅率ノ適用ヲ改訂シ稅金ノ差額ヲ追徵シ又ハ還付ス
第十一條 相續稅ヲ課セラルベキ相續開始後五年內ニ於テ更ニ相續開始シタルトキハ前ノ相續額ニ對スル相續稅ニ相當スル相續稅ヲ免除ス
相續稅ヲ課セラルベキ相續開始後七年內ニ於テ更ニ相續開始シタルトキハ前ノ相續額ニ對スル相續稅ノ半額ニ相當スル相續稅ヲ免除ス
相續稅法施行地、朝鮮又ハ臺灣ニ於ケル法令ニ依リ相續稅ヲ課セラルベキ相續開始後五年又ハ七年內ニ於テ更ニ相續開始シタルトキハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ相續稅ノ全部又ハ一部ヲ免除ス
第十二條 相續人、受遺者及第三條第一項又ハ第二項ノ規定ニ依リ相續財產ノ價額ニ加算シタル贈與ヲ受ケタル者ハ課稅價格中各自其ノ受ケタル利益ノ價額ノ占ムル割合ニ應ジテ相續稅ヲ納付スル義務アルモノトス但シ相續人ハ共同相續人、受遺者及第三條第一項又ハ第二項ノ規定ニ依リ相續財產ノ價額ニ加算シタル贈與ヲ受ケタル者ノ納付スベキ相續稅ニ付連帶納付ノ責ニ任ズ
第三條第一項又ハ第二項ノ規定ニ依リ相續財產ノ價額ニ加算シタル贈與ノ價額ニシテ第二十四條ノ規定ニ依リ相續稅ヲ課スベキモノアルトキハ其ノ相續稅額ハ當該贈與ヲ受ケタル者ガ前項ノ規定ニ依リ當該贈與ニ付納付スベキ相續稅額ヨリ之ヲ控除ス
第十三條 相續人アルコト分明ナラザルトキ又ハ相續人ガ相續財產ニ付全ク處分ノ權能ナキトキハ本令中相續人ニ關スル規定ハ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外之ヲ相續財產管理人又ハ遺言執行者ニ適用ス
第十四條 相續人ハ相續開始ヲ知リタル日ヨリ三月內ニ相續稅ヲ課セラルベキ相續財產ノ目錄竝ニ相續財產ノ價額ニ加算セラルベキ贈與ノ價額及相續財產ノ價額中ヨリ控除セラルベキ金額ノ明細書ヲ政府ニ提出スベシ
前項ノ期間ハ相續財產管理人又ハ遺言執行者ニ付テハ就職ノ日ヨリ三月トス
被相續人又ハ相續人ガ帝國內ニ住所ヲ有セザルトキハ前二項ノ期間ハ六月トス
相續人確定シタルトキハ第一項ノ書類ヲ提出スルト同時ニ又ハ其ノ確定ノ日ヨリ一月內ニ相續人ノ相續關係ヲ記載シタル書面ヲ政府ニ提出スベシ
第十五條 納稅義務者樺太ニ住所又ハ居所ヲ有セザルトキハ前條ノ書類ノ提出、納稅其ノ他相續稅ニ關スル一切ノ事項ヲ處理セシムル爲納稅管理人ヲ定メ政府ニ申吿スベシ樺太外ニ住所又ハ居所ヲ移サントスルトキ亦同ジ
第十六條 町村長左ノ事項ニ關スル屆書ヲ受理シタルトキハ之ヲ所轄樺太廳支廳長ニ報吿スベシ
三 戶主ガ婚姻又ハ養子緣組ノ取消ニ因リテ其ノ家ヲ去リタルコト
課稅價格ヲ決定シタルトキハ政府ハ之ヲ納稅義務者又ハ納稅管理人ニ通知スベシ
樺太ニ住所又ハ居所ヲ有セザル納稅義務者納稅管理人ノ申吿ヲ爲サザルトキハ前項ノ通知ハ公吿ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テ公吿ノ初日ヨリ七日ヲ經過シタルトキハ其ノ通知アリタルモノト看做ス
第十八條 納稅義務者前條第一項ノ決定ニ對シ異議アルトキハ通知ヲ受ケタル日ヨリ三十日內ニ不服ノ事由ヲ具シ政府ニ審査ノ請求ヲ爲スコトヲ得
納稅義務者帝國內ニ住所ヲ有セザルトキハ前項ノ期間ハ之ヲ三月トス
第一項ノ請求アリタル場合ト雖モ政府ハ稅金ノ徵收ヲ猶豫セズ
第十九條 前條第一項ノ請求アリタルトキハ相續稅審査委員會ニ諮問シ政府ニ於テ之ヲ決定ス
委員ハ稅務官吏中ヨリ三人及直接國稅百圓以上ヲ納ムル者ヨリ三人ヲ樺太廳長官ニ於テ命ズ
第二十一條 審査委員ニハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ日當及旅費ヲ支給ス但シ稅務官吏タル審査委員ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第二十二條 相續稅ハ一時ニ之ヲ納付スベシ但シ稅額百圓以上ナルトキハ稅額ニ相當スル擔保ヲ提供シ七年內ノ年賦延納ヲ求ムルコトヲ得
納稅義務者前項ノ規定ニ依リ年賦延納ヲ求メントスルトキハ第十七條第二項ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三十日內ニ政府ニ申請スベシ但シ連帶納付ノ責アル納稅義務者ニ在リテハ其ノ一人ヨリ申請スルヲ以テ足ル
納稅義務者帝國內ニ住所ヲ有セザルトキハ前項ノ期間ハ之ヲ三月トス
第二十三條 相續人期限內ニ第十四條第一項又ハ第四項ノ書類ヲ提出セザルトキハ政府ハ期間ヲ定メテ催吿ヲ爲スコトヲ得
相續人二人以上ナル場合ニ於テハ政府ハ其ノ一人ニ對シ前項ノ催吿ヲ爲スコトヲ得
前二項ノ場合ニ於テ相續人其ノ期間內ニ書類ヲ提出セザルトキハ政府ノ認ムル所ニ依リ課稅價格ヲ決定シ催吿ニ關スル費用及稅額ノ十分ノ一ニ相當スル金額ヲ相續人ヨリ徵收スルコトヲ得
相續人二人以上ナル場合ニ於テハ各相續人ハ前項ノ徵收金ニ付連帶納付ノ責ニ任ズ
第三項ノ規定ニ依ル金額ノ徵收ニ關シテハ國稅徵收法ヲ準用ス
第二十四條 左ニ揭グル場合ニ於テ樺太ニ在ル不動產及相續稅法施行地、朝鮮又ハ臺灣ニ船籍ヲ有スル船舶以外ノ財產ニ付爲シタル贈與ノ價額ガ千圓以上ナルトキハ遺產相續開始シタルモノト看做シ其ノ財產ノ價額ヲ課稅價格トシテ本令ニ依リ相續稅ヲ課ス
二 分家ヲ爲スニ際シ又ハ分家ヲ爲シタル後本家ノ戶主又ハ家族ガ分家ノ戶主又ハ家族ニ贈與ヲ爲シタルトキ
第二十五條 死亡ニ因ル相續開始後一年內ニ於テ相續人ガ相續財產ニ付爲シタル贈與ニ付テハ前條ノ規定ヲ適用セズ但シ自己ノ直系卑屬ニ贈與ヲ爲シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十六條 稅務官吏ハ調査上必要アルトキハ被相續人、納稅義務者又ハ納稅義務アリト認ムル者ニ質問ヲ爲シ又ハ其ノ帳簿物件ヲ檢査スルコトヲ得
第二十七條 稅務官吏ハ調査上必要アルトキハ被相續人、納稅義務者若ハ納稅義務アリト認ムル者ニ金錢若ハ物品ヲ支拂フ義務ヲ有スト認ムル者ニ對シ又ハ被相續人、納稅義務者若ハ納稅義務アリト認ムル者ヨリ金錢若ハ物品ノ支拂ヲ受クル權利ヲ有スト認ムル者ニ對シ其ノ金額、數量、價額、支拂期日等ヲ質問シ又ハ之ニ關スル帳簿物件ヲ檢査スルコトヲ得
第二十八條 町村ハ相續稅ノ附加稅ヲ課スルコトヲ得ズ
第二十九條 本令ニ定ムルモノノ外相續稅ニ關シ必要ナル規定ハ樺太廳長官之ヲ定ム