自動車製造事業法
法令番号: 法律第三十三號
公布年月日: 昭和11年5月29日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル自動車製造事業法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十一年五月二十八日
內閣總理大臣 廣田弘毅
海軍大臣 永野修身
陸軍大臣 伯爵 寺內壽一
大藏大臣 馬場鍈一
內務大臣 潮惠之輔
商工大臣 小川鄕太郞
法律第三十三號
自動車製造事業法
第一條 本法ハ國防ノ整備及產業ノ發達ヲ期スル爲帝國ニ於ケル自動車製造事業ノ確立ヲ圖ルコトヲ目的トス
第二條 本法ニ於テ自動車製造事業ト稱スルハ命令ヲ以テ定ムル自動車又ハ自動車部分品ノ組立又ハ製造ヲ爲ス事業ヲ謂フ
第三條 自動車製造事業ヲ營マントスル者ハ政府ノ許可ヲ受クベシ但シ其ノ組立又ハ製造ヲ爲ス自動車又ハ自動車部分品ノ數量ガ命令ヲ以テ定ムル數量ニ達セザルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
政府ハ自動車又ハ自動車部分品ノ需要供給ヲ參酌シ自動車製造事業確立上支障ナシト認メタル場合ニ非ザレバ前項ノ許可ヲ爲スコトヲ得ズ
第四條 前條ノ許可ヲ受クルコトヲ得ベキ者ハ帝國法令ニ依リ設立シタル株式會社ニシテ其ノ株主ノ半數以上、取締役ノ半數以上、資本ノ半額以上及議決權ノ過半數ガ帝國臣民又ハ帝國法令ニ依リ設立シタル法人ニ屬スルモノニ限ル
前項ノ法人ハ其ノ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半數以上又ハ資本ノ半額以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國人又ハ外國法人ニ屬セザルモノナルコトヲ要ス
前條ノ許可ヲ受ケタル者前二項ノ規定ニ該當セザルニ至リタルトキハ許可ハ其ノ效力ヲ失フ
第五條 第三條ノ許可ヲ受ケタル會社(自動車製造會社)ハ政府ノ指定スル期間內ニ其ノ事業ヲ開始スベシ
政府ハ正當ノ事由アリト認ムル場合ニ限リ前項ノ期間ノ延長ヲ許可スルコトヲ得
自動車製造會社前二項ノ期間內ニ其ノ事業ヲ開始セザルトキハ第三條ノ許可ハ其ノ效力ヲ失フ
第六條 自動車製造會社ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ第三條ノ許可ヲ受ケタル年及其ノ翌年ヨリ五年間其ノ事業ニ付所得稅及營業收益稅ヲ免除ス
第七條 北海道、府縣及市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ前條ノ規定ニ依リ所得稅及營業收益稅ヲ免除セラレタル自動車製造會社ニハ其ノ免除セラレタル事業ニ對シ又ハ其ノ免除セラレタル事業ニ屬スル資本金額、從業者、營業用ノ工作物若ハ物件、使用動力又ハ收入ヲ標準トシテ課稅スルコトヲ得ズ
第八條 自動車製造會社其ノ事業ノ爲必要ナル器具、機械又ハ材料ヲ政府ノ認可ヲ受ケ輸入スルトキハ本法施行ノ日ヨリ五年間命令ノ定ムル所ニ依リ輸入稅ヲ免除ス
第九條 自動車製造會社ハ事業擴張ノ場合ニ於テ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ事業ニ屬スル設備ノ費用ニ充ツル爲株金全額拂込前ト雖モ其ノ資本ヲ增加スルコトヲ得
第十條 自動車製造會社ハ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ事業ニ屬スル設備ノ費用ニ充ツル爲商法第二百條ノ規定ニ依ル制限ヲ超エテ社債ヲ募集スルコトヲ得但シ社債ノ總額ハ拂込ミタル株金額ノ二倍ヲ超ユルコトヲ得ズ
最終ノ貸借對照表ニ依リ會社ニ現存スル財產ガ拂込ミタル株金額ニ滿タザルトキハ前項ノ規定ヲ適用セズ
第一項ノ規定ニ依リ募集スル社債ニ付テハ工場抵當法ニ依リ會社ノ事業ニ屬スルモノヲ抵當ト爲スコトヲ要ス但シ特別ノ事情アル場合ニ於テ政府其ノ必要ナシト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十一條 自動車又ハ自動車部分品ノ輸入ガ自動車製造事業ノ確立ヲ妨グルノ虞アルトキハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ期間ヲ定メ自動車又ハ自動車部分品ノ輸入ヲ制限スルコトヲ得
第十二條 自動車又ハ自動車部分品ノ輸入ニ因リ其ノ市價ノ低落ヲ來シ自動車製造事業ノ確立ヲ妨グルノ虞アルトキハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ關稅調査委員會ノ議ヲ經テ期間ヲ定メ自動車又ハ自動車部分品ニ對シ關稅定率法別表輸入稅表ニ定ムル輸入稅ノ外其ノ物品ノ價格ノ五割ニ相當スル金額以下ノ輸入稅ヲ課スルコトヲ得
第十三條 自動車製造會社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ事業計畫ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
政府必要アリト認ムルトキハ事業計畫ノ變更ヲ命ズルコトヲ得
第十四條 自動車製造會社其ノ事業ノ全部又ハ一部ヲ讓渡シ、廢止シ又ハ休止セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ許可ヲ受クベシ
自動車製造會社ノ合併又ハ解散ノ決議ハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第十五條 政府ハ自動車製造會社ニ對シ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシムルコトヲ得
政府ハ自動車製造會社ニ對シ業務及會計ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
政府監督上必要アリト認ムルトキハ當該官吏ヲシテ自動車製造會社ノ事務所、營業所、工場、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨檢シ業務若ハ財產ノ狀況又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十六條 政府公益上必要アリト認ムルトキハ自動車製造會社ニ對シ自動車若ハ自動車部分品ノ販賣價格若ハ販賣條件ノ變更ヲ命ジ又ハ自動車若ハ自動車部分品ノ需要供給ヲ調節スル爲必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
政府公益上必要アリト認ムルトキハ自動車製造會社ニ對シ其ノ設備ノ擴張又ハ改良ヲ命ズルコトヲ得
第十七條 政府軍事上必要アリト認ムルトキハ自動車製造會社ニ對シ軍用自動車又ハ其ノ部分品ノ製造、自動車ニ關スル特殊事項ノ硏究又ハ特殊設備ノ施設其ノ他軍事上必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第十八條 政府第三條ノ許可、第十一條ノ制限又ハ第十六條ノ命令ヲ爲サントスルトキハ自動車製造事業委員會ノ議ヲ經ベシ
自動車製造事業委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九條 自動車製造會社本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル行爲ヲ爲シタルトキハ政府ハ其ノ業務ヲ停止シ若ハ制限シ、第三條ノ許可ヲ取消シ又ハ取締役若ハ其ノ職務ヲ行フ監査役ノ解任ヲ爲スコトヲ得
第二十條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第三條ノ規定ニ違反シ許可ヲ受ケズシテ自動車製造事業ヲ營ミタル者
二 第十一條ノ規定ニ依ル制限ニ違反シ自動車又ハ自動車部分品ノ輸入ヲ爲シタル者
三 附則第四項ニ揭グル者ニシテ同項ノ規定ニ依ル範圍ヲ超エテ自動車製造事業ヲ營ミタルモノ
第二十一條 自動車製造會社第十六條又ハ第十七條ノ命令ニ違反シタルトキハ其ノ取締役又ハ其ノ職務ヲ行フ監査役ヲ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十二條 自動車製造會社左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ其ノ取締役又ハ其ノ職務ヲ行フ監査役ヲ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第十三條第一項ノ規定ニ違反シ認可ヲ受ケザル事業計畫ヲ實施シタルトキ
二 第十三條第二項ノ命令ニ違反シ事業計畫ヲ變更セズシテ之ヲ實施シタルトキ
三 第十四條第一項ノ規定ニ依リ許可ヲ受クベキ事項ヲ許可ヲ受ケズシテ爲シタルトキ
四 第十五條第二項ノ命令又ハ處分ニ違反シタルトキ
第二十三條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第十五條第一項ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者
二 第十五條第三項ノ規定ニ依ル當該官吏ノ臨檢檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者
第二十四條 自動車製造會社其ノ他ノ自動車ニ關スル營業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第二十五條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ自動車製造事業ヲ營ム者又ハ其ノ事業ヲ承繼シタル者ハ本法施行ノ日ヨリ三月ヲ限リ第三條ノ規定ニ拘ラズ其ノ事業ヲ營ムコトヲ得
前項ニ揭グル者前項ノ期間內ニ第三條ノ許可ヲ申請シタル場合ニ於テ其ノ申請ニ對スル許可又ハ不許可ノ處分ノ日迄亦前項ニ同ジ
昭和十年八月九日以前ニ於テ自動車製造事業ヲ開始シタル者又ハ其ノ事業ヲ承繼シタル者ニシテ本法施行ノ際現ニ其ノ事業ヲ營ムモノハ前二項ノ期間經過後ト雖モ第三條ノ規定ニ拘ラズ命令ノ定ムル所ニ依リ昭和十年八月九日以前ニ於テ營メル事業ノ範圍內ニ於テ其ノ事業ヲ營ムコトヲ得
第十五條第一項第三項及第二十三條乃至第二十五條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ自動車製造事業ヲ營ム者ニ之ヲ準用ス
本法施行ノ日ヨリ一月以內ニ第三條ノ許可ヲ申請シタル者自動車製造事業ノ爲必要ナル器具、機械又ハ材料ヲ政府ノ認可ヲ受ケ輸入スルトキハ本法施行ノ日ヨリ三月間命令ノ定ムル所ニ依リ輸入稅ヲ免除ス
前項ノ規定ニ依リ輸入稅ノ免除ヲ受ケタル者第三條ノ許可ヲ受クルニ至ラザルトキハ其ノ輸入稅ヲ追徵ス
第六項ノ規定ニ依リ輸入稅ノ免除ヲ爲ス場合ニ於テハ輸入ノ際稅金ニ相當スル擔保ヲ提供セシムルコトヲ得
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル自動車製造事業法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十一年五月二十八日
内閣総理大臣 広田弘毅
海軍大臣 永野修身
陸軍大臣 伯爵 寺内寿一
大蔵大臣 馬場鍈一
内務大臣 潮恵之輔
商工大臣 小川郷太郎
法律第三十三号
自動車製造事業法
第一条 本法ハ国防ノ整備及産業ノ発達ヲ期スル為帝国ニ於ケル自動車製造事業ノ確立ヲ図ルコトヲ目的トス
第二条 本法ニ於テ自動車製造事業ト称スルハ命令ヲ以テ定ムル自動車又ハ自動車部分品ノ組立又ハ製造ヲ為ス事業ヲ謂フ
第三条 自動車製造事業ヲ営マントスル者ハ政府ノ許可ヲ受クベシ但シ其ノ組立又ハ製造ヲ為ス自動車又ハ自動車部分品ノ数量ガ命令ヲ以テ定ムル数量ニ達セザルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
政府ハ自動車又ハ自動車部分品ノ需要供給ヲ参酌シ自動車製造事業確立上支障ナシト認メタル場合ニ非ザレバ前項ノ許可ヲ為スコトヲ得ズ
第四条 前条ノ許可ヲ受クルコトヲ得ベキ者ハ帝国法令ニ依リ設立シタル株式会社ニシテ其ノ株主ノ半数以上、取締役ノ半数以上、資本ノ半額以上及議決権ノ過半数ガ帝国臣民又ハ帝国法令ニ依リ設立シタル法人ニ属スルモノニ限ル
前項ノ法人ハ其ノ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半数以上又ハ資本ノ半額以上若ハ議決権ノ過半数ガ外国人又ハ外国法人ニ属セザルモノナルコトヲ要ス
前条ノ許可ヲ受ケタル者前二項ノ規定ニ該当セザルニ至リタルトキハ許可ハ其ノ効力ヲ失フ
第五条 第三条ノ許可ヲ受ケタル会社(自動車製造会社)ハ政府ノ指定スル期間内ニ其ノ事業ヲ開始スベシ
政府ハ正当ノ事由アリト認ムル場合ニ限リ前項ノ期間ノ延長ヲ許可スルコトヲ得
自動車製造会社前二項ノ期間内ニ其ノ事業ヲ開始セザルトキハ第三条ノ許可ハ其ノ効力ヲ失フ
第六条 自動車製造会社ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ第三条ノ許可ヲ受ケタル年及其ノ翌年ヨリ五年間其ノ事業ニ付所得税及営業収益税ヲ免除ス
第七条 北海道、府県及市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ前条ノ規定ニ依リ所得税及営業収益税ヲ免除セラレタル自動車製造会社ニハ其ノ免除セラレタル事業ニ対シ又ハ其ノ免除セラレタル事業ニ属スル資本金額、従業者、営業用ノ工作物若ハ物件、使用動力又ハ収入ヲ標準トシテ課税スルコトヲ得ズ
第八条 自動車製造会社其ノ事業ノ為必要ナル器具、機械又ハ材料ヲ政府ノ認可ヲ受ケ輸入スルトキハ本法施行ノ日ヨリ五年間命令ノ定ムル所ニ依リ輸入税ヲ免除ス
第九条 自動車製造会社ハ事業拡張ノ場合ニ於テ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ事業ニ属スル設備ノ費用ニ充ツル為株金全額払込前ト雖モ其ノ資本ヲ増加スルコトヲ得
第十条 自動車製造会社ハ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ事業ニ属スル設備ノ費用ニ充ツル為商法第二百条ノ規定ニ依ル制限ヲ超エテ社債ヲ募集スルコトヲ得但シ社債ノ総額ハ払込ミタル株金額ノ二倍ヲ超ユルコトヲ得ズ
最終ノ貸借対照表ニ依リ会社ニ現存スル財産ガ払込ミタル株金額ニ満タザルトキハ前項ノ規定ヲ適用セズ
第一項ノ規定ニ依リ募集スル社債ニ付テハ工場抵当法ニ依リ会社ノ事業ニ属スルモノヲ抵当ト為スコトヲ要ス但シ特別ノ事情アル場合ニ於テ政府其ノ必要ナシト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十一条 自動車又ハ自動車部分品ノ輸入ガ自動車製造事業ノ確立ヲ妨グルノ虞アルトキハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ期間ヲ定メ自動車又ハ自動車部分品ノ輸入ヲ制限スルコトヲ得
第十二条 自動車又ハ自動車部分品ノ輸入ニ因リ其ノ市価ノ低落ヲ来シ自動車製造事業ノ確立ヲ妨グルノ虞アルトキハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ関税調査委員会ノ議ヲ経テ期間ヲ定メ自動車又ハ自動車部分品ニ対シ関税定率法別表輸入税表ニ定ムル輸入税ノ外其ノ物品ノ価格ノ五割ニ相当スル金額以下ノ輸入税ヲ課スルコトヲ得
第十三条 自動車製造会社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ事業計画ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
政府必要アリト認ムルトキハ事業計画ノ変更ヲ命ズルコトヲ得
第十四条 自動車製造会社其ノ事業ノ全部又ハ一部ヲ譲渡シ、廃止シ又ハ休止セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ許可ヲ受クベシ
自動車製造会社ノ合併又ハ解散ノ決議ハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第十五条 政府ハ自動車製造会社ニ対シ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ為サシムルコトヲ得
政府ハ自動車製造会社ニ対シ業務及会計ニ関シ監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
政府監督上必要アリト認ムルトキハ当該官吏ヲシテ自動車製造会社ノ事務所、営業所、工場、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨検シ業務若ハ財産ノ状況又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第十六条 政府公益上必要アリト認ムルトキハ自動車製造会社ニ対シ自動車若ハ自動車部分品ノ販売価格若ハ販売条件ノ変更ヲ命ジ又ハ自動車若ハ自動車部分品ノ需要供給ヲ調節スル為必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
政府公益上必要アリト認ムルトキハ自動車製造会社ニ対シ其ノ設備ノ拡張又ハ改良ヲ命ズルコトヲ得
第十七条 政府軍事上必要アリト認ムルトキハ自動車製造会社ニ対シ軍用自動車又ハ其ノ部分品ノ製造、自動車ニ関スル特殊事項ノ研究又ハ特殊設備ノ施設其ノ他軍事上必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第十八条 政府第三条ノ許可、第十一条ノ制限又ハ第十六条ノ命令ヲ為サントスルトキハ自動車製造事業委員会ノ議ヲ経ベシ
自動車製造事業委員会ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九条 自動車製造会社本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル行為ヲ為シタルトキハ政府ハ其ノ業務ヲ停止シ若ハ制限シ、第三条ノ許可ヲ取消シ又ハ取締役若ハ其ノ職務ヲ行フ監査役ノ解任ヲ為スコトヲ得
第二十条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
一 第三条ノ規定ニ違反シ許可ヲ受ケズシテ自動車製造事業ヲ営ミタル者
二 第十一条ノ規定ニ依ル制限ニ違反シ自動車又ハ自動車部分品ノ輸入ヲ為シタル者
三 附則第四項ニ掲グル者ニシテ同項ノ規定ニ依ル範囲ヲ超エテ自動車製造事業ヲ営ミタルモノ
第二十一条 自動車製造会社第十六条又ハ第十七条ノ命令ニ違反シタルトキハ其ノ取締役又ハ其ノ職務ヲ行フ監査役ヲ三千円以下ノ罰金ニ処ス
第二十二条 自動車製造会社左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ其ノ取締役又ハ其ノ職務ヲ行フ監査役ヲ千円以下ノ罰金ニ処ス
一 第十三条第一項ノ規定ニ違反シ認可ヲ受ケザル事業計画ヲ実施シタルトキ
二 第十三条第二項ノ命令ニ違反シ事業計画ヲ変更セズシテ之ヲ実施シタルトキ
三 第十四条第一項ノ規定ニ依リ許可ヲ受クベキ事項ヲ許可ヲ受ケズシテ為シタルトキ
四 第十五条第二項ノ命令又ハ処分ニ違反シタルトキ
第二十三条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
一 第十五条第一項ノ規定ニ依ル報告ヲ為サズ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタル者
二 第十五条第三項ノ規定ニ依ル当該官吏ノ臨検検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ質問ニ対シ答弁ヲ為サズ若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シタル者
第二十四条 自動車製造会社其ノ他ノ自動車ニ関スル営業者ハ其ノ代理人、戸主、家族、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ業務ニ関シ本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第二十五条 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ自動車製造事業ヲ営ム者又ハ其ノ事業ヲ承継シタル者ハ本法施行ノ日ヨリ三月ヲ限リ第三条ノ規定ニ拘ラズ其ノ事業ヲ営ムコトヲ得
前項ニ掲グル者前項ノ期間内ニ第三条ノ許可ヲ申請シタル場合ニ於テ其ノ申請ニ対スル許可又ハ不許可ノ処分ノ日迄亦前項ニ同ジ
昭和十年八月九日以前ニ於テ自動車製造事業ヲ開始シタル者又ハ其ノ事業ヲ承継シタル者ニシテ本法施行ノ際現ニ其ノ事業ヲ営ムモノハ前二項ノ期間経過後ト雖モ第三条ノ規定ニ拘ラズ命令ノ定ムル所ニ依リ昭和十年八月九日以前ニ於テ営メル事業ノ範囲内ニ於テ其ノ事業ヲ営ムコトヲ得
第十五条第一項第三項及第二十三条乃至第二十五条ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ自動車製造事業ヲ営ム者ニ之ヲ準用ス
本法施行ノ日ヨリ一月以内ニ第三条ノ許可ヲ申請シタル者自動車製造事業ノ為必要ナル器具、機械又ハ材料ヲ政府ノ認可ヲ受ケ輸入スルトキハ本法施行ノ日ヨリ三月間命令ノ定ムル所ニ依リ輸入税ヲ免除ス
前項ノ規定ニ依リ輸入税ノ免除ヲ受ケタル者第三条ノ許可ヲ受クルニ至ラザルトキハ其ノ輸入税ヲ追徴ス
第六項ノ規定ニ依リ輸入税ノ免除ヲ為ス場合ニ於テハ輸入ノ際税金ニ相当スル担保ヲ提供セシムルコトヲ得