不良住宅地区改良法
法令番号: 法律第十四號
公布年月日: 昭和2年3月30日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル不良住宅地區改良法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二年三月二十九日
內閣總理大臣 若槻禮次郞
內務大臣 濱口雄幸
法律第十四號
不良住宅地區改良法
第一條 公共團體ハ不良住宅密集シ衞生、風紀、保安等ニ關シ有害又ハ危險ノ虞アル一團地ニ付本法ニ依リ改良事業ヲ行フコトヲ得
公共團體前項ノ規定ニ依リ改良事業ヲ行ハントスルトキハ主務大臣ニ申請シテ地區ノ指定ヲ受クベシ
第二條 主務大臣特別ノ必要アリト認ムルトキハ前條ノ申請ニ依ラズシテ地區ノ指定ヲ爲シ其ノ地區ノ屬スル公共團體ニ對シ本法ニ依ル改良事業ノ施行ヲ命ズルコトヲ得
第三條 主務大臣前二條ノ規定ニ依リ地區ノ指定ヲ爲シタルトキハ左ノ事項ヲ公告スベシ
一 地區ノ區域
二 改良事業施行者
第四條 前條ノ公告アリタルトキハ事業施行者ハ一年以內ニ改良事業方法ヲ定メ主務大臣ニ認可ノ申請ヲ爲スベシ
前項ノ認可アリタルトキハ事業施行者ハ三月以內ニ事業ニ著手スベシ
事業施行者第一項ニ規定スル期間內ニ改良事業方法ノ認可申請ヲ爲サズ又ハ第二項ニ規定スル期間內ニ事業ニ著手セザルトキハ主務大臣ハ地區ノ指定ヲ取消スコトヲ得
第五條 事業施行者ハ地區內居住者ヲ一時收容スルニ必要ナル設備ヲ設クベシ
特別ノ事情アルトキハ事業施行者ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ前項ノ設備ヲ設ケザルコトヲ得
第六條 事業施行者ハ地區內ニ於ケル土地ノ區劃形質ノ變更、道路下水ノ施設、地上物件ノ除去其ノ他地區改良ノ爲必要ナル事業ヲ行フベシ
第七條 事業施行者ハ地區內居住者ノ居住ニ充ツベキ住宅ヲ其ノ地區內ニ建設スベシ但シ特別ノ事情アル場合ニ於テ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ地區外ニ之ヲ建設スルコトヲ得
前項住宅ノ數ハ地區ノ指定アリタルトキ現ニ其ノ地區內ニ居住スル者ノ世帶數ヲ下ルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情アル場合ニ於テ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第八條 改良事業ヲ施行シタル公共團體ハ前條ノ規定ニ依リ建設シタル住宅ノ管理方法ヲ定メ監督官廳ノ認可ヲ受クベシ
第九條 國庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ事業施行者ニ對シ其ノ事業ノ施行ノ爲支出スル經費ノ二分ノ一以內ヲ補助ス
第十條 本法ニ依ル改良事業施行ノ爲必要アルトキハ事業施行者ハ地區內ノ土地又ハ建物其ノ他ノ工作物ヲ收用又ハ使用スルコトヲ得
第十一條 前條ノ規定ニ依リ收用シタル土地ニシテ改良事業トシテ行フ建物ノ建設及公共ノ用ニ供セザルモノハ第六條ノ事業ノ完了後之ヲ賣却スベシ
前項ノ事業ノ完了ハ主務大臣ノ認定ヲ受クベシ
第十二條 前條ノ規定ニ依ル土地ノ賣却ハ左ニ揭グル者ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ競爭入札ニ依リ之ヲ行フベシ
一 改良事業施行ノ爲收用セラレタル土地ノ全部又ハ一部ヲ其ノ土地收用ノ際所有シタル者又ハ其ノ相續人
二 改良事業施行ノ爲收用セラレタル土地ニ關シ其ノ土地收用ノ際權利ヲ有シタル者(擔保權者ヲ除ク)又ハ其ノ相續人
三 改良事業施行ノ爲收用セラレタル土地ノ上ニ存シタル建物ヲ其ノ土地收用ノ際所有シタル者
前項ニ揭グル者一人ナルトキハ隨意契約ニ依リ賣却スルコトヲ得
前二項ノ規定ニ依リ賣却スルコトヲ得ザル土地ノ賣却ニ付テハ一般ノ競爭入札ニ依ルベシ
第十三條 第五條ノ規定ニ依ル一時收容設備ノ爲特別ノ必要アルトキハ事業施行者ハ地區附近ノ土地又ハ建物其ノ他ノ工作物ヲ使用スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ使用スル土地又ハ建物其ノ他ノ工作物ハ主務大臣決定シ之ヲ公告スベシ
第十四條 本法ニ依ル改良事業施行ノ爲必要アリト認ムルトキハ行政廳ハ地區內ノ建物其ノ他ノ工作物ノ所有者ニ對シ其ノ移轉ヲ命ジ又ハ其ノ占有者ニ對シ立退ヲ命ズルコトヲ得
行政執行法第五條及第六條ノ規定竝ニ之ニ基キテ發スル命令ハ行政廳ガ前項ノ規定ニ依ル命令ヲ强制スル場合ニ之ヲ準用ス
第十五條 第十條又ハ第十三條第一項ノ規定ニ依ル收用又ハ使用ニ關シテハ本法ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外土地收用法ヲ適用ス
前項ノ規定ニ依ル土地收用法ノ適用ニ付テハ建物其ノ他ノ工作物ハ之ヲ土地ト看做ス
第十六條 第十條又ハ第十三條第一項ノ規定ニ依ル收用又ハ使用ニ付テハ第一條第二項若ハ第二條ノ規定ニ依ル主務大臣ノ地區ノ指定又ハ第十三條第二項ノ規定ニ依ル主務大臣ノ決定ヲ以テ土地收用法第十二條ノ規定ニ依ル事業ノ認定、第三條又ハ第十三條第二項ノ規定ニ依ル公告ヲ以テ土地收用法第十四條ノ規定ニ依ル公告ト看做ス
第十七條 第十四條ノ規定ニ依リ移轉又ハ立退ヲ命ゼラレタル者其ノ移轉又ハ立退ニ因リ損害ヲ受ケタルトキハ事業施行者ハ其ノ通常受クベキ損害ニ限リ之ヲ補償スベシ
前項ノ規定ニ依ル補償金ハ收用審查會之ヲ決定ス
第十八條 第十四條ノ規定ニ依リ行政廳ノ爲シタル處分ニ對シ不服アル者ハ訴願ヲ提起シ違法ニ權利ヲ侵害セラレタリトスルトキハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第十九條 第十七條第二項ノ規定ニ依ル收用審查會ノ決定ニ對シテ不服アル者ノ出訴ニ付テハ土地收用法第八十二條第一項及第二項ノ規定ヲ適用ス
第二十條 公益法人ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ本法ニ依リ改良事業ヲ行フコトヲ得
本法ハ第二條ノ規定ヲ除クノ外前項ノ認可ヲ受ケタル法人ニ之ヲ適用ス但シ第一條及第八條ノ規定ノ適用ニ付テハ同條中公共團體トアルハ前項ノ認可ヲ受ケタル法人トス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル不良住宅地区改良法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二年三月二十九日
内閣総理大臣 若槻礼次郎
内務大臣 浜口雄幸
法律第十四号
不良住宅地区改良法
第一条 公共団体ハ不良住宅密集シ衛生、風紀、保安等ニ関シ有害又ハ危険ノ虞アル一団地ニ付本法ニ依リ改良事業ヲ行フコトヲ得
公共団体前項ノ規定ニ依リ改良事業ヲ行ハントスルトキハ主務大臣ニ申請シテ地区ノ指定ヲ受クベシ
第二条 主務大臣特別ノ必要アリト認ムルトキハ前条ノ申請ニ依ラズシテ地区ノ指定ヲ為シ其ノ地区ノ属スル公共団体ニ対シ本法ニ依ル改良事業ノ施行ヲ命ズルコトヲ得
第三条 主務大臣前二条ノ規定ニ依リ地区ノ指定ヲ為シタルトキハ左ノ事項ヲ公告スベシ
一 地区ノ区域
二 改良事業施行者
第四条 前条ノ公告アリタルトキハ事業施行者ハ一年以内ニ改良事業方法ヲ定メ主務大臣ニ認可ノ申請ヲ為スベシ
前項ノ認可アリタルトキハ事業施行者ハ三月以内ニ事業ニ著手スベシ
事業施行者第一項ニ規定スル期間内ニ改良事業方法ノ認可申請ヲ為サズ又ハ第二項ニ規定スル期間内ニ事業ニ著手セザルトキハ主務大臣ハ地区ノ指定ヲ取消スコトヲ得
第五条 事業施行者ハ地区内居住者ヲ一時収容スルニ必要ナル設備ヲ設クベシ
特別ノ事情アルトキハ事業施行者ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ前項ノ設備ヲ設ケザルコトヲ得
第六条 事業施行者ハ地区内ニ於ケル土地ノ区画形質ノ変更、道路下水ノ施設、地上物件ノ除去其ノ他地区改良ノ為必要ナル事業ヲ行フベシ
第七条 事業施行者ハ地区内居住者ノ居住ニ充ツベキ住宅ヲ其ノ地区内ニ建設スベシ但シ特別ノ事情アル場合ニ於テ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ地区外ニ之ヲ建設スルコトヲ得
前項住宅ノ数ハ地区ノ指定アリタルトキ現ニ其ノ地区内ニ居住スル者ノ世帯数ヲ下ルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情アル場合ニ於テ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第八条 改良事業ヲ施行シタル公共団体ハ前条ノ規定ニ依リ建設シタル住宅ノ管理方法ヲ定メ監督官庁ノ認可ヲ受クベシ
第九条 国庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ事業施行者ニ対シ其ノ事業ノ施行ノ為支出スル経費ノ二分ノ一以内ヲ補助ス
第十条 本法ニ依ル改良事業施行ノ為必要アルトキハ事業施行者ハ地区内ノ土地又ハ建物其ノ他ノ工作物ヲ収用又ハ使用スルコトヲ得
第十一条 前条ノ規定ニ依リ収用シタル土地ニシテ改良事業トシテ行フ建物ノ建設及公共ノ用ニ供セザルモノハ第六条ノ事業ノ完了後之ヲ売却スベシ
前項ノ事業ノ完了ハ主務大臣ノ認定ヲ受クベシ
第十二条 前条ノ規定ニ依ル土地ノ売却ハ左ニ掲グル者ニ対シ勅令ノ定ムル所ニ依リ競争入札ニ依リ之ヲ行フベシ
一 改良事業施行ノ為収用セラレタル土地ノ全部又ハ一部ヲ其ノ土地収用ノ際所有シタル者又ハ其ノ相続人
二 改良事業施行ノ為収用セラレタル土地ニ関シ其ノ土地収用ノ際権利ヲ有シタル者(担保権者ヲ除ク)又ハ其ノ相続人
三 改良事業施行ノ為収用セラレタル土地ノ上ニ存シタル建物ヲ其ノ土地収用ノ際所有シタル者
前項ニ掲グル者一人ナルトキハ随意契約ニ依リ売却スルコトヲ得
前二項ノ規定ニ依リ売却スルコトヲ得ザル土地ノ売却ニ付テハ一般ノ競争入札ニ依ルベシ
第十三条 第五条ノ規定ニ依ル一時収容設備ノ為特別ノ必要アルトキハ事業施行者ハ地区附近ノ土地又ハ建物其ノ他ノ工作物ヲ使用スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ使用スル土地又ハ建物其ノ他ノ工作物ハ主務大臣決定シ之ヲ公告スベシ
第十四条 本法ニ依ル改良事業施行ノ為必要アリト認ムルトキハ行政庁ハ地区内ノ建物其ノ他ノ工作物ノ所有者ニ対シ其ノ移転ヲ命ジ又ハ其ノ占有者ニ対シ立退ヲ命ズルコトヲ得
行政執行法第五条及第六条ノ規定並ニ之ニ基キテ発スル命令ハ行政庁ガ前項ノ規定ニ依ル命令ヲ強制スル場合ニ之ヲ準用ス
第十五条 第十条又ハ第十三条第一項ノ規定ニ依ル収用又ハ使用ニ関シテハ本法ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外土地収用法ヲ適用ス
前項ノ規定ニ依ル土地収用法ノ適用ニ付テハ建物其ノ他ノ工作物ハ之ヲ土地ト看做ス
第十六条 第十条又ハ第十三条第一項ノ規定ニ依ル収用又ハ使用ニ付テハ第一条第二項若ハ第二条ノ規定ニ依ル主務大臣ノ地区ノ指定又ハ第十三条第二項ノ規定ニ依ル主務大臣ノ決定ヲ以テ土地収用法第十二条ノ規定ニ依ル事業ノ認定、第三条又ハ第十三条第二項ノ規定ニ依ル公告ヲ以テ土地収用法第十四条ノ規定ニ依ル公告ト看做ス
第十七条 第十四条ノ規定ニ依リ移転又ハ立退ヲ命ゼラレタル者其ノ移転又ハ立退ニ因リ損害ヲ受ケタルトキハ事業施行者ハ其ノ通常受クベキ損害ニ限リ之ヲ補償スベシ
前項ノ規定ニ依ル補償金ハ収用審査会之ヲ決定ス
第十八条 第十四条ノ規定ニ依リ行政庁ノ為シタル処分ニ対シ不服アル者ハ訴願ヲ提起シ違法ニ権利ヲ侵害セラレタリトスルトキハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第十九条 第十七条第二項ノ規定ニ依ル収用審査会ノ決定ニ対シテ不服アル者ノ出訴ニ付テハ土地収用法第八十二条第一項及第二項ノ規定ヲ適用ス
第二十条 公益法人ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ本法ニ依リ改良事業ヲ行フコトヲ得
本法ハ第二条ノ規定ヲ除クノ外前項ノ認可ヲ受ケタル法人ニ之ヲ適用ス但シ第一条及第八条ノ規定ノ適用ニ付テハ同条中公共団体トアルハ前項ノ認可ヲ受ケタル法人トス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム