獣医師法
法令番号: 法律第五十三號
公布年月日: 大正15年4月7日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル獸醫師法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十五年四月六日
內閣總理大臣 若槻禮次郞
農林大臣 早速整爾
法律第五十三號
獸醫師法
第一條 獸醫師タラムトスル者ハ農林大臣ノ免許ヲ受ケ獸醫師名簿ニ登錄ヲ受クヘシ
獸醫師ノ免許ヲ受クルニハ左ノ各號ノ一ニ該當スル資格ヲ有スルコトヲ要ス
一 大學令ニ依ル大學ニ於テ獸醫學ヲ修メ學士ト稱スルコトヲ得ル者、東京帝國大學農學部獸醫學實科ヲ卒業シタル者又ハ官立公立ノ專門學校若ハ文部大臣カ之ト同等以上ト認メ指定シタル學校ニ於テ獸醫學ヲ修メ之ヲ卒業シタル者
二 獸醫師試驗ニ合格シタル者
三 外國ノ獸醫學校ヲ卒業シ又ハ外國ニ於テ獸醫師ノ免許ヲ受ケタル者ニシテ命令ノ規定ニ該當スル者
第一項ノ登錄及前項第二號ノ獸醫師試驗ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二條 農林大臣ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ニ對シテハ獸醫師ノ免許ヲ爲スコトヲ得ス
一 六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者
二 未成年者、禁治產者又ハ準禁治產者
三 精神病者、聾者、啞者又ハ盲者
第三條 農林大臣ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ニ對シテハ獸醫師ノ免許ヲ爲ササルコトヲ得
一 六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者
二 獸醫事ニ關シ罰金ノ刑ニ處セラレ又ハ不正ノ行爲アリタル者
第四條 獸醫師ニ非サレハ家畜ノ疾病ニ關スル診察又ハ治療ヲ業務ト爲スコトヲ得ス
前項ノ家畜ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條 獸醫師ハ自ラ診察セスシテ診斷書ヲ交付シ又ハ檢案セスシテ檢案書若ハ死產證書ヲ交付スルコトヲ得ス但シ診療中斃死シタル場合ニ交付スル斃死診斷書ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第六條 開業ノ獸醫師ハ診察又ハ治療ノ需アル場合ニ於テ正當ノ事由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス
獸醫師ハ法令ノ規定ニ依リ必要アル者ニ正當ノ事由ナクシテ診斷書、檢案書又ハ死產證書ノ交付ヲ拒ムコトヲ得ス
第七條 獸醫師ハ診療簿ヲ備ヘ三年間之ヲ保存スヘシ
第八條 獸醫師ハ何等ノ方法ヲ以テスルヲ問ハス業務上學位、稱號及專門科名ヲ除クノ外其ノ技能、療法又ハ經歷ニ關スル廣告ヲ爲スコトヲ得ス
第九條 獸醫師ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ道府縣獸醫師會ヲ設立スヘシ
道府縣獸醫師會ハ日本獸醫師會ヲ設立スルコトヲ得
道府縣獸醫師會ハ日本獸醫師會ノ會員トス
道府縣獸醫師會及日本獸醫師會ハ法人トス勅令ノ定ムル所ニ依リ獸醫事衞生ノ改良發達ヲ圖ルヲ以テ目的トス
道府縣獸醫師會ハ道府縣ヲ、日本獸醫師會ハ內地ヲ區域トス
第十條 道府縣獸醫師會及日本獸醫師會ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ會員ヨリ徵收スヘキ收入ニ關シ民事訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第十一條 本法ニ規定スルモノノ外道府縣獸醫師會及日本獸醫師會ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二條 獸醫師第二條各號ノ一ニ該當スルトキハ農林大臣ハ其ノ免許ヲ取消スヘシ
獸醫師第三條各號ノ一ニ該當スルトキハ農林大臣ハ其ノ免許ヲ取消シ又ハ期間ヲ定メテ其ノ業務ヲ停止スルコトヲ得
前二項ノ取消處分ヲ受ケタル者ト雖第二條第二號又ハ第三號ノ原因止ミタルトキ又ハ改悛ノ情顯著ナルトキハ再免許ヲ爲スコトヲ得
農林大臣第二項ノ處分ヲ行フ場合及改悛ノ情顯著ナル者ニ對シ前項ノ再免許ヲ爲ス場合ニ於テハ中央衞生會ノ審議ヲ經ルコトヲ要ス
第十三條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
一 第四條ノ規定ニ違反シタル者
二 業務停止中ノ獸醫師ニシテ其ノ業務ヲ爲シタル者
三 第五條又ハ第八條ノ規定ニ違反シタル者
第十四條 第六條又ハ第七條ノ規定ニ違反シタル者ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
獸醫免許規則ハ之ヲ廢止ス
本法施行前獸醫免狀ヲ受ケタル者ハ本法ニ依リ獸醫師ノ免許ヲ受ケ獸醫師名簿ニ登錄ヲ受ケタル者ト看做ス
前項ノ規定ニ該當スル者ニ付テハ未成年者タルノ故ヲ以テ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得ス
本法施行前交付シタル獸醫假免狀ハ本法施行後ト雖仍其ノ效力ヲ有ス
前項ノ假免狀ノ有效期間ハ申請ニ依リ之ヲ更新スルコトヲ得
本法ノ規定ハ獸醫假免狀ヲ受ケタル者ニ付之ヲ準用ス
本法施行ノ際從前ノ規定ニ依リ獸醫免狀ヲ受クル資格ヲ有スル者及本法施行後十二年內ニ從前ノ規定ニ依ル獸醫免狀ヲ受クル資格ヲ得タル者ハ第一條第二項ノ規定ニ拘ラス獸醫師ノ免許ヲ受クルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ未成年者タルコトヲ妨ケス
本法ノ適用ニ付テハ明治十三年第三十六號布告刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレタル者ハ六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ、同法ノ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ハ六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ト看做ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル獣医師法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十五年四月六日
内閣総理大臣 若槻礼次郎
農林大臣 早速整爾
法律第五十三号
獣医師法
第一条 獣医師タラムトスル者ハ農林大臣ノ免許ヲ受ケ獣医師名簿ニ登録ヲ受クヘシ
獣医師ノ免許ヲ受クルニハ左ノ各号ノ一ニ該当スル資格ヲ有スルコトヲ要ス
一 大学令ニ依ル大学ニ於テ獣医学ヲ修メ学士ト称スルコトヲ得ル者、東京帝国大学農学部獣医学実科ヲ卒業シタル者又ハ官立公立ノ専門学校若ハ文部大臣カ之ト同等以上ト認メ指定シタル学校ニ於テ獣医学ヲ修メ之ヲ卒業シタル者
二 獣医師試験ニ合格シタル者
三 外国ノ獣医学校ヲ卒業シ又ハ外国ニ於テ獣医師ノ免許ヲ受ケタル者ニシテ命令ノ規定ニ該当スル者
第一項ノ登録及前項第二号ノ獣医師試験ニ関スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二条 農林大臣ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ニ対シテハ獣医師ノ免許ヲ為スコトヲ得ス
一 六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者
二 未成年者、禁治産者又ハ準禁治産者
三 精神病者、聾者、唖者又ハ盲者
第三条 農林大臣ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ニ対シテハ獣医師ノ免許ヲ為ササルコトヲ得
一 六年未満ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ処セラレタル者
二 獣医事ニ関シ罰金ノ刑ニ処セラレ又ハ不正ノ行為アリタル者
第四条 獣医師ニ非サレハ家畜ノ疾病ニ関スル診察又ハ治療ヲ業務ト為スコトヲ得ス
前項ノ家畜ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五条 獣医師ハ自ラ診察セスシテ診断書ヲ交付シ又ハ検案セスシテ検案書若ハ死産証書ヲ交付スルコトヲ得ス但シ診療中斃死シタル場合ニ交付スル斃死診断書ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第六条 開業ノ獣医師ハ診察又ハ治療ノ需アル場合ニ於テ正当ノ事由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス
獣医師ハ法令ノ規定ニ依リ必要アル者ニ正当ノ事由ナクシテ診断書、検案書又ハ死産証書ノ交付ヲ拒ムコトヲ得ス
第七条 獣医師ハ診療簿ヲ備ヘ三年間之ヲ保存スヘシ
第八条 獣医師ハ何等ノ方法ヲ以テスルヲ問ハス業務上学位、称号及専門科名ヲ除クノ外其ノ技能、療法又ハ経歴ニ関スル広告ヲ為スコトヲ得ス
第九条 獣医師ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ道府県獣医師会ヲ設立スヘシ
道府県獣医師会ハ日本獣医師会ヲ設立スルコトヲ得
道府県獣医師会ハ日本獣医師会ノ会員トス
道府県獣医師会及日本獣医師会ハ法人トス勅令ノ定ムル所ニ依リ獣医事衛生ノ改良発達ヲ図ルヲ以テ目的トス
道府県獣医師会ハ道府県ヲ、日本獣医師会ハ内地ヲ区域トス
第十条 道府県獣医師会及日本獣医師会ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ会員ヨリ徴収スヘキ収入ニ関シ民事訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第十一条 本法ニ規定スルモノノ外道府県獣医師会及日本獣医師会ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二条 獣医師第二条各号ノ一ニ該当スルトキハ農林大臣ハ其ノ免許ヲ取消スヘシ
獣医師第三条各号ノ一ニ該当スルトキハ農林大臣ハ其ノ免許ヲ取消シ又ハ期間ヲ定メテ其ノ業務ヲ停止スルコトヲ得
前二項ノ取消処分ヲ受ケタル者ト雖第二条第二号又ハ第三号ノ原因止ミタルトキ又ハ改悛ノ情顕著ナルトキハ再免許ヲ為スコトヲ得
農林大臣第二項ノ処分ヲ行フ場合及改悛ノ情顕著ナル者ニ対シ前項ノ再免許ヲ為ス場合ニ於テハ中央衛生会ノ審議ヲ経ルコトヲ要ス
第十三条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ三百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
一 第四条ノ規定ニ違反シタル者
二 業務停止中ノ獣医師ニシテ其ノ業務ヲ為シタル者
三 第五条又ハ第八条ノ規定ニ違反シタル者
第十四条 第六条又ハ第七条ノ規定ニ違反シタル者ハ百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
獣医免許規則ハ之ヲ廃止ス
本法施行前獣医免状ヲ受ケタル者ハ本法ニ依リ獣医師ノ免許ヲ受ケ獣医師名簿ニ登録ヲ受ケタル者ト看做ス
前項ノ規定ニ該当スル者ニ付テハ未成年者タルノ故ヲ以テ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得ス
本法施行前交付シタル獣医仮免状ハ本法施行後ト雖仍其ノ効力ヲ有ス
前項ノ仮免状ノ有効期間ハ申請ニ依リ之ヲ更新スルコトヲ得
本法ノ規定ハ獣医仮免状ヲ受ケタル者ニ付之ヲ準用ス
本法施行ノ際従前ノ規定ニ依リ獣医免状ヲ受クル資格ヲ有スル者及本法施行後十二年内ニ従前ノ規定ニ依ル獣医免状ヲ受クル資格ヲ得タル者ハ第一条第二項ノ規定ニ拘ラス獣医師ノ免許ヲ受クルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ未成年者タルコトヲ妨ケス
本法ノ適用ニ付テハ明治十三年第三十六号布告刑法ノ重罪ノ刑ニ処セラレタル者ハ六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ、同法ノ禁錮ノ刑ニ処セラレタル者ハ六年未満ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ処セラレタル者ト看做ス