関東州市制
法令番号: 勅令第百三十號
公布年月日: 大正13年5月24日
法令の形式: 勅令
朕關東州市制ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十三年五月二十三日
內閣總理大臣 子爵 淸浦奎吾
勅令第百三十號
關東州市制
第一條 市ハ法人トス官ノ監督ヲ承ケ法令ノ範圍內ニ於テ其ノ公共事務及法律勅令ニ依リ市ニ屬スル事務ヲ處理ス
第二條 市ノ廢置、名稱及區域ニ關シテハ關東長官之ヲ定ム但シ市ノ廢止又ハ市ノ名稱若ハ境界ノ變更ノ場合ニ於テハ其ノ市ノ意見ヲ徵スルコトヲ要ス
第三條 市內ニ住所ヲ有スル者ハ其ノ市住民トス
市住民ハ本令ニ依リ市ノ財產及營造物ヲ共用スル權利ヲ有シ市ノ負擔ヲ分任スル義務ヲ負フ
第四條 市住民ニシテ左ノ要件ヲ具備スルモノハ市ノ選擧ニ參與シ市ノ名譽職ニ選擧セラルル權利ヲ有シ市ノ名譽職ヲ擔任スル義務ヲ負フ但シ貧困ノ爲公費ノ救助ヲ受ケタル後二年ヲ經サル者、禁治產者、準禁治產者及六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者ハ此ノ限ニ在ラス
一 帝國臣民タル男子ニシテ年齡二十五年以上ノ者
二 獨立ノ生計ヲ營ム者
三 二年以來其ノ市住民タル者
四 二年以來其ノ市ノ直接市稅ヲ納ムル者
市ハ前項二年ノ制限ヲ特免スルコトヲ得
家督相續ニ依リ財產ヲ取得シタル者ニ付テハ其ノ財產ニ付被相續人ノ爲シタル納稅ヲ以テ其ノ者ノ爲シタル納稅ト看做ス
第五條 前條第一項ニ規定スル市住民其ノ要件ノ一ヲ闕キ又ハ同項但書ノ規定ニ該當スルニ至リタルトキハ同項ノ權利義務ヲ失フ
前條第一項ニ規定スル市住民市稅滯納處分ヲ受ケタルトキハ其ノ處分中同項ノ權利義務ヲ停止ス家資分散又ハ破產ノ宣吿ヲ受ケタルトキハ其ノ確定シタル時ヨリ復權ノ決定確定スルニ至ル迄、六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタルトキハ其ノ時ヨリ其ノ執行ヲ終リ若ハ其ノ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄亦同シ
陸海軍ノ現役ニ服スル者ハ市ノ公務ニ參與スルコトヲ得ス其ノ他ノ兵役ニ在ル者ニシテ戰時又ハ事變ニ際シ召集セラレタルトキ亦同シ
第六條 市ハ市住民ノ權利義務又ハ市ノ事務ニ關シ市規則ヲ設クルコトヲ得
市規則ハ一定ノ公告式ニ依リ之ヲ告示スヘシ
第七條 市會ハ關東長官ノ定ムル所ニ依リ選擧シタル市會議員及選任シタル市會議員ヲ以テ之ヲ組織ス
選任ニ依ル市會議員ノ定數ハ選擧ニ依ル市會議員ノ定數ノ四分ノ一ヲ超ユルコトヲ得ス
市會議員ノ定數ハ通シテ十六人以上四十四人以下ノ範圍內ニ於テ選擧ニ依ル者及選任ニ依ル者ニ付關東長官之ヲ定ム
市會議員ハ名譽職トス
市會議員ノ任期ハ四年トシ總選擧ノ日ヨリ之ヲ起算ス
第八條 第四條第一項ニ規定スル市住民ハ市會議員ノ選擧權ヲ有ス但シ第五條ノ規定ニ該當スル者ハ此ノ限ニ在ラス
第九條 選擧權ヲ有スル者ハ被選擧權ヲ有ス但シ左ノ各號ニ該當スル者及之ニ該當セサルニ至リタル後一月ヲ經過セサル者ハ此ノ限ニ在ラス
一 所屬民政署及關東廳ノ官吏及有給職員
二 其ノ市ノ有給吏員
三 檢察官及警察官吏
四 神職、僧侶其ノ他諸宗敎師
五 小學校及公學堂職員
市長又ハ助役ト父子兄弟タル緣故アル者ハ市會議員ノ職ニ在ルコトヲ得ス
市ニ對シ請負ヲ爲ス者及其ノ支配人又ハ主トシテ同一ノ行爲ヲ爲ス法人ノ無限責任社員、役員及支配人ハ被選擧權ヲ有セス
前項ノ役員トハ取締役、監查役及之ニ準スヘキ者竝淸算人ヲ謂フ
第十條 市會ハ市ニ關スル事項及法律勅令ニ依リ其ノ權限ニ屬スル事項ヲ議決ス
市會ノ議決スヘキ事項ノ槪目左ノ如シ
一 市規則ヲ設ケ又ハ改廢スルコト
二 歲入歲出豫算ヲ定ムルコト
三 決算報告ヲ認定スルコト
四 法令ニ定ムルモノヲ除クノ外使用料、手數料、市稅又ハ夫役現品ノ賦課徵收ニ關スルコト
五 不動產ノ取得、管理及處分ニ關スルコト
六 基本財產及積立金等ノ設置、管理及處分ニ關スルコト
七 歲入歲出豫算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ニ義務ノ負擔ヲ爲シ及權利ノ抛棄ヲ爲スコト
八 財產及營造物ノ管理方法ヲ定ムルコト但シ法令ニ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
九 吏員ノ身元保證ニ關スルコト
十 市ニ係ル訴訟及和解ニ關スルコト
第十一條 市會ハ其ノ權限ニ屬スル事項ノ一部ヲ市參事會ニ委任スルコトヲ得
市會ハ市ノ事務ニ關スル書類及計算書ヲ檢閱シ市長ノ報告ヲ請求シテ事務ノ管理、議決ノ執行及出納ヲ檢查スルコトヲ得
市會ハ市ノ公益ニ關スル事項ニ付意見書ヲ市長又ハ監督官廳ニ提出スルコトヲ得
市會ハ行政廳ノ諮問アルトキハ意見ヲ答申スヘシ
市會ノ意見ヲ徵シテ處分ヲ爲スヘキ場合ニ於テ市會成立セス、招集ニ應セス若ハ意見ヲ提出セス又ハ市會ヲ招集スルコト能ハサルトキハ當該行政廳ハ其ノ意見ヲ俟タスシテ直ニ處分ヲ爲スコトヲ得
第十二條 市會ハ議員中ヨリ議長及副議長一人ヲ選擧スヘシ
議長及副議長ノ任期ハ議員ノ任期ニ依ル
第十三條 市會ハ會議規則及傍聽人取締規則ヲ設クヘシ
會議規則ニハ本令及會議規則ニ違反シタル議員ニ對シ市會ノ議決ニ依リ三日以內出席ヲ停止シ又ハ五圓以下ノ過怠金ヲ課スル規定ヲ設クルコトヲ得
第十四條 市ニ市參事會ヲ置キ左ノ職員ヲ以テ之ヲ組織ス
一 市長
二 助役
三 名譽職參事會員
名譽職參事會員ハ六人トシ市會ニ於テ市會議員中ヨリ之ヲ選擧スヘシ
名譽職參事會員ノ任期ハ市會議員ノ任期ニ依ル但シ市會議員ノ任期滿了ノ場合ニ於テハ後任名譽職參事會員選擧ノ日迄在任ス
市參事會ハ市長ヲ以テ議長トシ市長故障アルトキハ市長代理者之ヲ代理ス
第十五條 市參事會ノ職務權限左ノ如シ
一 市會ノ權限ニ屬スル事項ニシテ其ノ委任ヲ受ケタルモノヲ議決スルコト
二 市長ヨリ市會ニ提出スル議案ニ付市長ニ對シ意見ヲ述フルコト
三 其ノ他法令ニ依リ市參事會ノ權限ニ屬スル事項
第十一條第三項乃至第五項ノ規定ハ市參事會ニ之ヲ準用ス
第十六條 市ニ市長、助役一人及收入役一人ヲ置ク
市長及助役ハ名譽職トス但シ市ハ市規則ヲ以テ之ヲ有給ト爲スコトヲ得
收入役ハ有給吏員トス
市長、助役及收入役ノ任期ハ四年トス
第十七條市長ハ市會ノ選擧推薦シタル市長候補者三人中ニ就キ關東長官之ヲ選任ス
助役及收入役ハ市長ノ推薦ニ依リ市會之ヲ定メ市長職ニ在ラサルトキハ市會ニ於テ之ヲ選擧シ關東長官ノ認可ヲ受クヘシ
第十八條 市長ハ市ヲ統轄シ市ヲ代表ス
助役ハ市長ノ事務ヲ補助シ市長故障アルトキ之ヲ代理ス
收入役ハ市ノ出納其ノ他ノ會計事務ヲ掌ル
第十九條 前數條ニ定ムル者ヲ除クノ外市ニ必要ナル吏員ヲ置クコトヲ得
第二十條 市長ハ吏員ヲ指揮監督シ之ニ對シ懲戒ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒處分ハ譴責及二十五圓以下ノ過怠金トス
第二十一條 市會又ハ市參事會ノ議決又ハ選擧其ノ權限ヲ越エ又ハ法令若ハ會議規則ニ違反スト認ムルトキハ市長ハ其ノ意見ニ依リ又ハ監督官廳ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ又ハ再選擧ヲ行ハシムヘシ其ノ執行ヲ要スルモノニ在リテハ之ヲ停止スヘシ
市會又ハ市參事會ノ議決公益ヲ害シ又ハ市ノ收支ニ關シ不適當ナリト認ムルトキ亦前項ニ同シ
監督官廳ハ前二項ノ議決又ハ第一項ノ選擧ヲ取消スコトヲ得
第二十二條 名譽職市長、名譽職助役、市會議員其ノ他ノ名譽職員ハ職務ノ爲要スル費用ノ辨償ヲ受クルコトヲ得
名譽職市長及名譽職助役ニハ費用辨償ノ外勤務ニ相當スル報酬ヲ給スルコトヲ得
有給吏員ニハ市規則ノ定ムル所ニ依リ退職給與金及死亡給與金ヲ給スルコトヲ得
第二十三條 收益ノ爲ニスル市ノ財產ハ基本財產トシテ之ヲ維持スヘシ
市ハ特定ノ目的ノ爲特別ノ基本財產ヲ設ケ又ハ積立金ヲ爲スコトヲ得
第二十四條 市ハ營造物ノ使用ニ付使用料ヲ徵收スルコトヲ得
市ハ特ニ一個人ノ爲ニスル事務ニ付手數料ヲ徵收スルコトヲ得
第二十五條 市ハ其ノ公益上必要アルトキハ寄附又ハ補助ヲ爲スコトヲ得
第二十六條 市ハ其ノ必要ナル費用及法律勅令ニ依リ市ノ負擔ニ屬スル費用ヲ支辨スル義務ヲ負フ
市ハ其ノ財產ヨリ生スル收入、使用料、手數料、過怠金其ノ他法令ニ依リ市ニ屬スル收入ヲ以テ前項ノ支出ニ充テ仍不足アルトキハ市稅及夫役現品ヲ賦課徵收スルコトヲ得
第二十七條 市稅、使用料及手數料ニ關スル事項ニ付テハ法令ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外市規則ヲ以テ之ヲ規定スヘシ
第二十八條 市稅其ノ他市ニ屬スル徵收金ハ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ徵收スルコトヲ得
前項ノ徵收金ハ關東廳ノ徵收金ニ次テ先取特權ヲ有シ其ノ追徵、還付及時效ニ付テハ國稅ノ例ニ依ル
第二十九條 市ハ永久ノ利益ト爲ルヘキ事業、舊債償還又ハ天災事變ノ爲必要アル場合ニ限リ市債ヲ起スコトヲ得
市長ハ豫算內ノ支出ヲ爲ス爲市參事會ノ議決ヲ經テ其ノ會計年度內ノ收入ヲ以テ償還スヘキ一時ノ借入金ヲ爲スコトヲ得
第三十條 市ハ每會計年度歲入歲出豫算ヲ調製スヘシ
市ノ會計年度ハ政府ノ會計年度ニ依ル
第三十一條 市ノ支拂金ノ時效ニ付テハ政府ノ支拂金ノ例ニ依ル
第三十二條 市ハ第一次ニ於テ民政署長、第二次ニ於テ關東長官之ヲ監督ス
監督官廳ハ市ノ監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
上級監督官廳ハ下級監督官廳ノ市ノ監督ニ關シテ發シタル命令又ハ爲シタル處分ヲ停止シ又ハ取消スコトヲ得
第三十三條 關東長官ハ市會ノ解散ヲ命スルコトヲ得
市會解散ノ場合ニ於テハ三月以內ニ議員ヲ選擧及選任スヘシ
第三十四條 市ニ於テ法律勅令ニ依リ負擔シ又ハ當該官廳ノ職權ニ依リ命スル費用ヲ豫算ニ載セサルトキ又ハ豫算中不適當ト認ムル費用アルトキハ民政署長ハ理由ヲ示シテ其ノ費用ヲ豫算ニ加ヘ又ハ削減スルコトヲ得
市長其ノ他ノ吏員其ノ執行スヘキ事項ヲ執行セサルトキハ民政署長又ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏之ヲ執行スルコトヲ得但シ其ノ費用ハ市ノ負擔トス
第三十五條 市長、助役又ハ收入役ニ故障アルトキハ監督官廳ハ吏員中ヨリ臨時代理者ヲ選任シ又ハ官吏ヲ派遣シ其ノ職務ヲ管掌セシムルコトヲ得但シ官吏ヲ派遣シタル場合ニ於テハ其ノ旅費ハ市費ヲ以テ之ヲ辨償セシムヘシ
第三十六條 民政署長ハ市長、助役、收入役其ノ他ノ吏員ニ對シ懲戒ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒處分ハ譴責、五十圓以下ノ過怠金及解職トス但シ市長ニ對スル懲戒及其ノ他ノ吏員ニ對スル解職ニ付テハ關東長官ノ認可ヲ受クヘシ
民政署長ハ吏員ノ解職ヲ行ハムトスル前其ノ吏員ノ停職ヲ命スルコトヲ得其ノ停職期間手當又ハ給料ノ全部又ハ一部ヲ給セサルコトヲ得
懲戒ニ依リ解職セラレタル者ハ二年間市ノ公職ニ選擧セラレ又ハ任命セラルルコトヲ得ス
第三十七條 市ハ左ノ各號ノ事項ニ付テハ關東長官ノ認可ヲ受クヘシ
一 市規則ヲ設ケ又ハ改廢スルコト
二 市稅ノ稅目及課率ヲ定メ又ハ改廢スルコト
三 市債ヲ起シ竝起債ノ方法、利率及償還ノ方法ヲ定メ又ハ變更スルコト
第三十八條 市ハ左ノ各號ノ事項ニ付テハ民政署長ノ認可ヲ受クヘシ
一 不動產ノ取得、管理及處分ニ關スルコト
二 基本財產及積立金等ノ設置、管理及處分ニ關スルコト
三 使用料若ハ手數料ヲ徵シ又ハ其ノ額若ハ率ヲ變更スルコト
四 寄附又ハ補助ヲ爲スコト
五 第二十九條第二項ノ借入金ヲ爲シ竝借入ノ方法及利率ヲ定メ又ハ變更スルコト
第三十九條 監督官廳ノ認可ヲ要スル事項ニ付テハ監督官廳ハ認可申請ノ趣旨ニ反セスト認ムル範圍內ニ於テ更正シテ認可ヲ與フルコトヲ得
第四十條 本令ニ定ムルモノヲ除クノ外必要ナル事項ハ關東長官之ヲ定ム
附 則
本令施行ノ期日ハ關東長官之ヲ定ム
本令施行ノ際必要ナル事項ハ關東長官之ヲ定ム
本令ノ適用ニ付テハ明治十三年第三十六號布告刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレタル者ハ六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者ト看做ス
朕関東州市制ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十三年五月二十三日
内閣総理大臣 子爵 清浦奎吾
勅令第百三十号
関東州市制
第一条 市ハ法人トス官ノ監督ヲ承ケ法令ノ範囲内ニ於テ其ノ公共事務及法律勅令ニ依リ市ニ属スル事務ヲ処理ス
第二条 市ノ廃置、名称及区域ニ関シテハ関東長官之ヲ定ム但シ市ノ廃止又ハ市ノ名称若ハ境界ノ変更ノ場合ニ於テハ其ノ市ノ意見ヲ徴スルコトヲ要ス
第三条 市内ニ住所ヲ有スル者ハ其ノ市住民トス
市住民ハ本令ニ依リ市ノ財産及営造物ヲ共用スル権利ヲ有シ市ノ負担ヲ分任スル義務ヲ負フ
第四条 市住民ニシテ左ノ要件ヲ具備スルモノハ市ノ選挙ニ参与シ市ノ名誉職ニ選挙セラルル権利ヲ有シ市ノ名誉職ヲ担任スル義務ヲ負フ但シ貧困ノ為公費ノ救助ヲ受ケタル後二年ヲ経サル者、禁治産者、準禁治産者及六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者ハ此ノ限ニ在ラス
一 帝国臣民タル男子ニシテ年齢二十五年以上ノ者
二 独立ノ生計ヲ営ム者
三 二年以来其ノ市住民タル者
四 二年以来其ノ市ノ直接市税ヲ納ムル者
市ハ前項二年ノ制限ヲ特免スルコトヲ得
家督相続ニ依リ財産ヲ取得シタル者ニ付テハ其ノ財産ニ付被相続人ノ為シタル納税ヲ以テ其ノ者ノ為シタル納税ト看做ス
第五条 前条第一項ニ規定スル市住民其ノ要件ノ一ヲ闕キ又ハ同項但書ノ規定ニ該当スルニ至リタルトキハ同項ノ権利義務ヲ失フ
前条第一項ニ規定スル市住民市税滞納処分ヲ受ケタルトキハ其ノ処分中同項ノ権利義務ヲ停止ス家資分散又ハ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ其ノ確定シタル時ヨリ復権ノ決定確定スルニ至ル迄、六年未満ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ処セラレタルトキハ其ノ時ヨリ其ノ執行ヲ終リ若ハ其ノ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄亦同シ
陸海軍ノ現役ニ服スル者ハ市ノ公務ニ参与スルコトヲ得ス其ノ他ノ兵役ニ在ル者ニシテ戦時又ハ事変ニ際シ召集セラレタルトキ亦同シ
第六条 市ハ市住民ノ権利義務又ハ市ノ事務ニ関シ市規則ヲ設クルコトヲ得
市規則ハ一定ノ公告式ニ依リ之ヲ告示スヘシ
第七条 市会ハ関東長官ノ定ムル所ニ依リ選挙シタル市会議員及選任シタル市会議員ヲ以テ之ヲ組織ス
選任ニ依ル市会議員ノ定数ハ選挙ニ依ル市会議員ノ定数ノ四分ノ一ヲ超ユルコトヲ得ス
市会議員ノ定数ハ通シテ十六人以上四十四人以下ノ範囲内ニ於テ選挙ニ依ル者及選任ニ依ル者ニ付関東長官之ヲ定ム
市会議員ハ名誉職トス
市会議員ノ任期ハ四年トシ総選挙ノ日ヨリ之ヲ起算ス
第八条 第四条第一項ニ規定スル市住民ハ市会議員ノ選挙権ヲ有ス但シ第五条ノ規定ニ該当スル者ハ此ノ限ニ在ラス
第九条 選挙権ヲ有スル者ハ被選挙権ヲ有ス但シ左ノ各号ニ該当スル者及之ニ該当セサルニ至リタル後一月ヲ経過セサル者ハ此ノ限ニ在ラス
一 所属民政署及関東庁ノ官吏及有給職員
二 其ノ市ノ有給吏員
三 検察官及警察官吏
四 神職、僧侶其ノ他諸宗教師
五 小学校及公学堂職員
市長又ハ助役ト父子兄弟タル縁故アル者ハ市会議員ノ職ニ在ルコトヲ得ス
市ニ対シ請負ヲ為ス者及其ノ支配人又ハ主トシテ同一ノ行為ヲ為ス法人ノ無限責任社員、役員及支配人ハ被選挙権ヲ有セス
前項ノ役員トハ取締役、監査役及之ニ準スヘキ者並清算人ヲ謂フ
第十条 市会ハ市ニ関スル事項及法律勅令ニ依リ其ノ権限ニ属スル事項ヲ議決ス
市会ノ議決スヘキ事項ノ概目左ノ如シ
一 市規則ヲ設ケ又ハ改廃スルコト
二 歳入歳出予算ヲ定ムルコト
三 決算報告ヲ認定スルコト
四 法令ニ定ムルモノヲ除クノ外使用料、手数料、市税又ハ夫役現品ノ賦課徴収ニ関スルコト
五 不動産ノ取得、管理及処分ニ関スルコト
六 基本財産及積立金等ノ設置、管理及処分ニ関スルコト
七 歳入歳出予算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ニ義務ノ負担ヲ為シ及権利ノ抛棄ヲ為スコト
八 財産及営造物ノ管理方法ヲ定ムルコト但シ法令ニ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
九 吏員ノ身元保証ニ関スルコト
十 市ニ係ル訴訟及和解ニ関スルコト
第十一条 市会ハ其ノ権限ニ属スル事項ノ一部ヲ市参事会ニ委任スルコトヲ得
市会ハ市ノ事務ニ関スル書類及計算書ヲ検閲シ市長ノ報告ヲ請求シテ事務ノ管理、議決ノ執行及出納ヲ検査スルコトヲ得
市会ハ市ノ公益ニ関スル事項ニ付意見書ヲ市長又ハ監督官庁ニ提出スルコトヲ得
市会ハ行政庁ノ諮問アルトキハ意見ヲ答申スヘシ
市会ノ意見ヲ徴シテ処分ヲ為スヘキ場合ニ於テ市会成立セス、招集ニ応セス若ハ意見ヲ提出セス又ハ市会ヲ招集スルコト能ハサルトキハ当該行政庁ハ其ノ意見ヲ俟タスシテ直ニ処分ヲ為スコトヲ得
第十二条 市会ハ議員中ヨリ議長及副議長一人ヲ選挙スヘシ
議長及副議長ノ任期ハ議員ノ任期ニ依ル
第十三条 市会ハ会議規則及傍聴人取締規則ヲ設クヘシ
会議規則ニハ本令及会議規則ニ違反シタル議員ニ対シ市会ノ議決ニ依リ三日以内出席ヲ停止シ又ハ五円以下ノ過怠金ヲ課スル規定ヲ設クルコトヲ得
第十四条 市ニ市参事会ヲ置キ左ノ職員ヲ以テ之ヲ組織ス
一 市長
二 助役
三 名誉職参事会員
名誉職参事会員ハ六人トシ市会ニ於テ市会議員中ヨリ之ヲ選挙スヘシ
名誉職参事会員ノ任期ハ市会議員ノ任期ニ依ル但シ市会議員ノ任期満了ノ場合ニ於テハ後任名誉職参事会員選挙ノ日迄在任ス
市参事会ハ市長ヲ以テ議長トシ市長故障アルトキハ市長代理者之ヲ代理ス
第十五条 市参事会ノ職務権限左ノ如シ
一 市会ノ権限ニ属スル事項ニシテ其ノ委任ヲ受ケタルモノヲ議決スルコト
二 市長ヨリ市会ニ提出スル議案ニ付市長ニ対シ意見ヲ述フルコト
三 其ノ他法令ニ依リ市参事会ノ権限ニ属スル事項
第十一条第三項乃至第五項ノ規定ハ市参事会ニ之ヲ準用ス
第十六条 市ニ市長、助役一人及収入役一人ヲ置ク
市長及助役ハ名誉職トス但シ市ハ市規則ヲ以テ之ヲ有給ト為スコトヲ得
収入役ハ有給吏員トス
市長、助役及収入役ノ任期ハ四年トス
第十七条市長ハ市会ノ選挙推薦シタル市長候補者三人中ニ就キ関東長官之ヲ選任ス
助役及収入役ハ市長ノ推薦ニ依リ市会之ヲ定メ市長職ニ在ラサルトキハ市会ニ於テ之ヲ選挙シ関東長官ノ認可ヲ受クヘシ
第十八条 市長ハ市ヲ統轄シ市ヲ代表ス
助役ハ市長ノ事務ヲ補助シ市長故障アルトキ之ヲ代理ス
収入役ハ市ノ出納其ノ他ノ会計事務ヲ掌ル
第十九条 前数条ニ定ムル者ヲ除クノ外市ニ必要ナル吏員ヲ置クコトヲ得
第二十条 市長ハ吏員ヲ指揮監督シ之ニ対シ懲戒ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒処分ハ譴責及二十五円以下ノ過怠金トス
第二十一条 市会又ハ市参事会ノ議決又ハ選挙其ノ権限ヲ越エ又ハ法令若ハ会議規則ニ違反スト認ムルトキハ市長ハ其ノ意見ニ依リ又ハ監督官庁ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ又ハ再選挙ヲ行ハシムヘシ其ノ執行ヲ要スルモノニ在リテハ之ヲ停止スヘシ
市会又ハ市参事会ノ議決公益ヲ害シ又ハ市ノ収支ニ関シ不適当ナリト認ムルトキ亦前項ニ同シ
監督官庁ハ前二項ノ議決又ハ第一項ノ選挙ヲ取消スコトヲ得
第二十二条 名誉職市長、名誉職助役、市会議員其ノ他ノ名誉職員ハ職務ノ為要スル費用ノ弁償ヲ受クルコトヲ得
名誉職市長及名誉職助役ニハ費用弁償ノ外勤務ニ相当スル報酬ヲ給スルコトヲ得
有給吏員ニハ市規則ノ定ムル所ニ依リ退職給与金及死亡給与金ヲ給スルコトヲ得
第二十三条 収益ノ為ニスル市ノ財産ハ基本財産トシテ之ヲ維持スヘシ
市ハ特定ノ目的ノ為特別ノ基本財産ヲ設ケ又ハ積立金ヲ為スコトヲ得
第二十四条 市ハ営造物ノ使用ニ付使用料ヲ徴収スルコトヲ得
市ハ特ニ一個人ノ為ニスル事務ニ付手数料ヲ徴収スルコトヲ得
第二十五条 市ハ其ノ公益上必要アルトキハ寄附又ハ補助ヲ為スコトヲ得
第二十六条 市ハ其ノ必要ナル費用及法律勅令ニ依リ市ノ負担ニ属スル費用ヲ支弁スル義務ヲ負フ
市ハ其ノ財産ヨリ生スル収入、使用料、手数料、過怠金其ノ他法令ニ依リ市ニ属スル収入ヲ以テ前項ノ支出ニ充テ仍不足アルトキハ市税及夫役現品ヲ賦課徴収スルコトヲ得
第二十七条 市税、使用料及手数料ニ関スル事項ニ付テハ法令ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外市規則ヲ以テ之ヲ規定スヘシ
第二十八条 市税其ノ他市ニ属スル徴収金ハ国税滞納処分ノ例ニ依リ之ヲ徴収スルコトヲ得
前項ノ徴収金ハ関東庁ノ徴収金ニ次テ先取特権ヲ有シ其ノ追徴、還付及時効ニ付テハ国税ノ例ニ依ル
第二十九条 市ハ永久ノ利益ト為ルヘキ事業、旧債償還又ハ天災事変ノ為必要アル場合ニ限リ市債ヲ起スコトヲ得
市長ハ予算内ノ支出ヲ為ス為市参事会ノ議決ヲ経テ其ノ会計年度内ノ収入ヲ以テ償還スヘキ一時ノ借入金ヲ為スコトヲ得
第三十条 市ハ毎会計年度歳入歳出予算ヲ調製スヘシ
市ノ会計年度ハ政府ノ会計年度ニ依ル
第三十一条 市ノ支払金ノ時効ニ付テハ政府ノ支払金ノ例ニ依ル
第三十二条 市ハ第一次ニ於テ民政署長、第二次ニ於テ関東長官之ヲ監督ス
監督官庁ハ市ノ監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
上級監督官庁ハ下級監督官庁ノ市ノ監督ニ関シテ発シタル命令又ハ為シタル処分ヲ停止シ又ハ取消スコトヲ得
第三十三条 関東長官ハ市会ノ解散ヲ命スルコトヲ得
市会解散ノ場合ニ於テハ三月以内ニ議員ヲ選挙及選任スヘシ
第三十四条 市ニ於テ法律勅令ニ依リ負担シ又ハ当該官庁ノ職権ニ依リ命スル費用ヲ予算ニ載セサルトキ又ハ予算中不適当ト認ムル費用アルトキハ民政署長ハ理由ヲ示シテ其ノ費用ヲ予算ニ加ヘ又ハ削減スルコトヲ得
市長其ノ他ノ吏員其ノ執行スヘキ事項ヲ執行セサルトキハ民政署長又ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏之ヲ執行スルコトヲ得但シ其ノ費用ハ市ノ負担トス
第三十五条 市長、助役又ハ収入役ニ故障アルトキハ監督官庁ハ吏員中ヨリ臨時代理者ヲ選任シ又ハ官吏ヲ派遣シ其ノ職務ヲ管掌セシムルコトヲ得但シ官吏ヲ派遣シタル場合ニ於テハ其ノ旅費ハ市費ヲ以テ之ヲ弁償セシムヘシ
第三十六条 民政署長ハ市長、助役、収入役其ノ他ノ吏員ニ対シ懲戒ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒処分ハ譴責、五十円以下ノ過怠金及解職トス但シ市長ニ対スル懲戒及其ノ他ノ吏員ニ対スル解職ニ付テハ関東長官ノ認可ヲ受クヘシ
民政署長ハ吏員ノ解職ヲ行ハムトスル前其ノ吏員ノ停職ヲ命スルコトヲ得其ノ停職期間手当又ハ給料ノ全部又ハ一部ヲ給セサルコトヲ得
懲戒ニ依リ解職セラレタル者ハ二年間市ノ公職ニ選挙セラレ又ハ任命セラルルコトヲ得ス
第三十七条 市ハ左ノ各号ノ事項ニ付テハ関東長官ノ認可ヲ受クヘシ
一 市規則ヲ設ケ又ハ改廃スルコト
二 市税ノ税目及課率ヲ定メ又ハ改廃スルコト
三 市債ヲ起シ並起債ノ方法、利率及償還ノ方法ヲ定メ又ハ変更スルコト
第三十八条 市ハ左ノ各号ノ事項ニ付テハ民政署長ノ認可ヲ受クヘシ
一 不動産ノ取得、管理及処分ニ関スルコト
二 基本財産及積立金等ノ設置、管理及処分ニ関スルコト
三 使用料若ハ手数料ヲ徴シ又ハ其ノ額若ハ率ヲ変更スルコト
四 寄附又ハ補助ヲ為スコト
五 第二十九条第二項ノ借入金ヲ為シ並借入ノ方法及利率ヲ定メ又ハ変更スルコト
第三十九条 監督官庁ノ認可ヲ要スル事項ニ付テハ監督官庁ハ認可申請ノ趣旨ニ反セスト認ムル範囲内ニ於テ更正シテ認可ヲ与フルコトヲ得
第四十条 本令ニ定ムルモノヲ除クノ外必要ナル事項ハ関東長官之ヲ定ム
附 則
本令施行ノ期日ハ関東長官之ヲ定ム
本令施行ノ際必要ナル事項ハ関東長官之ヲ定ム
本令ノ適用ニ付テハ明治十三年第三十六号布告刑法ノ重罪ノ刑ニ処セラレタル者ハ六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者ト看做ス