第一條 本法ニ於テ借地借家ト稱スルハ借地法及借家法ニ於ケル借地借家ヲ謂フ
第二條 地代、家賃、敷金其ノ他借地借家ノ條件カ著シク不當ナルトキハ當事者ノ申立ニ因リ裁判所ハ鑑定委員會ノ意見ヲ聽キ借地借家關係ヲ衡平ナラシムル爲其ノ條件ノ變更ヲ命スルコトヲ得此ノ場合ニ於テ裁判所ハ敷金其ノ他ノ財產上ノ給付ノ返還ヲ命シ又ハ其ノ給付ヲ地代若ハ家賃ノ前拂ト看做シ其ノ他相當ナル處分ヲ命スルコトヲ得
第三條 大正十二年九月ノ震災ニ因リテ滅失シタル建物ノ借主ハ其ノ建物ノ敷地又ハ其ノ換地ノ上ニ新ニ築造セラレタル建物ニ付其ノ完成前賃借ノ申出ヲ爲シタルトキハ他ノ者ニ優先シテ之ヲ賃借スルコトヲ得滅失シタル建物ノ敷地又ハ其ノ換地ノ上ニ築造セラレタル假設建築物ノ借主亦同シ
前項ノ申出ヲ受ケタル者申出ヲ受ケタル日ヨリ二週間內ニ拒絕ノ意思ヲ表示セサルトキハ申出ヲ承諾シタルモノト看做ス
第一項ノ申出ハ正當ノ理由アルニ非サレハ之ヲ拒絕スルコトヲ得ス
第四條 前條ノ場合ニ於テ借家ニ付當事者間ニ協議調ハサルトキハ申立ニ因リ裁判所ハ鑑定委員會ノ意見ヲ聽キ從前ノ賃貸借ノ條件、建物ノ狀況其ノ他一切ノ事情ヲ斟酌シテ借家關係ヲ定ムルコトヲ得
第五條 新ニ築造セラレタル建物ニ付第三條第一項ノ規定ニ依リ賃借ノ申出ヲ爲シタル者數人アル場合ニ於テ賃借スヘキ建物ノ割當ニ付當事者間ニ協議調ハサルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ從前ノ建物又ハ假設建築物ノ狀況、借主ノ職業其ノ他一切ノ事情ヲ斟酌シテ其ノ割當ヲ爲ス
前項ノ規定ニ依リ難キ場合ニ於テハ裁判所ハ抽籤ノ方法ヲ用ヰテ割當ヲ爲スコトヲ得
裁判所ハ當事者間ノ衡平ヲ維持スル爲必要アリト認ムルトキハ割當ヲ受ケサル借主又ハ著シク不利益ナル割當ヲ受ケタル借主ノ爲割當ニ因リ著シク利益ヲ受ケタル他ノ借主ニ對シ相當ナル出捐ヲ命スルコトヲ得
第六條 大正十二年九月ノ震災ニ因リテ滅失シタル建物ニ居住シタル者カ其ノ建物ノ敷地ノ上ニ假設建築物ヲ築造シタル場合ニ於テ敷地ノ借主カ之ニ同意シタルトキハ其ノ同意ニ付地主ノ承諾ヲ得サリシ場合ト雖地主ハ之ヲ理由トシテ契約ノ解除ヲ爲スコトヲ得ス但シ裁判所ノ許可ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
第七條 借地ノ上ニ存スル借地人ノ建物カ大正十二年九月ノ震災ニ因リ滅失シタル場合ニ於テハ其ノ借地權ハ借地權ノ登記及其ノ土地ノ上ニ存スル建物ノ登記ナキモ之ヲ以テ大正十三年七月一日以後其ノ土地ニ付權利ヲ取得シタル第三者ニ對抗スルコトヲ得
第八條 第二條及第四條乃至第六條ノ規定ニ因ル裁判ハ借地又ハ借家ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所ニ於テ非訴事件手續法ニ依リ之ヲ爲ス
第九條 鑑定委員會ハ五人以上ノ委員ヲ以テ之ヲ組織ス
第十條 鑑定委員ハ特別ノ知識經驗アル者其ノ他適當ナル者ニ就キ每年豫メ地方裁判所長ノ選任シタル者又ハ當事者ノ合意ニ依リ選定セラレタル者ノ中ヨリ各事件ニ付裁判所之ヲ指定ス
第十一條 鑑定委員會ノ決議ハ委員ノ過半數ノ意見ニ依ル
第十三條 鑑定委員ニハ旅費、日當及止宿料ヲ給ス其ノ額ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四條 借地借家調停法第四條ノ二及第五條ノ規定ハ第二條、第四條及第五條ノ規定ニ依ル申立竝第六條ノ規定ニ依ル許可ノ申請アリタル場合ニ之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テ調停ニ付スル裁判ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第十五條 第二條及第四條乃至第六條ノ規定ニ依ル裁判ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得其ノ期間ハ之ヲ二週間トス
第十六條 本法ニ依ル裁判ニシテ財產上ノ給付ヲ命スルモノハ執行力ヲ有スル債務名義タルノ效力ヲ有ス
第十七條 本法ニ依ル裁判ノ費用ニ付テハ民事訴訟費用法第十六條及民事訴訟用印紙法第十六條ノ規定ニ依ル