和議法
法令番号: 法律第七十二號
公布年月日: 大正11年4月25日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル和議法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十一年四月二十四日
內閣總理大臣兼大藏大臣 子爵 高橋是淸
外務大臣 伯爵 內田康哉
海軍大臣 男爵 加藤友三郞
農商務大臣 男爵 山本達雄
內務大臣 床次竹二郞
文部大臣 中橋德五郞
遞信大臣 野田卯太郞
鐵道大臣 元田肇
司法大臣 伯爵 大木遠吉
陸軍大臣 山梨半造
法律第七十二號
和議法
第一章 總則
第一條 本法ニ於テ和議ト稱スルハ破產豫防ノ爲ニスル强制和議ヲ謂フ
第二條 和議手續ハ其ノ開始決定ノ時ヨリ效力ヲ生ス
第三條 破產法第百五條及第百七條ノ規定ハ和議事件ノ管轄ニ付之ヲ準用ス
第四條 破產法第八十七條、第八十八條、第八十九條第一項、第九十條及第九十一條ノ規定ハ和議ノ開始アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第五條 破產法第九十八條乃至第百四條ノ規定ハ和議債權者ノ相殺權ニ付之ヲ準用ス
第六條 前二條ノ規定ノ適用ニ付テハ和議開始ノ申立ハ之ヲ破產ノ申立ト看做シ和議ノ開始ハ之ヲ破產ノ宣告ト看做ス
第七條 和議手續ニ關スル裁判ニ對シテハ本法ニ特別ノ規定アル場合ニ限リ其ノ裁判ニ付利害關係ヲ有スル者ハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得其ノ期間ハ裁判ノ公告アリタル場合ニ於テハ其ノ公告アリタル日ヨリ起算シテ二週間トス
第八條 破產法第百十九條、第百二十條、第百二十二條及第百二十四條ノ規定ハ和議開始、和議開始決定取消又ハ和議廢止ノ決定アリタル場合及和議認否又ハ和議取消ノ決定カ確定シタル場合ニ之ヲ準用ス
第九條 和議廢止ノ決定アリタル場合又ハ和議不認可若ハ和議取消ノ決定カ確定シタル場合ニ於テ裁判所ハ破產ノ申立アルトキハ其ノ申立ニ因リ、申立ナキトキハ職權ヲ以テ破產ノ宣告ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ破產ノ宣告ヲ爲シタル場合ニ於テハ前條ノ規定ニ依ル登記又ハ登錄ノ囑託ハ破產ノ登記又ハ登錄ノ囑託ト共ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
第十條 前條第一項ノ規定ニ依リ破產ノ宣告アリタルトキハ破產法第一編ノ適用ニ付テハ和議開始若ハ和議取消ノ申立又ハ詐欺破產ノ罪ニ該ルヘキ和議申立人ノ行爲ハ其ノ前ニ支拂ノ停止又ハ破產ノ申立ナキトキハ之ヲ支拂ノ停止又ハ破產ノ申立ト看做シ和議ノ爲ニ生シタル債權及和議手續ノ費用ハ之ヲ財團債權トス
第十一條 破產法第二條、第三條、第百九條乃至第百十一條、第百十三條乃至第百十八條及第百二十五條ノ規定ハ和議ニ關シ之ヲ準用ス
和議手續ニ關シテハ本法ニ別段ノ定ナキトキハ民事訴訟法ヲ準用ス
第二章 和議ノ開始
第十二條 破產ノ原因タル事實アル場合ニ於テハ債務者ハ和議開始ノ申立ヲ爲スコトヲ得但シ法人ニ在リテハ理事又ハ之ニ準スヘキ者ノ一致アルコトヲ要ス
相續財產ニ付テハ和議開始ノ申立ヲ爲スコトヲ得ス
第十三條 和議開始ノ申立ヲ爲スニハ辨濟ノ方法、擔保ヲ供セムトスルトキハ其ノ擔保其ノ他和議ノ條件ヲ裁判所ニ申出ツルコトヲ要ス
和議申立人ハ申立ト同時ニ財產ノ狀況ヲ示スヘキ明細書竝債權者及債務者ノ一覽表ヲ提出スルコトヲ要ス申立ト同時ニ提出スルコト能ハサルトキハ爾後遲滯ナク之ヲ提出スルコトヲ要ス
第十四條 和議開始ノ申立ヲ爲スニハ和議手續ノ費用トシテ裁判所カ相當ト認ムル金額ノ豫納アルコトヲ要ス
第十五條 和議開始ノ決定アリタル後ハ破產ノ申立ヲ爲スコトヲ得ス
第十六條 破產ノ宣告アリタル後ハ和議開始ノ申立ヲ爲スコトヲ得ス
第十七條 和議開始ノ申立及破產ノ申立アリタルトキハ破產手續ハ之ヲ中止ス
第十八條 左ノ場合ニ於テハ裁判所ハ和議開始ノ申立ヲ棄却スルコトヲ要ス
一 破產囘避ノ目的ヲ以テ申立ヲ爲シタルトキ
二 和議申立人ノ所在カ不明ナルトキ
三 詐欺破產ノ罪ニ該ルヘキ行爲アリト認ムルトキ
四 和議ノ條件カ法律ノ規定ニ反スルトキ
五 和議ノ條件カ和議債權者ノ一般ノ利益ニ反スルトキ
第十九條 左ノ場合ニ於テハ裁判所ハ和議開始ノ申立ヲ棄却スルコトヲ得
一 和議手續ノ費用ノ豫納ナキトキ
二 債權者集會ニ於テ和議ヲ否決シタルコトアルトキ
三 和議開始ノ申立又ハ和議ノ提供ヲ撤囘シタルコトアルトキ
四 和議不認可ノ決定ヲ爲シタルコトアルトキ
五 和議取消ノ決定ヲ爲シタルコトアルトキ
第二十條 裁判所ハ和議開始ノ決定前ト雖利害關係人ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ債務者ノ財產ニ關シ假差押、假處分其ノ他ノ必要ナル保全處分ヲ命スルコトヲ得
裁判所ハ前項ノ規定ニ依ル處分ヲ變更シ又ハ之ヲ取消スコトヲ得
前二項ノ規定ニ依ル裁判ハ決定ヲ以テ之ヲ爲ス此ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第二十一條 裁判所ハ整理委員ヲ選任シ期間ヲ定メテ債務者ノ財產、帳簿及和議ノ條件ニ付必要ナル調査ヲ爲サシメ且和議ヲ開始スヘキカ否ニ付意見書ヲ提出セシムルコトヲ要ス
整理委員ハ自己ノ責任ヲ以テ鑑定人ヲ選任スルコトヲ得
第二十二條 和議申立人ハ前條第一項ニ依ル調査ヲ拒ムコトヲ得ス
第二十三條 破產法第百五十三條ノ規定ハ和議ニ關シ整理委員ノ請求アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第二十四條 重要ナル事由アルトキハ裁判所ハ利害關係人ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ整理委員ヲ解任スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ整理委員ヲ審訊スルコトヲ要ス
第二十五條 破產法第百五十九條乃至第百六十一條、第百六十四條乃至第百六十六條、第百六十九條及第百七十二條ノ規定ハ整理委員ニ之ヲ準用ス
第二十六條 和議開始決定書ニハ決定ノ年月日時ヲ記載スルコトヲ要ス
第二十七條 裁判所ハ和議開始ノ決定ト同時ニ管財人ヲ選任シ且左ノ事項ヲ定ムルコトヲ要ス
一 債權屆出ノ期間但シ其ノ期間ハ決定ノ日ヨリ二週間以上二月以下ナルコトヲ要ス
二 債權者集會ノ期日但シ其ノ期日ト債權屆出期間ノ末日トノ間ニハ一週間以上一月以下ノ期間ヲ存スルコトヲ要ス
和議開始ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第二十八條 裁判所カ和議開始ノ決定ヲ爲シタルトキハ直ニ左ノ事項ヲ公告スルコトヲ要ス
一 和議開始決定ノ主文
二 管財人ノ氏名及住所
三 債權屆出ノ期間及債權者集會ノ期日
知レタル債權者、和議申立人、管財人及整理委員ニハ前項ニ揭クル事項、和議ノ條件及整理委員ノ意見ノ要領ヲ記載シタル書面ヲ送達スルコトヲ要ス
前二項ノ規定ハ第一項第二號及第三號ニ揭クル事項ニ變更ヲ生シタル場合ニ之ヲ準用ス
第二十九條 裁判所カ和議開始決定取消ノ決定ヲ爲シタルトキハ直ニ其ノ主文ヲ公告スルコトヲ要ス
前條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十條 和議開始ノ申立ニ關スル書類竝第二十一條ノ規定ニ依ル整理委員ノ調査書類及意見書ハ利害關係人ノ閱覽ニ供スル爲之ヲ裁判所ニ備ヘ置クコトヲ要ス
第三十一條 和議開始申立ノ時ヨリ決定ノ時迄ハ債務者ハ通常ノ範圍ニ屬セサル行爲ヲ爲スコトヲ得ス
第三十二條 和議ノ開始ハ債務者カ其ノ財產ヲ管理及處分スル權利ニ影響ヲ及ホサス但シ通常ノ範圍ニ屬セサル行爲ハ管財人ノ同意ヲ得ルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
通常ノ行爲ト雖管財人ノ異議アルトキハ債務者ハ之ヲ爲スコトヲ得ス
重要ナル行爲ニ付管財人カ第一項ノ規定ニ依リ同意ヲ爲スニハ整理委員ノ意見ヲ聽クコトヲ要ス
第三十三條 第三十一條又ハ前條第一項第二項ノ規定ニ反スル行爲ハ和議債權者ニ於テ之ヲ否認スルコトヲ得但シ相手方カ行爲ノ當時其ノ事實ヲ知リタルトキニ限ル
第三十四條 管財人ハ自ラ金錢ノ收支ヲ爲スヘキコトヲ債務者ニ請求スルコトヲ得
第三十五條 管財人ハ裁判所ノ許可ヲ得テ債務者及之ニ扶養セラルル者ニ給スヘキ扶助料ノ額ヲ定ムルコトヲ得
第三十六條 管財人ハ何時ニテモ債務者ニ對シテ其ノ財產ニ關スル報告ヲ求メ又ハ債務者ノ財產ノ狀況ヲ調査スルコトヲ得
整理委員ハ何時ニテモ管財人ニ對シテ債務者ノ財產ニ關スル報告ヲ求ムルコトヲ得
第三十七條 破產法第百五十三條ノ規定ハ和議ニ關シ管財人又ハ債權者集會ノ請求アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第三十八條 管財人ノ任務終了ノ場合ニ於テハ管財人又ハ其ノ相續人ハ遲滯ナク裁判所ニ計算ノ報告ヲ爲スコトヲ要ス
第三十九條 第二十四條及破產法第百五十八條乃至第百六十一條第百六十三條乃至第百六十六條第百六十九條ノ規定ハ管財人ニ之ヲ準用ス
第四十條 和議手續中ハ和議債權ニ付債務者ノ財產ニ對シ强制執行、假差押又ハ假處分ヲ爲スコトヲ得ス
和議開始前和議債權ニ付債務者ノ財產ニ對シ爲シタル强制執行、假差押及假處分ハ和議手續中之ヲ中止ス
第三章 和議債權及其ノ屆出
第四十一條 債務者ニ對シ和議開始前ノ原因ニ基キテ生シタル財產上ノ請求權ハ之ヲ和議債權トス
第四十二條 一般ノ先取特權其ノ他一般ノ優先權アル債權ハ之ヲ和議債權トセス
第四十三條 破產ノ場合ニ於テ別除權ヲ行使スルコトヲ得ヘキ權利ヲ有スル者ハ其ノ權利ノ行使ニ依リテ辨濟ヲ受クルコト能ハサル債權額ニ付和議債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第四十四條 左ニ揭クル請求權ハ之ヲ和議債權トセス
一 和議開始後ノ利息
二 和議開始後ノ不履行ニ因ル損害賠償及違約金
三 和議手續參加ノ費用
四 罰金、科料、刑事訴訟費用、追徵金及過料
前項ノ請求權ハ和議債權ニ後ル
第四十五條 破產法第十七條乃至第二十條、第二十二條乃至第二十七條及第二百二十八條乃至第二百三十條ノ規定ハ和議債權ニ付之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テハ和議ノ開始ハ之ヲ破產ノ宣告ト看做ス
第四章 債權者集會
第四十六條 債權者集會ノ期日ニハ屆出ヲ爲シタル和議債權者、和議申立人及和議ノ爲ニ保證人ト爲リ其ノ他債務者ト共ニ債務ヲ負擔シ又ハ和議債權者ノ爲ニ擔保ヲ供スル者ヲ呼出スコトヲ要ス
前項ニ規定スル者ニハ和議ノ條件及整理委員ノ意見ノ要領ヲ記載シタル書面ニ送達スルコトヲ要ス但シ第二十八條第二項第三項ノ規定ニ依リ旣ニ送達ヲ受ケタル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第四十七條 管財人及整理委員ハ屆出アリタル各債權ニ付債權者集會ニ於テ議決權ヲ行ハシムヘキカ否及如何ナル金額ニ付之ヲ行ハシムヘキカヲ調査スルコトヲ要ス
第四十八條 管財人及整理委員ハ債權者集會ニ於テ和議ノ開始ニ至リタル事情、債務者及其ノ財產ニ關スル經過及現狀竝前條ノ規定ニ依ル調査ノ結果ニ付報告ヲ爲シ且和議ノ條件ノ適否ニ關シ意見ヲ述フルコトヲ要ス
破產法第百八十二條第二項乃至第四項ノ規定ハ屆出アリタル債權ニ付第四十六條第一項ニ規定スル者、管財人又ハ整理委員ノ異議アル場合ニ之ヲ準用ス
第四十九條 破產法第百七十八條、第百八十一條、第二百三十八條但書、第三百一條、第三百二條、第三百六條及第三百七條ノ規定ハ債權者集會ニ付之ヲ準用ス
破產法第三百四條及第三百五條ノ規定ハ和議ニ付之ヲ準用ス
第五章 和議ノ認否
第五十條 債權者集會ニ於テ和議ヲ可決シタルトキハ裁判所ハ其ノ期日又ハ直ニ言渡シタル期日ニ於テ和議ノ認否ニ付決定ヲ爲スコトヲ要ス
第四十六條第一項ニ規定スル者、管財人及整理委員ハ和議ノ認否ニ付意見ヲ述フルコトヲ得
破產法第二百三十八條但書ノ規定ハ和議認否ノ期日ヲ定ムル決定ニ付之ヲ準用ス
第五十一條 裁判所ハ左ノ場合ニ限リ和議債權者ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ和議不認可ノ決定ヲ爲スコトヲ得
一 和議ノ手續又ハ決議カ法律ノ規定ニ反スル場合ニ於テ其ノ欠缺カ追完スヘカラサルモノナルトキ
二 第十八條第二號又ハ第三號ニ規定スル事由アルトキ
三 和議ノ決議カ不正ノ方法ニ因リテ成立スルニ至リタルトキ
四 和議ノ決議カ和議債權者ノ一般ノ利益ニ反スルトキ
第五十二條 和議認否ノ決定ハ之ヲ言渡シ且其ノ主文及理由ノ要領ヲ公告スルコトヲ要ス但シ送達ヲ爲スコトヲ要セス
第五十三條 和議認否ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
破產法第三百十九條ノ規定ハ和議債權者ニ之ヲ準用ス
第五十四條 和議ハ認可ノ決定ノ確定ニ因リテ其ノ效力ヲ生ス
第五十五條 和議認可ノ決定カ確定シタルトキハ裁判所書記ハ和議ノ條件ヲ債權表ニ記載スルコトヲ要ス
第五十六條 和議認可ノ決定カ確定シタルトキハ債務者ハ和議ノ爲ニ生シタル債權、和議手續ノ費用及一般ノ先取特權其ノ他一般ノ優先權アル債權ノ辨濟ヲ爲スコトヲ要ス
前項ニ規定スル債權ニシテ異議アルモノニ付テハ債權者ノ爲供託ヲ爲スコトヲ要ス
第五十七條 破產法第三百二十五條乃至第三百二十七條及第三百四十二條ノ規定ハ和議ノ效力ニ付之ヲ準用ス
第五十八條 和議認可ノ決定カ確定シタルトキハ第十七條ノ規定ニ依リ手續ヲ中止シタル破產ノ申立竝第四十條第二項ノ規定ニ依リ中止シタル强制執行、假差押及假處分ハ其ノ效力ヲ失フ
第六章 和議ノ廢止
第五十九條 左ノ場合ニ於テハ裁判所ハ職權ヲ以テ和議廢止ノ決定ヲ爲スコトヲ要ス
一 和議ノ可決前ニ和議ノ提供者カ其ノ提供ヲ撤囘シタルトキ
二 債權者集會ノ第一期日ヨリ二月內ニ和議ヲ可決セサルトキ
第六十條 左ノ場合ニ於テハ裁判所ハ管財人若ハ整理委員ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ和議廢止ノ決定ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ債務者ヲ審訊スルコトヲ要ス
一 第二十條第一項第二項ノ規定ニ依ル裁判所ノ命令ニ違反シタルトキ
二 債務者カ第三十一條又ハ第三十二條第一項第二項ノ規定ニ違反シタルトキ
三 債務者カ第三十四條ノ規定ニ依ル請求アリタルニ拘ラス自ラ金錢ノ收支ヲ爲シタルトキ
第六十一條 裁判所カ和議廢止ノ決定ヲ爲シタルトキハ其ノ主文及理由ノ要領ヲ公告スルコトヲ要ス
第七章 讓步及和議ノ取消
第六十二條 破產法第三百二十九條乃至第三百三十一條ノ規定ハ和議ヲ以テ定メタル讓步ノ取消ニ之ヲ準用ス
第六十三條 債務者ニ詐欺破產ノ罪ニ該ルヘキ行爲アルトキハ裁判所ハ和議債權者ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ和議取消ノ決定ヲ爲スコトヲ得
第六十四條 破產法第三百三十二條第一項及第二項ノ規定ハ和議ノ取消ニ之ヲ準用ス
和議取消ノ申立ニ必要ナル債權額及總債權ノ計算ニ付テハ第四十八條ノ規定ニ依リテ定リタル債權額ニ依ル
第六十五條 和議ノ取消ハ和議債權者カ和議ニ因リテ得タル權利ニ影響ヲ及ホサス
第六十六條 裁判所カ和議取消申立棄却又ハ和議取消ノ決定ヲ爲シタルトキハ其ノ主文及理由ノ要領ヲ公告スルコトヲ要ス
前項ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第六十七條 破產法第三百三十八條、第三百四十條及第三百四十一條ノ規定ハ第九條ノ規定ニ依リ破產ノ宣告アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第八章 罰則
第六十八條 整理委員又ハ管財人其ノ職務ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキハ三年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス和議債權者、其ノ代理人又ハ理事若ハ之ニ準スヘキ者債權者集會ノ決議ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキ亦同シ
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス其ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハサルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第六十九條 整理委員、管財人又ハ和議債權者、其ノ代理人、理事若ハ之ニ準スヘキ者ニ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第七十條 第二十三條又ハ第三十七條ノ規定ニ依リ說明ノ義務アル者故ナク說明ヲ爲サス又ハ虛僞ノ說明ヲ爲シタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス和議申立人又ハ債務者第二十一條又ハ第三十六條ノ規定ニ依ル調査若ハ報告ヲ拒ミ又ハ虛僞ノ報告ヲ爲シタルトキ亦同シ
前項ノ罪ヲ犯シタル者和議裁判所ニ其ノ事實ヲ申出テタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
和議手續參加ハ時效ノ中斷ニ關シテハ之ヲ裁判上ノ請求ト看做ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル和議法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十一年四月二十四日
内閣総理大臣兼大蔵大臣 子爵 高橋是清
外務大臣 伯爵 内田康哉
海軍大臣 男爵 加藤友三郎
農商務大臣 男爵 山本達雄
内務大臣 床次竹二郎
文部大臣 中橋徳五郎
逓信大臣 野田卯太郎
鉄道大臣 元田肇
司法大臣 伯爵 大木遠吉
陸軍大臣 山梨半造
法律第七十二号
和議法
第一章 総則
第一条 本法ニ於テ和議ト称スルハ破産予防ノ為ニスル強制和議ヲ謂フ
第二条 和議手続ハ其ノ開始決定ノ時ヨリ効力ヲ生ス
第三条 破産法第百五条及第百七条ノ規定ハ和議事件ノ管轄ニ付之ヲ準用ス
第四条 破産法第八十七条、第八十八条、第八十九条第一項、第九十条及第九十一条ノ規定ハ和議ノ開始アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第五条 破産法第九十八条乃至第百四条ノ規定ハ和議債権者ノ相殺権ニ付之ヲ準用ス
第六条 前二条ノ規定ノ適用ニ付テハ和議開始ノ申立ハ之ヲ破産ノ申立ト看做シ和議ノ開始ハ之ヲ破産ノ宣告ト看做ス
第七条 和議手続ニ関スル裁判ニ対シテハ本法ニ特別ノ規定アル場合ニ限リ其ノ裁判ニ付利害関係ヲ有スル者ハ即時抗告ヲ為スコトヲ得其ノ期間ハ裁判ノ公告アリタル場合ニ於テハ其ノ公告アリタル日ヨリ起算シテ二週間トス
第八条 破産法第百十九条、第百二十条、第百二十二条及第百二十四条ノ規定ハ和議開始、和議開始決定取消又ハ和議廃止ノ決定アリタル場合及和議認否又ハ和議取消ノ決定カ確定シタル場合ニ之ヲ準用ス
第九条 和議廃止ノ決定アリタル場合又ハ和議不認可若ハ和議取消ノ決定カ確定シタル場合ニ於テ裁判所ハ破産ノ申立アルトキハ其ノ申立ニ因リ、申立ナキトキハ職権ヲ以テ破産ノ宣告ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ破産ノ宣告ヲ為シタル場合ニ於テハ前条ノ規定ニ依ル登記又ハ登録ノ嘱託ハ破産ノ登記又ハ登録ノ嘱託ト共ニ之ヲ為スコトヲ要ス
第十条 前条第一項ノ規定ニ依リ破産ノ宣告アリタルトキハ破産法第一編ノ適用ニ付テハ和議開始若ハ和議取消ノ申立又ハ詐欺破産ノ罪ニ該ルヘキ和議申立人ノ行為ハ其ノ前ニ支払ノ停止又ハ破産ノ申立ナキトキハ之ヲ支払ノ停止又ハ破産ノ申立ト看做シ和議ノ為ニ生シタル債権及和議手続ノ費用ハ之ヲ財団債権トス
第十一条 破産法第二条、第三条、第百九条乃至第百十一条、第百十三条乃至第百十八条及第百二十五条ノ規定ハ和議ニ関シ之ヲ準用ス
和議手続ニ関シテハ本法ニ別段ノ定ナキトキハ民事訴訟法ヲ準用ス
第二章 和議ノ開始
第十二条 破産ノ原因タル事実アル場合ニ於テハ債務者ハ和議開始ノ申立ヲ為スコトヲ得但シ法人ニ在リテハ理事又ハ之ニ準スヘキ者ノ一致アルコトヲ要ス
相続財産ニ付テハ和議開始ノ申立ヲ為スコトヲ得ス
第十三条 和議開始ノ申立ヲ為スニハ弁済ノ方法、担保ヲ供セムトスルトキハ其ノ担保其ノ他和議ノ条件ヲ裁判所ニ申出ツルコトヲ要ス
和議申立人ハ申立ト同時ニ財産ノ状況ヲ示スヘキ明細書並債権者及債務者ノ一覧表ヲ提出スルコトヲ要ス申立ト同時ニ提出スルコト能ハサルトキハ爾後遅滞ナク之ヲ提出スルコトヲ要ス
第十四条 和議開始ノ申立ヲ為スニハ和議手続ノ費用トシテ裁判所カ相当ト認ムル金額ノ予納アルコトヲ要ス
第十五条 和議開始ノ決定アリタル後ハ破産ノ申立ヲ為スコトヲ得ス
第十六条 破産ノ宣告アリタル後ハ和議開始ノ申立ヲ為スコトヲ得ス
第十七条 和議開始ノ申立及破産ノ申立アリタルトキハ破産手続ハ之ヲ中止ス
第十八条 左ノ場合ニ於テハ裁判所ハ和議開始ノ申立ヲ棄却スルコトヲ要ス
一 破産回避ノ目的ヲ以テ申立ヲ為シタルトキ
二 和議申立人ノ所在カ不明ナルトキ
三 詐欺破産ノ罪ニ該ルヘキ行為アリト認ムルトキ
四 和議ノ条件カ法律ノ規定ニ反スルトキ
五 和議ノ条件カ和議債権者ノ一般ノ利益ニ反スルトキ
第十九条 左ノ場合ニ於テハ裁判所ハ和議開始ノ申立ヲ棄却スルコトヲ得
一 和議手続ノ費用ノ予納ナキトキ
二 債権者集会ニ於テ和議ヲ否決シタルコトアルトキ
三 和議開始ノ申立又ハ和議ノ提供ヲ撤回シタルコトアルトキ
四 和議不認可ノ決定ヲ為シタルコトアルトキ
五 和議取消ノ決定ヲ為シタルコトアルトキ
第二十条 裁判所ハ和議開始ノ決定前ト雖利害関係人ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ債務者ノ財産ニ関シ仮差押、仮処分其ノ他ノ必要ナル保全処分ヲ命スルコトヲ得
裁判所ハ前項ノ規定ニ依ル処分ヲ変更シ又ハ之ヲ取消スコトヲ得
前二項ノ規定ニ依ル裁判ハ決定ヲ以テ之ヲ為ス此ノ決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第二十一条 裁判所ハ整理委員ヲ選任シ期間ヲ定メテ債務者ノ財産、帳簿及和議ノ条件ニ付必要ナル調査ヲ為サシメ且和議ヲ開始スヘキカ否ニ付意見書ヲ提出セシムルコトヲ要ス
整理委員ハ自己ノ責任ヲ以テ鑑定人ヲ選任スルコトヲ得
第二十二条 和議申立人ハ前条第一項ニ依ル調査ヲ拒ムコトヲ得ス
第二十三条 破産法第百五十三条ノ規定ハ和議ニ関シ整理委員ノ請求アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第二十四条 重要ナル事由アルトキハ裁判所ハ利害関係人ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ整理委員ヲ解任スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ整理委員ヲ審訊スルコトヲ要ス
第二十五条 破産法第百五十九条乃至第百六十一条、第百六十四条乃至第百六十六条、第百六十九条及第百七十二条ノ規定ハ整理委員ニ之ヲ準用ス
第二十六条 和議開始決定書ニハ決定ノ年月日時ヲ記載スルコトヲ要ス
第二十七条 裁判所ハ和議開始ノ決定ト同時ニ管財人ヲ選任シ且左ノ事項ヲ定ムルコトヲ要ス
一 債権届出ノ期間但シ其ノ期間ハ決定ノ日ヨリ二週間以上二月以下ナルコトヲ要ス
二 債権者集会ノ期日但シ其ノ期日ト債権届出期間ノ末日トノ間ニハ一週間以上一月以下ノ期間ヲ存スルコトヲ要ス
和議開始ノ決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第二十八条 裁判所カ和議開始ノ決定ヲ為シタルトキハ直ニ左ノ事項ヲ公告スルコトヲ要ス
一 和議開始決定ノ主文
二 管財人ノ氏名及住所
三 債権届出ノ期間及債権者集会ノ期日
知レタル債権者、和議申立人、管財人及整理委員ニハ前項ニ掲クル事項、和議ノ条件及整理委員ノ意見ノ要領ヲ記載シタル書面ヲ送達スルコトヲ要ス
前二項ノ規定ハ第一項第二号及第三号ニ掲クル事項ニ変更ヲ生シタル場合ニ之ヲ準用ス
第二十九条 裁判所カ和議開始決定取消ノ決定ヲ為シタルトキハ直ニ其ノ主文ヲ公告スルコトヲ要ス
前条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十条 和議開始ノ申立ニ関スル書類並第二十一条ノ規定ニ依ル整理委員ノ調査書類及意見書ハ利害関係人ノ閲覧ニ供スル為之ヲ裁判所ニ備ヘ置クコトヲ要ス
第三十一条 和議開始申立ノ時ヨリ決定ノ時迄ハ債務者ハ通常ノ範囲ニ属セサル行為ヲ為スコトヲ得ス
第三十二条 和議ノ開始ハ債務者カ其ノ財産ヲ管理及処分スル権利ニ影響ヲ及ホサス但シ通常ノ範囲ニ属セサル行為ハ管財人ノ同意ヲ得ルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
通常ノ行為ト雖管財人ノ異議アルトキハ債務者ハ之ヲ為スコトヲ得ス
重要ナル行為ニ付管財人カ第一項ノ規定ニ依リ同意ヲ為スニハ整理委員ノ意見ヲ聴クコトヲ要ス
第三十三条 第三十一条又ハ前条第一項第二項ノ規定ニ反スル行為ハ和議債権者ニ於テ之ヲ否認スルコトヲ得但シ相手方カ行為ノ当時其ノ事実ヲ知リタルトキニ限ル
第三十四条 管財人ハ自ラ金銭ノ収支ヲ為スヘキコトヲ債務者ニ請求スルコトヲ得
第三十五条 管財人ハ裁判所ノ許可ヲ得テ債務者及之ニ扶養セラルル者ニ給スヘキ扶助料ノ額ヲ定ムルコトヲ得
第三十六条 管財人ハ何時ニテモ債務者ニ対シテ其ノ財産ニ関スル報告ヲ求メ又ハ債務者ノ財産ノ状況ヲ調査スルコトヲ得
整理委員ハ何時ニテモ管財人ニ対シテ債務者ノ財産ニ関スル報告ヲ求ムルコトヲ得
第三十七条 破産法第百五十三条ノ規定ハ和議ニ関シ管財人又ハ債権者集会ノ請求アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第三十八条 管財人ノ任務終了ノ場合ニ於テハ管財人又ハ其ノ相続人ハ遅滞ナク裁判所ニ計算ノ報告ヲ為スコトヲ要ス
第三十九条 第二十四条及破産法第百五十八条乃至第百六十一条第百六十三条乃至第百六十六条第百六十九条ノ規定ハ管財人ニ之ヲ準用ス
第四十条 和議手続中ハ和議債権ニ付債務者ノ財産ニ対シ強制執行、仮差押又ハ仮処分ヲ為スコトヲ得ス
和議開始前和議債権ニ付債務者ノ財産ニ対シ為シタル強制執行、仮差押及仮処分ハ和議手続中之ヲ中止ス
第三章 和議債権及其ノ届出
第四十一条 債務者ニ対シ和議開始前ノ原因ニ基キテ生シタル財産上ノ請求権ハ之ヲ和議債権トス
第四十二条 一般ノ先取特権其ノ他一般ノ優先権アル債権ハ之ヲ和議債権トセス
第四十三条 破産ノ場合ニ於テ別除権ヲ行使スルコトヲ得ヘキ権利ヲ有スル者ハ其ノ権利ノ行使ニ依リテ弁済ヲ受クルコト能ハサル債権額ニ付和議債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第四十四条 左ニ掲クル請求権ハ之ヲ和議債権トセス
一 和議開始後ノ利息
二 和議開始後ノ不履行ニ因ル損害賠償及違約金
三 和議手続参加ノ費用
四 罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金及過料
前項ノ請求権ハ和議債権ニ後ル
第四十五条 破産法第十七条乃至第二十条、第二十二条乃至第二十七条及第二百二十八条乃至第二百三十条ノ規定ハ和議債権ニ付之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テハ和議ノ開始ハ之ヲ破産ノ宣告ト看做ス
第四章 債権者集会
第四十六条 債権者集会ノ期日ニハ届出ヲ為シタル和議債権者、和議申立人及和議ノ為ニ保証人ト為リ其ノ他債務者ト共ニ債務ヲ負担シ又ハ和議債権者ノ為ニ担保ヲ供スル者ヲ呼出スコトヲ要ス
前項ニ規定スル者ニハ和議ノ条件及整理委員ノ意見ノ要領ヲ記載シタル書面ニ送達スルコトヲ要ス但シ第二十八条第二項第三項ノ規定ニ依リ既ニ送達ヲ受ケタル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第四十七条 管財人及整理委員ハ届出アリタル各債権ニ付債権者集会ニ於テ議決権ヲ行ハシムヘキカ否及如何ナル金額ニ付之ヲ行ハシムヘキカヲ調査スルコトヲ要ス
第四十八条 管財人及整理委員ハ債権者集会ニ於テ和議ノ開始ニ至リタル事情、債務者及其ノ財産ニ関スル経過及現状並前条ノ規定ニ依ル調査ノ結果ニ付報告ヲ為シ且和議ノ条件ノ適否ニ関シ意見ヲ述フルコトヲ要ス
破産法第百八十二条第二項乃至第四項ノ規定ハ届出アリタル債権ニ付第四十六条第一項ニ規定スル者、管財人又ハ整理委員ノ異議アル場合ニ之ヲ準用ス
第四十九条 破産法第百七十八条、第百八十一条、第二百三十八条但書、第三百一条、第三百二条、第三百六条及第三百七条ノ規定ハ債権者集会ニ付之ヲ準用ス
破産法第三百四条及第三百五条ノ規定ハ和議ニ付之ヲ準用ス
第五章 和議ノ認否
第五十条 債権者集会ニ於テ和議ヲ可決シタルトキハ裁判所ハ其ノ期日又ハ直ニ言渡シタル期日ニ於テ和議ノ認否ニ付決定ヲ為スコトヲ要ス
第四十六条第一項ニ規定スル者、管財人及整理委員ハ和議ノ認否ニ付意見ヲ述フルコトヲ得
破産法第二百三十八条但書ノ規定ハ和議認否ノ期日ヲ定ムル決定ニ付之ヲ準用ス
第五十一条 裁判所ハ左ノ場合ニ限リ和議債権者ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ和議不認可ノ決定ヲ為スコトヲ得
一 和議ノ手続又ハ決議カ法律ノ規定ニ反スル場合ニ於テ其ノ欠欠カ追完スヘカラサルモノナルトキ
二 第十八条第二号又ハ第三号ニ規定スル事由アルトキ
三 和議ノ決議カ不正ノ方法ニ因リテ成立スルニ至リタルトキ
四 和議ノ決議カ和議債権者ノ一般ノ利益ニ反スルトキ
第五十二条 和議認否ノ決定ハ之ヲ言渡シ且其ノ主文及理由ノ要領ヲ公告スルコトヲ要ス但シ送達ヲ為スコトヲ要セス
第五十三条 和議認否ノ決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
破産法第三百十九条ノ規定ハ和議債権者ニ之ヲ準用ス
第五十四条 和議ハ認可ノ決定ノ確定ニ因リテ其ノ効力ヲ生ス
第五十五条 和議認可ノ決定カ確定シタルトキハ裁判所書記ハ和議ノ条件ヲ債権表ニ記載スルコトヲ要ス
第五十六条 和議認可ノ決定カ確定シタルトキハ債務者ハ和議ノ為ニ生シタル債権、和議手続ノ費用及一般ノ先取特権其ノ他一般ノ優先権アル債権ノ弁済ヲ為スコトヲ要ス
前項ニ規定スル債権ニシテ異議アルモノニ付テハ債権者ノ為供託ヲ為スコトヲ要ス
第五十七条 破産法第三百二十五条乃至第三百二十七条及第三百四十二条ノ規定ハ和議ノ効力ニ付之ヲ準用ス
第五十八条 和議認可ノ決定カ確定シタルトキハ第十七条ノ規定ニ依リ手続ヲ中止シタル破産ノ申立並第四十条第二項ノ規定ニ依リ中止シタル強制執行、仮差押及仮処分ハ其ノ効力ヲ失フ
第六章 和議ノ廃止
第五十九条 左ノ場合ニ於テハ裁判所ハ職権ヲ以テ和議廃止ノ決定ヲ為スコトヲ要ス
一 和議ノ可決前ニ和議ノ提供者カ其ノ提供ヲ撤回シタルトキ
二 債権者集会ノ第一期日ヨリ二月内ニ和議ヲ可決セサルトキ
第六十条 左ノ場合ニ於テハ裁判所ハ管財人若ハ整理委員ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ和議廃止ノ決定ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ債務者ヲ審訊スルコトヲ要ス
一 第二十条第一項第二項ノ規定ニ依ル裁判所ノ命令ニ違反シタルトキ
二 債務者カ第三十一条又ハ第三十二条第一項第二項ノ規定ニ違反シタルトキ
三 債務者カ第三十四条ノ規定ニ依ル請求アリタルニ拘ラス自ラ金銭ノ収支ヲ為シタルトキ
第六十一条 裁判所カ和議廃止ノ決定ヲ為シタルトキハ其ノ主文及理由ノ要領ヲ公告スルコトヲ要ス
第七章 譲歩及和議ノ取消
第六十二条 破産法第三百二十九条乃至第三百三十一条ノ規定ハ和議ヲ以テ定メタル譲歩ノ取消ニ之ヲ準用ス
第六十三条 債務者ニ詐欺破産ノ罪ニ該ルヘキ行為アルトキハ裁判所ハ和議債権者ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ和議取消ノ決定ヲ為スコトヲ得
第六十四条 破産法第三百三十二条第一項及第二項ノ規定ハ和議ノ取消ニ之ヲ準用ス
和議取消ノ申立ニ必要ナル債権額及総債権ノ計算ニ付テハ第四十八条ノ規定ニ依リテ定リタル債権額ニ依ル
第六十五条 和議ノ取消ハ和議債権者カ和議ニ因リテ得タル権利ニ影響ヲ及ホサス
第六十六条 裁判所カ和議取消申立棄却又ハ和議取消ノ決定ヲ為シタルトキハ其ノ主文及理由ノ要領ヲ公告スルコトヲ要ス
前項ノ決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第六十七条 破産法第三百三十八条、第三百四十条及第三百四十一条ノ規定ハ第九条ノ規定ニ依リ破産ノ宣告アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第八章 罰則
第六十八条 整理委員又ハ管財人其ノ職務ニ関シ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキハ三年以下ノ懲役又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス和議債権者、其ノ代理人又ハ理事若ハ之ニ準スヘキ者債権者集会ノ決議ニ関シ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキ亦同シ
前項ノ場合ニ於テ収受シタル賄賂ハ之ヲ没収ス其ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハサルトキハ其ノ価額ヲ追徴ス
第六十九条 整理委員、管財人又ハ和議債権者、其ノ代理人、理事若ハ之ニ準スヘキ者ニ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得
第七十条 第二十三条又ハ第三十七条ノ規定ニ依リ説明ノ義務アル者故ナク説明ヲ為サス又ハ虚偽ノ説明ヲ為シタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス和議申立人又ハ債務者第二十一条又ハ第三十六条ノ規定ニ依ル調査若ハ報告ヲ拒ミ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタルトキ亦同シ
前項ノ罪ヲ犯シタル者和議裁判所ニ其ノ事実ヲ申出テタルトキハ其ノ刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
和議手続参加ハ時効ノ中断ニ関シテハ之ヲ裁判上ノ請求ト看做ス