大学特別会計規則
法令番号: 勅令第八十一號
公布年月日: 大正10年4月12日
法令の形式: 勅令
朕大學特別會計規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正十年四月十一日
內閣總理大臣 原敬
大藏大臣 子爵 高橋是淸
文部大臣 中橋德五郞
勅令第八十一號
大學特別會計規則
第一章 資金
第一條 資金ニシテ特ニ用途ヲ指定シタルモノハ之ヲ特別資金トシ其ノ他ノモノハ之ヲ維持資金トス
特別資金ヨリ生スル利子其ノ他ノ收入ハ特定ノ用途ニ充テ其ノ殘餘ハ該資金ノ增殖ニ充ツルモノトス
維持資金ヨリ生スル利子其ノ他ノ收入ハ帝國大學ニ在リテハ當該大學ノ經費ニ、官立大學ニ在リテハ官立大學一般ノ經費ニ充ツルモノトス但シ大學特別會計法第三條但書及大正十年勅令第八十二號第二項ノ規定ニ依リ區分整理スル資金ヨリ生スル收入ハ當該大學ノ經費ニ充ツルモノトス
第二條 資金ハ所管大臣之ヲ管理スヘシ
第三條 資金ニ屬スル現金ハ總テ大藏省預金部ニ預入ルヘシ
第四條 資金ニ屬スル現金ヲ以テ不動產、公債證書其ノ他ノ證券ニ換ヘ又ハ資金ニ屬スル不動產、公債證書其ノ他ノ證券ヲ離權シ若ハ他ノ不動產、公債證書其ノ他ノ證券ニ換ヘムトスルトキハ所管大臣大藏大臣ト協議シテ之ヲ定ムヘシ但シ寄附ニ係ル不動產ハ寄附者ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ離權スルコトヲ得ス
第五條 資金ニ屬スル現金ノ會計ハ別途ノ歲入歲出トシテ之ヲ整理スヘシ
第六條 資金ニ屬スル現金ノ受入及拂出ニ關スル取扱方ハ所管大臣大藏大臣ト協議シテ之ヲ定ムヘシ
第二章 豫算決算
第七條 歲入歲出豫定計算書ハ所管大臣之ヲ調製シ前年度八月三十一日迄ニ大藏大臣ニ送付スヘシ
第八條 所管大臣ハ其ノ年三月三十一日現在ノ資金明細目錄ヲ調製シ每年度ノ豫算ニ添附スヘシ
第九條 歲入歲出ノ決定計算書ハ所管大臣之ヲ調製シ翌年度八月三十一日迄ニ大藏大臣ニ送付スヘシ
第三章 收入支出
第十條 所管大臣ハ學部長、醫學部附屬醫院長、傳染病硏究所長又ハ東京帝國大學附屬航空硏究所長ヲシテ歲入歲出豫算ノ一部ヲ施行セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ歲出豫算ヲ施行セシメムトスルトキハ仕拂豫算ヲ以テ之ヲ命スヘシ
第十一條 總長、學長又ハ前條ノ規定ニ依リ歲出豫算ノ施行ヲ命セラレタル者ハ歲出ヲ支出スル爲金庫ニ仕拂請求書ヲ發スヘシ
第十二條 大學ニ於テハ當該年度ノ收入濟歲入額ヲ以テ仕拂元受高ト爲シ歲出ヲ支出スルハ此ノ仕拂元受高ヲ超過スルコトヲ得ス
第十三條 各年度ノ歲出ニ屬スル仕拂請求書ヲ發スルハ翌年度四月三十日限トス
第十四條 仕拂請求書ノ發行及執行竝其ノ取扱手續ハ會計規則仕拂命令ノ例ニ依ル
第十五條 歲出豫算明細書ニ定メタル費目ノ彼此流用ヲ要スルトキハ總長又ハ學長ハ所管大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第十六條 各年度ニ屬スル定額戾入ヲ爲スハ翌年度四月三十日ヲ過クルコトヲ得ス
第十七條 大學ニ於テ在外國人、學術家又ハ學術硏究旅行者ニ物品ノ購買、採集又ハ實驗ヲ委託スル場合ニ於テハ其ノ委託ヲ受ケタル者ヲ受取人トシ槪算渡ヲ爲スコトヲ得
第十八條 第一豫備金ハ所管大臣之ヲ管理シ會計規則第十八條ノ規定ニ依ル勅令ニ基キ支出ヲ爲シタルトキハ其ノ金額理由ヲ示ス計算書ヲ作リ大藏大臣ニ通知スヘシ
第十九條 大藏大臣第一豫備金支出ノ通知ヲ受ケタルトキハ之ヲ會計檢査院ニ通知スヘシ
第二十條 帝國大學ニ於テ歲入ヲ徵收スル官吏ハ其ノ徵收簿ノ結果ニ依リ每月徵收報吿書ヲ調製シ參照書類ヲ添ヘ翌月五日迄ニ所管大臣ヲ經由シテ之ヲ大藏大臣ニ送付スヘシ
第四章 年度繰越
第二十一條 每年度內ニ於テ仕拂フヘキ義務ヲ生シ債主ノ支出請求ナキカ又ハ事故アリテ翌年度四月三十日迄ニ仕拂請求書ヲ發セサルモノ及仕拂請求書ヲ發シタルモ同日迄ニ金庫ニ於テ仕拂請求ヲ受ケサルモノハ支出未濟又ハ仕拂未濟トシテ翌年度ニ繰越シ計算ヲ爲スヘシ
第二十二條 工事費又ハ製造費ニシテ年度內ニ仕拂義務ヲ生セス仕拂請求書ヲ發スルニ至ラサリシモノハ之ヲ翌年度ニ繰越スコトヲ得
第二十三條 所管大臣ハ前條ノ規定ニ依リ繰越ヲ爲サムトスルトキハ翌年度四月三十日迄ニ繰越計算書ヲ作リ參照書類ヲ添ヘ大藏大臣ノ承認ヲ求ムヘシ
第二十四條 大藏大臣ハ前條ノ繰越ヲ承認シタルトキハ之ヲ會計檢査院ニ通知スヘシ
第二十五條 特ニ用途ヲ指定シタル寄附金ニシテ每年度內ニ仕拂請求書ヲ發スルニ至ラサリシ殘額ハ總テ翌年度ニ繰越シ使用スヘシ其ノ仕拂請求書ヲ發シテ年度內ニ金庫ニ於テ仕拂ヲ終ラサリシモノハ第二十一條ノ仕拂未濟金ノ例ニ依ル但シ本條ノ支出殘額ニシテ爾後仕拂ヲ要セサルモノハ寄附者ノ同意ヲ得テ資金ト爲スコトヲ得
第二十六條 第二十一條又ハ前條ノ規定ニ依リ繰越シタル支出未濟及仕拂未濟ノ金額ニシテ會計法第十八條ノ規定ニ依リ期滿免除ト爲リタルモノハ總テ資金ニ組入ルヘシ
第二十七條 每年度ノ歲入中支出濟額及繰越額ヲ控除シタル殘餘ハ總テ資金ニ組入ルヘシ
第五章 雜則
第二十八條 大藏省ハ各帝國大學特別會計及官立大學特別會計ノ主計簿ヲ備ヘ歲入ノ豫算額、確定額、收入濟額、不納缺損額、收入未濟額、歲出ノ豫算額、豫算決定後增加額、仕拂元受高、支出濟額、翌年度繰越額、殘額ヲ登記スヘシ
第二十九條 歲入ノ徵收スル官吏ハ徵收簿ヲ備ヘ歲入ノ豫算額、確定額、收入濟額、不納缺損額、收入未濟額ヲ登記スヘシ
第三十條 文部省ハ官立大學特別會計ノ歲入簿ヲ備ヘ歲入ノ豫算額、確定額、收入濟額、不納缺損額、收入未濟額ヲ登記スヘシ
第三十一條 金庫出納役ハ支出簿ヲ備ヘ歲出ノ豫算額、仕拂請求書受領濟額ヲ登記シ仕拂元受高差引簿ヲ備ヘ仕拂元受高、仕拂請求書受領濟額、仕拂額ヲ登記スヘシ
第三十二條 本令ニ規定セサルモノニ付テハ會計規則ヲ準用ス
附 則
本令ハ大正十年度ヨリ之ヲ施行ス
帝國大學特別會計規則ハ之ヲ廢止ス但シ大正九年度分ニ付テハ仍其ノ效力ヲ有ス
朕大学特別会計規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正十年四月十一日
内閣総理大臣 原敬
大蔵大臣 子爵 高橋是清
文部大臣 中橋徳五郎
勅令第八十一号
大学特別会計規則
第一章 資金
第一条 資金ニシテ特ニ用途ヲ指定シタルモノハ之ヲ特別資金トシ其ノ他ノモノハ之ヲ維持資金トス
特別資金ヨリ生スル利子其ノ他ノ収入ハ特定ノ用途ニ充テ其ノ残余ハ該資金ノ増殖ニ充ツルモノトス
維持資金ヨリ生スル利子其ノ他ノ収入ハ帝国大学ニ在リテハ当該大学ノ経費ニ、官立大学ニ在リテハ官立大学一般ノ経費ニ充ツルモノトス但シ大学特別会計法第三条但書及大正十年勅令第八十二号第二項ノ規定ニ依リ区分整理スル資金ヨリ生スル収入ハ当該大学ノ経費ニ充ツルモノトス
第二条 資金ハ所管大臣之ヲ管理スヘシ
第三条 資金ニ属スル現金ハ総テ大蔵省預金部ニ預入ルヘシ
第四条 資金ニ属スル現金ヲ以テ不動産、公債証書其ノ他ノ証券ニ換ヘ又ハ資金ニ属スル不動産、公債証書其ノ他ノ証券ヲ離権シ若ハ他ノ不動産、公債証書其ノ他ノ証券ニ換ヘムトスルトキハ所管大臣大蔵大臣ト協議シテ之ヲ定ムヘシ但シ寄附ニ係ル不動産ハ寄附者ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ離権スルコトヲ得ス
第五条 資金ニ属スル現金ノ会計ハ別途ノ歳入歳出トシテ之ヲ整理スヘシ
第六条 資金ニ属スル現金ノ受入及払出ニ関スル取扱方ハ所管大臣大蔵大臣ト協議シテ之ヲ定ムヘシ
第二章 予算決算
第七条 歳入歳出予定計算書ハ所管大臣之ヲ調製シ前年度八月三十一日迄ニ大蔵大臣ニ送付スヘシ
第八条 所管大臣ハ其ノ年三月三十一日現在ノ資金明細目録ヲ調製シ毎年度ノ予算ニ添附スヘシ
第九条 歳入歳出ノ決定計算書ハ所管大臣之ヲ調製シ翌年度八月三十一日迄ニ大蔵大臣ニ送付スヘシ
第三章 収入支出
第十条 所管大臣ハ学部長、医学部附属医院長、伝染病研究所長又ハ東京帝国大学附属航空研究所長ヲシテ歳入歳出予算ノ一部ヲ施行セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ歳出予算ヲ施行セシメムトスルトキハ仕払予算ヲ以テ之ヲ命スヘシ
第十一条 総長、学長又ハ前条ノ規定ニ依リ歳出予算ノ施行ヲ命セラレタル者ハ歳出ヲ支出スル為金庫ニ仕払請求書ヲ発スヘシ
第十二条 大学ニ於テハ当該年度ノ収入済歳入額ヲ以テ仕払元受高ト為シ歳出ヲ支出スルハ此ノ仕払元受高ヲ超過スルコトヲ得ス
第十三条 各年度ノ歳出ニ属スル仕払請求書ヲ発スルハ翌年度四月三十日限トス
第十四条 仕払請求書ノ発行及執行並其ノ取扱手続ハ会計規則仕払命令ノ例ニ依ル
第十五条 歳出予算明細書ニ定メタル費目ノ彼此流用ヲ要スルトキハ総長又ハ学長ハ所管大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第十六条 各年度ニ属スル定額戻入ヲ為スハ翌年度四月三十日ヲ過クルコトヲ得ス
第十七条 大学ニ於テ在外国人、学術家又ハ学術研究旅行者ニ物品ノ購買、採集又ハ実験ヲ委託スル場合ニ於テハ其ノ委託ヲ受ケタル者ヲ受取人トシ概算渡ヲ為スコトヲ得
第十八条 第一予備金ハ所管大臣之ヲ管理シ会計規則第十八条ノ規定ニ依ル勅令ニ基キ支出ヲ為シタルトキハ其ノ金額理由ヲ示ス計算書ヲ作リ大蔵大臣ニ通知スヘシ
第十九条 大蔵大臣第一予備金支出ノ通知ヲ受ケタルトキハ之ヲ会計検査院ニ通知スヘシ
第二十条 帝国大学ニ於テ歳入ヲ徴収スル官吏ハ其ノ徴収簿ノ結果ニ依リ毎月徴収報告書ヲ調製シ参照書類ヲ添ヘ翌月五日迄ニ所管大臣ヲ経由シテ之ヲ大蔵大臣ニ送付スヘシ
第四章 年度繰越
第二十一条 毎年度内ニ於テ仕払フヘキ義務ヲ生シ債主ノ支出請求ナキカ又ハ事故アリテ翌年度四月三十日迄ニ仕払請求書ヲ発セサルモノ及仕払請求書ヲ発シタルモ同日迄ニ金庫ニ於テ仕払請求ヲ受ケサルモノハ支出未済又ハ仕払未済トシテ翌年度ニ繰越シ計算ヲ為スヘシ
第二十二条 工事費又ハ製造費ニシテ年度内ニ仕払義務ヲ生セス仕払請求書ヲ発スルニ至ラサリシモノハ之ヲ翌年度ニ繰越スコトヲ得
第二十三条 所管大臣ハ前条ノ規定ニ依リ繰越ヲ為サムトスルトキハ翌年度四月三十日迄ニ繰越計算書ヲ作リ参照書類ヲ添ヘ大蔵大臣ノ承認ヲ求ムヘシ
第二十四条 大蔵大臣ハ前条ノ繰越ヲ承認シタルトキハ之ヲ会計検査院ニ通知スヘシ
第二十五条 特ニ用途ヲ指定シタル寄附金ニシテ毎年度内ニ仕払請求書ヲ発スルニ至ラサリシ残額ハ総テ翌年度ニ繰越シ使用スヘシ其ノ仕払請求書ヲ発シテ年度内ニ金庫ニ於テ仕払ヲ終ラサリシモノハ第二十一条ノ仕払未済金ノ例ニ依ル但シ本条ノ支出残額ニシテ爾後仕払ヲ要セサルモノハ寄附者ノ同意ヲ得テ資金ト為スコトヲ得
第二十六条 第二十一条又ハ前条ノ規定ニ依リ繰越シタル支出未済及仕払未済ノ金額ニシテ会計法第十八条ノ規定ニ依リ期満免除ト為リタルモノハ総テ資金ニ組入ルヘシ
第二十七条 毎年度ノ歳入中支出済額及繰越額ヲ控除シタル残余ハ総テ資金ニ組入ルヘシ
第五章 雑則
第二十八条 大蔵省ハ各帝国大学特別会計及官立大学特別会計ノ主計簿ヲ備ヘ歳入ノ予算額、確定額、収入済額、不納欠損額、収入未済額、歳出ノ予算額、予算決定後増加額、仕払元受高、支出済額、翌年度繰越額、残額ヲ登記スヘシ
第二十九条 歳入ノ徴収スル官吏ハ徴収簿ヲ備ヘ歳入ノ予算額、確定額、収入済額、不納欠損額、収入未済額ヲ登記スヘシ
第三十条 文部省ハ官立大学特別会計ノ歳入簿ヲ備ヘ歳入ノ予算額、確定額、収入済額、不納欠損額、収入未済額ヲ登記スヘシ
第三十一条 金庫出納役ハ支出簿ヲ備ヘ歳出ノ予算額、仕払請求書受領済額ヲ登記シ仕払元受高差引簿ヲ備ヘ仕払元受高、仕払請求書受領済額、仕払額ヲ登記スヘシ
第三十二条 本令ニ規定セサルモノニ付テハ会計規則ヲ準用ス
附 則
本令ハ大正十年度ヨリ之ヲ施行ス
帝国大学特別会計規則ハ之ヲ廃止ス但シ大正九年度分ニ付テハ仍其ノ効力ヲ有ス