借家法
法令番号: 法律第五十號
公布年月日: 大正10年4月8日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル借家法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正十年四月七日
內閣總理大臣 原敬
司法大臣 伯爵 大木遠吉
法律第五十號
借家法
第一條 建物ノ賃貸借ハ其ノ登記ナキモ建物ノ引渡アリタルトキハ爾後其ノ建物ニ付物權ヲ取得シタル者ニ對シ其ノ效力ヲ生ス
民法第五百六十六條第一項及第三項ノ規定ハ登記セサル賃貸借ノ目的タル建物カ賣買ノ目的物ナル場合ニ之ヲ準用ス
民法第五百三十三條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二條 賃貸借ノ期間滿了ノ後賃借人カ建物ノ使用又ハ收益ヲ繼續スル場合ニ於テ賃貸人カ遲滯ナク異議ヲ述ヘサリシトキハ前賃貸借ト同一ノ條件ヲ以テ更ニ賃貸借ヲ爲シタルモノト看做ス
第三條 賃貸人ノ解約申入ハ六月前ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
六月未滿ノ期間ノ定アル賃貸借ハ之ヲ期間ノ定ナキモノト看做ス
前條ノ規定ハ賃貸借カ解約申入ニ因リテ終了シタル場合ニ之ヲ準用ス
第四條 解約申入ニ因リテ終了スヘキ轉貸借アル場合ニ於テ賃貸借カ終了スヘキトキハ賃貸人ハ轉借人ニ對シ其ノ旨ノ通知ヲ爲スニ非サレハ其ノ終了ヲ以テ轉借人ニ對抗スルコトヲ得ス
賃貸人カ前項ノ通知ヲ爲シタルトキハ轉貸借ハ其ノ通知ノ後六月ヲ經過スルニ因リテ終了ス
第五條 賃貸人ノ同意ヲ得テ建物ニ附加シタル疊、建具其ノ他ノ造作アルトキハ賃借人ハ賃貸借終了ノ場合ニ於テ其ノ際ニ於ケル賃貸人ニ對シ時價ヲ以テ其ノ造作ヲ買取ルヘキコトヲ請求スルコトヲ得賃貸人ヨリ買受ケタル造作ニ付亦同シ
第六條 前五條ノ規定ニ反スル特約ニシテ賃借人ニ不利ナルモノハ之ヲ爲ササルモノト看做ス
第七條 建物ノ借賃カ土地若ハ建物ニ對スル租稅其ノ他ノ負擔ノ增減ニ因リ、土地若ハ建物ノ價格ノ昂低ニ因リ又ハ比隣ノ建物ノ借賃ニ比較シテ不相當ナルニ至リタルトキハ契約ノ條件ニ拘ラス當事者ハ將來ニ向テ借賃ノ增減ヲ請求スルコトヲ得但シ一定ノ期間借賃ヲ增加セサルヘキ特約アルトキハ其ノ定ニ從フ
第八條 本法ハ一時使用ノ爲建物ノ賃貸借ヲ爲シタルコト明ナル場合ニハ之ヲ適用セス
附 則
第九條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十條 本法施行ノ地區ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一條 本法ハ本法施行前ニ爲シタル建物ノ賃貸借ニ付亦之ヲ適用ス但シ本法施行前ニ賃貸人ノ解約ノ申入アリタル場合ニ於テハ賃貸借ハ旣ニ經過シタル期間ヲ算入シ六月ヲ經過スルニ因リテ終了ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル借家法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正十年四月七日
内閣総理大臣 原敬
司法大臣 伯爵 大木遠吉
法律第五十号
借家法
第一条 建物ノ賃貸借ハ其ノ登記ナキモ建物ノ引渡アリタルトキハ爾後其ノ建物ニ付物権ヲ取得シタル者ニ対シ其ノ効力ヲ生ス
民法第五百六十六条第一項及第三項ノ規定ハ登記セサル賃貸借ノ目的タル建物カ売買ノ目的物ナル場合ニ之ヲ準用ス
民法第五百三十三条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二条 賃貸借ノ期間満了ノ後賃借人カ建物ノ使用又ハ収益ヲ継続スル場合ニ於テ賃貸人カ遅滞ナク異議ヲ述ヘサリシトキハ前賃貸借ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ賃貸借ヲ為シタルモノト看做ス
第三条 賃貸人ノ解約申入ハ六月前ニ之ヲ為スコトヲ要ス
六月未満ノ期間ノ定アル賃貸借ハ之ヲ期間ノ定ナキモノト看做ス
前条ノ規定ハ賃貸借カ解約申入ニ因リテ終了シタル場合ニ之ヲ準用ス
第四条 解約申入ニ因リテ終了スヘキ転貸借アル場合ニ於テ賃貸借カ終了スヘキトキハ賃貸人ハ転借人ニ対シ其ノ旨ノ通知ヲ為スニ非サレハ其ノ終了ヲ以テ転借人ニ対抗スルコトヲ得ス
賃貸人カ前項ノ通知ヲ為シタルトキハ転貸借ハ其ノ通知ノ後六月ヲ経過スルニ因リテ終了ス
第五条 賃貸人ノ同意ヲ得テ建物ニ附加シタル畳、建具其ノ他ノ造作アルトキハ賃借人ハ賃貸借終了ノ場合ニ於テ其ノ際ニ於ケル賃貸人ニ対シ時価ヲ以テ其ノ造作ヲ買取ルヘキコトヲ請求スルコトヲ得賃貸人ヨリ買受ケタル造作ニ付亦同シ
第六条 前五条ノ規定ニ反スル特約ニシテ賃借人ニ不利ナルモノハ之ヲ為ササルモノト看做ス
第七条 建物ノ借賃カ土地若ハ建物ニ対スル租税其ノ他ノ負担ノ増減ニ因リ、土地若ハ建物ノ価格ノ昂低ニ因リ又ハ比隣ノ建物ノ借賃ニ比較シテ不相当ナルニ至リタルトキハ契約ノ条件ニ拘ラス当事者ハ将来ニ向テ借賃ノ増減ヲ請求スルコトヲ得但シ一定ノ期間借賃ヲ増加セサルヘキ特約アルトキハ其ノ定ニ従フ
第八条 本法ハ一時使用ノ為建物ノ賃貸借ヲ為シタルコト明ナル場合ニハ之ヲ適用セス
附 則
第九条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十条 本法施行ノ地区ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一条 本法ハ本法施行前ニ為シタル建物ノ賃貸借ニ付亦之ヲ適用ス但シ本法施行前ニ賃貸人ノ解約ノ申入アリタル場合ニ於テハ賃貸借ハ既ニ経過シタル期間ヲ算入シ六月ヲ経過スルニ因リテ終了ス