陸軍工科学校令
法令番号: 勅令第二百三十八號
公布年月日: 大正9年8月9日
法令の形式: 勅令
朕陸軍工科學校令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正九年八月七日
內閣總理大臣 原敬
陸軍大臣 田中義一
勅令第二百三十八號
陸軍工科學校令
第一條 陸軍工科學校ハ陸軍砲工兵工長ト爲スヘキ生徒及兵器技術ヲ掌ル砲工兵科士官ト爲スヘキ學生ヲ敎育シ砲工兵工長タル學生ニ陸軍技術ニ關スル學術ヲ修得セシムル所トス
第二條 生徒及學生ノ敎育ヲ分チテ敎授及訓育トシ其ノ敎育綱領ハ陸軍大臣ノ認可ヲ受ケ陸軍技術本部長之ヲ定ム
第三條 生徒及學生ノ敎育ノ實施ハ敎則ニ依ル其ノ敎則ハ前條ノ敎育綱領ニ基キ陸軍技術本部長ノ認可ヲ受ケ校長之ヲ定ム
第四條 陸軍工科學校ニ左ノ職員ヲ置ク
校長
副官
敎授部長
敎官
生徒隊長
生徒隊副官
生徒隊中隊長
生徒隊附
主計
軍醫
准士官、下士、判任文官
第五條 校長ハ陸軍技術本部長ニ隸シ校務ヲ總理ス
第六條 副官ハ校長ノ命ヲ承ケ庶務ヲ掌ル
第七條 敎授部長ハ校長ノ命ヲ承ケ敎務ヲ監理ス
第八條 敎官ハ敎授部長ノ命ヲ承ケ各科目ノ敎授ヲ擔任ス
第九條 生徒隊長ハ生徒隊ヲ統ヘ校長ノ命ヲ承ルケ訓育ヲ監理ス
第十條 生徒隊副官ハ生徒隊長ノ命ヲ承ケ庶務ヲ掌ル
第十一條 生徒隊中隊長ハ生徒隊長ノ命ヲ承ケ訓育ヲ擔任ス
第十二條 生徒隊附ハ生徒隊中隊長ノ命ヲ承ケ訓育ヲ分擔ス
第十三條 主計及軍醫ハ校長ノ命ヲ承ケ各其ノ擔任ノ業務ヲ掌ル
第十四條 准士官、下士及判任文官ハ上官ノ命ヲ承ケ服務ス
第十五條 武官タル職員ニハ便宜ノ時期ニ於テ隊附勤務ヲ爲サシムルコトアルヘシ
第十六條 學生ハ左ノ二種ニ之ヲ區別ス
普通科學生
高等科學生
第十七條 生徒ハ左ノ者ヲ以テ之ニ充ツ
一 現役各兵科憲兵科ヲ除ク兵卒ニシテ召募試驗ニ合格シタルモノ
二 陸海軍現役豫備役又ハ後備役ニ在ラサル者ニシテ召募試驗ニ合格シタルモノ
普通科學生ハ砲工兵工長ニシテ檢定試驗ニ合格シタル者ヲ以テ之ニ充ツ
高等科學生ハ砲工兵上等工長ニシテ檢定試驗ニ合格シタル者ヲ以テ之ニ充ツ
第十八條 前條ノ召募試驗及檢定試驗其ノ他生徒及學生ノ採用ニ關スル事項ニ付テハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十九條 生徒ノ修業期間ハ二年トシ十二月ヨリ翌翌年十一月ニ至ル
普通科學生ノ修業期間ハ一年トシ十二月ヨリ翌年十一月ニ至ル
高等科學生ノ修業期間ハ一年トシ十二月ヨリ翌年十一月ニ至ル
第二十條 學生中營外居住者ハ校外ニ、學生中營內居住者及生徒ハ校內ニ居住セシム
第十七條第一號ノ規定ニ依ル生徒及學生中營內居住者ノ兵器及被服ハ所屬部隊ヨリ之ヲ携行セシム
生徒及學生ノ修業ニ要スル兵器、圖書、器具、消耗品及修業用ノ原料ハ之ヲ貸付シ又ハ支給スルコトヲ得
第二十一條 生徒ハ總テ校長ノ管理ニ屬ス
學生ノ願屆其ノ他業務ニ關スル諸件ハ校長ノ管理ニ屬ス
第二十二條 生徒及學生ハ情願ヲ以テ退校スルコトヲ得ス
第二十三條 生徒及學生左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ之ヲ退校セシム
一 學術ノ成績不良ニシテ卒業ノ目途ナキ者
二 軍紀ヲ紊リ又ハ屢法則ヲ犯ス者
三 品行不正ニシテ改悛ノ目途ナキ者
四 傷痍疾病ニ因リ修業ニ堪ヘサル者
前項ノ規定ニ依リ退校セシメラレタル生徒第十七條第一項第一號ノ規定ニ依ル者ナルトキハ原所管部隊ニ之ヲ歸還セシム
第二十四條 生徒及學生中傷痍疾病其ノ他ノ事故ニ因リ修業期間內ニ所定ノ學術ヲ修メ得サル者ニシテ尙望アル者ハ若干日數間之ヲ滯學セシムルコトヲ得
第二十五條 前二條ノ規定ニ該當スル者アルトキハ校長其ノ事由ヲ具シ陸軍技術本部長ヲ經テ陸軍大臣ニ上申シ陸軍大臣之ヲ裁定處分ス
第二十六條 生徒又ハ學生卒業ノ期ニ至リタルトキハ校長ハ考科列序ヲ定メ陸軍技術本部長ヲ經テ陸軍大臣ノ認可ヲ受ケ卒業者ニ卒業證書ヲ付與ス
第二十七條 普通科學生中成績優秀ノ者ハ卒業ノ際陸軍技術本部長ニ於テ之ヲ員外學生ト爲シ必要ノ學術ヲ硏究セシムルコトヲ得其ノ修業等ニ關スル事項ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第二十八條 滯學セシメラレタル生徒又ハ學生修業ヲ終リタルトキハ前條ノ規定ニ準シ之ヲ取扱フモノトス
第二十九條 卒業證書ヲ付與セラレタル學生ハ校長直ニ原所管部隊ニ之ヲ歸還セシム但シ員外學生ト爲サレタル者ニ付テハ其ノ修業ヲ終リタル時トス
第三十條 校長ハ每年生徒ニ三週間以內、學生ニ二週間以內ノ休暇ヲ與フルコトヲ得
第三十一條 生徒及學生ノ敎育上必要アルトキハ校長ハ砲兵工廠提理ニ禀議シ其ノ工廠ノ工場ノ一部ヲ使用スルコトヲ得
第三十二條 陸軍大臣ハ臨時ニ各隊ヨリ所要ノ工卒ヲ陸軍工科學校ニ分遣セシメ之ニ砲工兵工長タルニ必要ナル修業ヲ爲サシムルコトヲ得
附 則
本令ハ大正九年八月十日ヨリ之ヲ施行ス
大正九年入校セシムヘキ學生ハ大正十年二月入校セシム
本令施行ノ際現ニ陸軍砲兵工科學校生徒タル者ハ陸軍工科學校生徒トシ砲兵工長候補者ニ在リテハ相當學年ニ之ヲ編入シ火工下士候補者ニ在リテハ仍從前ノ例ニ依リ之ヲ敎育ス
朕陸軍工科学校令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正九年八月七日
内閣総理大臣 原敬
陸軍大臣 田中義一
勅令第二百三十八号
陸軍工科学校令
第一条 陸軍工科学校ハ陸軍砲工兵工長ト為スヘキ生徒及兵器技術ヲ掌ル砲工兵科士官ト為スヘキ学生ヲ教育シ砲工兵工長タル学生ニ陸軍技術ニ関スル学術ヲ修得セシムル所トス
第二条 生徒及学生ノ教育ヲ分チテ教授及訓育トシ其ノ教育綱領ハ陸軍大臣ノ認可ヲ受ケ陸軍技術本部長之ヲ定ム
第三条 生徒及学生ノ教育ノ実施ハ教則ニ依ル其ノ教則ハ前条ノ教育綱領ニ基キ陸軍技術本部長ノ認可ヲ受ケ校長之ヲ定ム
第四条 陸軍工科学校ニ左ノ職員ヲ置ク
校長
副官
教授部長
教官
生徒隊長
生徒隊副官
生徒隊中隊長
生徒隊附
主計
軍医
准士官、下士、判任文官
第五条 校長ハ陸軍技術本部長ニ隷シ校務ヲ総理ス
第六条 副官ハ校長ノ命ヲ承ケ庶務ヲ掌ル
第七条 教授部長ハ校長ノ命ヲ承ケ教務ヲ監理ス
第八条 教官ハ教授部長ノ命ヲ承ケ各科目ノ教授ヲ担任ス
第九条 生徒隊長ハ生徒隊ヲ統ヘ校長ノ命ヲ承ルケ訓育ヲ監理ス
第十条 生徒隊副官ハ生徒隊長ノ命ヲ承ケ庶務ヲ掌ル
第十一条 生徒隊中隊長ハ生徒隊長ノ命ヲ承ケ訓育ヲ担任ス
第十二条 生徒隊附ハ生徒隊中隊長ノ命ヲ承ケ訓育ヲ分担ス
第十三条 主計及軍医ハ校長ノ命ヲ承ケ各其ノ担任ノ業務ヲ掌ル
第十四条 准士官、下士及判任文官ハ上官ノ命ヲ承ケ服務ス
第十五条 武官タル職員ニハ便宜ノ時期ニ於テ隊附勤務ヲ為サシムルコトアルヘシ
第十六条 学生ハ左ノ二種ニ之ヲ区別ス
普通科学生
高等科学生
第十七条 生徒ハ左ノ者ヲ以テ之ニ充ツ
一 現役各兵科憲兵科ヲ除ク兵卒ニシテ召募試験ニ合格シタルモノ
二 陸海軍現役予備役又ハ後備役ニ在ラサル者ニシテ召募試験ニ合格シタルモノ
普通科学生ハ砲工兵工長ニシテ検定試験ニ合格シタル者ヲ以テ之ニ充ツ
高等科学生ハ砲工兵上等工長ニシテ検定試験ニ合格シタル者ヲ以テ之ニ充ツ
第十八条 前条ノ召募試験及検定試験其ノ他生徒及学生ノ採用ニ関スル事項ニ付テハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十九条 生徒ノ修業期間ハ二年トシ十二月ヨリ翌翌年十一月ニ至ル
普通科学生ノ修業期間ハ一年トシ十二月ヨリ翌年十一月ニ至ル
高等科学生ノ修業期間ハ一年トシ十二月ヨリ翌年十一月ニ至ル
第二十条 学生中営外居住者ハ校外ニ、学生中営内居住者及生徒ハ校内ニ居住セシム
第十七条第一号ノ規定ニ依ル生徒及学生中営内居住者ノ兵器及被服ハ所属部隊ヨリ之ヲ携行セシム
生徒及学生ノ修業ニ要スル兵器、図書、器具、消耗品及修業用ノ原料ハ之ヲ貸付シ又ハ支給スルコトヲ得
第二十一条 生徒ハ総テ校長ノ管理ニ属ス
学生ノ願届其ノ他業務ニ関スル諸件ハ校長ノ管理ニ属ス
第二十二条 生徒及学生ハ情願ヲ以テ退校スルコトヲ得ス
第二十三条 生徒及学生左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ之ヲ退校セシム
一 学術ノ成績不良ニシテ卒業ノ目途ナキ者
二 軍紀ヲ紊リ又ハ屡法則ヲ犯ス者
三 品行不正ニシテ改悛ノ目途ナキ者
四 傷痍疾病ニ因リ修業ニ堪ヘサル者
前項ノ規定ニ依リ退校セシメラレタル生徒第十七条第一項第一号ノ規定ニ依ル者ナルトキハ原所管部隊ニ之ヲ帰還セシム
第二十四条 生徒及学生中傷痍疾病其ノ他ノ事故ニ因リ修業期間内ニ所定ノ学術ヲ修メ得サル者ニシテ尚望アル者ハ若干日数間之ヲ滞学セシムルコトヲ得
第二十五条 前二条ノ規定ニ該当スル者アルトキハ校長其ノ事由ヲ具シ陸軍技術本部長ヲ経テ陸軍大臣ニ上申シ陸軍大臣之ヲ裁定処分ス
第二十六条 生徒又ハ学生卒業ノ期ニ至リタルトキハ校長ハ考科列序ヲ定メ陸軍技術本部長ヲ経テ陸軍大臣ノ認可ヲ受ケ卒業者ニ卒業証書ヲ付与ス
第二十七条 普通科学生中成績優秀ノ者ハ卒業ノ際陸軍技術本部長ニ於テ之ヲ員外学生ト為シ必要ノ学術ヲ研究セシムルコトヲ得其ノ修業等ニ関スル事項ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第二十八条 滞学セシメラレタル生徒又ハ学生修業ヲ終リタルトキハ前条ノ規定ニ準シ之ヲ取扱フモノトス
第二十九条 卒業証書ヲ付与セラレタル学生ハ校長直ニ原所管部隊ニ之ヲ帰還セシム但シ員外学生ト為サレタル者ニ付テハ其ノ修業ヲ終リタル時トス
第三十条 校長ハ毎年生徒ニ三週間以内、学生ニ二週間以内ノ休暇ヲ与フルコトヲ得
第三十一条 生徒及学生ノ教育上必要アルトキハ校長ハ砲兵工廠提理ニ禀議シ其ノ工廠ノ工場ノ一部ヲ使用スルコトヲ得
第三十二条 陸軍大臣ハ臨時ニ各隊ヨリ所要ノ工卒ヲ陸軍工科学校ニ分遣セシメ之ニ砲工兵工長タルニ必要ナル修業ヲ為サシムルコトヲ得
附 則
本令ハ大正九年八月十日ヨリ之ヲ施行ス
大正九年入校セシムヘキ学生ハ大正十年二月入校セシム
本令施行ノ際現ニ陸軍砲兵工科学校生徒タル者ハ陸軍工科学校生徒トシ砲兵工長候補者ニ在リテハ相当学年ニ之ヲ編入シ火工下士候補者ニ在リテハ仍従前ノ例ニ依リ之ヲ教育ス