海軍懲罰令
法令番号: 勅令第二百三十九號
公布年月日: 明治41年9月28日
法令の形式: 勅令
朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ海軍懲罰令改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十一年九月二十六日
內閣總理大臣 侯爵 桂太郞
海軍大臣 男爵 齋藤實
勅令第二百三十九號
海軍懲罰令
第一章 總則
第一條 本令ハ海軍軍人ニ之ヲ適用ス
第二條 海軍軍屬ハ海軍軍人ニ準ス但シ勅任官及同待遇者ハ將官ニ、奏任官及同待遇者ハ上長官及士官ニ、判任官及同待遇者ハ准士官ニ、其ノ他ノ者ハ卒ニ同シ
第三條 海軍軍屬ニハ文官懲戒令ヲ適用セス但シ免官處分ヲ爲スヘキ場合ハ此ノ限ニ在ラス
第四條 本令ハ刑ヲ定メタル法令ニ依リ論スヘキ場合ニ之ヲ適用セス刑事裁判手續中ノ事件ニ付亦同シ
第五條 海軍軍人ト稱スルハ海軍ノ高等武官、候補生、准士官及下士卒ニシテ左ニ記載シタル者ヲ謂フ
一 現役ニ在ル者但シ召集中ニ非サル歸休兵ヲ除ク
二 豫備役、後備役ニ在リ召集中ノ者
第六條 海軍軍屬ト稱スルハ海軍文官、同待遇者及宣誓シテ海軍ノ勤務ニ服スル者ヲ謂フ
第七條 長官ト稱スルハ海軍軍令部長、鎭守府司令長官、艦隊司令長官、司令長官ヲ置カサル艦隊ノ首席司令官、要港部司令官ヲ謂フ
海軍大臣ニ直屬シ且部下ニ隷屬廳ヲ有スル諸官ハ之ヲ長官ト看做ス
第八條 所轄長ト稱スルハ海軍大臣又ハ長官ニ直屬スル各廳ノ長、海軍省局長、艦隊司令官、防備隊司令官、艦長、工作船指揮官、諸隊司令、軍法會議上席主理ヲ謂フ
海軍次官ハ海軍大臣官房所屬職員、外國駐在員及外國留學生ニ對シ、臺灣總督府海軍參謀長及海軍病院船軍醫長ハ各其ノ部下ニ對シ之ヲ所轄長ト看做ス
第二章 犯行
第九條 左ニ揭クル行爲アルトキハ其ノ故意ニ出ツルト過失ニ出ツルトヲ問ハス之ヲ懲罰ス
一 服從ノ道ニ違ヒタルトキ
二 職務ノ權限ヲ誤リタルトキ
三 成規ニ違ヒタル處置ヲ爲シタルトキ
四 上申、下達其ノ他定期アル事件ヲ𥡞延シタルトキ
五 命令ヲ誤リ又ハ之ヲ誤リ傳ヘタルトキ
六 擅ニ職役ヲ離レ又ハ職役ニ就カサルトキ
七 擅ニ滯在スヘキ地ヲ離レタルトキ
八 徵召ノ命ヲ受ケ故ナク到著ノ期限ニ後レタルトキ
九 酩酊シテ事ヲ省セサルトキ
十 艦船ヲ毀損シタルトキ
十一 艦船ヲ衝突、坐礁其ノ他ノ危險ニ付シタルトキ
十二 官物ヲ毀損、亡失、傷害又ハ汚損シタルトキ
十三 官物ヲ濫用シタルトキ
十四 艦船、兵器、機關、建築、土木ノ設計又ハ工事ヲ誤リタルトキ
十五 兵器、糧餉其ノ他物品ノ調製、保存、運搬又ハ供給ノ方法ヲ誤リタルトキ
十六 濫ニ銃砲ヲ發射シ又ハ爆發物ヲ使用シタルトキ
十七 火氣ノ取扱ヲ麤略ニシタルトキ
十八 暴行、脅迫、鬪爭又ハ侮辱ノ行爲アリタルトキ
十九 詐僞ニ涉ル言語又ハ行爲アリタルトキ
二十 給與又ハ貸與ヲ受ケタル物品ヲ濫ニ貸借シ又ハ其ノ定數ヲ缺キタルトキ
二十一 擅ニ艦船內ニ商貨ヲ積載シタルトキ
二十二 祕密ヲ漏泄シ又ハ漏泄セムトシタルトキ
二十三 監督又ハ指導ノ道ヲ失ヒタルトキ
二十四 職務上ノ地位ヲ利用シ私利ヲ圖リタルトキ
二十五 禮法ニ違ヒタルトキ
二十六 制規又ハ命令ニ違ヒタル服裝ヲ爲シタルトキ
二十七 前諸號ノ外職務ヲ怠リ若ハ職役上ノ義務ニ背キ又ハ紀律ニ違ヒ若ハ威嚴、信用ヲ失フヘキ行爲アリタルトキ
第三章 懲罰
第十條 懲罰ハ左ノ如シ
一 謹愼
二 拘禁
三 禁足
第十一條 謹愼ハ准士官以上ニ、拘禁及禁足ハ下士卒ニ之ヲ科ス但シ拘禁ハ之ヲ軍屬ニ適用セス
第十二條 謹愼ハ六十日以內トシ勤務ヲ停メ居宅內又ハ艦船其ノ他勤務ノ場所ニ屛居謹愼セシム
第十三條 拘禁ハ三十日以內トシ演習及敎育ノ外勤務ヲ停メ一室ニ閉錮ス
第十四條 禁足ハ六十日以內トシ勤務ノ外艦船、官衙、團隊又ハ居宅ヲ出ツルコトヲ禁ス
第四章 懲罰權限
第十五條 分隊長、驅逐艦長、艇長及海軍用船監督官ハ部下ノ下士卒ニ對シ十五日以內ノ拘禁又ハ三十日以內ノ禁足ヲ科ス
所轄長ハ前項懲罰權者ノ權限ニ屬スル場合ヲ除クノ外部下海軍軍人ヲ懲罰ス
長官ハ所轄長ノ部下ニ屬スル者ヲ除クノ外部下海軍軍人ヲ懲罰ス
海軍大臣ハ長官及所轄長ノ部下ニ屬セサル海軍軍人ヲ懲罰ス
第十六條 海軍大臣又ハ長官ハ臨時ニ編成シタル部隊ヲ指揮スル者ヲシテ所轄長ニ等シキ懲罰權ヲ行ハシムルコトヲ得
第十七條 長官ハ部下ノ海軍軍人ニシテ他ノ懲罰權者ニ屬セサル者ニ對シ部下ノ將校、同相當官ノ中ヨリ指定シタル者ヲシテ所轄長ニ等シキ懲罰權ヲ行ハシムルコトヲ得
第十八條 所轄長ハ其ノ部下ニ分隊長ヲ置カサル場合ニ於テ部下ノ將校、同相當官ノ中ヨリ指定シタル者ヲシテ分隊長ニ等シキ懲罰權ヲ行ハシムルコトヲ得
第十九條 將官及同相當官ハ海軍大臣旨ヲ承ケ之ヲ懲罰ス
第二十條 懲罰スヘキ犯行アリタル者其ノ處分ヲ受ケスシテ所屬ヲ變更シタルトキハ現所屬ノ懲罰權者之ヲ懲罰ス
第二十一條 懲罰權ヲ有スル者其ノ部下ノ犯行ニ關係シ自ラ懲罰ヲ受クヘキ事由アリト思料スルトキハ懲罰權ヲ行フコトヲ得ス
前項ノ場合ニ於ケル懲罰ハ直上ノ懲罰權者之ヲ行フ
第五章 懲罰手續
第二十二條 謹愼ノ處分ハ言渡書ヲ作リ之ヲ交付スヘシ
第二十三條 拘禁又ハ禁足ノ處分ハ書面ヲ作リ之ヲ言渡スヘシ
分隊所屬ノ下士卒ニ對スル拘禁又ハ禁足ノ處分ハ下士ニ在リテハ其ノ分隊下士ノ列前ニ於テ、卒ニ在リテハ其ノ分隊下士卒ノ列前ニ於テ之ヲ言渡スヘシ
前項ノ規定ハ分隊所屬ニ非サル下士卒ニ對スル拘禁又ハ禁足ノ處分ニ之ヲ準用ス
第二十四條 懲罰ハ各犯行ニ付之ヲ科ス
第二十五條 長官ハ部下ノ將官及同相當官ニ懲罰スヘキ犯行アリト思料スルトキハ事由書ニ證憑ヲ添ヘ海軍大臣ニ具申スヘシ
第二十六條 分隊長及分隊長ニ等シキ懲罰權ヲ行フ者部下ノ犯行其ノ權限以外ノ懲罰ニ該ルト認ムルトキハ意見ヲ付シテ所轄長ニ具申スヘシ
第二十七條 第二十條ノ場合ニ於テハ舊所屬ノ懲罰權者ハ事由書ニ證憑ヲ添ヘ現所屬ノ懲罰權者ニ移牒スヘシ
前項ノ事由書ニハ懲罰ノ程度ニ付意見ヲ付スヘシ
第二十八條 第二十一條第一項ノ場合ニ於テハ懲罰權者ハ其ノ事由ヲ直上ノ懲罰權者ニ具申スヘシ
第二十九條 准士官以上ノ懲罰ハ海軍大臣ニ、下士卒ノ懲罰ハ所屬長官ニ之ヲ報吿スヘシ
第六章 懲罰執行
第三十條 演習、事變其ノ他已ムヲ得サル必要アル場合ニ於テハ謹愼ニ處セラレタル者ヲシテ勤務ニ服セシムルコトヲ得
第三十一條 拘禁ハ其ノ一日ヲ禁足二日ニ換ヘ執行スルコトヲ得
第三十二條 懲罰權者ハ受罰者改悛ノ情顯著ナリト認ムルトキハ懲罰ノ執行ヲ免除スルコトヲ得
第二十九條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十三條 拘禁中必要アルトキハ戒具ヲ用ウルコトヲ得
第三十四條 拘禁中ハ每日一時間以上三時間以內運動ヲ爲サシムヘシ但シ雜役又ハ敎練ヲ以テ運動ニ換フルコトヲ得
第三十五條 受罰ノ初日ハ時間ヲ論セス全一日トシテ之ヲ計算ス
拘禁ノ解止ハ罰期終了ノ翌日午前ニ於テ之ヲ行フ
第三十六條 懲罰處分ヲ受ケタル者逃亡其ノ他ノ理由ニ依リ執行ヲ受ケサルトキハ其ノ日數ヲ懲罰期間ニ算入セス
附 則
本令ハ明治四十一年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
懲罰スヘキ犯行ハ本令施行以前ニ係ルモノト雖本令ニ依リ之ヲ處分ス
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ海軍懲罰令改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十一年九月二十六日
内閣総理大臣 侯爵 桂太郎
海軍大臣 男爵 斎藤実
勅令第二百三十九号
海軍懲罰令
第一章 総則
第一条 本令ハ海軍軍人ニ之ヲ適用ス
第二条 海軍軍属ハ海軍軍人ニ準ス但シ勅任官及同待遇者ハ将官ニ、奏任官及同待遇者ハ上長官及士官ニ、判任官及同待遇者ハ准士官ニ、其ノ他ノ者ハ卒ニ同シ
第三条 海軍軍属ニハ文官懲戒令ヲ適用セス但シ免官処分ヲ為スヘキ場合ハ此ノ限ニ在ラス
第四条 本令ハ刑ヲ定メタル法令ニ依リ論スヘキ場合ニ之ヲ適用セス刑事裁判手続中ノ事件ニ付亦同シ
第五条 海軍軍人ト称スルハ海軍ノ高等武官、候補生、准士官及下士卒ニシテ左ニ記載シタル者ヲ謂フ
一 現役ニ在ル者但シ召集中ニ非サル帰休兵ヲ除ク
二 予備役、後備役ニ在リ召集中ノ者
第六条 海軍軍属ト称スルハ海軍文官、同待遇者及宣誓シテ海軍ノ勤務ニ服スル者ヲ謂フ
第七条 長官ト称スルハ海軍軍令部長、鎮守府司令長官、艦隊司令長官、司令長官ヲ置カサル艦隊ノ首席司令官、要港部司令官ヲ謂フ
海軍大臣ニ直属シ且部下ニ隷属庁ヲ有スル諸官ハ之ヲ長官ト看做ス
第八条 所轄長ト称スルハ海軍大臣又ハ長官ニ直属スル各庁ノ長、海軍省局長、艦隊司令官、防備隊司令官、艦長、工作船指揮官、諸隊司令、軍法会議上席主理ヲ謂フ
海軍次官ハ海軍大臣官房所属職員、外国駐在員及外国留学生ニ対シ、台湾総督府海軍参謀長及海軍病院船軍医長ハ各其ノ部下ニ対シ之ヲ所轄長ト看做ス
第二章 犯行
第九条 左ニ掲クル行為アルトキハ其ノ故意ニ出ツルト過失ニ出ツルトヲ問ハス之ヲ懲罰ス
一 服従ノ道ニ違ヒタルトキ
二 職務ノ権限ヲ誤リタルトキ
三 成規ニ違ヒタル処置ヲ為シタルトキ
四 上申、下達其ノ他定期アル事件ヲ𥡞延シタルトキ
五 命令ヲ誤リ又ハ之ヲ誤リ伝ヘタルトキ
六 擅ニ職役ヲ離レ又ハ職役ニ就カサルトキ
七 擅ニ滞在スヘキ地ヲ離レタルトキ
八 徴召ノ命ヲ受ケ故ナク到著ノ期限ニ後レタルトキ
九 酩酊シテ事ヲ省セサルトキ
十 艦船ヲ毀損シタルトキ
十一 艦船ヲ衝突、坐礁其ノ他ノ危険ニ付シタルトキ
十二 官物ヲ毀損、亡失、傷害又ハ汚損シタルトキ
十三 官物ヲ濫用シタルトキ
十四 艦船、兵器、機関、建築、土木ノ設計又ハ工事ヲ誤リタルトキ
十五 兵器、糧餉其ノ他物品ノ調製、保存、運搬又ハ供給ノ方法ヲ誤リタルトキ
十六 濫ニ銃砲ヲ発射シ又ハ爆発物ヲ使用シタルトキ
十七 火気ノ取扱ヲ麤略ニシタルトキ
十八 暴行、脅迫、闘争又ハ侮辱ノ行為アリタルトキ
十九 詐偽ニ渉ル言語又ハ行為アリタルトキ
二十 給与又ハ貸与ヲ受ケタル物品ヲ濫ニ貸借シ又ハ其ノ定数ヲ欠キタルトキ
二十一 擅ニ艦船内ニ商貨ヲ積載シタルトキ
二十二 秘密ヲ漏泄シ又ハ漏泄セムトシタルトキ
二十三 監督又ハ指導ノ道ヲ失ヒタルトキ
二十四 職務上ノ地位ヲ利用シ私利ヲ図リタルトキ
二十五 礼法ニ違ヒタルトキ
二十六 制規又ハ命令ニ違ヒタル服装ヲ為シタルトキ
二十七 前諸号ノ外職務ヲ怠リ若ハ職役上ノ義務ニ背キ又ハ紀律ニ違ヒ若ハ威厳、信用ヲ失フヘキ行為アリタルトキ
第三章 懲罰
第十条 懲罰ハ左ノ如シ
一 謹慎
二 拘禁
三 禁足
第十一条 謹慎ハ准士官以上ニ、拘禁及禁足ハ下士卒ニ之ヲ科ス但シ拘禁ハ之ヲ軍属ニ適用セス
第十二条 謹慎ハ六十日以内トシ勤務ヲ停メ居宅内又ハ艦船其ノ他勤務ノ場所ニ屏居謹慎セシム
第十三条 拘禁ハ三十日以内トシ演習及教育ノ外勤務ヲ停メ一室ニ閉錮ス
第十四条 禁足ハ六十日以内トシ勤務ノ外艦船、官衙、団隊又ハ居宅ヲ出ツルコトヲ禁ス
第四章 懲罰権限
第十五条 分隊長、駆逐艦長、艇長及海軍用船監督官ハ部下ノ下士卒ニ対シ十五日以内ノ拘禁又ハ三十日以内ノ禁足ヲ科ス
所轄長ハ前項懲罰権者ノ権限ニ属スル場合ヲ除クノ外部下海軍軍人ヲ懲罰ス
長官ハ所轄長ノ部下ニ属スル者ヲ除クノ外部下海軍軍人ヲ懲罰ス
海軍大臣ハ長官及所轄長ノ部下ニ属セサル海軍軍人ヲ懲罰ス
第十六条 海軍大臣又ハ長官ハ臨時ニ編成シタル部隊ヲ指揮スル者ヲシテ所轄長ニ等シキ懲罰権ヲ行ハシムルコトヲ得
第十七条 長官ハ部下ノ海軍軍人ニシテ他ノ懲罰権者ニ属セサル者ニ対シ部下ノ将校、同相当官ノ中ヨリ指定シタル者ヲシテ所轄長ニ等シキ懲罰権ヲ行ハシムルコトヲ得
第十八条 所轄長ハ其ノ部下ニ分隊長ヲ置カサル場合ニ於テ部下ノ将校、同相当官ノ中ヨリ指定シタル者ヲシテ分隊長ニ等シキ懲罰権ヲ行ハシムルコトヲ得
第十九条 将官及同相当官ハ海軍大臣旨ヲ承ケ之ヲ懲罰ス
第二十条 懲罰スヘキ犯行アリタル者其ノ処分ヲ受ケスシテ所属ヲ変更シタルトキハ現所属ノ懲罰権者之ヲ懲罰ス
第二十一条 懲罰権ヲ有スル者其ノ部下ノ犯行ニ関係シ自ラ懲罰ヲ受クヘキ事由アリト思料スルトキハ懲罰権ヲ行フコトヲ得ス
前項ノ場合ニ於ケル懲罰ハ直上ノ懲罰権者之ヲ行フ
第五章 懲罰手続
第二十二条 謹慎ノ処分ハ言渡書ヲ作リ之ヲ交付スヘシ
第二十三条 拘禁又ハ禁足ノ処分ハ書面ヲ作リ之ヲ言渡スヘシ
分隊所属ノ下士卒ニ対スル拘禁又ハ禁足ノ処分ハ下士ニ在リテハ其ノ分隊下士ノ列前ニ於テ、卒ニ在リテハ其ノ分隊下士卒ノ列前ニ於テ之ヲ言渡スヘシ
前項ノ規定ハ分隊所属ニ非サル下士卒ニ対スル拘禁又ハ禁足ノ処分ニ之ヲ準用ス
第二十四条 懲罰ハ各犯行ニ付之ヲ科ス
第二十五条 長官ハ部下ノ将官及同相当官ニ懲罰スヘキ犯行アリト思料スルトキハ事由書ニ証憑ヲ添ヘ海軍大臣ニ具申スヘシ
第二十六条 分隊長及分隊長ニ等シキ懲罰権ヲ行フ者部下ノ犯行其ノ権限以外ノ懲罰ニ該ルト認ムルトキハ意見ヲ付シテ所轄長ニ具申スヘシ
第二十七条 第二十条ノ場合ニ於テハ旧所属ノ懲罰権者ハ事由書ニ証憑ヲ添ヘ現所属ノ懲罰権者ニ移牒スヘシ
前項ノ事由書ニハ懲罰ノ程度ニ付意見ヲ付スヘシ
第二十八条 第二十一条第一項ノ場合ニ於テハ懲罰権者ハ其ノ事由ヲ直上ノ懲罰権者ニ具申スヘシ
第二十九条 准士官以上ノ懲罰ハ海軍大臣ニ、下士卒ノ懲罰ハ所属長官ニ之ヲ報告スヘシ
第六章 懲罰執行
第三十条 演習、事変其ノ他已ムヲ得サル必要アル場合ニ於テハ謹慎ニ処セラレタル者ヲシテ勤務ニ服セシムルコトヲ得
第三十一条 拘禁ハ其ノ一日ヲ禁足二日ニ換ヘ執行スルコトヲ得
第三十二条 懲罰権者ハ受罰者改悛ノ情顕著ナリト認ムルトキハ懲罰ノ執行ヲ免除スルコトヲ得
第二十九条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十三条 拘禁中必要アルトキハ戒具ヲ用ウルコトヲ得
第三十四条 拘禁中ハ毎日一時間以上三時間以内運動ヲ為サシムヘシ但シ雑役又ハ教練ヲ以テ運動ニ換フルコトヲ得
第三十五条 受罰ノ初日ハ時間ヲ論セス全一日トシテ之ヲ計算ス
拘禁ノ解止ハ罰期終了ノ翌日午前ニ於テ之ヲ行フ
第三十六条 懲罰処分ヲ受ケタル者逃亡其ノ他ノ理由ニ依リ執行ヲ受ケサルトキハ其ノ日数ヲ懲罰期間ニ算入セス
附 則
本令ハ明治四十一年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
懲罰スヘキ犯行ハ本令施行以前ニ係ルモノト雖本令ニ依リ之ヲ処分ス