狩猟法
法令番号: 法律第三十三號
公布年月日: 明治34年4月13日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル狩獵法改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十四年四月十二日
內閣總理大臣 侯爵 伊藤博文
農商務大臣 林有造
法律第三十三號
狩獵法
第一章 獵具、獵法
第一條 本法ニ於テ狩獵ト稱スルハ銃器、網、黐繩又ハ擌ヲ以テ鳥獸ヲ捕獲スルヲ謂フ
前項各獵具ノ種類及制限ハ農商務大臣ノ定ムル所ニ依ル
第二條 爆發物、劇藥、毒藥、据銃又ハ危險ナル罠若ハ陷穽ヲ以テ鳥獸ヲ捕獲スルコトヲ得ス
前項ノ外ノ獵具、獵法ニシテ第一條ニ揭ケサルモノニ就テハ地方長官ハ農商務大臣ノ認可ヲ經テ便宜取締規則ヲ設クルコトヲ得
第三條 日出前、日沒後又ハ市街、人家稠密ノ場所、衆人群集ノ場所ニ於テ又ハ銃九ノ達スヘキ虞アル建物、船舶若ハ汽車ニ向テ銃獵ヲ爲スコトヲ得ス
第四條 左ニ揭クル場所ニ於テハ狩獵ヲ爲スコトヲ得ス
一 御獵場
二 禁獵區
三 公道
四 公園
五 社寺境內
六 墓地
第五條 欄、柵、圍障若ハ作物植付アル他人ノ所有地ニ於テハ所有者又ハ占有者、他人ノ共同狩獵地ニ於テハ免許ヲ受ケタル者ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ狩獵ヲ爲スコトヲ得ス
第六條 地方長官ハ鳥獸ノ蕃殖保護ノ爲又ハ土地所有者ノ出願其ノ他ノ理由ニ因リ必要ト認ムル場合ニ於テハ十箇年以內ノ期間ヲ以テ禁獵區ヲ設クルコトヲ得
第七條 地方長官ハ必要ト認ムル場合ニ於テハ區域ヲ限リ銃獵ヲ禁スルコトヲ得
第二章 狩獵免許
第八條 狩獵ハ地方長官ニ願出テ免狀ヲ受クルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス但シ欄、柵又ハ圍障アル宅地內ニ於テ銃器ヲ使用セスシテ狩獵ヲ爲ス者ハ此ノ限ニ在ラス
第二十二條ノ處罰ヲ受ケタル者ハ滿一箇年ヲ經過セサレハ再ヒ免狀ヲ受クルコトヲ得ス
第九條 從來地方ノ慣行ニ依リ一定ノ區域內ニ於テ共同狩獵ヲ爲ス者ハ農商務大臣ニ願出テ免許ヲ受クルコトヲ得但シ其ノ出願ニ關スル規則ハ農商務大臣之ヲ定ム
第十條 免狀ヲ分チテ甲乙ノ二種トス
甲種免狀ハ銃器ヲ使用セスシテ狩獵ヲ爲ス者ニ下付シ乙種免狀ハ銃器ヲ使用シテ狩獵ヲ爲ス者ニ下付スルモノトス
第十一條 免狀ヲ受クル者ハ甲乙各種ニ付左ノ區別ニ從ヒ免許稅ヲ納ムヘシ
一等 {所得稅百圓以上、地租五百圓以上若ハ營業稅百五十圓以上ヲ納ムル者又ハ其ノ家族 金二十圓
二等 {所得稅三圓以上、地租三十圓以上若ハ營業稅二十圓以上ヲ納ムル者又ハ其ノ家族 金十圓
三等 一等、二等以外ノ者 金二圓
第十二條 免狀ノ有效期限ハ十月十五日ヨリ翌年四月十五日マテトス但シ北海道ニ於テハ九月十五日ヨリ翌年四月十五日マテトス
前項期間內ニ非サレハ狩獵ヲ爲スコトヲ得ス
第十三條 免狀ノ使用ハ本人ニ限ルモノトス
第十四條 獵者ハ出獵ノ際免狀ヲ携帶スヘシ
警察官、憲兵、森林官及市町村長ハ獵者ノ免狀ヲ檢査スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ獵者ハ免狀ノ檢査ヲ拒ムコトヲ得ス
第十五條 免狀ヲ亡失シタルトキハ其ノ地ノ所轄警察官署及當初之ヲ下付シタル官廳ニ屆出ヘシ
免狀ヲ亡失シ若ハ毀損シタルトキハ其ノ再渡又ハ書換ヲ請求スルコトヲ得
此ノ場合ニ於テハ手數料金二十五錢ヲ納ムヘシ
第十六條 未成年者ハ乙種免狀ヲ受クルコトヲ得ス
第十七條 免狀ハ其ノ效力ヲ失ヒタル日ヨリ三十日以內ニ當初之ヲ下付シタル官廳ニ返納スヘシ
第十八條 學術硏究又ハ有害鳥獸驅除ノ爲其ノ他特別ノ理由ニ因リ保護鳥獸又ハ其ノ他ノ鳥獸ノ捕獲ヲ要スルトキハ地方長官ハ何時タリトモ特ニ之カ許可ヲ與フルコトヲ得但シ捕獲シタル鳥獸ハ之ヲ賣買スルコトヲ禁ス
前項ノ場合ニ於テハ第十一條ヲ適用セス
第三章 鳥獸保護
第十九條 保護鳥獸ヲ捕獲シ又ハ之ヲ賣買スルコトヲ禁ス但シ保護期間前ニ捕獲シタル鳥獸ハ其ノ期間ノ初日ヨリ二週間以內ニ於テ賣買スルハ此ノ限ニ在ラス
飼養ニ係ル保護鳥獸ハ前項期日後ト雖農商務大臣定ムル所ノ規則ニ依リ賣買スルコトヲ得
保護鳥獸ノ種類及保護期間ハ農商務大臣之ヲ定ム
第二十條 保護鳥類ノ卵又ハ雛ヲ取リ若ハ之ヲ賣買スルコトヲ禁ス但シ學術硏究ノ爲之力採取ヲ要スルトキハ地方長官ハ特ニ其ノ許可ヲ與フルコトヲ得
第四章 罰則
第二十一條 第八條第一項、第十二條第二項ニ違背シテ狩獵ヲ爲シ又ハ詐欺ノ所爲ヲ以テ狩獵免狀若ハ共同狩獵地ノ免許ヲ受ケ又ハ詐テ共同狩獵地ヲ表示シタル者ハ百圓以下ノ罰金ニ處シ犯罪ノ用ニ供シタル器具ハ之ヲ沒收ス
第二十二條 第二條第一項、第三條若ハ第四條ニ違背シタル者ハ罰前條ニ同シ
前項ノ處罰ヲ受ケタル者ノ免狀ハ其ノ效力ヲ失フモノトス
第二十三條 第五條、第十四條第三項、第十九條第一項、第二十條ニ違背シタル者ハ四十圓以下ノ罰金ニ處ス但シ第五條ニ付テハ土地所有者、占有者又ハ共同狩獵地ノ免許ヲ受ケタル者ノ吿訴ヲ待テ處斷ス
第二十四條 第十四條第一項、第十五條第一項、第十七條ニ違背シタル者ハ一圓以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處ス
附 則
第二十五條 本法ハ明治三十四年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
第二十六條 本法施行前ニ免許ヲ受ケタル獵區及共同狩獵地ハ本法施行後ト雖其ノ免許期間仍從前ノ規定ヲ適用ス
第二十七條 本法施行前ニ受ケタル狩獵免狀ハ本法施行後仍其ノ效力ヲ有ス
第二十八條 本法施行前ニ明治二十八年法律第二十號狩獵法ノ罰則ヲ適用スヘキ行爲アリタルトキハ本法施行後仍其ノ罰則ヲ適用ス
第二十九條 明治二十八年法律第二十號狩獵法第二十一條ノ處罰ヲ受ケタル者ハ滿一箇年ヲ經過スルニ非サレハ本法ニ依リ狩獵免狀ヲ受クルコトヲ得ス
第三十條 本法中地方長官ノ職務ハ東京府ニ於テハ警視總監之ヲ行フ
本法中市町村長ノ職務ハ北海道、沖繩縣ノ區ニ於テハ區長、町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ町村長ニ該當スヘキ者之ヲ行フ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル狩猟法改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十四年四月十二日
内閣総理大臣 侯爵 伊藤博文
農商務大臣 林有造
法律第三十三号
狩猟法
第一章 猟具、猟法
第一条 本法ニ於テ狩猟ト称スルハ銃器、網、黐縄又ハ擌ヲ以テ鳥獣ヲ捕獲スルヲ謂フ
前項各猟具ノ種類及制限ハ農商務大臣ノ定ムル所ニ依ル
第二条 爆発物、劇薬、毒薬、据銃又ハ危険ナル罠若ハ陥穽ヲ以テ鳥獣ヲ捕獲スルコトヲ得ス
前項ノ外ノ猟具、猟法ニシテ第一条ニ掲ケサルモノニ就テハ地方長官ハ農商務大臣ノ認可ヲ経テ便宜取締規則ヲ設クルコトヲ得
第三条 日出前、日没後又ハ市街、人家稠密ノ場所、衆人群集ノ場所ニ於テ又ハ銃九ノ達スヘキ虞アル建物、船舶若ハ汽車ニ向テ銃猟ヲ為スコトヲ得ス
第四条 左ニ掲クル場所ニ於テハ狩猟ヲ為スコトヲ得ス
一 御猟場
二 禁猟区
三 公道
四 公園
五 社寺境内
六 墓地
第五条 欄、柵、囲障若ハ作物植付アル他人ノ所有地ニ於テハ所有者又ハ占有者、他人ノ共同狩猟地ニ於テハ免許ヲ受ケタル者ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ狩猟ヲ為スコトヲ得ス
第六条 地方長官ハ鳥獣ノ蕃殖保護ノ為又ハ土地所有者ノ出願其ノ他ノ理由ニ因リ必要ト認ムル場合ニ於テハ十箇年以内ノ期間ヲ以テ禁猟区ヲ設クルコトヲ得
第七条 地方長官ハ必要ト認ムル場合ニ於テハ区域ヲ限リ銃猟ヲ禁スルコトヲ得
第二章 狩猟免許
第八条 狩猟ハ地方長官ニ願出テ免状ヲ受クルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス但シ欄、柵又ハ囲障アル宅地内ニ於テ銃器ヲ使用セスシテ狩猟ヲ為ス者ハ此ノ限ニ在ラス
第二十二条ノ処罰ヲ受ケタル者ハ満一箇年ヲ経過セサレハ再ヒ免状ヲ受クルコトヲ得ス
第九条 従来地方ノ慣行ニ依リ一定ノ区域内ニ於テ共同狩猟ヲ為ス者ハ農商務大臣ニ願出テ免許ヲ受クルコトヲ得但シ其ノ出願ニ関スル規則ハ農商務大臣之ヲ定ム
第十条 免状ヲ分チテ甲乙ノ二種トス
甲種免状ハ銃器ヲ使用セスシテ狩猟ヲ為ス者ニ下付シ乙種免状ハ銃器ヲ使用シテ狩猟ヲ為ス者ニ下付スルモノトス
第十一条 免状ヲ受クル者ハ甲乙各種ニ付左ノ区別ニ従ヒ免許税ヲ納ムヘシ
一等 {所得税百円以上、地租五百円以上若ハ営業税百五十円以上ヲ納ムル者又ハ其ノ家族 金二十円
二等 {所得税三円以上、地租三十円以上若ハ営業税二十円以上ヲ納ムル者又ハ其ノ家族 金十円
三等 一等、二等以外ノ者 金二円
第十二条 免状ノ有効期限ハ十月十五日ヨリ翌年四月十五日マテトス但シ北海道ニ於テハ九月十五日ヨリ翌年四月十五日マテトス
前項期間内ニ非サレハ狩猟ヲ為スコトヲ得ス
第十三条 免状ノ使用ハ本人ニ限ルモノトス
第十四条 猟者ハ出猟ノ際免状ヲ携帯スヘシ
警察官、憲兵、森林官及市町村長ハ猟者ノ免状ヲ検査スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ猟者ハ免状ノ検査ヲ拒ムコトヲ得ス
第十五条 免状ヲ亡失シタルトキハ其ノ地ノ所轄警察官署及当初之ヲ下付シタル官庁ニ届出ヘシ
免状ヲ亡失シ若ハ毀損シタルトキハ其ノ再渡又ハ書換ヲ請求スルコトヲ得
此ノ場合ニ於テハ手数料金二十五銭ヲ納ムヘシ
第十六条 未成年者ハ乙種免状ヲ受クルコトヲ得ス
第十七条 免状ハ其ノ効力ヲ失ヒタル日ヨリ三十日以内ニ当初之ヲ下付シタル官庁ニ返納スヘシ
第十八条 学術研究又ハ有害鳥獣駆除ノ為其ノ他特別ノ理由ニ因リ保護鳥獣又ハ其ノ他ノ鳥獣ノ捕獲ヲ要スルトキハ地方長官ハ何時タリトモ特ニ之カ許可ヲ与フルコトヲ得但シ捕獲シタル鳥獣ハ之ヲ売買スルコトヲ禁ス
前項ノ場合ニ於テハ第十一条ヲ適用セス
第三章 鳥獣保護
第十九条 保護鳥獣ヲ捕獲シ又ハ之ヲ売買スルコトヲ禁ス但シ保護期間前ニ捕獲シタル鳥獣ハ其ノ期間ノ初日ヨリ二週間以内ニ於テ売買スルハ此ノ限ニ在ラス
飼養ニ係ル保護鳥獣ハ前項期日後ト雖農商務大臣定ムル所ノ規則ニ依リ売買スルコトヲ得
保護鳥獣ノ種類及保護期間ハ農商務大臣之ヲ定ム
第二十条 保護鳥類ノ卵又ハ雛ヲ取リ若ハ之ヲ売買スルコトヲ禁ス但シ学術研究ノ為之力採取ヲ要スルトキハ地方長官ハ特ニ其ノ許可ヲ与フルコトヲ得
第四章 罰則
第二十一条 第八条第一項、第十二条第二項ニ違背シテ狩猟ヲ為シ又ハ詐欺ノ所為ヲ以テ狩猟免状若ハ共同狩猟地ノ免許ヲ受ケ又ハ詐テ共同狩猟地ヲ表示シタル者ハ百円以下ノ罰金ニ処シ犯罪ノ用ニ供シタル器具ハ之ヲ没収ス
第二十二条 第二条第一項、第三条若ハ第四条ニ違背シタル者ハ罰前条ニ同シ
前項ノ処罰ヲ受ケタル者ノ免状ハ其ノ効力ヲ失フモノトス
第二十三条 第五条、第十四条第三項、第十九条第一項、第二十条ニ違背シタル者ハ四十円以下ノ罰金ニ処ス但シ第五条ニ付テハ土地所有者、占有者又ハ共同狩猟地ノ免許ヲ受ケタル者ノ告訴ヲ待テ処断ス
第二十四条 第十四条第一項、第十五条第一項、第十七条ニ違背シタル者ハ一円以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処ス
附 則
第二十五条 本法ハ明治三十四年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
第二十六条 本法施行前ニ免許ヲ受ケタル猟区及共同狩猟地ハ本法施行後ト雖其ノ免許期間仍従前ノ規定ヲ適用ス
第二十七条 本法施行前ニ受ケタル狩猟免状ハ本法施行後仍其ノ効力ヲ有ス
第二十八条 本法施行前ニ明治二十八年法律第二十号狩猟法ノ罰則ヲ適用スヘキ行為アリタルトキハ本法施行後仍其ノ罰則ヲ適用ス
第二十九条 明治二十八年法律第二十号狩猟法第二十一条ノ処罰ヲ受ケタル者ハ満一箇年ヲ経過スルニ非サレハ本法ニ依リ狩猟免状ヲ受クルコトヲ得ス
第三十条 本法中地方長官ノ職務ハ東京府ニ於テハ警視総監之ヲ行フ
本法中市町村長ノ職務ハ北海道、沖縄県ノ区ニ於テハ区長、町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ町村長ニ該当スヘキ者之ヲ行フ